Vengeance For Pain   作:てんぞー

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見よ、カルデアの日常は赤く燃えている
男共の戯れ - 1


「―――へへ、見ろよあの大聖杯……立派に燃えてやがるぜ……」

 

「救世主ビィィィィィ―――ッム!」

 

「ロン! ロン! これもロン! それもロン! そしてロンだぁ―――!」

 

「ひたすら全裸で神秘っぽいのを抑え込む作業」

 

 正面、燃え上がりながらドンドン消し飛ばされて行く大聖杯と呼ばれた器があった。それは冬木の聖杯戦争において、最も重要な存在であったと言っても良い。何故ならこの聖杯が冬木における聖杯戦争、そのシステムの核といっても良い存在になっていたからだ。だがそれはとある聖杯戦争に於いて汚染されてしまった。それ故に正しく願望器としての機能を大聖杯は果たす事が出来なくなってしまった為―――存在するだけ、害悪の聖杯が生み出されてしまった。それが発覚したのはなんでも聖杯戦争が終了間際らしく、とてもだが冬木市での聖杯戦争は続行できるものではなくなり、最終的に聖杯は解体される事で終わった。

 

 それを知る人物がカルデアにはいる―――無論、英霊達だ。主にアルトリアやエミヤ、そしてエルメロイ2世の存在だ。聖杯戦争の結末を知っているという事は聖杯戦争における重要な場所を理解しているという事でもある。

 

 つまり大聖杯=残しちゃ駄目を良く知っている。

 

 大聖杯、破壊すべし。慈悲はない。

 

 ロンゴミニアド、第六天魔王、ブラフマーストラ、そして汚染を問答無用で浄化する救世主ビームの乱打によって出現した第四次聖杯戦争を再現した特異点は開始十分で消滅した。

 

「長くて苦しい戦いだった……!」

 

「先輩!?」

 

 

 

 

「……なんか納得いかない」

 

 エルメロイ2世が男の秘密基地でグラスをカウンターに叩き付けながらそう発言した。それを見てバーカウンターの向こう側でグラスを磨くエミヤが首を傾げる。横にいる自分も軽く肩を振り、息を吐く。まぁ、エルメロイ2世の言いたい事は解る。第四次聖杯戦争の参加者としては色々と言いたい事もあっただろう。やりたい事もあっただろう。だが戦力が整いすぎているのだ、このカルデア―――最短で処理しようと思えば、過去の聖杯戦争程度であれば簡単に解体できるだろう。その程度の戦力はここに集まっている。

 

 エルメロイ2世本人もそれを理解しているのだろう。だからぶつぶつ愚痴るだけで、大きな声で文句を言わない。これはただ単にエルメロイ2世本人の認識で、そして後悔の問題なのだから。誰よりも軍師であるエルメロイ2世の知識と経験が、この手段が最適だと理解させているのだから。だからこそ納得いかないのだろうが。

 

「しっかしウチのマスターも大分成長したな。最初は頼りのない小僧だったのに指示を出せるようになったもんだ」

 

「とはいえ、未だに未熟が目立つがな」

 

 そんな事を言うエミヤだが、エミヤもマスター・藤丸立香が成長しているという事を確かに認めている。実際、あの少年はかなり上手くやっていると思う。普通の人間じゃここまでは無理だ―――才能がない、という言葉は取り下げなくてはならないだろう。生き残るという一点に置いて、藤丸立香を超える才能の持ち主は見た事がないかもしれない。

 

 苦笑しながら酒の入ったグラスを傾ける。

 

「この先、生き残れればまず間違いなく人類でも十指に入る生存のスペシャリストになれるだろうな」

 

「生き残れれば、の話だな」

 

「Hello」

 

 ヘルム装備オンリーの家着ランスロットが隠し扉を開けてバーに入ってきた。ランスロットに片手をあげて挨拶をしながら迎え入れると、ランスロットがいつも飲んでいるものをエミヤが早速出していた。本当にそういう仕事が板についている男だよなぁ、と思いながらグラスを軽く揺らし、揺れる酒の表面を眺める。このカルデアも大分賑やかになってきたもんだ、と、そう思う。

 

「Whats up?」

 

「クッソノリが軽いぞこの騎士」

 

