【実験】「豊洲PIT」のVTuberイベントで、自治体と共にメロンを売った男の話 -VTuberと地域の取り組みの最適解を探して-
こんにちは、金井(KANAI)です。
今回は自己紹介をNoteの末尾にて記載してパッパと本題に行きます。
"豊洲PITでメロンを売る"、という大変貴重な体験をしてきたので、今後誰かが豊洲PITさんやZeppさんなどに、農家さんや自治体さんを連れだして特産物を売りたい、みたいなケースが出た時のために、レポを残しておきます🙇
※そもそも音楽ライブ自体が楽しかったのでそっちのレポもしたい気持ちはありますが、ファンの方々に敵わないので今回は控えます。コメント欄で求められたら適宜発散します🙏
はじめに(予備知識不要な方は飛ばしてください)
①今回のイベント「NANASHI FES 2025 JACKPOT」とは?
2025/8/22(金)に開催された、VTuberプロダクション「ななしいんく」さんの全体ライブでした。
最近デビューした新人VTuberさん3人を除き、22名出演がユニット・ソロ含め46曲を披露した、3時間半にわたる超でっかいライブイベントです。2年半ぶりの全体ライブということで、ファンの方々もめちゃくちゃ楽しみにしている印象でした。
② "ななしいんく"とは?
このNoteは知らない人も見るかもしれないので、個人の解釈モリモリで簡単に要素をまとめるのですが、にじさんじさん・ホロライブさんのような上場大手ほどはマス認知はされていないが、業界内だと確実な人気と明確なカラーのあるグループです。
VTuber界隈の複数事務所だけでなく、ストリーマー/麻雀/スト6の界隈などなど、今注目されているいろんな界隈とも一緒に盛り上がることが多いです。外交力も相当高めな方が所属しているのもあり、
あと推し活をしているファンの方の民度は(どことも比較はしていないが)めっちゃ高いと思います。現場の様子を2〜3個見た限りではありますが、ファンの方がトラブルを起こすイメージが湧かない程度には、すごく分別のつくファンの方が多い印象でした。結構10代後半〜20代前半の若い人も多く見受けられたのは、ちょっとびっくりしたけど最近の傾向なのかな?
とにかく今回のイベント規模(2000〜3000名キャパのイベント)を、ちゃんと埋めれてかつファン側問題なくイベント運営できる時点で超ちゃんとしてます。
③ "豊洲PIT" とは?
東京都江東区豊洲にあるクソデカライブハウスです。東日本大震災の復興支援の一環として2014年10月17日に開業し、2023年からはぴあさんが運営しています。なんとZeppTokyoの2709人を上回り、MAX3103人と都内最大級の収容人数を誇るスタンディングライブハウスです。
バンドやアイドルを負ったことがある人なら、名前くらいは知ってるかも。
④メロンを出すことになった "鉾田市" とは?
茨城県の太平洋沿いにある場所です。
北隣には"大洗町"という『ガールズ&パンツァー』という作品の聖地巡礼で一世風靡した、いわばIP×地方創生の先行事例となる場所があります。そのため、今回の取り組みをやるには少し腰が軽めの自治体であった可能性は高いと思います。
鉾田市はなんと "鉾田は日本でいちばん野菜をつくっているまち" です。
鉾田市は農林水産省が発表する市町村別の農業産出額「野菜部門」で全国第一位に輝いています。メロン、いちご、トマト、みず菜、かんしょ(さつまいも)、ごぼうなど鉾田市は全国でも指折りの生産地です。
なお、2023年度のメロンの産出額で市町村別全国1位を記録しています。要するに日本一のメロン生産自治体です。
⑤ななしいんく × 鉾田市 のバックグラウンド
今回「まちスパチャプロジェクト」という、VTuber × 自治体 × 地方創生(シティプロモーション/ふるさと納税など)を掛け合わせた、VTuberと地域の双方に新たな露出機会を創出していくプロジェクトです。ユーザーが楽しみながらVTuberと共に地域に触れ、”推せるまち”を見つけられるような取り組みを目指しています。
