白兎が怪人になるのは間違っているだろうか


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作:白米は正義
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白兎の怒号


「何を言っているんですか・・・?」

 

僕は二人の言っていることが理解できない、一体どういう事なんだ?

 

「言葉通りの意味だ、ベル。私達はこの千年続く『神々の時代』を終わらせるんだ」

 

「アルフィアの言っていることは本当だ。俺達が犯した原罪(つみ)を清算するためにこの凋落した英雄の都市(オラリオ)を滅ぼす!!」

 

ザルドさんのその言葉でようやく理解出来た僕は大声で叫んだ。

 

「何を言っているんですか!?オラリオを滅ぼすなんてどうしてそんなことをする必要があるんですか!?」

 

その叫びに対してアルフィアお義母さんは言葉を返してくる。

 

我々(ゼウスとヘラ)では果たせなかった"三大冒険者依頼(クエスト)"最後の一体である"黒き終末"隻眼の黒竜討伐のためだ。そのために神々が降り立ち築いた『神時代』に幕を下ろし・・・"次代にして最後の英雄"を誕生させるために『古の時代』へと巻き戻す!!」

 

「たとえそれが千、万、億それ以上の命が散ることになるとしても成し遂げねばならん!!それがたとえ()()()()()()()()()()()()()()()()!!」

 

「!!」

 

二人の魂の叫びに対して僕はこう言った。

 

「いやだ」

 

「なんだ、何を言っているのか聞こえんぞ童」

 

「嫌だ」

 

「どうした、囁き程度の声では俺達には届かんぞ兎」

 

「嫌だ、そんなの絶対嫌だ!!せっかく家族と呼べる人達に出会えたのに!!その人達は僕に今生の別れを告げてくる!!認めない、そんなのは絶対に間違っている!!」

 

「ならばどうする!!」

 

 

「決まっている、貴方達を止める!!そして、"英雄"を求めるなら僕がなる!!いつか来る隻眼の黒竜も僕が喰らい尽くす!!」

 

「ならば止めてみせろ!!その身と命を賭してな!!」

 

「やってみせろ、クソガキがぁっ!!俺達ですら果たすことの出来なかった黒竜討伐(目的)を口にしたからには俺達を超えて見せろ!!お前の『弱者の咆哮』を聞かせて見せろぉ!!」

 

「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」」

 

空気を震えさせる程の猛り声と共に幾度も斬り結ばれる剣戟によって起こる轟音()と衝撃が都市を揺らし響き渡る。

 

「オッタルが戦っているのか・・・?」

 

「猛者・・・?」

 

誰もが現都市最強(オッタル)が戦っていると錯覚する。

 

それは小人族(パルゥム)の勇者から正義の眷族(アストレア・ファミリア)までもがそうだった。

 

戦いの()に反応し動き出す冒険者達は本来決して出会うことが出来なかった筈の者同士の派閥騒動(家族問題)を目にすることになるのだった。

 

 

大剣と長剣での剣戟では本来であれば長剣が先に限界を迎えているにも拘わらずベルの振るう長剣「ベーゼ・マーレボルジェ」はザルドの振るう大剣の剛撃を受け止め、その刃をもって斬り掛かっていく。

 

それは何故かというと「ベーゼ・マーレボルジェ」の制作者である闇派閥(イヴィルス)呪術師(ヘクサー)であるバルカ・ペルディクスの「神秘」のアビリティと剣

の素材に使われた最硬精製金属(オリハルコン)によって作り上げられた不壊属性(デュランダル)を持つ呪剣(カース・ウェポン)なのである。

 

福音(ゴスペル)

 

「かはっ!?」

 

超単文詠唱とは思えない威力の魔法(いちげき)を僕は躱すことが出来ずにまともに食らってしまう。

 

しかも、ザルドさんのことなどお構いなしに放ってくるからこそ躱し損ねてしまい魔法を喰らって地に伏してしまう。

 

「いくらLv.8とはいえ中身が『技と駆け引き』が未熟な冒険者では話にもならんし、取るに足らん童だ」

 

「あぁ、俺達二人相手でこの様では黒き終末を討つ所か俺達を止めることすら不可能だ。諦めて大人しく寝ていろ兎」

 

二人の言葉に僕は立ち上がりながらこう言った。

 

