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東京チカラめし、さくら水産、ドムドムハンバーガー…勢いあったチェーン店が「大量閉店」したワケ

かつて100店舗近くあったのに今は「1店舗」だけに

山口 伸

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2025.8.18

現存する唯一の「金の蔵」は、池袋のビルの地下にある(筆者撮影)

居酒屋チェーン「金の蔵」や「さくら水産」を覚えているだろうか。

両者とも低価格な居酒屋として消費者の支持を獲得し、一時は至る所で店舗を目にするほどの勢いだった。しかし現在、金の蔵は1店舗、さくら水産も10店舗ほどとなり、かつての低価格戦略も取りやめた。

加えて、金の蔵と同じ会社が運営する「東京チカラめし」も、新たな丼ぶりチェーンとして期待されたが、急速に勢力を縮小した。

また、ファストフードでは1970年にオープンしたバーガーチェーン「ドムドムハンバーガー」も同様の経緯をたどっている。1990年代半ばには400店舗まで拡大したものの、現在はその10分の1以下しか残っていないのだ。

かつての人気飲食チェーンが大量閉店した背景を探ってみた。

宴会需要の縮小に追いやられた「金の蔵」

現在の「金の蔵」は、リーマンショック翌年の2009年「居酒屋300 金の蔵Jr.」としてオープンしたのが始まりだ。

運営会社の三光マーケティングフーズ(現SANKO MARKETING FOODS)は、当時、客単価3500円程度の居酒屋を展開していたが、不景気に合わせて客単価2000円を目指し、金の蔵が生まれた。

全品均一(300円以下)を謳い文句に僅か1年で約80店舗を出店。最盛期には、新宿、池袋、赤羽などの駅周辺を中心に100店舗近くまで展開し、不景気下で財布の紐が堅い会社員や学生の支持を得た。

しかし現在、金の蔵は、池袋サンシャイン通り店の1店舗しか残っていない。

実際に訪れてみると、ビルの地下の店舗に続く階段横に設置された看板には、全品均一といった、かつてのアピール文句は見られない。

当時の宣伝文句であった全品均一(300円以下)の表記は見られない(筆者撮影)

運営会社の資料を確認すると、出店数のピークは2011年頃であったことがわかる。その後、2016年6月末時点で68店舗(系列店含む)、コロナ禍直前の2019年12月末には他業態と合わせて57店舗、コロナ禍で大打撃を受け、現在の状況になった。

コロナ禍が決定打となったが、2010年代から既に規模縮小が進んでいた。

主な要因は宴会需要の減少で、働き方改革も影響したという。宴会需要が減る中、居酒屋業界では金の蔵のような総合型居酒屋は衰退し、鳥貴族や磯丸水産などのジャンルに特化した居酒屋が勢力を拡大。消費者の嗜好の変化も業績悪化に影響したと考えられる。

店員のオペレーション教育に苦戦? 「東京チカラめし」

東京チカラめしは、奇しくも金の蔵と同じ運営会社(現SANKO MARKETING FOODS)が開発した「焼き牛丼」の店舗だ。

2011年に1号店を出店。吉野家や松屋などの「煮込む」牛丼が一般的だった時代に、「焼き」牛丼を提供したことでブームとなった。

PHOTO:PIXTA

鰻屋のように外まで香りが広がり、お昼時には行列ができていたのを思い出す。

2012年には店舗数100を超え、ピーク時には130店舗を突破した。だが、すぐに失速し、2014年4月には88店舗中68店舗を、カラオケ店を運営するマックグループ(現ガーデン)に譲渡した。マックグループはその後、店舗のほとんどを家系ラーメンの「壱角家」に転換している。

東京チカラめしのブームは僅か3年程度で終焉となった。当時の運営会社は、この理由として、米国産牛肉の高騰やコンビニエンスストアなど他業態との競争を挙げている。

しかし、筆者はオペレーションにも問題があったようにも思う。当時の消費者によるレビューを見てみると、提供スピードの遅さや店舗の衛生状態を指摘する意見が随所に見られるからだ。

焼き業務は、煮込む牛丼と違って手間がかかる。慣れない店員が従事すると提供スピードが遅れてしまう。急速な出店で店員の教育が行き届かなかったのではないだろうか。

なお、現在東京チカラめしは大阪の1店舗のほか、東京法務局などが入る九段第二合同庁舎の食堂内に「東京チカラめし食堂」として出店するのみとなっている。

同社の2011年の有価証券報告書を見ると、2010年6月期の売上高は約263億円。これが同社のピークで、その後は金の蔵や東京チカラめしの不振で減収が続いていく。

2025年6月期の売上高は80億円を下回っており、いまなお赤字が続いている。公表されている中期計画によると、現在は大衆酒場の「アカマル屋」を主軸に、官公庁の食堂内出店も推進するという。

