最強と最凶に育てられた白兎は英雄の道を行く


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作:れもねぃど
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十九話 混沌(カオス)は鍛錬の後で



お待たせしました!やっと更新です。
なお、書き方などを思考錯誤中なので文章的におかしなところがあったらごめんなさい。


 

「はぁー・・・・・どうしましょう」

 

朝の中央広場にて。

人を待っている少女───リリは重い溜め息をつく。

その理由は、昨日起こった出来事に起因していた。

 

(逃げてしまいました。・・・・・ベル様を見捨てて)

 

アイズとベルの間に起きた不幸な事故。

その時リリはてっきりアイズがベルを殺してしまったと早とちりしてしまい、一目散に逃げ出してしまったのだ。

客観的に見るならば、Lv.1のサポーターではLv.5の第一級冒険者にどうこうすることなど出来るはずがないため、この時彼女がとった行動は仕方がないといえるだろう。

だが『見捨てた』と言う事実は、本人にとって感情面で大きな凝りとなっていたのだ。

事情を聞いた【アストレア・ファミリア】の面々は「気にしなくていい」「ベルはそんな事でいちいち怒るような子じゃないわ」などリリに責任を追及するような事はなく、寧ろ罪悪感でいっぱいになっていた彼女を励ますような言葉をかけてくれた。

有難い───と同時に彼女達に気を使わせてしまった自分につくづく嫌気が差してしまう。

 

「───兎に角、ベル様に直接会って謝らないと・・・・・」

 

悩んだって仕方ない。

今自分に出来ることをしよう。

考えた末にその結論に至ったリリは、先程までの暗い雰囲気を散らすように頭をブンブンと横にふる。

 

───彼が怒っているなら誠心誠意謝罪しよう。

 

そう心に決めたリリは静かにベルが来るのを待つことした。

そうやってどれくらいの時間が過ぎただろう。彼女の背後から「リリー!」と彼女の呼ぶ声が聞こえてきた。

その声に気づいたリリは素早くそちらに振り返り──そして後悔した。

 

「ベル様!リリはベル様に謝らなければ───ってぎゃぁぁぁぁぁ!!でたぁぁぁぁぁ!!!?」

 

そこには顔が血まみれの人影が、此方に手を振りながら近づいて来ていたのだから。

 

 

 

「全く!寿命が縮むかと思いましたよ!!!」

「ご、ごめん・・・・・」

 

迷宮(ダンジョン)内にて。

リリはぷりぷりと怒って歩き、ベルは申し訳なさそうにその後に続く。

ベルと会うまでのしおらしさはどこへやら。

朝早くからとんでもないもの(スプラッター)を見せられたリリは自らが決めたやるべきことをすっかり忘れてしまっていた。

 

「・・・・・というかダンジョンに入る前からあんなにボロボロで大丈夫なんですか?」

「だ、大丈夫だよ!現にほら、ここに来るまでの道中も問題なかったでしょ!?」

「確かにそうでしたね・・・・・」

「血だって完全に止まってるし、念のためポーションだって飲んだから平気だよ!」

 

疑わしそうな目を向けるリリに、ベルは必死に弁明を行う。

事実、ここに来るまでのベルの動きに問題はなく、いつも通りモンスター達を倒せていた。

軽いとはいえ怪我をしている状態でダンジョンに潜るなどリリからすれば考えられないことであったが、「まぁ、ベル様ですし」という思いもあり深く考えていなかった。

 

「まぁ、ベル様がそう言うのであれば私に文句はありません。今日も頑張っていきましょう!」

「うん!あっ、そういえばリリ?」

「ん?なんですかベル様?」

「さっき中央広場で何か言おうとしてたよね?なんて言おうとしてたの?」

「・・・・・あっ」

 

その指摘でリリはやっと自分のしようとしていた事を思い出した。

───その後、ダンジョン内にも関わらず始まったリリの土下座&謝罪ラッシュにより、ベル達の足は更に遅れる事となった。

 


 

【ロキ・ファミリア】本拠(ホーム) 黄昏の館

 

「アーイズ!」

「?ティオナ、どうひたの(どうしたの)?」

「ベルとの特訓から今帰ってきたんでしょ?どうだった?」

 

ベルとの手合わせを終え、本拠に帰って来ていたアイズは

食堂にて朝食を食べていた。

するとそこに同じく朝食を食べに来たのであろうティオナが、アイズの隣に座るなり興味津々といった様子で話しかけてくる。

───因みに、ベルとアイズの手合わせについてはフィンより団員達へ通知がいっているため、全員が事情を知っていた。

 

自派閥の幹部(アイズさん)と手合わせした他派閥の団員(ベル)

 

