Vengeance For Pain   作:てんぞー

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オルレアンTA - 1

「ワイバーンを倒せぇ―――!」

 

 吠える様に立香の声が響き渡った。ただ単純に、この光景は許しておけない。それだけだったのだろう。直視する事すら苦痛と言える光景の中、涙を堪えながら立香は叫んでいた。その選択、覚悟を―――俺たちは尊重する。

 

 迷うことなく竜骨の矢をクロスボウに装填した。魔術的にオートロードすることによって引き金を引いて矢を放った瞬間、矢筒の中に収められた竜骨の矢が装填される。クロスボウの機構を改造、マシンガンと同じような連射力に優れた機構に知識から改造し、整形する。それによって引き金を引きっぱなしにしても矢を放ち続けるクロスボウのマシンガンが完成する。機械は許されないが、クロスボウというジャンルである為、時代背景的に武装が許される。

 

 故に矢弾が豪雨の如く降り注ぐ。エサだと思って現れたワイバーンに竜骨の矢が突き刺さり、そしてそれと同時に同属相殺の概念が突き刺さる。それによって矢と共に砕け散るようにワイバーンの姿が砕け散る。四散しながら粉々に砕け散り、相殺の役割を果たす。そこには己だけではなく、ほかの英霊たちの動きもあった。

 

 全員が立香の声に応え、そして動いていた。大量のアンデッドとワイバーンが蹂躙するというラ・シャリテの街を、サーヴァント達が縦横無尽に駆け抜けて行く。それぞれが歴史に名を残す歴戦の猛者―――ワイバーンなんて雑魚を相手に傷を一つでも負う事はない。それは英霊達にとっては慣れ切った作業であり、()()()()()()()()()()()()でしかない。

 

 だがこれはおそらく、立香とマシュにとっては初めて経験する凶事だったのだろう。ゆえに足が震えているし、声もどこか強張っているのが解る。彼は素人であり、まだ一般人の範疇に入る―――だけども、それでも戦えと命令を出したのだ。

 

 それに応えるのがサーヴァントだ。見える限り存在するワイバーンは矢と槍の連撃により、いっさい抵抗すら許されずに片っ端からどんどん蹂躙されてゆく。その数は凡そ60を超える。だがたったの60である―――どれだけ数を重ねようとも、所詮はワイバーンであり、アンデッドである。潰した端からワイバーンの死骸がアンデッドとなって甦る。だがそれすらも一気に蹂躙し、

 

 気が付けば、ラ・シャリテで動く敵の姿はすべて殲滅されていた。

 

 残されたのはワイバーンの死骸、そしていまだに燃え続けるラ・シャリテの姿だった。燃え盛る町だった存在の前で、立香が無言のまま立ち尽くす。

 

「これが―――これが……人類史の焼却……?」

 

『……の、一部分だね。人類史が焼却されるということは存在するすべての人間が死に絶えるって事だ。その被害はこの程度じゃないよ。もっと多くの人々が―――死ぬ』

 

 ロマニからの通信に立香が拳を握った。

 

「マスター……」

 

「いや、うん。そうだよね。戦争だし人を殺すって事はそうなんだよね……」

 

 誰もいなくなったラ・シャリテを見ながら立香がそう呟いていた。魔術で無事だった矢を引き寄せて回収しながら、数歩離れた場所から立香とマシュの姿を眺めていた。立香はなんというかー魔術師ではある筈なのに、それにしては妙に()()()とでも言うべきなのだろう。

 

『魔術師が本来抱く筈の病的な擦れている感じがないわよね、あの子。魔術師なのに真っ当なのよ。だからこそ英霊に好かれる、と言うのかしら。そこそこ面白い子よね』

 

 妖精からも驚きのある高評価だった。だが正直、立香が残された最後のマスターでよかったと思う自分もいる。立香はまず間違いなく何かを持っている。それが彼を生かしたのだ。そしてそれがきっと、知識や戦闘力や経験よりも、何よりも必要とされるものだと、自分の中にある本能が囁きかけている気がする。

 

 戦闘が終了し、一息をついたところでロマニからの通信が入る。

 

『―――サーヴァント反応……五騎! これは、オルレアンの方から来ている、完全に捕捉されているぞ!』

 

 ロマニの言葉に緊張感が走り、ジャンヌが前に出た。

 

「おそらくはあちら側のジャンヌのルーラーによる権限でしょう。サーヴァントの大まかな気配か居場所を探知したのでしょう。この場合、この戦いの聖杯に導かれて登場したのは私でしょうからおそらくは私の気配。だから―――」

 

「―――となると逃げられないね」

 

 ジャンヌの言葉に立香が割り込んだ。しかし、とジャンヌは言葉を続けそうになったのを、立香が片手で制した。

 