低価格をアピールした「さくら水産」

「さくら水産」は、かつて「村さ来」のフランチャイズ経営をしていたテラケンが1995年に始めた海鮮居酒屋だ。当時の海鮮居酒屋の代表格は「庄や」であったが、さくら水産は安さを武器に勢力を拡大した。

さくら水産・西日暮里駅前店(筆者撮影)

金の蔵と同じく想定客単価は2000円程度と言われており、お昼時には500円ランチを提供し、これが看板メニューでもあった。オフィス街の周辺にも出店していたため、会社員の需要を取り込み、過去の報道によると、2010年のピーク時には約160店舗まで拡大したという。

しかし、物価高や宴会需要の減少に耐え切れず、店舗数を縮小。投資ファンドのアスパラントグループがテラケンと資本・業務提携した2015年には100店舗を下回っており、その後も店舗数は減っていった。

値上げもしたが、消費者の間で安いイメージが定着していたこともあってか、客離れが進んでしまったようだ。

店舗公式サイトを見ると、現在の店舗数は銀座、西日暮里、大宮など11店舗だ。刺身盛り合わせは2000~3000円程度で、500円ランチも掲載されていないことから終了したと思われる。

なお、現在の客単価は3200円程度といった報道もあり、かつての低価格路線からシフトしている様子もうかがえる。

さくら水産の衰退時期は、SFPホールディングスが運営する「磯丸水産」の拡大時期と重なる。

磯丸水産は駅前の一等地に出店し、高い賃料を24時間営業で回収するビジネスモデルを採用していたという。海鮮居酒屋という同種の業態で異なるビジネスモデルの磯丸水産の台頭が、さくら水産の衰退に影響した可能性もありそうだ。

ダイエー衰退とともに縮小した「ドムドムハンバーガー」

ドムドムハンバーガーは、マクドナルドが日本に上陸する前年の1970年に1号店を構えた。

ダイエーの創業者である中内功氏は当初、自身の手でマクドナルドを呼び込むつもりだったが、交渉が決裂し、自社開発でドムドムハンバーガーを生み出した。

インターネットなどで調べてみると、主にダイエー内のテナントとして出店し、1990年代のピーク時には400店舗を超えていたという情報を複数確認できた。

ドムドムハンバーガー・浅草花やしき店(筆者撮影)

1990年後半から本体のダイエーが衰退し始める。郊外地ではユニクロやアオキ、コジマやヤマダデンキなど、衣類や家電の各分野におけるいわゆる「カテゴリーキラー」の台頭で、専門性と品ぞろえが劣るダイエーへの客足が遠のいた。

さらに、ジャスコ(現・イオン)などの郊外型モールもダイエーの客を奪ったようだ。

そして、ダイエーの業績悪化とともにドムドムハンバーガーも店舗数の縮小を余儀なくされ、レンブラントHDに事業譲渡された。譲渡した2017年時点の店舗数は僅か22店舗だった。

ドムドムハンバーガーは、100店舗規模の積極的な出店は目指さず、地道に営業を続ける方針を採っているという。

現在は29店舗を展開しており(2025年8月時点)、主な出店先は旧ダイエーのイオンやマルエツといった商業施設のほか、市原ぞうの国や浅草花やしきなどの行楽施設だ。

セットメニューは店舗によって異なるものの700~900円台と、マクドナルドと比べ高めのメニューもあるが、SNSを利用した積極的な情報発信で、ファンも多く獲得しているようだ。

以上、4つの飲食チェーン店の経緯を追った。

金の蔵、さくら水産の店舗数減少は宴会離れが主な要因だ。だが仮に宴会需要が存続していたとしても、かつての激安業態は昨今の物価高に耐えられなかっただろう。

東京チカラめしは、競合や立地云々よりも無理な出店によるオペレーションの悪化が影響したと考えられる。また、ドムドムハンバーガーはダイエーと運命を共にしたと言えそうだ。

一度、店舗数を大幅に縮小したブランドは消費者の間で負のイメージが付くため、同名での復活は難しい面もあろう。しかし、2001年に日本から撤退し、再上陸後、勢力を伸ばしつつある「バーガーキング」のような例外もある。

取り上げたこれら4チェーン店が復活するのか、今後の動向に注目したい。

(山口伸)

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経済・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。街歩きが趣味で駅周辺の商業施設や開発状況を調べている。