最強と最凶に育てられた白兎は英雄の道を行く


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作:れもねぃど
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第十五話 覇者の残り香



やべ、バレた。


 

「やっぱり載ってないか・・・・・。」

 

エイナは、今まで読んでいた資料をパタンと閉じ、机の脇に置くと溜息をついた。

彼女は今、ギルドでの業務の傍ら個人的な調べ物をしていた。

それは彼女の担当冒険者であるベルが言っていた元冒険者であろう『家族』のことである。

ベルと座学しているうちに彼の知識量の多さに感心したエイナは彼にこれだけのことを教えた『叔父さん』と『お義母さん』に興味をもった。

そのためLv.2からLv.4までの冒険者で引退、もしくは街から出ていった人達の名簿を調べ、その中に『ザルド』と『アルフィア』の名前がないかしらべていたのだが──

 

(名簿はあらかた調べ終わったけど、該当する人はいなかった。どういうこと?)

 

当初はすぐに見つかるだろうと思っていたが、名簿を隅々まで調べても二人の名前は出てこず、エイナは未だに二人の所属していた【ファミリア】の名前すら掴めていなかった。

 

(他に考えられるとしたら・・・・・元第一級冒険者?でも、そんな事あり得るの?)

 

冒険者は迷宮都市(オラリオ)の重要な戦力だ。

しかもそれが冒険者の中でもほんの一握りである第一級冒険者ならなおさらである。

 

『来るもの拒まず、去るもの許さず』

 

そう言われる程に都市内戦力の流失を許さないギルドが、第一級冒険者(貴重な戦力)をみすみす都市外に出すような事をするだろうか?

 

(それとも何か事情が・・・・例えばもう死んでる(・・・・・・)と思われているとか)

 

それは考えが飛躍しすぎか、と直後に首をふってその考えがを頭から追い出す。でもそれじゃあなんで、と思考がまた振り出しに戻ってしまい、頭を抱える。

 

「エイナか?」

「えっ?──って、リヴェリア様!?」

 

そんな時に突然声がかかり、気の抜けた声で反応しそちらを見ると、そこには尊きお方(ハイエルフ)であるリヴェリア・リヨス・アールヴが立っていた。

 

「やはりおまえか・・・・。久しいな、まさかギルドの受付(こんなところ)で会うとは。それにしても、少し見ない間に随分と綺麗になった。見違えたぞ。」

「あ、ありがとうございますっ!か、過分なお言葉、身に沁みる思いでっ・・・・・!」

「・・・・・その言葉づかいは止せ。此処はエルフの里ではないんだ。そもそも、お前は里の生まれですらあるまい。敬われる覚えはないぞ。」

「で、ですが、高貴な御方には敬意の心を忘れてはならないと、母に・・・・・。」

「あのアイナでさえ娘にそのような事を吹き込むか・・・・。嘆かわしいな、共に里を抜け出した仲だというのに。」

 

ふぅ、と見ている方が魅せられる吐息をし、リヴェリアはエイナに強い視線を向ける。

 

「最低限の弁えは確かに心得るべきものだが、それ以上は不要だ。・・・・・正直、あのような堅苦しい扱いにはうんざりしているのだ。」

「そ、そんな・・・・・。」

「何も完全に砕けろと言っているわけではないぞ。ただ、過敏に成りすぎるなということだ。」

「わ、わかりました・・・・・・。」

「よし。」

 

満足げにリヴェリアは頷くが、エイナの心境は参っちゃったなぁの一言に尽き、気が気ではなかった。

 

「ところで何か悩んでいたようだが、どうしたのだ。」

「い、いえ大したことでは・・・・・。」

「仕事のことか?・・・・・まさか、ロイマンの奴がなにか──。」

「い、いえ違います!違いますからぁ!!!」

 

ギルド長が何かしているのではないか、と柳眉を立てるリヴェリアをエイナが必死で宥める。

いくら『ギルドの豚』と陰口を叩かれている嫌われもののギルド長でも、謂われのないことで責められるのは余りにも不憫だ。

 

「ではなんだ?知らぬ仲ではあるまい。話してみろ。」

「い、いえ本当に大したことでは・・・・あっ。」

 

そうだ、この都市に長く住んでいるリヴェリア様なら知ってるかもしれない。

これくらいならご迷惑にならないかも、と考えたエイナはリヴェリアに自分の頭を悩ませている事について聞いてみることにした。

 

「あ、あの!リヴェリア様!少しお聞きしたいことがあるのですが!」

「ん?ああ、なんだ?私が知りえることであればできる限り答えるとしよう。」

「『ザルド』氏と『アルフィア』氏という方を知りませんか?」

「─────」

「どちらも元冒険者のようなんですが、資料をいくら探しても見つからな・・・・・リヴェリア様?」

 

