最強と最凶に育てられた白兎は英雄の道を行く


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作:れもねぃど
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第十六話 剣姫の膝



どうも、6000字くらいの文章作るのに2週間以上かけた野郎です。
更新遅れて、本当に申し訳ない。


 

時は少し遡って。

迷宮(ダンジョン)のとある場所。

そこでは一人の少女が悲しみに暮れていた。

 

──どうして、こんなことに?

 

──私はただ、『あの子』とお話したかっただけなのに。

 

美しい少女の表情は悲しげであり、まるで物語に出てくる悲劇のヒロインのワンシーンのようだった。

 

「ひっく、ひっく、あ、あぁぁぁぁ・・・・・」

 

彼女の目の前に広がる光景以外は。

少女──アイズ・ヴァレンシュタインの目の前には、恐怖からか目に涙を貯めつつ、嗚咽を漏らす小人族(パルゥム)の少女──リリルカ・アーデが腰を抜かしたかのように座り込んでおり、その少し先では、白い髪の少年──ベル・クラネルがうつ伏せで倒れていた。

また、そんなベルに沿って、何かを引き摺ったような跡があり、まるで後ろから凄まじい衝撃を受けた彼が顔を地面に擦り付けて作られたようだった。

誰が見ても犯人はお前(アイズ)だ、と言わんばかりの状況であり、その光景を加味すると、彼女は『悲劇のヒロイン』などではなく、『目撃者を消そうとしている暗殺者』が妥当であろう。

事実、悲しげな表情をしつつ、リリを見下ろすアイズは『・・・・・見てしまったのね。じゃあ、可哀想だけれど・・・・・』

と思っているようにも見える。──もっとも彼女にそんなつもりは毛頭ないのだが。

そもそもなぜこんな誰も望んでいない殺伐とした状況になってしまったのか。それを知るためには更に時を遡る必要がある。

 


 

「あっ!」

「どうした、アイズ。」

 

37階層にて階層主(ウダイオス)を撃破したアイズとリヴェリアは3日間かけてダンジョンの『上層』に到達していた。

そして5階層に到達して暫く歩いていると、突然アイズが声を上げた後、物陰に隠れて道の先の様子を静かに伺い始めた。

モノスターか?とリヴェリアも彼女に倣って、道の先を見る。

そこにいたのは多数のモンスター達と白い髪の冒険者であった。

彼はモンスター達を蹂躙していた。

魔法によるものなのか雷をその身に纏い、光を放ちながら次々とモンスター達を灰へと変えていく。

そんな彼の姿にモンスター達は恐れおののくような鳴き声をあげたり、彼から距離を取ろうとしたりしている。

 

雷霆よ(ケラウノス)!」

 

が、彼が詠唱鍵(スペルキー)を唱えたと同時に、彼が放った雷がそんなモンスター達を飲み込み、一瞬で灰へと変えた。

 

「すごい・・・・・。」

「あの子は確か【アストレア・ファミリア】の・・・・・。それにしても今の魔法はなんだ?一見すると付与魔法(エンチャント)のように見えたが・・・・・」

 

彼の魔法にアイズとリヴェリアが感嘆の声をあげる。

また魔法だけでなく、戦闘時の動きを見てアイズは確信する。

 

(強く、なってる。怪物祭の時(あの時)よりも・・・・・)

 

短い期間で見違えるほど強くなっている彼──ベルを見て、アイズは益々彼へ興味を持った。どうやったらそんなに強くなれるのか、と。

 

「彼が気になるのかアイズ?」

「え?」

「珍しいな、お前が他人に興味を持つなんて。」

 

リヴェリアの問いに首を傾げるアイズを見て、彼女は微笑む。

彼女がダンジョンや強くなること以外に興味を持つのは喜ばしいことだ、と彼女は無意識に母親(ママ)目線になっていた。

一方でアイズは、何か考える素振りをした後、その胸中で生まれた思いを口にした。

 

「リヴェリア。私あの子に償いをしたい。」

「・・・・・他に言いようがあるだろう。」

 

アイズはリヴェリアに以前、酒場で起こってしまった【アストレア・ファミリア】との騒動の『原因』と『真実』を話していた。

アイズとしてはその時に、「お前はどうしたい?」と彼女に尋ねられた際の、はっきりとした答えを伝えたつもりであったが、「硬すぎる」と溜息をつかれてしまった。

あれ?とアイズは瞬きをしてしまう。

 

「まぁ、以前言っていたように別にお詫びをするのは当然として・・・・確かに口頭でも謝罪をしておいた方が良いか。」

 

