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続く学知の植民地主義 旧帝大による琉球人遺骨盗掘問題〈5〉
私は東京大学情報公開室に対して「琉球人(沖縄人)の人骨標本番号が記された東大法人文書の全て」の開示を求め、今月4日付の「不開示決定通知書」を受け取った。次のような理由で不開示とされた。「請求にかかる法人文書は保有しておらず不存在。(法第2条第2項第3号により、歴史的若(も)しくは文化的な資料または学術研究用の資料として特別な管理がされているものは、法人文書に該当しない)」。
盗掘された遺骨であっても、研究者が「学術研究用の資料として特別な管理」下におけばその情報を公開しなくても済むということになる。東大の特権意識を示す奢(おご)りの不開示理由である。
私は2017年に京大に対し同様な開示請求を行い、「人骨標本台帳」の一部が開示された。京大は「特別な管理下」にあっても法人文書として開示したが、東大は全く情報を開示しない決定を下したのである。近年、東大はハワイや豪州の先住民族遺骨、アイヌ民族の遺骨を返還し、謝罪もしているが、琉球人に対しては遺骨情報さえ開示しようとしない。このような対応はダブルスタンダードであり、琉球人差別である。
私は、海部陽介・東大総合研究博物館館長に対して鳥居龍蔵や笹森儀助が盗掘した琉球人遺骨に関する情報提供と、本件に関する「対話」を求めた。「調査には時間がかかる」との回答を得たが、その後、返信を得ていない。今後とも対話を求めたい。
京大に対する遺骨返還において故・照屋寛徳・衆議院議員が国政調査権を発動し、京大総合博物館が琉球人遺骨を保管していることを認めた。2023年9月の大阪高裁の判決では、琉球民族が先住民族であること、日本帝国による琉球の植民地支配が事実認定された。そして今年5月、返還を求めた遺骨が今帰仁村に移管された。
今回は、上村英明・衆議院議員に国政調査権の発動を依頼し、了解してもらった。1996年に私が琉球先住民族として初めて国連人権小委員会先住民作業部会で報告した際に、上村氏は市民外交センターの代表として共に参加した。
先月25日、琉球人遺骨返還を求める会/関東、東大遺骨返還プロジェクトの方々と東大に行き、「学知の植民地主義」の現場を視察した。今後、ニライ・カナイぬ会、琉球民族遺骨返還を求める会/関西とも連携して、東大に対する遺骨返還運動を拡げていく。東大には盗掘された遺骨返還とともに、港川人1号、2号の返還、学術人類館事件に対する東大としての謝罪等、琉球人差別の歴史的清算も視野に入れて行う。
今月23日にシンポ「学問(しメー)知っちん、道理(むのー)ぉー知らん~遺骨問題と研究者・行政・メディアの植民地同化主義」を開催する。現在も続く「学知の植民地主義」について論じ、来場者と対話したい。
(敬称略)
(松島泰勝、龍谷大学教授)
(おわり)
研究目的で持ち出された琉球人遺骨を東京大学も保管しているとして「ニライ・カナイぬ会」などが返還を求めている。京都大、台湾大は保管していた遺骨を今年5月までに沖縄側に移管した。背景に琉球遺骨返還請求訴訟で「遺骨はふるさとに返すべきだ」と付言した2023年の大阪高裁判決がある。遺骨返還を巡る国内外の状況について、松島泰勝龍谷大教授に寄稿してもらった。
1963年石垣島生まれ。龍谷大学経済学部教授、ニライ・カナイぬ会共同代表。博士(経済学)。専門は島嶼独立論、琉球先住民族論。著書は『学知の帝国主義』『琉球 奪われた骨』『琉球独立への道』『琉球独立宣言』など。
シンポジウム「学問知っちん、道理ぉー知らん~遺骨問題と研究者・行政・メディアの植民地同化主義」は23日午後2時から、那覇市職員厚生会多目的ホールで。登壇者は「ニライ・カナイぬ会」の亀谷正子、伊佐眞一、仲村涼子、松島泰勝の4氏のほか、ハワイ大学大学院生の與儀幸太郎氏、東大遺骨返還プロジェクトのさいとう・まの氏。参加費500円。連絡先はニライ・カナイぬ会の與那嶺さん、電話090(1854)5258。
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