トランプ氏、スミソニアン博物館への攻撃を激化 「奴隷制のひどさ」を強調しすぎている
(CNN) トランプ米大統領は19日、自身のSNSトゥルース・ソーシャルで、弁護士に対し博物館の調査を指示したと述べた。トランプ氏は自身の政治方針に反する題材を文化施設から排除する取り組みを激化させ、博物館が「奴隷制のひどさ」など、米国の歴史の負の側面を強調しすぎていると主張している。
「スミソニアンは制御不能だ。そこで議論されるのは、我が国や奴隷制のひどさ、虐げられた人々の無力さばかりだ。成功や輝き、未来については何も語られていない」(トランプ氏)
この発言の数日前には、ホワイトハウスがスミソニアン協会に対する前例のない大規模な調査を発表していた。同協会は国内の主要な公立博物館を運営している。トランプ政権高官はスミソニアン協会のロニー・バンチ事務局長に宛てた12日の書簡の中で、調査の目的について「米国の例外主義をたたえ、分断的あるいは党派の偏る表現を排除し、我々が共有する文化機関への信頼を回復させるという大統領の指示との整合性を確保する」ことと説明した。
書簡によると、調査対象とするのは一般向けの展示内容や、展示品の選定にかかわる収集・選別の手順、現在と今後の展示計画、収蔵品や収集品の利用、解説基準に関するガイドラインなど。
スミソニアン協会の展示は何年もかけて計画され、公開される前に学者や学芸員のチームによる厳格な評価を受ける。博物館倫理の専門家であるジャネット・マースティン氏は、トランプ政権が提示した要求は「スミソニアンを失敗者に仕立て上げる」と語る。
ホワイトハウスはスミソニアン協会に対し、内部メールやメモから、現在展示されているすべてのポスター、展示物の説明のデジタルコピーまで、広範囲にわたる資料の提供を求めている。マースティン氏は「これほど短期間のうちに、このような包括的な資料を提供できる人などいない。これはまったく不可能な作業だ」と指摘した。
スミソニアン協会はトランプ氏の最近の発言についてコメントを控えた。トランプ氏が説明した弁護士による調査プロセスについて尋ねられたホワイトハウス当局者は、「大統領はスミソニアン博物館から『Woke(意識が高い人たち)』を追い出し、責任を負わせるためにあらゆる選択肢と手段を模索する」と述べた。
トランプ政権による連邦政府支援と自身の文化政策の整合性を図る動きは、首都ワシントンにとどまらない。博物館・図書館サービス機構なども今年に入り、数千万ドル規模の連邦助成金を取り消し、全米の小規模な博物館や図書館事業、芸術プログラムなどに影響を与えている。
トランプ氏によるスミソニアン協会の調査と変革の動きは、激しい議論を巻き起こしている。CNNの番組でも、ポッドキャスト「キーピング・イット・リアル」の司会者ジリアン・マイケルズ氏がトランプ氏について「彼は奴隷制を隠蔽(いんぺい)しているわけではない」と擁護した。
マイケルズ氏は「帝国主義や人種差別、奴隷制を特定の人種に結びつけることはできないにもかかわらず、ほぼ全ての展示がそうしている」とし、どれも全部白人が悪いと決めつけているが、それは全く真実ではないと主張している。