法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

TVアニメ『ダンダダン』のお囃子パロディが原作漫画より強化されて、YOSHIKIが不快感を表明したことが、なぜか蓮舫と同列にあつかわれていた

 SNSでモデル側が不快感を直接的に公表して、パロディ側もSNSでのみ謝罪と説明を公表したのが時代だな、と感じたり。
ダンダダン“お囃子”問題でアニメ公式が謝罪 「事前のご説明に思いが至らなかった」 - ITmedia NEWS

楽曲「Hunting Soul」は「製作チーム一同が尊敬してやまないYOSHIKI様とX JAPAN様のような熱量をアニメの中で表現すべく」製作したものだという。「しかしながら今回、YOSHIKI様及びX JAPAN様に対して、事前のご説明に思いが至らなかったことで、ご心配をおかけしてしまったことは本意ではなく、心からお詫び申し上げます」と謝罪した。

 今回の件については、すでにYOSHIKIさんとも話をしており、これを機に「未来に向けた創造的な取り組みを共に考えているところ」だという。

 事の発端は「ダンダダン」の第18話「家族になりました」。「邪視」という怪異に身体を乗っ取られた主人公の幼なじみを助けるために“お囃子”でお祓(はら)いをするというシーンで、既視感のあるビジュアル系ロックバンド「HAYASii」が登場し、ハードなお囃子を奏でた。

 外国のようなフェアユースの考えを適用せずとも、直接的な著作権違反にはならない事例だとは思うが、感情にもとづく不快感を表明する自由もあるといえばある。


 気になるのは、TVアニメ『銀魂』に蓮舫を思わせるキャラクターが登場したこととの比較が散見されること。はてなブックマークをあつめた謝罪記事でもid:AKIMOTO氏が先例として問いかけていた。
[B! パロディ] アニメ「ダンダダン」 劇中歌巡り謝罪「心からお詫び」権利関係については「建設的に協議」(スポニチアネックス) - Yahoo!ニュース

AKIMOTO 銀魂蓮舫氏パロディの時と事前許諾に関する意見がぶれてないよなみんな

 実在の著名人をパロディしたアニメは珍しいものではないが*1、『銀魂』のそれがよくもちだされるのは、映像ソフトなどではパロディ描写が黒塗りで消されたためだろう。
 しかし初期の報道に対するid:topiyama氏のはてなブックマークコメントのように、不快感を表明したYOSHIKIとそうではない蓮舫を同列にあつかう意見は妥当とは思えない。
[B! 著作権] アニメ「ダンダダン」の“お囃子“に著作権侵害の可能性? Yoshikiさん「先に関係者へ連絡した方がいいみたい」

topiyama 銀魂蓮舫パロディ回が配信もソフト化も出来ず欠番扱いになったけど、(これで欠番になったら)俺の中でYoshikiさんが蓮舫と同じリスト入り。/マーティーに指摘されて改めたようで良かった

 映像ソフトや配信が欠番ではなく黒塗りになった当時、ねとらぼが当事者のコメントを引いていたが、それを信じるかぎり上層部の萎縮という問題であった。
「銀魂」伝説のレンホウ回に再び注目が集まる 規制はDVD発売時のもの | ねとらぼ

 しかし、監督の高松信司さんは当時Twitter上で、放送中止はあくまでテレビ東京の自主判断によるものであると説明。また蓮舫さんの国会事務所も「抗議した事実はございません」(JCASTニュース)とコメントしています。

 政治家が揶揄をこめてパロディされるのは当然に表現の自由で、むしろ事前の連絡はさけるべきだと思うくらいだが、おこなっていない抗議をおこなっているとされたならば純然たるデマの被害者だろう。
 ちなみに『銀魂』は他にも『プリキュア』シリーズをパロディして関係者に激怒されたという風説が流されたが、実際は関係者にくりかえし否定されている。


デマです。

プリキュアの父・東映アニメーションの鷲尾プロデューサーは下記コメントを残しています。

“あそこまでやってもらえるのなら、パロディにされるほうは本望です。作品の認知度が低かったら誰もパロディをやってくれませんから、うれしいことです。”
―『プリキュア シンドローム!』p.320


銀魂プリキュアがオマージュされたの榎本が激おこしたという話がネット上ではまことしやかに残ってますが誤報です!銀魂に出てるー!プリキュアすごいねー!さすがだねー!と当時オリエちゃんと言ってましたよ。オリエちゃんの旦那さんはジャンプ作家ですし、私は銀魂にも出演しております😌

 どちらかといえば『銀魂』は、攻めた作品でありながら現場を守るどころか委縮した上層部の問題ではないだろうか。監督のコメントも表現に問題があると納得してとりさげたわけではないことがうかがえる。表現をとりさげた理由を説明しないこともいただけない。
 その意味では、リスペクトゆえのパロディでモデルが不快感をおぼえたなら謝罪はするとしても、即座に配信をとりさげるわけでもなく、協議をおこなっていることを説明している『ダンダダン』の製作委員会は比較的に良い対応をしていると思える。

*1:少し古い作品だが、『キン肉マン 奪われたチャンピオンベルト』のパロディキャラクター大挙ぶりは印象的ではあった。 『キン肉マン 奪われたチャンピオンベルト』 - 法華狼の日記