付き合いが始まったのは昨年の2月ごろ。配信を共に行ったことを皮切りに、ゴールデンウィークの現地イベント、地元業者とのオリジナル商品の開発など、昨年は"ふるさと納税"としての取り組みを中心に行わせていただきましたが、今回は"ななしいんくさんと共に、鉾田市の関係人口を増やしていこう!"ということで、認知獲得よりの施策もやることになりました。
関係人口創出、ってことは、まずはファンの人にちゃんと知ってもらわんと!ということで今回のイベントに出店することになりました。
ただ、自治体さんがいきなりVTuberのような"どエンターテイメント"のイベントに出展するのは、正直全然イメージがつかん!というか、双方にとって冷める結果になってしまったら大変だ!ということで、1から何をするのが最適かを考えてみることにしました。
【基本方針】
そもそも論、"エンターテイメント" と "自治体 / 地方" というのは、普通に考えてしまうとかなり対極の位置感にあると思っています。
エンターテイメントの世界では、お客さんがする体験の最大化が至上命題です。とにかく"お客さんが楽しくなるために何をしたらいいのか"を追求し、それを実現するために何をやるか、が重要になってきます。文脈やストーリー性をちゃんと作っていかないと、世界に入り込めません。
一方、自治体や地方の世界では、とにかく"分かりやすく社会性のある取り組みを、実例を踏まえた上でやる意味があるかどうか"がめちゃくちゃ重要になると感じています。
よく"古い考え"とか言われるのをSNSで見ることもありますが僕はあまりそう思ってなく、どんな事業者主導だろうが自治体主導だろうが関係なく "ちゃんといろんなセクターの人たちに、説明のつくものをやる必要がある"んだろうな、と感じています。
「面白くしよう!」と「ちゃんとどの角度でも説明のできるものをする」というのは、意味わからんくらい大変です。
エンタメ側の人たち(VTuber、VTuberファン、VTuber事務所など)には、限りなく楽しんでもらわなければいけない
自治体側の人たち(自治体、観光物産協会、農家さんなど)には、限りなくいい取り組みである説明がつくものにしなくてはいけない
以上を達成するために考えた今回の基本方針が以下の2つです。
①(エンタメ/VTuber側) 優先度:印象をポジティブに > 直接的なPR
"自治体PR" として出るのではなく、あくまで "イベントを盛り上げる一要因" として自治体を活躍させてあげられないか、を考えました。
これ、僕含めスタッフたちがコミケを現地で見たり、各自好きなVTuberのライブとかアーティストのイベント行く時に思うことなんですが、イベントのトンマナに自分たちを合わせることってめっちゃ大事だと思っています。郷に入っては郷に従え、といいますか。
こっちはフェスとしてエンタメ一色で楽しみに来ている中で「市のPRです〜!!!」っていうのは・・・なんというか、体験のノイズになってると思うんです。市のPRをちゃんとするくらいなら、イベントの邪魔をせず、一緒に盛り上げるつもりでやる方が、結果的にVTuberに関わる皆さんからの悪い印象はないだろう、と。クリエイター属性の高い場所でマーケティングを盛り込むときは、必須だと思いました。
皆さんがYouTube上で急に挟まる露骨な宣伝を嫌がるように、そういう体験をさせてはしてはいけないんです。なるべく文脈に合わせたものをできるか、どれだけ必要だし楽しめるものを提供できるか。間違ってもKENTYくらい唐突ではいけない。
僕らはどうやって、今回のフェスの価値をあげれるか、体験の価値をあげれるか、というのがすごく大事になると考えていました。
②(自治体側)「VTuberのライブイベントに出店」を、なんの役割として提示するか
普通にやってしまうと、自治体側は「豊洲PITでVTuberイベント・なないいんくのライブに出店します!」と言われても納得しないんですよ。
自治体さんがこれを持ち帰って、市議会さんや地方の事業者、住民とかに「これなんに労力とお金使うん?」って聞かれた時に、豊洲PIT/VTuber/ライブ/ななしいんくっていう「訳のわからん言葉パラダイス」をどう対処するか、っていうのは最初に考えておかないといけないわけです。
少しでも、自治体側が各方面に説明する時に「あ、それはいいことやってんな!」「確かに自治体の関係人口創出に繋がりそうだ!」ってならないといけない訳です。