その言葉にアイズがこくこく、と頷く。

エルフの彼女は何かを考え、ちらり、と横目でこちらを見やってきた。

 

「・・・・・では、私は先に戻るとしよう。・・・・・けじめをつけたいのなら二人きりで行うのがいいのだが・・・・・」

 

そう言うとリヴェリアはベルの近くで魔石を拾っているサポーターらしき小人族(パルゥム)の少女を見る。かといってベルのパーティーメンバーである彼女を邪魔だと言うことはできない。

 

「うん、わかった。ありがとう、リヴェリア。」

「ああ、気をつけてな。」

 

礼を告げると、リヴェリアはその場を後にする。

その後ろ姿を見送ったアイズは、魔石を拾い終え、場所を移動しようとしているベル達を再び見つめていた。

 


 

アイズがリヴェリアと別れた後、暫くして。

リヴェリアがエイナから信じられない情報を聞き、本拠(ホーム)へと急ぐ中、アイズはというと──

 

──未だにベルへ話しかけられていなかった!

 

彼女が今やっているといえば、ダンジョンを降りていくベル達を後ろからこっそり付いて行くという、端から見たら犯罪者予備軍(ストーカー)と思われてもおかしくない状況だった。

だが待って欲しい、彼女にもすぐにベルへ話しかけられなかった理由があるのだ。

まず一つにアイズの性格が上げられる。

基本的に無口な彼女は、同じ【ファミリア】の仲間はともかくとして、他派閥の団員に話しかけることなどできなかった。

しかも、自分のいる【ロキ・ファミリア】の評価は以前の騒動で最悪になっている──主にベートのせいで──だろうから、更に話しかけるのが躊躇われたのだ。──勿論、ベルはそんな事微塵も思っていないが。

そして理由のもう一つが──

 

「!」

 

アイズが何かに気付いたような素振りを見せた後、素早くその場から離れ、後方にある物陰に身を隠す。

そしてそこから、再びベル達の様子を窺う。

当のベルは歩みを止め、あちこちを見渡した後、しきりに首をかしげていた。

 

(やっぱり、私の気配に、気付いてる。)

 

アイズはベル達を追跡する時、極力気配を消している。

にも関わらず、ある程度距離を詰めると必ず反応を示すのだ。

これにはアイズも驚きを隠せなかった。

もし、気付いたのが同Lvの者か、近しいLvの者であればさほど驚きはしなかった。だが、ベルはLv.1であり、アイズとのLv差は歴然、普通であれば気付けるはずがないのだ。

 

(多分、相当の鍛錬を積んでる。じゃないと、『ああ』はならない。)

 

一体どんな鍛練を、とアイズはベルへの興味を益々強めていった。

しかし、この二つの理由から、アイズは彼へと近づくことが出来ないでいた。

なんとかしなければならないと思ってはいるが、妙案は浮かばず、脳内会議を行っている幼いアイズ達も「勇気を出して声を掛けるべき!」「いやでも、逃げられたらどうしよう!?」「くそっ、じゃがまる君があれば!!」等と一向に打開策を打ち出せないまま、時間だけが過ぎていった。

 


 

(やっぱり誰かに見られてる・・・・・よね?)

 

一方でベルはというと、先程から向けられる謎の視線と、此方へ近づいてくる気配に不安を募らせていた。

この前も街中で奇妙な視線を向けられたこともあってか、彼は最近視線というものに敏感になっていた。

再び近づいてくる気配にベルが足を止め、気配のした方へ顔を向ける。

しかしベルがそちらに顔を向ける直前、その気配は凄まじい速度でベル達から距離を取って、たちまち彼の感知範囲の外へ出て行ってしまう。

こんなやり取りが少し前から度々繰り返されていた。

 

「ベル様?どうしたのですか、先程からきょろきょろとなされて?」

「・・・・・さっきから誰かに見られてる。」

「えっ!?ま、まさかモンスターですか!?」

「いや、モンスターみたいな敵意とか殺意は感じられないんだ。なんていうか、僕らを観察している感じなんだよ。」

「えぇ・・・・・?何のためにそんなことを?」

 

様子のおかしいベルに気づいたリリが彼に理由を尋ね、返ってきた答えに目に見えて狼狽えるものの、続いてベルの口から告げられた言葉を聞き、怪訝な表情になる。

 

「それは僕もわからない。心あたりがないんだ。リリは?」

「私もありませんよ。【ソーマ・ファミリア(前のファミリア)】ならともかく。」

「そっか・・・・・」

 

リリの返答を聞き、ベルの疑問は更に深まる。

じゃあ、何で僕達をつけ回すんだろう?と。

ベルは暫く考えてみたが、最近オラリオに来たばかりの彼には全く心当たりがなかった。

 

