個人的に多大な影響を受けた/強烈な印象を残したバンド紹介 #27 MUSHA×KUSHA
曲りなりにもエクストリームメタルを中心とした数多くのワンマンプロジェクトを立ち上げ、自分で言うのも何だが「表現者」としてのポジションに立っている事を自負するこの俺。口先ではよく「権力や体制は敵だ!奴等をメタルでブッ潰してやる!」等と嘯いているが、表現者/クリエイターとして最大の敵は別に存在している。それが「固定観念」だ。「あんなのはメタルじゃない!」「メタルはこうでなければ!」みたいな凝り固まった戯言をぬかすメタル老害は元より、ロックやパンクの世界にもそういった固定観念に憑り憑かれた保守的で封建的な連中は多々いるだろう。本日はそんな固定観念とやらが如何に無意味で無価値であるかを教えてくれるバンドを紹介したい。
1998年に高知で活動を開始したインディーズ/オルタナティヴロックバンドMUSHA×KUSHA(ムシャクシャ)。ロックバンドとしては異例中の異例である「蟲役者(むしやくしゃ)」と称するダンス要員、梅原江史と自ら「唄と四弦ギター」と称しリードヴォーカルに加え文字通り弦を4本しか張っていない変則チューニングのギターをプレイするメインコンポーザー池田浩之の2名によってスタートした。バンド名の由来は当時の社会問題となっていた未成年の犯行動機である「ムシャクシャしてやった」から着想を得て、社会への警鐘の意味合いも込めて池田浩之が命名した。
活動をスタートした1998年から早くもデモを配布。2000年にtranqui-linalized recordから初のアルバムとなる『エイガヤナイガ』をリリースし、この頃からパンク畑のバンドらしくライヴの本数が一気に増加。中心人物である上記二名以外のメンバーは流動的で、メンバーチェンジを重ねながら年間100本前後のライヴをこなしていく。
そして2003年、SHACHIと共にun-doレーベル設立し3rdアルバムに当たる『ボクとサクラ』をリリース。後追いながら俺が彼等に触れたのは本作からだ。バンドの代表曲となる『からくり人形言葉なし』がFM大阪番組『トリニティ・ブラッド』エンディングテーマに起用される等地下のインディーズ/アンダーグラウンド的存在ながらも着実に知名度を伸ばしていく。
その後もバンドは着実に活動を重ね、年に1枚ペースでアルバムをリリースする他スプリットやコンピレーション等にも楽曲を提供。ライヴの本数もさらに増え年間200本を超えるのもザラとなっていくが、2010年以降で活動が鈍り2012年にシングルをリリースしたのを最後に沈黙状態となる。それでも結成20周年の節目となる2018年に復活しリレコーディングベスト『?』を、さらに翌年2019年に待望の最新フルアルバムとなる『影囁く暁に』をリリース。その後はまた活動が鈍るものの定期的にライヴは行っているようで、さらに少人数の編成による「小型MUSHA×KUSHA」としてもちょくちょくライヴをしているようだ。
今となってはSNS等多くの手段で手軽に未知のバンドをディグる事が出来るようになったが、20年近く前はまだそういった手段は乏しくCDショップやライヴ等に足繫く通うのが一つの大きな手段だった。MUSHA×KUSHAも存在自体は相当にマニアックでかなり目敏いリスナーでなければ辿り着くのは容易ではなかったと思われるが、当時メジャー進出で爆発的ヒットを飛ばし始めていたマキシマム ザ ホルモンの出世作『ロッキンポ殺し』収録曲である『上原〜FUTOSHI〜』の歌詞でMUSHA×KUSHAの名を挙げていた事が導線になったリスナーは相当に多いと思われる。かく言う俺もそれでMUSHA×KUSHAを知った人間の一人だ。
最初期は未洗練で粗削りなパンク路線だったが『ボクとサクラ』で独特のスタイルが開花。初期ムックに通じるアングラ歌謡メロにラフさを残したハードなギターリフ、そこに絡むピアノをメインにした美麗なキーボードサウンドは最早パンクと言うよりもオルタナティヴな歌謡ハードロックと呼んだほうがしっくり来る。バンド側も「オリエンタルロック」と自称していた時期もある。それでいて曲によってはパンク的な荒々しさを残しており、最初期からプレイされたびたびリメイクされる『アイナイッテイエソウ』や4thアルバム『いのちの風』収録曲『地獄の炎』ではハードコアを通り越してエクストリームメタル的な趣すら感じさせる。リフもパンク/ハードコアルーツのデスメタル感があり嬉しい限りである。
リズム隊及びキーボードの存在もかなり大きく、オルタナティヴロックでありつつ同時にプログレッシヴロックの素養も感じさせ転調や変拍子等も多用されている。そういった要素がイマイチ洗練されておらずB級臭い所があるのも確かだが、バンド側も意図的にそういう面を出しているようでこれがまた独特の味わいとなっている。DTM初心者みたいなメロやリフが出てきたかと思ったら次の瞬間洗練されたオシャレなジャズ的アンサンブルが顔を出す。何ともミスマッチ極まりないんだがそこもまたMUSHA×KUSHAならではの旨味だ。