エイナの問いを快く受けたリヴェリアであったが、内容を聞いて絶句した。

その美しい双眸は大きく見開かれ、顔は驚愕に染まっていた。

そんなリヴェリアの様子を見たエイナは、なにかまずいことを聞いてしまったのかと内心焦った。

そしてエイナの問いを受けてから少し間を置いて、リヴェリアは絞り出すような声で質問を返してきた。

 

「エイナ、その名は一体何処で聞いたのだ・・・・・?」

「え?え、えぇっとそれはですね、ベルく──失礼、私の担当冒険者であるベル・クラネル氏からですが・・・・・もしかしてこの名前に心当たりがあるのですか?」

「・・・・ああ、いやという程、な。」

「リ、リヴェリア様?」

「すまぬエイナ、急用ができた。世間話についてはまた今度ゆっくりと楽しむ事にしよう!」

「え!?あ、あの!ちょっと!」

 

エイナからの答えを聞いた後、リヴェリアは彼女には珍しく、慌ただしそうにその場を後にする。

未だに困惑から抜け出せぬエイナは、そんなリヴェリアの背中を見送ることしかできなかった。

 


 

「・・・・・その話は本当なのかい?」

「なんだ?エイナや私が嘘を言っているとでも?」

「ンー、なにしろ荒唐無稽過ぎてね。直ぐに信じろというのは少し難しいかな。」

「──ッ、フィン!」

「落ち着けリヴェリア!・・・・お主だって、正直信じられないと思っておるのではないか?」

「それは・・・・・」

 

フィンの疑うような声にリヴェリアが声を荒げて反応するが、ガレスの静止を受け、押し黙る。

いつもの冷静さが嘘のように感情的になっている彼女だが、それは無理もなかった。

 

『ザルド』と『アルフィア』

 

この両名は【ロキ・ファミリア】の三首領にとっては因縁深い人物であった。

かつての最強達(ゼウスとヘラ)

その幹部であり、現都市最強(オッタル)を超えるLv.7。

そして『とある理由』で生存を絶望視されていた二人でもある。

そんな者達が生きていたというのだから、フィンでなくてもそう簡単に信じられないだろう。

事実、話を聞いていたガレスはおろかこの情報を手に入れたリヴェリアでさえ、冷静に考えれば到底信じられることではなかった。

 

「すまん・・・・少し冷静さを欠いていた。」

「・・・・でも真偽の程は定かじゃないとしても、調べる必要はありそうだね。」

「なんじゃ、フィン。リヴェリアに否定的なことを言っておいて、お主も奴らの生存を信じておるのか?」

「いや、信じてはいないさ。・・・・でも彼らには正直はかりしれないところがあったからね。」

「・・・・確かにのぉ。」

 

フィンの言葉にガレスが同意する。

ゼウスとヘラが下界へ下りてきて千年。

黒竜に敗北するまで『最強』と『最恐』の座を維持しつづけてきた【ファミリア】である。

今更どんなことがあっても不思議では無いといえる。

 

「とにかくこれについては本人──ベル・クラネルに聞いてみよう。以前の件で彼らには謝罪をしなければならないしね。それに【アストレア・ファミリア】には協力してほしいこともあるし。」

「・・・・・まさか今回の『遠征』に娘っ子共を巻き込む気か?」

「勿論、強制はしないさ。ただ戦力は多い方がいいだろう。」

「彼女達の性格からして断ることなどしないだろう。」

 

フィンの言葉を聞いて顔を顰めるガレスとリヴェリア。

二人からすれば余り気乗りしないことであったが、『18階層での出来事』とロキからもたらされた『闇派閥(イヴィルス)復活』の情報を聞き、フィンは万全の状態で今回の『遠征』に挑むつもりであった。

 

「団長、失礼します!」

 

フィン達が話をしていると控えめのノックと同時に大きな声が響く。

フィンがどうぞ、と返答すると入って来たのは顔を輝かせたアマゾネスの少女──ティオネだった。

 

「団長!新発売のお菓子が売っていたので買ってきました!一緒にお茶でもどうですか!?」

「・・・・ありがとう、ティオネ。そのお菓子については後で頂くことにするよ。今は──」

「そんなこと仰らずに!はい、あーん!」

「むぐぐっ!」

 

ティオネは菓子を包んでいる包装紙を荒々しく破くと、その中から菓子を一つつかみ取り、フィンの口へと突っ込む。

不意打ちを受けたフィンは苦しそうな呻き声をあげるが、なんとか菓子を飲み込み、いつものような爽やかな笑みを浮かべ、「ありがとう、おいしかったよ」と彼女に感謝と感想を述べる。