「ベル様、こんなことを言うのはあれですが、敵意などがないといっても人につけ回されるというのは普通に考えて異常ですし、不気味です。その人が何を考えているかもわかりませんし・・・・・」

「そう・・・・・だよね。」

「もしかしたら私達の獲物を横取りするつもりかもしれませんし、此方としては気が気じゃないです。」

「う〜ん。」

 

リリからの進言にベルは深く考え込む。

確かにリリの言う通り、ここのままにしておくのは不安要素が大きすぎる。

もしもこのまま今の状況を放っておいて、自分はともかくリリになにかあったら彼女の主神(ヘスティア様)に申し訳がたたない。

そう考えたベルは『安全のために少し早いけど、ダンジョン探索はここで切り上げよう』という結論をだした。

 

「リリ、今日の探索はここまでにしようか。」

「えぇ!?いいんですか!?まだ探索をはじめてから全然時間経ってませんよ!?」

「そうだけど、さっきリリが言ってたみたいに、つけ回されている今の状況はかなり不気味だし・・・・・それにリリに何かあったらヘスティア様に何て言えばいいか・・・・・」

「ベル様・・・・・」

 

ベルの意外な発言にリリが驚きの声をあげるが、ベルの考えを聞き、何も言えなくなる。

 

「そんな顔をしないでよリリ。別にリリのせいじゃないよ。」

「・・・・・はい。」

「よし。それじゃあ警戒しつつ地上に戻ろ───!!」

 

明らかに責任を感じているような表情を浮かべているリリにベルが声をかけ、地上へ向かう通路へ踵を返したその時──

 

──先程まで一定の距離から近づいて来なかった気配が凄まじい速度で此方へ向かってきていた!!

 


 

「!」

 

まずい、とベルとリリの会話を聞いていたアイズは焦る。

アイズが話しかけることを躊躇していたせいで、彼らはもう帰ろうとしている。

 

(ど、どうしよう!?)

 

また話しかけられずに終わってしまう、と考えたアイズは更に思考を回転させ、何とか打開策を打ち出そうと努力する。

脳内の幼いアイズ達も「「「まだだ!まだ終わっていなぁい!!!」」」と策を打ち出そうと必死になっている!

そんなアイズの努力が実を結んだのか、彼女にとって天啓ともいえる考えが舞い降りる。その内容は──

 

魔法(エアリアル)で追いついて、話しかけよう!!!)

 

他人が聞いたら、ほぼ全ての人が「ちょ、ちょ待てよ!!」と言うこと間違いなしの案であった。

だが、追い詰められた天然(アイズ)の考えられることなどこれくらいだったのだ!

 

起動(テンペスト)!!!」

 

此方に背を向け、ダンジョンから帰還しようとするベルに追い付くべく、急いで魔法を発動させるアイズ。だが──

 

(あっ────)

 

些か、彼女らしくもなく焦りすぎたのだろう。

 

──魔法の出力調整を(ミス)った。

 


 

(速い!!何で急に!?いや、そんなことより──!!)

 

急速に近づいてくる気配に一瞬狼狽えるものの、ベルはすぐに対応を考えるべく、思考を回した。

 

──迎撃。

不可能、この速さでは間に合わない!

 

──回避。

──可能。だが、この軌道(コース)で避ければリリが危ない!

 

故に、ベルがとった行動は──

 

「リリ、危ない!!!」

「ふぇ?うわぁぁぁ!!」

 

此方に向かってくる気配からリリを庇うように、気配の進路上から彼女を逃がす。

その甲斐あって、彼女は危機的状況を脱する。──が

 

「あ、危なッ──!!!」

「がッッッッ!!!?」

 

突如として聞こえた第三者の声と、後頭部に受けた凄まじい衝撃を最後に──

 

ベルは意識を失った。

 


 

そして状況は冒頭に戻る。

 

(どう、しよう。)

 

アイズは顔を青くしていた。

なにせ彼女は他派閥の少年に飛び膝蹴り(リル・ラファーガ)してしまったのだ。

被害者の少年(ベル)は勢いよく顔を地面に叩きつけられ、そのまま地面を滑るように吹っ飛んで行き、今はピクリとも動かない。

それを近くで見ていた小人族(パルゥム)少女(リリ)は最初こそポカンとしていたが、状況を理解すると目尻に涙を溜め、嗚咽をあげ始めていた。

そんな混沌(カオス)極まる状況にアイズは狼狽えるばかりである。

 

「べ、べ・・・・・・。」

「え、えぇっと・・・・これは、その・・・・。」

 

