自衛隊の「南西シフト」の前線地域、沖縄県の宮古島で、反基地運動に携わる人々が憤っている。陸上自衛隊宮古島駐屯地の司令から恫喝(どうかつ)を受けたとして猛反発している。かねて反基地の人々に対する過剰警備などが批判されてきたが、今回は軍事的な実力組織である自衛隊、それも駐屯地のトップが直接、威圧する形に。異様な事態をどう捉えるべきか。(森本智之、中根政人)
◆2019年に「南西シフト」で駐屯地が
「沖縄では戦後80年のこの夏、住民が旧日本軍に壕(ごう)を追い出されたり、スパイ容疑をかけられて殺害されたり、どんなひどいことがあったか、連日報道している。自衛隊による恫喝がどれほど県民を悲しませるか、司令は分からないのか」
市民団体「ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会」共同代表で、今回の現場を動画で撮影した上里清美さん(69)は訴えた。
宮古島には「南西シフト」によって2019年に駐屯地ができ、警備隊やミサイル部隊が配備された。
◆観光施設の駐車場にいたところ
今月5~6日には新人隊員による訓練を公道で実施。物資が輸送できない状況を想定して長距離を歩く内容で、3年連続の訓練に対し連絡会は抗議してきた。「防災訓練と称すが、軍事訓練と受け止めている。公道で行われることで宮古島で迷彩服が見慣れたものになることを恐れている。訓練が歯止めなく拡大するのではないか」(上里さん)
問題が起きたのは6日早朝だった。
上里さんが同じく共同代表の清水早子さん(76)と2人で訓練のゴールの様子を確認しようと、宮古島市内の観光施設「いらぶ大橋海の駅」の駐車場にいたところ、訓練中の隊員らが休憩のためやって来た。上里さんが撮影した動画によると、清水さんが7~8メートル先に座り込んでいる新人隊員らにこう声をかけた。
「おはようございます。素晴らしい御来光ですね。でも戦闘服姿の向こうにこんなきれいな朝日を見るのは、とても残念です」
◆詰問調で「許可取ってこい」
拡声器を使っているが、語りかけるような口調だ。
「戦闘服姿でない、私服で皆さんと一緒に…」と言葉を継ごうとすると、駐屯地トップで宮古警備隊長の比嘉隼人司令(1等陸佐)が立ちはだかった。
「許可を取っているんですか。われわれは許可取ってるんですよ」
清水さんが「ここは市民の…」と話しても、詰問調で言い募った。
「違う」「市民のものじゃない」「許可やっているのかどうか、そこを確認してるんだよ」「許可取れ早く、取ってこい」
◆「謝っているようで謝っていない」
駐車場を管理する県宮古土木事務所によると、駐屯地は使用許可を申請していなかった。工作物の設置など、通行を妨げるような場合でなければ許可は不要だが、今後は訓練などで使用する場合は事前に一報するよう駐屯地側に連絡した。
司令は19日、連絡会の求めに応じて公開の場で面会し、こう述べた。
「拡声器を用いていたので周辺施設に迷惑がかかると考え、また新隊員の安全な訓練実施を確保するとの観点から拡声器を用いた活動をやめていただきたく緊急に発言した」「威圧的と捉えられたのなら本意ではなく、そのことについて申し訳ありませんでした」
共同代表の一人、仲里成繁さん(71)は取材に「謝っているようで謝っていない」と口にした。
◆動画を見ると大声で叫んでいるのは…
連絡会によると、周辺に民家はなかった。動画を見ると、大声で叫んでいるのは司令の方だった。
面会時に「駐車場の使用許可が不必要にもかかわらず、なぜ『許可を取れ』と言った」とただしても、司令は「上級部隊を含め組織として事実関係を確認中で答えられない」と述べた。
「こちら特報部」は22日、「上...
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