「王様にごめんなさいできたからな。そりゃあ心が軽くなってるんだろうさ。そろそろ霊基変換で最強のセバスロット卿にジョブチェンジして貰いたい所だわ」

 

「働きたくない……」

 

「今こいつ働きたくないって言わなかったか」

 

 足を組んで器用にヘルムの下で葉巻を咥えながらグラスを傾けるランスロットの姿は器用すぎてもはや芸人と呼べる領域に入っていた。お前のキャラ、どうしてそうなったんだろうな……と、思いつつも、サーヴァントがここまで自由に行動、活動できるのはここ、カルデアぐらいであろう。聖杯戦争の歴史を紐解いても、ここまでフリーダムになれるランスロット卿もこれぐらい……原典であっても、こんな姿は見られないだろう。そう思うとかなりレアなものが見れているんじゃないか? と、思わなくもない。

 

「えーと……何の話だったっけ……そうだそうだ、マスターの話だ。良く人間の体一つであそこまで立ち向かえるよな。正直俺、師匠出てきた辺りであ、これもうだめだ……って軽く思っちゃったわ。いや、マジで心が折れそうだった」

 

「神羅万象を知り、そして宇宙を己の体の内に収め、合一する事で始まりとするインドの聖仙か―――正直、ちょっとインフレのし過ぎではないか? いや、中華の方も割とおかしいインフレをしているのではないかと思うが。武術を通して宇宙と合一するってなんだ」

 

「それを言うなら英国のカリバーとかもおかしいだろ。なんで比較的近代のクセしてあそこまで出力が出るんだ。星の聖剣ってなんだ。ぼくのかんがえたさいきょうのつるぎという奴か。アホにも限度があるぞ。いや、まぁ、それで助かっているのだから多くの文句は言えないのだが」

 

「More servants yet to come now……inflation just yet started」

 

「や・め・ろ」

 

 三人で声を揃えてランスロットの言葉を止める。これからさき、更にサーヴァントが来るからインフレなどまだ始まったばかりでしかない、とか言われても正直困るのだ。滅茶苦茶困るのだ。対ビースト相手でもなければ本気で戦う事が許されない自分は他のサーヴァントの様に霊基リミッターを解除して殴り合うとか、そう言う選択肢を取る事が出来ないのだからほんと許して欲しい。

 

「これはアレかなぁ……俺がもっと修行しなきゃ駄目だなぁ……」

 

「……そう言えば君はまだ生きている人間だったな」

 

「英霊とは大半がサーヴァントとして召喚されている時点で弱体化している―――これから更に()()と近い性能を保有したサーヴァントが出現する事を想定するのであれば、此方もそれ相応に戦力強化をする必要がある、か。サーヴァントは霊基再臨と種火さえあれば霊基が許せる範囲で限界まで強化が出来る……だが君とマスターの場合は違うだろう?」

 

 やめてくれよ、と呟く。

 

「ただでさえ地雷女(スカサハ)(グル)の姿を見てちょっと自分の弱さを再確認しているんだから……」

 

 部屋の隅でガタリっ、と音がした。視線を向ければ部屋の隅で大人しく飲んでいたクー・フーリンがスカサハの名前に反応してちょっとビビっていただけらしい。アレは相当重症だな、と全員で眺めて、優しい視線を送ってから視線をそらす。誰だって古傷はある。誰だってネタにしたい事がある―――だけど世の中、ネタしてはならないものも存在するのだ。影の国の女王スカサハ、そのキチガイっぷりは俺達の胸の中に深く刻まれた。

 

 トラウマとして。

 

 殺してくれと言いながら全力で戦うバーバリアン。アマゾネス。ランサーの皮を被ったバーサーカー。

 

 もう二度と来ないでくれ。

 

「まぁ、俺も実際、もっと強くなれるんだろうなぁ、ってのは(グル)に軽く稽古を付けて貰って思っている事だし、ちょくちょく修練を今もやってるんだよ。流派とか近いからラーマに武芸の修練の手伝いをちょっと最近頼んでみたんだけど……アレ、マジヤバイ。超ヤバイ。悟りとか読みとか封じた純粋な武芸の勝負に入ると一本も取れないマジヤバイアレなにヤバイ」

 

「そんなにか……」

 