「俺たちカルデアはこの人類史を正しに来たんだ。逃げ回る為じゃない。こういう光景を生み出さない為に戦うんだ。だからここで逃げちゃだめだ―――それはカルデアの理念から逃げるものなんだ。それに……たぶん、俺たちなら勝てる。そうでしょう、皆?」

 

 おう、と一番最初にクー・フーリンが答えた。

 

「気配すら隠さずにこっちへ飛んできてるんだろ? っつーことは自信過剰なのか、或いは()()()()()()()()()()()()()って事だ。なんでもアリな聖杯戦争で気配見せながら近づくのは必殺の手段がある時だけだ」

 

「そして我々には必殺の手段、そして必殺を防げる手段が二つも存在する―――そうであろう?」

 

 自信満々なエミヤの言葉にマシュがはい、と頷きながら答える。

 

「マスターへの……先輩への攻撃は一つたりとも通しません。ジャンヌさんの宝具がそこに加わればどんな攻撃であろうと絶対に守り通せます。……ドクター」

 

『カルデアとしてはなるべくマスターの安全性を確保したいから戦わせたくはないんだよねぇ。できたら各個撃破が理想なんだけど、相手が聖杯を持っていると仮定して、追加で英霊を召還してくるかもしれないと考えたらやっぱり一網打尽にできるチャンスを逃せないんだよね……ここで作戦が何もない、って言うなら即座に撤退させるけど―――』

 

 ロマニの通信に、立香は大丈夫、とサムズアップと笑みを浮かべた。

 

「―――カルデアで必死に考えた現在の必殺コンボを叩き込む!!」

 

 

 

 

 数分後、ワイバーンのいなくなった空に新たに出現する姿が見えた。数匹のワイバーンの背から飛び降りるように大地に着地し、威圧感を与えながら出現するのは霊基をその身に宿した英霊の存在だった。白髪に濃い血の気配を背負った男。同じく狂ったような血の気配を纏う拷問具を握った女。清らかな気配を持った乙女。性別不詳のフランス人の剣士。

 

 そして―――黒い、黒く染まったジャンヌ・ダルク。

 

「まぁ、まぁまぁまぁ、ねぇ、うそでしょ? 冗談よね? あっはっは、これが夢じゃなければなんなのかしら―――まさか私がいるなんてね」

 

 ロマニが忠告したように英霊が五体、こちらを睨むように立っていた。立香が後ろに、マシュが庇うようにその前に立ち、その横に自分とジャンヌが並んで立つ。既に武器をクロスボウへと変形させ、竜骨の矢を番えて魔力を高めている。それに警戒するようにジャンヌ・ダルク・オルタと呼称すべき存在が引き連れているサーヴァント達が見ている。

 

「貴女は……」

 

「見ての通り私、よ。まぁ、それを認めるかどうかは全く別の話なんですけどね。へぇ、ふぅん……っは、なるほど。こうやって直に会って理解しました。貴女から感じられることは何もない。まるで絞りかす。私の霊基の余りで現界しただけのゴミね」

 

 ジャンヌの言葉を遮る様にジャンヌ・オルタが言葉を放った。威圧するように、見下すように、その存在を否定するような言葉だった。その光景を妖精がくすくすと笑いながら()()()()いた。どうやら妖精はジャンヌ・オルタという存在に関して、何かを見抜いたらしい。それが己には理解できなかった。が、しかし、

 

「駄目ね。まるで魅力を感じないわ。ここで鼠共々殺してしまいましょう。出来るわね? バーサーク・ランサー、バーサーク・アサシン」

 

「無論。それで何方が何方をいただくとする?」

 

「男はいらないけどあの小娘共の血は欲しいわね」

 

 ランサーとおそらくはアサシンである女が前へと踏み出した。その瞬間、

 

「Unlimited Blade Works」

 

「な―――」

 

 ラ・シャリテの風景が上書きされた。燃え上がる町の姿は一瞬で無限に広がる荒野、空に舞う歯車、そして炎と剣が突き刺さる大地へと変貌した。隔離された空間、固有結界。それが一瞬でラ・シャリテという町からサーヴァント達を隔離した。また綺麗に分断するように、大量の剣がジャンヌとその他のサーヴァントを分けるように降り注いだ。それに反応を見せたランサーとアサシンが攻撃の姿を見せ、残った他の三騎も動き出そうとする。

 

「―――我が神は(リュミノジテ)ここにありて(エテルネッル)

 

「仮想宝具疑似展開します―――人理の礎(ロード・カルデアス)……!」

 

「貴様ら……!」

 