あと、これをちゃんとやると「自治体の人が興味を持って、現地に来ていただけるのでは」と考えてました。先ほど「訳のわからん言葉パラダイス」と表現しましたが、Zoom会議や僕らが現地に何度も訪問するだけだと伝わらないものも多いので、来て欲しかったんですよね。なので、どうすればいいか考えました。
【コンセプト】
灼熱のライブ開場待ち時間における「熱中症対策」
豊洲PITの会場周辺および会場時間を確認した上で「めっちゃ日向で待機することになりそうだな」と考えたので、
イベント参加者2000人超えに対しての熱中症対策として
冷たいものor水分量の多いもの(鉾田市の名産)を提供しよう
をするのが、
エンタメ側の人たち(VTuber、VTuberファン、VTuber事務所など)には、限りなく楽しんでもらわなければいけない
自治体側の人たち(自治体、観光物産協会、農家さんなど)には、限りなくいい取り組みである説明がつくものにしなくてはいけない
の両方を満たせると考えました。これなら
会場の邪魔になってない
事務所の邪魔になってない
他のスポンサー企業さんの邪魔にもなってない
自治体とか企業ブースとか関係なく、ファンからすると嬉しい(可能性が高い)
自治体側が「人の集まるイベントで、うちの野菜や果物を熱中症対策として食べてもらって魅力を知ってもらおう!」って説明できる
感じになるので、多分いけそうだな〜となりました。
【準備でやったこと】
①自治体さんに頭を下げる
とにかく頭をさげます。やらせてくださいお願いします。
これをやるために鉾田市にそこそこな回数通いました。
あと、めっちゃ自治体のいろんな人に囲まれてプレゼンなどもしました。緊張しました。(流石に写真ないです)
②事務所さんに頭を下げる
とにかく頭を下げます。キッチンカーの予定なんざなかったのでなおさらです。会場さんと連絡を取ってるのは事務所さんです。追加の手間をかけさせることになるので、金を払えばいいという話ではありません。
あと、とにかくイベント盛り上げるためにこういう風にしたいです、という連絡を随時入れておりました。忙しかった中対応してくれた事務所さんには感謝しかありません。
③自治体さんにもう1回頭を下げる
キッチンカーの細かい調整で改めて頭を下げます。
ここで売り上げ予想とかするのが今回本当に難しかった。自治体さんは当然結果が読めないので「大丈夫そう?」って確認するわけですが・・・ひとまず安心してもらうための限りを尽くし、とにかく頭を下げながら説明します。(※ここの反省に関しては後述します)
あと、文脈を作るための写真を用意するために、自治体と観光物産協会さんにメロンやトマトの用意中の写真をお願いするなどしました。普段こういうお願いこないと思うので、本当にお手数おかけしました。
さらに、当日のライブ出演者に送れるものは送ろう、ということで、冷やし焼き芋だけタレントたちにもお送りさせていただきました。
④事務所さんにもう1回頭を下げる
こちらにもキッチンカーの細かい調整で改めて頭を下げます。
キッチンカー出店は僕らしかいないので、電源の位置の把握や車の配置、どこからどこまで使えるかを確認します。当然先方からすると僕らの存在がイレギュラーなので、とにかく頭を下げました。ごめんなさい会場への確認事項を増やしてしまって。
⑤キッチンカー周辺の準備を諸々ちゃんとやる
無骨な白いキッチンカーがただ鎮座されてるだけだと、"イベント盛り上げに来てるぞ!!"という気概に欠けるので、とにかく分かりやすくするための装飾関連を一通り準備しました。
当日のイベントハッシュタグで、みんながタレントさんへの報告目的でも良いから呟きやすいように、撮りやすい場所も用意しました。
途中、画質が悪く印刷しかけるトラブルがありましたが、なんとか間に合いました・・・よかった・・・。
⑥ロケハン
当然、現地にも足を運んでおきます。自分たちのブース出店がどういう状況でやるのかを確認しておかないと、イメージがつかないので・・・。
当然収穫はあり、思ったより会場入り口より近い場所、導線に干渉しそうな場所にキッチンカーが置かれそうでした。なので、待機列ができた時の対策や回転率を上げるためのスタッフ対応策は、このタイミングで練り直しています。
