『3……2……1……いぇーい! コガネTV、メインキャスターのイチゴちゃんでーす! なんとなんと、今回は前回のヒントで解った人もいると思いますが、アローラに来ました―――! ハイ! そうです! 今回はアローラ地方から特別配信ですよ―――!』
肩を揺らされ、閉じていた目が開く。欠伸を漏らしながら目をゆっくりと開けた。横から入り込んでくる光に目を細めながら指で軽く目頭を揉む。気づけば機内は少々騒がしくなっているようで盛り上がる様な喧騒が聞こえてくる。まぁ、それなりのメンツが今、この飛行機の中には集まっているのだから、騒がしくない方がおかしいだろう。そう思いながら横に座っている人物へと光を避ける様に視線を向けた。
「ほら、もうそろそろ到着するわよ」
「悪い……ふぁーあ……」
欠伸をもう一度漏らしながら軽く首を回す。銀髪をサイドテールで今日は纏めている彼女は此方の顔を両手でつかむと、軽く気合を入れるように頬を叩いた。それで一気に目が覚めた。今度はありがとう、そう告げて横の窓から外を見た。
『さぁ、今、私はアローラ地方の四島であるメレメレ、アーカラ、ウラウラ、ポニ島の内メインとなるウラウラ島に来ています! え? なんでそんな場所に来ているのか? メインって何がメイン? そんな馬鹿な疑問をしている人はまさか……いませんよね? もしいたとしたら失格ですよ? 人間失格ですよ! 今! この時代を生きる人間として失格です! でーすーが? このイチゴちゃんはとーっても優しいので、そんな人間失格の方々にも解りやすい様に説明しちゃいまーす』
窓の外からは無限に広がる海の姿、そしてそこに浮かぶ四つの島、そこに囲まれた一つの海上施設の姿が見えた。やはりホウエンと比べると一つ一つの島が小さく感じられるが、全部合わせれば同じか……それ以上の大きさはあるか、と感じられる。数百を超えるトレーナーたちが戦う為の決戦の地としては十分だろう。
『全国のトレーナーが待っていた! エリートトレーナーが待っていた! ジムリーダーが待っていた! 四天王が、チャンピオンが、そして
アローラ地方。一番発展し、住みやすく開拓されているアーカラ島へと向かって飛行機は進んでいた。後1時間もしない間にこの飛行機もアローラの大地を踏むだろう。そんな事を考えながら海の方へと視線を下せば、ラプラスの群れが水面を滑る姿が見えた。カントー等では貴種扱いされるラプラスも、アローラ地方の気候が合致してしまった影響か大量繁殖してこちらでは全く珍しさが存在しないらしい。何とも面白い場所だ、とは思わなくもない。
『ポケモンマスター。トレーナーを目指した人間であればその称号を誰だって求める。だけど今まではチャンピオンを倒した相手に渡す名誉称号でした。ですがその名誉称号もついに終わりを迎えます―――そう、このアローラ地方で第一回ワールド・ポケモン・チャンピオンシップが開催されるからです! 今までは強者を示すものだった称号も、ついに世界に一つだけ、唯一、そして頂点に立つトレーナーにのみ与える称号となります。このアローラの地でついに、この世界で一番強いポケモントレーナーが決定します!』
「あ、こら! それは俺のピスタチオだぞ!」
「なによ、さっさと食べないのが悪いんでしょ? ほら、レッドも何も言ってないし」
「こいつは目を開けたまま眠ってるだけだ!」
「逆にそれはそれで恐ろしいわね……」
「れ、レッドさーん、おーい。……あ、本当に寝てる……」
大学のサークルかこれ、とでも言いたくなる騒がしさが後ろの方から聞こえてくる。旅慣れている連中ではあるが、そう言えば基本的に船旅ばかりだったから飛行機の方は経験が薄く、それで盛り上がっているのかもしれない。そう思いつつもう一度首を軽く回し、肩を解してから時間を確かめる。確かに、そろそろアローラに到着する頃だった。
『これから数か月に渡り、このアローラ地方では最強のポケモントレーナーを決める為のバトルが繰り広げられます。しかし数百人を超える規模のこんな大会、しかも一地方を丸ごと使ったルールなんて前代未聞、初めての行いです! おぉっと、一地方を丸ごと使った、という意味が良く解っていませんね? いえいえ、解っている人はいいんですよ。ですが解っていない人は本当に何のためにネットが存在するか解っているんですかぁ? それとも洞窟の中に引きこもって―――おっとぉ、リアルにそういうトレーナーいるからこれ以上はダメですね。それはそれとして、もしかしてアレカントー放送じゃありません? こっちが先にレポート始めているのに横で番組始めているの不敬じゃありませんか?』