 ラーマ―――第五特異点で出会った理想王ラーマは恒例の特異点クリア後ガチャで見事仲間になったサーヴァントだ。サービスとして呪いを解除したので、運が良ければ追加のガチャでシータも来れるだろう、と軽くフラグを立ててみたら次のガチャで見事シータの召喚に立香が成功してしまい、そのおかげで物凄いあの理想王に感謝されている。正直な話、少年時代に一度(グル)を倒した事のあるという逸話の持ち主であるだけに、頭を下げられた時はかなり胃が痛かった―――とはいえ、つまりは武芸が(グル)レベルで磨かれている人物でもあれば。

 

 読みの勝負へと入る以上は悟りのある覚者は敗北しない。それを抜きにする事で純粋な武芸の勝負を行える。その領域に入ると割と人間やめてるとしかラーマの武芸は表現できなかった。

 

「史実、伝承、神話の三ランクでサーヴァントの実力は大体分けられる。一番面倒な概念はこの場合忘れるとして―――伝承と神話クラスのサーヴァントの間にはどう足掻いても埋める事の出来ない大きな実力の差がある。神話をベースとした物語は史実や伝承の様なリミットや制限がまるで存在しない。思い描くままが彼らの強さだ、やはりサーヴァントとして見るなら神話出身のサーヴァントが頭一つ抜けている」

 

 エルメロイ2世の言葉を受けながらバーの隅でスカサハの悪夢を忘れようとするクー・フーリンの姿を見る。確かに、心臓に必中する槍なんてものは神話クラスでもないと物語に出てくるのが許されないような武器だろうなぁ、とは思う。投げたら心臓に突き刺さるってなんだ。刺さる瞬間さえ用意すればほぼ無敵じゃねぇか、と叫びたい。

 

「神話クラスはほんと卑怯……」

 

「……第五特異点の大地で見たあの神話クラスのサーヴァント、これから先ああいうのが増えてくると思うと、少し不安を覚える」

 

 エルメロイ2世のその懸念は真っ当なものだ。

 

「戦術や戦略があったとする―――神話出身のサーヴァントはそういうのを単身で塗り替えたり破壊したりする事を何度も繰り返してきた連中だ。考えるだけ馬鹿馬鹿しい。此方から相性の良い相手をぶつけるか、或いは神話になぞって弱点で解体するか……それぐらいしか対処する方法がない」

 

 神話クラスは反則だよなぁ、と納得する。スカサハもアレで神話クラスの住人だ。彼女の場合はアレが本体であったのだが、逆にいえばアレぐらい強いのがサーヴァントとして出現する可能性が高いとも言える。

 

 人理定礎が乱れている。

 

 これから向かう先、更なる人理の魔境は崩壊している。そしてその中でこそより強力なサーヴァントや存在は出現する。アルジュナやカルナ級がこの先、敵として出現しないという保証はないのだ。無論、それに対応する為の切り札なんてものは用意しているし、誰だって負けるつもりはない。だがそれはそれとして、一振りで山を消し飛ばすような相手が出現する事に関してはモノ申したい。いや、だって、こっちは生粋の人間だし、という話だ。

 

「……鍛えるしかないなぁ」

 

「ご自慢の救済光はどうした」

 

「本来の出力で発動させると俺が怒られるから……ほら、俺新人だし」

 

「覚者界には上下関係や新人や先輩後輩関係があるのか……」

 

 いや、だってほら、どの人も基本的に恐れ多いですし? と声を震わせながら言うと、バーに集う男共が腕を組み、うん……と小さく頷いて納得してくれた。

 

 サーヴァント界にはサーヴァント界の複雑怪奇な事情があれば、生きている人間にも複雑な事情があるのだ―――色んな意味で。

 

「生き残るには強くならなくてはならない―――立香だけじゃなくて俺もそうである必要があるのが、辛い話だ。もっと人生楽になってくれないかなぁ……」

 

「何? 月で聖杯戦争がしたいって?」

 

「ゴータマさんの居る所はやめよう? ね? 冗談にならないから」

 

「根源接続者にも弱点はある、と」

 

「そこ無駄に冷静にメモるのやめろ」

 

 ―――男の飲み会はこの後も続く。




 CCCイベ来たって事で軽くオリパート削除してイベントの接合性とか、そういうのを取る方向性で。
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