待機列の位置を変更し、元々レジと受け渡し口が逆にするなど行いましたね。
⑦当日めっちゃ早く行ってセッティング
何が起こるか本当にわからなかったので、とにかく会場には迷惑にならない程度の可能な限り早めの時間にお伺いして準備しました。キッチンカーのレンタルから始まり、セッティング、鉾田市さんを向かい入れての品と冷蔵庫の準備、待機列の想定含め、開場1時間半前には準備終わってたと思います。
⑧現場オペレーションの確認
開場15分前に再度集まり、シフト及び配置、オペレーションの確認を行いました。とにかく、待機列で長いこと待たさないように、どう流せばスムーズかはスタッフだけでなく鉾田市の皆さん(自治体さん・観光物産協会さん)もめちゃくちゃ真剣にやってくれました。
あと最後に、僕らはイベントを楽しみにしている方々が、もっと楽しめるようにする仕事だと決めていたので、「対応だけは明るく、丁寧に!」と最後すり合わせを行ったのを覚えています。
【豊洲PITでメロンを売った結果】
総括
想定していたよりもめちゃくちゃ反響が大きかったです!!!
14:00開場して、おそらくこちらが用意したメロン🍈・トマト🍅・冷やし焼き芋❄️🍠が15:45くらいになくなったのかな・・・?おおよそ1時間40〜50分くらいの短い出店となりました。
良かったこと
ちゃんとファンの方々が喜んでいただいたこと
タレントさんたちもちゃんと美味しくいただけたこと
ちゃんと用意した分が売り切れたこと
その光景を自治体の方々にちゃんと見せれたこと
本当にこれが1番良かったですね。ファンの方が喜んでいたのを見て、自治体さんがすごく喜んでいたのが印象です。当日僕もお話しした方が何人かいますが、ちゃんと今回の品物がいいものだったので、基本的に良かったと思っています。
(あとでポストいくつか見繕ってここに貼らせてもらうかもです🙏)
改善したいこと
想定よりも売り切れるのが早く、もらえる人が少なかったこと
これは・・・本当に・・・。
先ほど軽く触れましたが、自治体さんは「周りの方々へ説明できること」が前提になるので、前例のないものに対してのハードルが高い訳です。
言い換えて出してもらうようになったことはいいんですが、「いくつ売れるのか」の根拠を、(VTuberライブイベントでメロンを売る前例は全くないものの)前例踏まえてこちらが明確に提示出来なかったのがこちらの敗因です。
いうなればチキりました。本当にななしいんくファンの方には本当に申し訳ないです。次回があるときは絶対たくさん用意します。
【さいごに】
今回、以後やる人のために色々まとめさせてもらいました。
ただ、まだこれは序章です。
VTuberと地域関係人口創出をどう取り組んでいくのか
VTuberと地域の取り組みで、面白い!と思えるものをどう作っていくか
これからチャレンジすることはたくさんあるので、ななしいんく関連の方々はお付き合いいただければ大変嬉しいです。鉾田市の現地の方も、また何かをやる際は現地にお伺いしてご挨拶もちゃんとさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
全員にとっていい体験を作れるように頑張ります!!!
P.S.
最初にかっ飛ばした自己紹介だけ一応書いておきます。
VTuber(バーチャルYouTuber)というエンタメ業界にて、とあるベンチャー企業で働く者です。
2018年初頭から3年ほどVTuber事務所の運営に関わり、コンテンツの番組企画やクライアントとの企業案件のディレクターや、オーディション担当など多岐に渡りお仕事をさせていただいておりました。
いまは自分で会社をやっていて、VTuberに関わる新規事業立案・企画・マーケティングなど、複数のVTuber関連プロジェクトを並行して進めているところです。(例:VTuber×飲食系プロジェクト、VTuber×地方創生プロジェクト、VTuberを知らない人でも詳しくなれるメディア運営など)



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