しゃー、おらー! という声がするシートに備え付けられたテレビを消し去りながらシートのポケットの中に突っ込んでおいたパスポートなどを確認し、そして最後にもう一度だけ窓の外へと視線を向けた。どこまでも広がる空と海、そしてそこに浮かび上がる数々の島―――この全てが戦いの地になる。
ポケモンマスターの名を返上し、今、多くのポケモントレーナーがアローラ地方へと集っている。
王者の祭典。最強を決する戦場。ポケモンバトル史上最大の宴。それがアローラ地方という今までは潜む様に存在し続けた辺境で巻き起こるのだ。その最低エントリー基準はジムバッジを8つ揃えるという事。つまりは最低限で超・エリートトレーナーと呼べるような実力者ではない限り、参戦する資格もない戦い。
厳しい条件を乗り越えて、それでも数多くのポケモントレーナーが世界中から集まる。最強、その言葉がふさわしいポケモントレーナーが自分であるという事を証明するその為だけに。
ポケモンマスター、その称号の為だけに。だがその称号は人生を乗せるだけの重みがあった。それがポケモントレーナーという生物。ポケモンを戦わせることに人生を狂わされた修羅共。戦い、勝利し、敗北し、その果てにある栄光だけを求め続ける人格破綻者共。
だが忘れられない。考える時の焦りを、戦術が合致した時の爽快感を、蹂躙された時の憎しみを、裏を掻かれた時の驚きを―――その全てが楽しく、どこまでも血液を沸騰させてくれる。戦い、そして勝利する。その為にもてる信頼と力の全てを尽くし、勝利し続ける。その為にやって来た。
最強を決する土地、アローラへ。
「トキワ・オニキスさんとトキワ・エヴァさんですね? 滞在目的は?」
「俺はPWCの出場で―――」
「私はその夫のサポートに」
「PWCの出場ですね……成程。通っていいですよ」
パスポートを受け取りながら入国審査を抜け、その向こう側に抜けた。それに続く様に黒いワンピース姿の彼女がついて来た。銀髪のサイドテールを揺らしながら横についた彼女は呆れた溜息を吐いた。
「シロガネの老害を思い出すわね。顔は笑っているけど目が笑っていない。どこか見下している感じがあるのよね」
「アローラは閉鎖された環境だってククイに言われてたっけ。あんまり余所者には優しくないらしい。まぁ、1年もいりゃあ話は変わるらしいけどな」
「それにしたって空港の人間をどうにかできないのかしら」
「ま、人を選べるほどいる訳じゃないって事さ。ま……それにしてもついに来たな、アローラに」
カントーから飛行機に揺られ数時間、漸くアローラ、アーカラ空港に到着することが出来た。複数の島から構成されるアローラ地方の内、このアーカラ島は数年前から国際化に向けて整備が進まれていた。この空港も数年前まではなかったもので、大量の観光客とトレーナーを迎える為に急激に建設されたもので、おそらくその職員も急いで集めた者ばかりなのだろう。入国審査の動きがどこか鈍く感じる。
「ま、言う必要ないと思うけど気負いすぎないようにね?」
「解ってるさ、それぐらいは」
腕を組んできたエヴァの言葉に苦笑を返す。元々は仮面夫婦だった筈なのに、今ではこうやって普通に夫婦として一緒に居るのだから、実に不思議な関係だと振り返れば思える―――とはいえ、ここに至るまでの道のりが不思議だらけなのだから、こういう夫婦関係の構築もまた一つのやり方なのかもしれないと思えてしまう。
そう思える程度には自分も此方の人間として馴染んで―――生きている。
「あー……長かった」
「エコノミーとかの方を見ろよ、まるで列が進んでないぞ」
「ひぇー……」
「……」
カントーの少年少女―――という年齢では呼べなくなったトレーナー達が同じく入国審査を抜けた。レッド、グリーン、ブルー、そしてイエローの四人組。かつては少年少女とでも表現すべき彼らも、若い大人とでも表現すべき年代に入っている。もう、最初に見た時から何年も経過している彼らは逞しく、或いは可愛らしく、健康に成長し、このアローラの地を此方同様に踏んでいた。そんな四人の姿を見つつ、呆れの溜息を吐く。
「結局……四人分のチケット代出しちまったな……」
「そこらへんは本当にありがとうお・じ・さ・ま」
「今からカイリュー便でカントーへと送り返してやろうかブルー」