そんな稀有な存在に興味─一部は嫉妬──を抱かない筈もなく、付近の団員達はその話題を口にしたティオナに心の中で親指を立て、アイズの言葉を聞くために耳を傾ける 。

やがて口に含んでいた食べ物を飲み込んだアイズは、少し間を置いたあと口を開いた。

 

「すごかったよ」

「へぇー、やっぱりすごかったんだ!で、どんな風にすごかったの?」

「すごく、すごかったよ」

「なるほど!」

 

いや、なるほどじゃねぇよ。

全然わかんねぇわ。

話を聞いていた団員達は、ガクリと肩を落とす。

何しろ今のところ入ってきた情報が『すごくすごかった』ということぐらいなのだ。落胆しても仕方ないだろう。

誰もがあんな抽象的な表現を理解できるティオナの理解力に感嘆した。

だが実のところ『なるほど!』などと言っているティオナも理解などできていなかった。

今のところベルについて彼女が得た情報は『なんかすごい』くらいのもんである。

ほとんど何も知らないような状態なのだが、彼女はこの情報はだけで満足してしまっていた。

なにせ彼女は天真爛漫おバカ(ティオナ・ヒュリテ)

難しい事を考えるのは苦手であった。

こうして相槌を打つ者(ティオナ)がいるにも関わらず、当人(アイズ)以外誰一人としてベルの事をわかっていないというよく分からない空間が出来上がった。

 

 

「ぐぬぬぬぬっ」

 

そんなアイズ達を呻き声を漏らしつつ見つめる少女がいた。

 

(アイズさんとふたりきりだなんて・・・・・羨ま──けしから──図々しい!!!)

 

少女──レフィーヤ・ウリディスはその端正な顔をぷっくぷくに膨らませ、その美しい紺碧の瞳の目尻に涙を溜めていた。

彼女の憧れる人──アイズ・ヴァレンシュタインが他派閥の、それも男性と二人っきりでいることなどエルフである彼女からすれば耐え難いことだった。

原作(本来)の彼女であれば即座に「不潔!!!」と少年(ベル)有罪(ギルティ)判定を下し、彼の本拠に殴り込み「見敵必殺!!アルクス☆レイ!!!」とするところであるが、今の彼女にはそうできない理由があった。

 

「・・・・・レフィーヤ、どうした?頬をそんなに膨らませて」

はんでもありまふぇん(なんでもありません)!」

「その顔でなんでもないは無理があるだろう。大方、アイズのことでなんだろうが・・・・・」

「・・・・・だってズルいじゃないですか!アイズさんと特訓だなんて!」

「本人が了承しているし、フィンが昨日お詫びの意味もあると説明していただろう。」

「そ、そうですけどぉ・・・・・」

「大体、お前も彼には前に一度助けられているのだろう?恩人にケチをつけるなど恥知らずな事は許さんぞ」

「うぅぅぅぅぅ!!!」

 

そう。彼女はベルに『借り』があった。

それは怪物祭の際、迫りくる花型モンスターの触手から体を張って守ってもらったという大きな借りが。

 

(だからってそれとこれとじゃ話が違います!!)

 

おのれベル・クラネル。

きっとどさくさに紛れてアイズさんにあんなことこんなことしたに違いない。

レフィーヤの心の中の小さな彼女達も『有罪(ギルティ)!』『有罪(ギルティ)!!』『有罪(ギルティ)!!!』と声高く叫ぶ。

執行猶予など生ぬるい!即座に彼の者へ厳罰を!

だがそんな声も虚しく、リヴェリアから先に釘を刺されてしまった手前、表立って手をだすことなど出来ない。

そんな彼女に今できることは───

 

「むぅぅぅぅぅぅ!!!!」

 

ヤケ食いである。

完全な手詰まりに陥ったレフィーヤは失恋した乙女の如く朝食を猛然と口に突っ込み始めた!

 

「お、おい、レフィーヤ。そんなに詰め込むと喉につっかえるぞ!」

ふぇべなければはってられまふぇん(食べなければやってられません)!!」

「何を言っているかわからん!!ちゃんと飲み込んでから話せ!」

 

突然のレフィーヤの奇行にリヴェリアは狼狽の声を上げるが、彼女は止まらない。

焼きたてのパンを、目玉焼きを、ウィンナーを次々と口の中へと放り込む。

途中、リヴェリアの指摘通りに食べ物を喉につまらせ顔を青くするが、近くにあったミルクを飲んで危機を脱し───また食べ物を口に詰め込み始める。

そんな彼女の変わり果てた姿をリヴェリアはなんとも言えない表情で見つめ、周りの団員達も憐れみを込めた視線を向ける。

信じられるか!?信じられないだろう!?これでもこの()妖精(エルフ)なんだぜ!!今は栗鼠みたいになってるけど!