嗚咽を飲み込むように耐え、何か言葉を紡ぎ始めたリリを見て、アイズはこの状況に対する弁明をしようとする。だが──

 

「べ、ベル様が死んだぁぁぁ!!!!この人でなしぃぃ!!!」

「え!?ち、違う!!殺してなんか──」

「酒場での件といい、【ロキ・ファミリア】はベル様に恨みでもあるんですかぁ!?この暴挙!輝夜様達に言いつけてやりますぅぅぅぅぅぅ!!!」

「!ま、待って、話を──!!!」

「うわぁぁぁぁん!!輝夜さまぁぁぁぁ!!ライラさまぁぁぁぁ!!!」

 

リリはそう泣き叫ぶと、アイズから逃げるように走りだした。

アイズは勿論、彼女を追おうとするが──

 

(あの子、どうしよう・・・・・・?)

 

未だに意識を失ったままのベルを見て、アイズは動きを止める。

今ここで彼を放置していけば、モンスターの餌食になってしまうかもしれない。そう考えたアイズは暫く考え込んでしまい、その場に立ち尽くしてしまっていた。

そんな事をしている間にリリの姿が見えなくなり、とうとう彼女を追うことが不可能になってしまう。

 

(と、取り敢えずこの子を、介抱しないと)

 

リリを見失った後、ベルに近づいた彼女は自分にできることはないか、頭を必死に回転させた。

 

「そ、そうだ、リーネに治療してもらおう!」

 

しばらく時間を置いた後、彼女はそう結論を出す。

 

『怪我人を治療師(ヒーラー)の所へ連れて行く。』

 

この判断に間違いはない。ないのだが・・・・普通であればバベルにある治療施設に連れて行くなどで、自派閥の治療師に任せることはないだろう。だが、彼女はその考えに至れない。

でも仕方ないのだ。だって天然(アイズ)だもの。

 

「うん、しょっと。」

 

倒れているベルを担ぐアイズ。

幸い、地面に勢いよく擦り付けた顔がのっぺら坊のようになっているということはなく、軽い擦り傷程度であった。

 

「急がなきゃ・・・・・。」

 

そう呟くと、彼女は自分の【ファミリア】の本拠(ホーム)である黄昏の館へと急いだ。

 


 

現在

【ロキ・ファミリア】本拠 黄昏の館

 

「・・・・それで?」

「そ、それでリーネにベルの治療をしてもらおうと、本拠(ホーム)に・・・・。」

「バベルの治療院に連れて行くとかは考えなかったのか?」

「あ、焦ってて、その、考えつかなかった・・・・。」

「はぁ・・・・・。」

「ご、ごめんなさい、リヴェリア・・・・。」

 

本拠の大広間にて正座させられているアイズからことのあらましを聞いたリヴェリアは重い溜息を吐く。それを聞いたアイズは更に項垂れてしまう。

 

「どうする、フィン?あの娘っ子共にはこの間も迷惑かけたばっかりじゃぞ?」

「・・・・・取り敢えず彼女達の本拠に行って事情を説明するとしようか。この間の件も含めて色々と謝罪もしなければならないだろうし・・・・・。」

「それが妥当かのう、。」

「それと・・・リーネ!ベル・クラネルの容態は?」

「は、はい!未だに意識は戻っていませんが、外傷の方は大した事はなく、魔法で何とかなりました。ただ・・・・。」

「「ただ?」」

「どうやらうなされているようで『い、石を投げないでぇー』とうわ言のように呟いています。」

 

何じゃそりゃ、とばかりにリーネからの報告に首を傾げるガレスとフィンだったが、うなされている程度で体の方には異常がない事に二人は安堵する。

 

「取り敢えずは一安心・・・って感じかな。」

「そうじゃのう。・・・納得してもらえるかは別問題じゃが。」

「そうだね。それについては誠心誠意、謝罪させてもらうとしよ──」

「失礼します、団長!」

 

フィン達が一息ついたところに今度はアキが少しばかり焦った様子で入室してくる。

また厄介事か?と言わんばかりにガレスは顔を顰め、フィンは「どうしたんだい?」とアキに話しの続きを促す。

アキは少し間を置いた後、厄介事の雰囲気を隠す様子もなく口を開いた。

 

「・・・・・【アストレア・ファミリア】が門前に押しかけて来てます。・・・・『どういうことか説明しろ』とのことです。」

「・・・・・こっちから出向く手間が省けたの。」

「そうだね・・・・。」

 

アキの報告を聞き、ガレスは顔にできていた皺を一層深いものにし、フィンは重く、深い溜息をついた。

 





アリーゼ達 ドンドンドン「FBI!!open the door!!」
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