日航123便墜落事故で機長が「被弾したぞ」と発言? 記録も音声も根拠もなし【ファクトチェック】
日航機墜落事故とは
1985年8月12日、羽田発大阪行きの日本航空123便が、群馬県上野村の「御巣鷹の尾根」と呼ばれる山中に墜落し520人が犠牲となった。単独の航空機事故としては史上最悪の事故となり、2025年で発生から40年になった(NHK.”【WEB特集】御巣鷹 520人に生ける花 日航機墜落事故40年”)。 国の航空事故調査委員会(現在の運輸安全委員会)が事故原因を調べ、1987年6月19日に航空事故調査報告書を公開した。 報告書は、事故の原因について、機体後部の圧力隔壁の不適切な修理によって隔壁が壊れ、流出した与圧空気によって尾部胴体・垂直尾翼・操縦系統の損壊が連鎖的に発生した結果、操縦が難しくなったと推定している(運輸安全委員会.”日本航空123便の御巣鷹山墜落事故に係る航空事故調査報告書についての解説”)。 報告書の309ページから343ページには、事故後に回収されたCVR(コックピットボイスレコーダー)の記録が秒単位で文字起こしされている(運輸安全委員会.”事故調査報告書(昭和62年6月19日公表)別添6”p.309-p.343)。 機長や副操縦士の会話が記録されているが、「Japan air 123. こちら Phantom X。現在貴機後方を追尾中」「あっ!被弾したぞ!本当に撃ちやがった!」といった会話は書かれていない。
赤字部分の根拠は示されていない
そもそも、拡散した動画にある赤い文字のテロップ部分は、音声が途切れている。赤字部分の内容をどうやって確認したのか根拠は示されていない。
判定
日航機墜落事故のボイスレコーダーは、国の航空事故調査委員会が1987年から現在まで公開しているが、拡散した動画や投稿に書かれた発言はない。拡散した動画にもそのような音声は記録されておらず、根拠を示さずに赤字テロップが追加されているだけだ。よって、根拠不明と判定した。
あとがき
日航123便の事故に関しては、これまでにも撃墜説などの根拠なき陰謀論が存在しました。事故から40年となる2025年の節目には、これまで以上に多数の誤情報が拡散しています。 「闇の真相」「マスゴミが隠す事実」などと派手な見出しの投稿を見て、「知りませんでした」「こんな重要なことが隠されていたとは」と反応する人たちもいます。 ネット上の情報を見るときは「発信源」「根拠」「関連情報」を必ず確認するようにしましょう。「隠されていた」のではなく、そもそもそんな事実が存在しなかったのではないか、という可能性を考慮することが重要です。