そんなご乱心中のレフィーヤのもとへ───

 

「レフィーヤ?どうかしたの?」

「ブッッッッッフゥ!!?ア、アイズさん!?なんでこのタイミングで───って、いやぁぁぁぁぁ!!!こんな私をみないでくださぁぁぁぁぁい!!!」

「・・・・・」

「ヒッ!───レ、レフィーヤ・・・・・リヴェリアの顔が食べ物まみれに・・・・・」

「えっ?─────ってあぁぁぁぁぁ!!!!リ、リヴェリア様!?も、も、も、申し訳ございませんんんんんん!!!!」

 

よりによって一番この失態を見られたくない人物に見られたことで、レフィーヤは口に含んでいたものを思いっきり吹き出した。

可憐な妖精から放たれたとは思えないその汚物は、あろうことかそんな妖精達が崇め奉る王族(ハイエルフ)のご尊顔をどちゃくそに汚し尽くした。

リヴェリアから立ち上る静かな怒気にアイズが警告を発するが、もう遅い。

先程から自らの弟子と言っても過言ではないレフィーヤの恥態を見続けた彼女はもう我慢の限界であった。

 

「いい加減にぃぃぃしろぉぉぉぉぉ!!!!」

 

この日、久しぶりにマジ切れした妖精王女様の雷がレフィーヤの頭上に直撃した。

 

 

「・・・・・チッ」

 

リヴェリアの説教を受け、首をすくめ、体を小さくしているレフィーヤ達を尻目に狼人(ウェアウルフ)の青年──ベートは気に入らなそうに舌を弾いた。

 

「なんじゃベート?さっきからアイズ達のほうを見て。何か気に入らんことでもあるのか?」

「うるせぇ」

「大方、アイズに構ってもらえなくてふくれてるんでしょ。全く本当にめんどくさい奴だわあんた」

「そんなんじゃねぇ!!黙ってろ糞アマゾネス!!」

 

近くにいたにティオネとガレスが問うと、彼の琴線にふれてしまったのか、彼らしい返答が返ってくる。

だが、ティオネは知っている。酒場の一件でアイズかしばらく口をきいてくれなかった際に酷く落ち込んでいた事を。

 

「俺は!アイズの近くに雑魚がいることが気に食わねぇだけだ!クソッ、アイズもアイズだ!何であんな雑魚と───」

「雑魚雑魚言うけど、あんたベルから酒場で一杯食わされてるじゃない」

「あんなもん只のまぐれだ!実戦じゃ俺が勝つ!」

「うわ、Lv.1にムキになってるLv.5って・・・・・」

「ベート、お主今最高にみっともないぞ」

 

二人からの辛辣な言葉にベートは歯噛みする。

何も言わないのは自分でも今の発言は恥ずべき事だと感じたからであろうか。

それでも彼からしたら自分が認めた少女(アイズ)がどこの馬の骨ともしれない雑魚(おとこ)と一緒にいるのは面白くなかった。

 

「べぇ〜とぉ〜!わかる、わかるでぇ〜。うちもアイズたんが盗られてえらい悲しいんやぁ〜」

「!なにすんだロキ──って酒臭ぇ!!朝から飲んでやがんのかてめぇ!?」

「こんなん飲んでなきゃやってられんわ!うぅ~アイズた~ん、なんでやぁ、なんでウチを捨てたんやぁ~」

「おい抱きつくんじゃねぇ!うっとおしい!!」

「アイズた~ん!後生やから帰って来てぇ〜」

「この──離れやがれ糞神ぃぃぃぃ!!!」

 

酷く酔っぱらったロキがベートへ抱きつく。

先程から彼女が呼んでいるアイズはとっくのとうに帰って来ているのだが、ロキは酔っているためか気付くことはない。

そんな酔っぱらいの面倒な絡みを受けたベートは秒でブチギレ。

主神であるロキを投げ飛ばす。

人間──もとい神砲弾と化したロキはそのままテーブルの上を滑るように飛んでいく。

勿論、テーブルの上の朝食はめちゃくちゃになり、あろうことかそのテーブルで食事をしていたティオナに直撃する。

 

「なにすんのさバカ狼ぃぃぃぃ!!!」

「うるせぇぇぇぇぇ!!!」

 

取っ組み合うティオナとベート。

逃げ惑う団員達。

これは流石に不味いと二人を止めにかかるガレスとティオネ。

酷すぎる惨状にさらに落とされるリヴェリアの雷。

のどかなはずの朝の時間は一変し、誰も制御することが出来ない混沌とした時間に早変わり。

後に騒ぎを聞きつけ食堂に駆けつけたフィンが、食堂の状況を一瞥して、頭痛を覚えるのも無理はなかった。

 





次回はもっと早く更新できるように努力します・・・・・。
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