そんなサウンドを彩るメンバーも強烈な個性派揃いだ。ギターヴォーカルの池田浩之からして異色な存在感を放っている。「リードやソロなんざ弾かねぇ!」と言わんばかりに高音弦2本をオミットしわざわざペグまで外して「4弦ギター」である事を強調。その上元はベーシストだった事から弦もギター弦ではなくベース弦を張っており、よく聴くとベース特有のヌルっとした質感のトーンを感じさせるリフ捌きを見せるギタープレイ。独特の枯れたハスキーな声質でロックやメタル、パンクよりも演歌や歌謡曲をルーツに持つ歌唱スタイルはかなり独特だ。今現在のメインメンバーであるキーボード兼バックVo(グロウル/スクリーム含む)石島聡、ベースのザジ、ドラムのウエダテツヤはジャズやフュージョンの素養を感じさせる巧者で前述したプログ要素でバンドの屋台骨を支えている。
そして極め付けがステージ上で舞いを披露する「蟲役者」こと梅原江史の圧倒的存在感だ。俺も最初にMUSHA×KUSHAに知った時は「メンバーにダンサーがおりステージ上で踊りまくる」という噂から、またパンク/ハードコア畑のバンドという事もありダンスのスキルもへったくれもなくただただ暴れまくりモッシュやダイヴを誘発するだけの暴動要員かと思っていた。しかし実際にはそのアンダーグラウンドで怪しくも絶妙にキャッチーな音楽性にマッチしたアーティステックなスタイルである。
歌詞を書いているのも梅原江史であり、ステージ上では歌詞の世界観やコンセプトを表現する所作を見せつつターンやステップを交えた動きを披露。その仕草は「ダンス」と言うよりも「演舞」に近い。舞踊と演技/芝居、パントマイムをミックスさせたようなスタイルと言うべきか。和服だった時期もあればロングヘアーだった時期もあり、近年はパンク的なスパイキーヘアーとなったが初期から一貫して暗黒舞踊のような白塗りメイクを施し(Alice Cooperにインスパイアされたらしい)妖しくも強烈なカリスマ性を演出。身体能力も高く、切れ味鋭く打点の高いハイキックを軽々と披露したりブレイクダンス的な動きを見せる事もある。何のライヴ動画だったかは忘れたがバック宙を披露した事もある位だ。その所作はまさに言語を越えた肉体表現と呼ぶに相応しい。ラフでありつつタイト、それでいて文学的な世界観を持つMUSHA×KUSHAのステージングにおいて蟲役者は必須だと断言出来る。それ位強烈な存在だ。
また作詞や踊りだけが表現方法ではないようで、MUSHA×KUSHAとは別に『HIROSHI ASAKUSA』名義でアコギ弾き語りの個人プロジェクトを立ち上げたり近年は作詞のみならず作曲もしているようでMUSHA×KUSHAに曲を提供したりとマルチなスキルがあるのも梅原江史の強みだ。とは言いつつも2009年リリースの6thアルバム『一発やらせろ!』に何とも珍妙極まりないシークレットトラックを提供したりもしていたんだが…。
「メタルバンド」と呼ぶのは少々憚られるサウンドではあるが「ヘヴィミュージック」と呼ぶに十分な音を出しており、メタルに多様性や先進性を求められるようになった今だからこそ改めて評価されるべきバンドだ。もし雑誌ヘドバン編集者の目に留まり何らかの手違いでMIXED HELLなんかに出演した日にはポスト人間椅子のポジションに付けるんじゃないかと思えるポテンシャルの高さがあるのは間違いない。実際パンク路線アイドルグループ『ケミカル⇄リアクション』がMUSHA×KUSHAカヴァーEPをリリースしていたりとアイドル経由でヘドバン領域への接続も容易だと思われるが…!
そんな独特過ぎる世界観を持った楽曲の数々からは俺も影響を受けており、蟲役者の存在からは「音楽に固定観念なんざ不要!」「楽器を持たなくてもロックは出来る!」という事を大いに学ばせてもらった。リスナーとしてもEPである『反対側へ突き抜けろ!!』収録曲であり後にリメイクもされた『アヤカシ』はアコーディオンがメインを張りタンゴやポルカ、ロシア民謡等の要素も見せるフォーク/トラッド的ナンバーで初めて聴いた時は相当な衝撃を受け、メロが脳内にこびり付き頭の中で延々とリピートしたのを覚えている。歌詞もNirvanaやKurt Cobainの名を引用したパンク文学でありながら今で言うグルーミングを題材にしているとも解釈出来る内容で梅原江史の先見の明が鋭く光る。
さらに自分でギターを弾きチマチマと1曲ずつ配信していた頃にMUSHA×KUSHAのようなキーボードや歌謡メロ、プログレッシヴロック風の展開を設けた楽曲を作った事がある。もう手元には無いが我ながらリフがそれっぽくて良かったんでこのリフだけそのうちリメイクしたい気持ちがあるんだがどうなるかは未定だ。
最後にバンド20周年を記念した地元高知でのオフィシャルライヴ映像を紹介する。パワーメタルのようなドラマ性を持ったキラーチューン『バケクラベ』で幕を開けるMUSHA×KUSHAの圧倒的な世界観を喰らって欲しい。


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