「国宝」「鬼滅」の"必須アイテム"として話題…鹿児島銘菓ボンタンアメ 尿意抑えられるか検証してみた
鹿児島銘菓「ボンタンアメ」を食べれば尿意を抑えられる-。交流サイト(SNS)上で広がるうわさの真相を知りたいという調査依頼が、西日本新聞「あなたの特命取材班」に寄せられた。音楽ライブや映画観賞の際の“必須アイテム”として話題となり、各地で品薄となるほど人気が高まっているボンタンアメ。ブームの背景を探り、実際に効果があるのか検証してみた。 【写真】「ボンタンアメ」100周年を記念して販売された「記念缶」 「ボンタンアメ効果で3時間の上映も余裕だった」「ライブ必需品」。X(旧ツイッター)上には、尿意抑制効果を実感したという投稿が相次ぐ。折しも、上映時間が約3時間の邦画「国宝」や約2時間半のアニメ映画「劇場版『鬼滅の刃(やいば)』無限城編 第一章 猗窩座(あかざ)再来」が大ヒット上映中。ボンタンアメの品切れを告げる店舗の張り紙や、ボンタンアメが大量に並ぶ陳列棚の画像投稿もあり、空前のブームを物語る。 製造元のセイカ食品(鹿児島市)によると、今年に入って品薄状態が続き、「生産が追い付いていない状況」という。製造ラインの人員を増やすなど対応に追われている。 Xの投稿をさかのぼると、ボンタンアメが「トイレ対策」として「バズる」ようになったのは、今年2月ごろ。今年で誕生から100周年を迎え、同社が記念グッズの販売などを告知し始めた時期と重なる。同社総務部の時任智恵子さんは、ブームのきっかけは「不明」とした上で、「100周年のPRには注力していたが、知らないところで(話題性が)大きくなっていた」と振り返る。 Xには数年前から、大福餅やカステラを「トイレ対策アイテム」として挙げる投稿が存在する。糖質が高い食品には尿量を減らす効果があるという言説もあり、水あめやもち米でつくるボンタンアメが耳目を集めたようだ。 本当にボンタンアメに尿意抑制効果はあるのだろうか。取材班は7月末、長崎大多文化社会学部の学生ら10人の協力で実験した。大学の講義や映画観賞が始まる前の30分以内に、1日目は500ミリリットルの水とボンタンアメ2粒、2日目は水500ミリリットルのみを摂取してもらい、違いを確かめた。 その結果、10人中7人は「ボンタンアメを食べた時の方が尿意を感じるのが遅かった」と回答した。その7人のうち5人は、ボンタンアメに尿意抑制効果があるといううわさを聞いたことがあった。 尿意を感じるまでの時間は、ある学生はボンタンアメを食べた日は3時間、食べなかった日は1時間半だった一方、両日とも差がなかった学生もいた。ボンタンアメに「一時的な効果」があるとしても、個人差は大きいようだ。 ボンタンアメの尿意抑制効果について、長崎大病院泌尿器科・腎移植外科の松尾朋博医師は「食べると血糖が上昇し、臓器などに水分が引き込まれることで、一時的に尿意が抑制される可能性はある」と話す。その上で、効果があると信じ込んで症状が改善する「プラセボ効果」も作用していると推察する。 ただ、糖質による尿意抑制効果は一時的なもの。永続的ではない上、糖尿病などを引き起こすリスクがあり、「頻尿対策としては普段の食生活を正すことが基本」とくぎを刺した。(白波宏野)
西日本新聞
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