そんなフィンの笑顔にティオナは頬を朱色に染めてうっとりと眺めていた。

そんないつも通りの強引なアプローチを仕掛ける彼女に、フィンは苦笑いを浮かべ、リヴェリアとガレスはなんともいえない表情をする。

 

「だからほんとですってばー!!!」

「えぇー?ちょっと信じられないなー。」

「信じてくださいよ、ティオナさーん!」

「でもさー、それが本当だったとして、なんでベルはそんな事したの?」

「そ、それは・・・・・。」

 

団長室に微妙な空気が流れる中、開け放たれた扉から廊下で話しているレフィーヤとティオナの声が聞こえてくる。

彼女達は最初こそ会話に夢中になっていたようだが、扉が開け放たれたままだったため、団長室の空気に気付いたようで二人揃って「何事?」と言わんばかりに首をかしげていた。

 

「どうしたの、フィン?またなんかティオネにされたの?」

「ちょっと!その言い方だと私が団長に迷惑をかけているみたいじゃない!!」

「いや、なんでもないよ。それよりも君達こそ珍しく何か言い合っていたみたいだけど、何かあったのかい?」

「ん?ああ!いやさ、レフィーヤが変なものをみたって言うんだよ。」

「へ、変なものって・・・・。」

 

ティオナの物言いに、レフィーヤがショックを受けたような顔をする。

フィンは「変なもの?」とティオナに聞き返すと彼女は軽く頷いた。

 

「レフィーヤが言うにはね、ベル──【アストレア・ファミリア】の新人君がモンスターを食べた(・・・・・・・・・)らしいんだよ。」

「「「!!!」」」

 

その言葉を聞いたフィン、ガレス、リヴェリアの表情は驚愕一色に染まった。

モンスターを喰らう。

常識的に考えれば正気の沙汰ではないが──彼らは知っている。

万物を喰らうことで能力(ステイタス)を上昇させることのできる『スキル』があることを。

そしてそれが先程の会話で名前がでてきていた(ザルド)のスキルであることを。

 

「はぁ?何よそれ?そんな事する奴いるわけないでしょ。」

「だよねー。だから、私はレフィーヤの見間違いだと思うんだけど──」

「だから本当なんですってばー!!この目でみたんですよー!!!」

 

そんなフィン達の様子に気付かないティオナ達は話を続けているが、フィン達には彼女達が話している内容が一切入ってこなかった。

 

──生きているかもしれないゼウスとヘラの眷属達(かつての最強達)

 

──そしてそのうちの一人の『スキル』を持っている可能性のある人物。

 

その両方にベル・クラネルという少年が関わっている。

これは果たして偶然なのだろうか。

 

「フィン・・・・・。」

「偶然・・・にしては出来すぎているかな?」

 

同じ考えに至ったであろうリヴェリアがフィンに声を掛ける。

流石にここまで来たら完全に荒唐無稽とは言えなくなってくる。

まさか本当に、とフィンは考えると同時に、益々ベル・クラネルに話を聞く必要があると考えた。

 

「?フィン、どうしたの?それにリヴェリアとガレスも。さっきから難しい顔しちゃってさ。」

 

フィン達の様子にやっと気がついたのか、不思議そうにティオナが声を掛けてくる。

気が付くとティオネとレフィーヤも、心配そうに此方を見ている。

 

「ああ、いや別に大したことじゃ──」

「だ、だんちょぉぉぉぉぉ!!た、大変っすぅぅぅぅ!!!」

 

ないよ、と言おうとした瞬間、団長室にラウルが駆け込んでくる。

相当急いできたのか息が上がっており、肩が大きく上下している。

 

「どうしたんだいラウル?そんなに血相を変えて?」

「団長!ア、ア、アイズさんが!!」

「!アイズに何かあったのか!?」

 

ラウルの報告を聞いたリヴェリアが、ラウルに詰め寄る。

『とある理由』でアイズとダンジョン内で別れたリヴェリアは、その後にアイズの身に何かあったのではないかと不安を募らせる。──この過保護っぷりがロキあたりに『ママ』とからかわれる理由だった。

そんなリヴェリアの様子を見て、ティオナ達も「まさか・・・・」と不安そうな表情でラウルを見る。

──が、ラウルの口からは誰もが予想していなかった知らせが伝えられた。

 

「【アストレア・ファミリア】の新人を誘拐してきたっすぅぅぅぅぅ!!!!」

「「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!?」」」」

 





次回、剣姫やらかす
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