「絶対に嫌だ!!ここで諦めたら"英雄"に憧れていた僕を根底から否定することになる・・・。だけど、それ以上に家族を失いたくないんだ!!だから僕は何度だって立ち上がる、絶対に二度も家族を失うのは嫌なんだ!!どうしても時代を逆行、巻き戻すというのなら最初として()()()()()()()()()()()()()!!」

 

「「!?」」

 

そう、僕が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

ザルドさんと剣を交え、アルフィアお義母さんの魔法を受けてなお生きているのはそのおかげだ。

 

僕を通してザルドさんは父を、アルフィアお義母さんは実妹である母を重ねてしまっている。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「・・・・・・・・・そうか、そうだったな。お前は仮にもあの狒々爺の好々爺に育てられていたのだったな。私もヤキが回っていたようだ、せっかく逢えた甥に己が甘さを指摘されるとはな・・・、さすがメーテリアの子だ」

 

「俺としてはあのバカの子供とはいえ見透かされてしまったことに衝撃を隠せないな・・・。だが・・・、子供とはいえ男があそこまで吼えて見せたんだ、ここで手を抜くというのは奴への侮辱に他ならんな」

 

そう言いながらザルドさんは大剣を構え、アルフィアお義母さんも臨戦態勢に入っている。

 

僕も魔法を使うために詠唱(うた)い始める。

 

『幾ら喰らえどもこの()から溢れ出る飢餓(うえ)は満たされぬ』

 

福音(ゴスペル)

 

「させん!!」

 

アルフィアお義母さんが魔法で、ザルドさんが大剣の一撃にて詠唱の妨害をしてくるけど僕は止まらない。

 

美食()でも悪食()でも満たされぬ』『既にこの身は穢され侵食(おか)され禊も浄化も救恤(すく)いすら皆無()く罪過の烙印を刻み込む』

 

Lv.7の二人の猛攻を受けながらも血反吐を吐きながらも詠唱(うた)い続ける。

 

「ぐはっ!!『・・・飢餓(うえ)象徴(しょうこ)たる涎は大地(りく)侵食(おか)し、大海(うみ)を穢し、大空(そら)を閉ざす』『食物を喰らい、怪物を喰らい、精霊を喰らい、他者を喰らい、恩恵を喰らい、呪詛(のろい)を喰らい、病魔(やまい)を喰らい、意思を喰らい、誇りを喰らい、魂魄(たましい)を喰らい、我が身すらも喰らう底無し穴の幽鬼』『森羅万象全て喰らい貪り味わい飲み込み己が血肉と化す』『たとえこの身この魂が無間の地獄に堕ちようとも喰らい続ける』『この身はいずれ神々をも喰らおう』『蹂躙し数多を飲み干し平らげる 暴喰の覇道ここに極まれり』『暴悪に喰らい尽くす原罪の一角たる暴喰の化身(けもの)が胎動する』

 

【グラトニー・サーベラス】

 

最後の一文を詠唱(うた)い終え魔法名を言った瞬間、燃え盛り滾る赫焱(ほのお)と激しく迸る金雷(いかづち)が場所を示すかのように天へ立ち昇ると共に僕の身体と長剣(けん)へと纏う。

 

「ベル、その付与魔法(エンチャント)がお前の魔法か?」

 

「そうです、そして貴方達二人を止める魔法だ!!」

 

「言うではないか、ならばやってみろ!!」

 

福音(ゴスペル)

 

そう話した後、アルフィアお義母さんが魔法を放ってくるも僕には届かなかった。

 

「!? どういう事だ!?」

 

「アルフィア、どうやらお前の魔法は喰われたようだぞ」

 

「ザルド、どういう意味だ?」

 

「そのままの意味だ、お前の魔法がベルの付与魔法(エンチャント)に触れた瞬間に掻き消された。つまり、ベルの魔法の特性は・・・」

 

魔力吸収(マジック・ドレイン)か・・・、それであれば納得がいくか・・・。厄介な魔法を得ているようだな」

 

「あぁ、これでお前と俺の魔法は封じられたと言えるな。だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()・・・!!」

 

「ならば、その正体を確かめればいい話だ。だが、このまま戦えばいずれ私達は・・・」

 

「あぁ、そうだな。それに猪の糞餓鬼や勇者の糞餓鬼も来るだろうからな」

 

こうして、派閥騒動(家族問題)は苛烈さを増しながら激化していく。

 

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