 即座に反応し、迎撃に入ろうとしたサーヴァント達の攻撃を無力化するように一斉にマシュとジャンヌの宝具が発動する。城壁そのものを展開するような圧倒的堅牢さが一瞬で出現し、ランサーが生み出した杭とアサシンが生み出した魔弾を肉体へと届かせることなく、一瞬で消し去りながら雨のごとく降り注ぐ剣にその姿を飲み込ませて行く。そこで動きを止めることもなく、即座にシェイプシフターを変形させる。

 

 質量を最大領域まで魔力を叩き込む事で巨大化させる―――そうやって()()()()()()()()()()()()()()()()()。通常の筋力では絶対に持ち上げられないそれを空へと投げ上げるような形で変形させて生み出し、剣の雨によって牽制され、動きを固めている五体の中央へと投げ込むように振り落す。

 

「―――磨り潰せ、巨人の拳(ギガアトラス)

 

 純粋暴力の大質量が振り下ろされる。割り込むように後ろから聖なる気配をまとった乙女が前に出る―――彼女の祈りと共に巨大な亀竜が出現し、 巨人の拳に正面からぶつかる。衝突した瞬間、質量に負けて亀竜が僅かに押し込まれてゆくが、その瞬間を狙って固まっていたサーヴァントたちは剣雨を喰らいながらも散開する様に飛び出す。

 

 ―――()()()()()()()()に。

 

 逃れるように飛び出たジャンヌ・ダルクを追う様に、その背後に朱槍を握ったクー・フーリンが出現した。それを導く立香の手からは()()()()()()()()()()()()()

 

「その心臓、貰い受ける」

 

「この―――」

 

「―――刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)

 

 呪いの朱槍を両手で握ったクー・フーリンが、寸分の狂いもなくジャンヌ・ダルク・オルタの心臓を、その背後から貫いていた。完全に心臓を穿たれたジャンヌ・オルタは信じられないようなものを見るような表情を浮かべており、その瞬間、彼女が率いていたサーヴァント達の動きが停止した。

 

 ―――同時に、 巨人の拳を抑え込んでいた亀竜が不自然にその姿を停止させた。

 

 その瞬間を狙ってエーテライトをワイヤーへと変形、結界を構築するようにワイヤートラップの檻を作る。無論、サーヴァントが本気を出せば一瞬で突破できる程度の気休めではあるが、それによって相手が一歩、それで動きを乱すという事実が何よりも大事になる。

 

「―――仕上げだっ(令呪:宝具即時発動)!」

 

 立香の指示とともに令呪が消費された。3画全ての令呪が消費されたことによって立香は翌日、令呪の回復まではサーヴァントに対する強制力や、ブースト能力を失った。だがそれによってすべての状況が完成された。

 

「―――セーフティ一号から七号まで解除。八号、九号の制限を解除―――!」

 

 気配遮断によってこの瞬間まで完全に息を潜めていた謎のヒロインZがすべての敵を一直線の射線に捉えた。赤、そして白に輝く二槍は螺旋を描きながらも徐々に、徐々に一本へと融合し、最果ての輝きを剣の丘に輝かせていた。

 

「貴様に秩序も混沌も束ねた真の終焉をくれてやろう―――感じろ、これが星の鼓動だ」

 

 一本へと融合させられた星の輝きを束ねたような槍を謎のヒロインZが片手で持ち上げる。その一振りで大地が砕け、固有結界に亀裂が走った。クー・フーリンが離脱した直後、爆裂する閃光が心臓を貫かれたジャンヌ・オルタや他の敵サーヴァントを全て飲み込んだ。

 

 光の洪水の中、片手で聖槍を握った謎のヒロインZが光を割いて飛び上がった。

 

「皆には内緒ダヨ?」

 

 神秘を逆流させながら凝固した光を限界まで輝かせ、背中を一気に反らし、限界まで胸を張りながら腕を引き絞った。

 

 そして―――そこから光を超えるように槍を投擲した。

 

「―――無銘星輝槍(ひみつみにあど)! あと全てのアルトリア顔ぶっ飛ばす!」

 

 あらゆる理不尽を体現しながら最果ての聖槍がその射線上に存在するありとあらゆる存在を蒸発させ、

 

 ―――固有結界・無限の剣製を砕いて貫いた。




 1.エミヤに令呪を使ってUBW即時展開可能状態にして待機させる
 2.クー・フーリンに令呪を使って気配を遮断させる
 3.相手が出てきたら囮を使って注意を引きつける
 4.意識がこちらへ集中したらUBWで隔離して逃げ道を封鎖する
 5.ジャンヌマシュ宝具で防御を固める
 6.散開した所を狙って奇襲ボルクで即死させる
 7.思考停止した瞬間を令呪でロンゴる

 冬木即死コンボである。ジャルタ討伐はこれが楽だと思います! HPが600万もないのになぜ前線に来たんだお前……。
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