Yahoo!ニュース

秋釣りシーズン突入の中、海に落ちた親子の叫び 垂直にそそり立つ岸壁の恐ろしさ #エキスパートトピ

斎藤秀俊水難学者/工学者 水難学会理事/長岡技術科学大学大学院教授
たった1 メートルの高さですら、ロープを使っても上がれないのが岸壁の怖さ(筆者撮影、「水難事故にまつわる、あるある都市伝説集 これってありえないの?」より抜粋)

「海から親子の叫び声がする。」なんとも痛ましい状況だったことか。

 季節は、海水浴や川遊びから釣りに移ってきました。海釣りと言えば手軽な波止釣り。親子で気軽に岸壁の上から竿を出して、アジやサヨリなどの小魚を狙える季節です。でも岸壁には、落ちたら上がれるところがありません。

 いかだ釣りもベテランにはたまりません。海面近くまでよってチヌが狙える季節です。でもいかだから海中に転落したらどうなるでしょうか。いかだの上から海面を見ると上がれそうな気もしますが、一度海面に落ちると、やはり上がれません。

ココがポイント

海から親子の叫び声がするのを通行人が聞き、119番通報しました。溺れていたのは野口さんと幼稚園に通う5歳の息子でした
出典:青森放送 2025/8/25(月)

松浦市福島町の沖合で釣りをしていた60代の男性が魚を入れていた網を拾おうと海に飛び込み、溺れて死亡しました
出典:KTNテレビ長崎 2025/8/24(日)

青森県むつ市の防波堤で21日、釣りをしていた38歳の女性が海に転落し亡くなりました(中略)救命胴衣を着用していなかった
出典:青森朝日放送 2025/3/27(木)

ライフジャケットの着用の有無で、水中ではどんな違いが生じるのか。私たちは、水中での検証を試みました
出典:NHK 2024/8/7(水)

エキスパートの補足・見解

 青森・むつ市の親子海中転落では、お子さんが先に転落したようです。そしてお父さんが追うように飛び込んだのでしょうか。でも、岸壁には垂直に高さがあって自力で上がることはできません。飛び込んだら、ふたりで浮いているしか生還への方策がないのです。岸壁は、100%自力での生還ができない場所です。

 長崎・松浦市で海中に飛び込んだ男性は、釣りいかだから救命胴衣を脱いで入水。いかだの規模感はわかりませんが、自力で海中から上がれる高さはせいぜい10 cm。体力があれば30 cmくらいはいけますが、はしごがなければ再上陸はほぼ無理なのです。

 実は、むつ市では今年3月にも女性が釣り中に防波堤から海中に転落していました。同じ市内で死亡事故が続くのは、何か警報が出ているのではないかと考えたいところです。垂直にそそり立つ岸壁の恐ろしさを知ってほしいと思います。

 以上は、釣りの際の海中転落の恐ろしさをよく表しています。海面から生還するためには、消防の救助隊などのプロの手による上陸しか手がありません。それまで生命をつないで生き抜くためには、やはり救命胴衣の着装が重要。しかも締めるべきベルトを締めて、万が一に備えたいところです。

 

  • 90
  • 198
  • 112
ありがとうございます。
水難学者/工学者 水難学会理事/長岡技術科学大学大学院教授

ういてまて。救助技術がどんなに優れていても、要救助者が浮いて呼吸を確保できなければ水難からの生還は難しい。要救助側の命を守る考え方が「ういてまて」です。浮き輪を使おうが救命胴衣を着装してようが単純な背浮きであろうが、浮いて呼吸を確保し救助を待てた人が水難事故から生還できます。水難学者であると同時に工学者(材料工学)です。水難事故・偽装事件の解析実績多数。風呂から海まで水や雪氷にまつわる事故・事件、津波大雨災害、船舶事故、工学的要素があればなおさらのこのような話題を実験・現場第一主義に徹し提供していきます。オーサー大賞2021受賞。講演会・取材承ります。連絡先 jimu@uitemate.jp

斎藤秀俊の最近の記事

あわせて読みたい記事