一切悪びれる事のないブルーの様子に脅迫を返せば、すみません、すみませんと麦わら帽子を落としそうになりながらイエローが勢いよく頭を下げる。そのイエローの姿を見てあー、と声を零しながら片手で止めてくれ、と止めようとする。それを見てブルーが意地の悪い笑みを浮かべてる。これだからカントー時代の知り合いはやり辛いんだよなぁ、と溜息を吐く。
「イエローとレッドはいいんだよ。俺が文句を言いたいのはそこの青と緑の方だよ」
「おいおい、そんな悲しい事を言うなよオニキス。俺とお前の仲だろう?」
「そうよ、一緒に冒険した仲じゃない」
「お前ら自費でファーストクラス取れるぐらい余裕の財産持ってるだろうが。ガキの気分のまま他人にタカってないで自分の金で経済回せよ……」
「他人の金で旅行するのが楽しいから嫌よ」
やっぱブルーだけは殺さなくてはならない。そう心の中で密かに確信しつつ、レッドがややそわそわとしながら腰のモンスターボールを触ったり手を離したり、と落ち着かない様子を見せている。その姿を見て、無言で数秒間見つめてから、
「……PWCはまだはじまってないからな?」
「……そうか」
残念そうな気配を零しながらボールから指を離すが、数秒後にはトレーナーを求めて周辺に軽く探る様な視線を向けながら再びボールいじりに戻っていた。その姿を見て、軽く溜息を吐くと、肩にエヴァの手が乗せられた。
「性分的に見捨てられないんだから諦めなさい」
「いや……うん、まぁ、そうなんだが……」
ぽんぽん、と肩を叩くエヴァの言葉は認めざるを得なかった。カントー以降の付き合いの連中なら、こう、まだいいのだ。だけどレッドを初めとするカントー出身の連中はまだ未熟だったころの自分を知られている。その事もあってどうにもこの連中には弱かった。元々は経済的に不安で放置してたらいつまでもアローラに到着できなさそうなレッド、そしてアローラまでレッドの応援に行きたいけどそんな経済的余裕が欠片もないイエローの二人だけをアローラへと此方の奢りで連れてくる予定だった。
それがブルーとグリーンにバレ、結局、二人の分のチケットと部屋代まで出させられている。なんというか、もはやその辺の話術、交渉術に関しては脱帽だった。どこから嗅ぎ付けたのか、気づけばハイエナの如くグリーンとブルーが群がっていた。
ただ、まぁ、この連中を見過ごすというのもまた難しい話だ。何となくだけど、心配というか面倒を見たくなってしまう。未だに連中に対する子供であるという認識を捨てられていないのは……此方の方なのだろう。
今は起業して金もあるからタカられる事自体そこまで苦ではないのだから、別にいいのだが。ともあれ、カントー勢の逞しさに笑い声を零しながら荷物をコンベアから下ろし、それを引きずりながらアーカラ空港から出れば、そこには大量のニュースキャスターや新聞記者の姿が見える。一応スケジュールを伏せてアローラへと来たんだけどなぁ、と思いながら空港の外、道路の方にはワゴン車が止まっているのが見える。車の横に立っているアロハシャツに短パン姿の男は、自分が雇っている部下の一人だ。その方向へと向かおうとするとニュースキャスターやら記者やらがマイクを片手に迫ってくる。
「アローラオニキス選手! 此方チャンネルPXですのシズミです。ポケモン協会を通して既にPWCへの参戦の意思を見せているオニキス選手ですが今回の戦略に関しては」
「言うと思ったか馬鹿め。少しは脳味噌を使え」
「レッド選手! ファンです! 結婚してください!」
「ダメ! ダメです! レッドさんも聞いちゃダメー! 下がってくださいー!」
「あ、君、今夜一緒にディナーとかどうだい?」
グリーンだけ逆に一人、食って掛かってナンパしているのをブルーが掴んで引きずっている。鬱陶しいレポーター陣を抜けて車まで近づけば、部下と彼のカイリキーが此方の荷物を取ってそれをワゴンの後部に積み込む。その間にさっさと中に乗り込み、冷房の効いた車内のシートに背を預ける。
「こうやって突撃取材を受ける姿を見ていると改めて有名人だって認識するわよねー、貴方達って」
後部座席に座ったブルーが辟易とした様子で言葉を吐いた。無言で座るレッドの横にすかさずイエローが座り込み、グリーンがそりゃそうだろ、と言葉を吐いた。
「そりゃあそうさ。俺達はポケモン協会調べでワールドランキング20位圏内のトレーナーだしな」
ワールドランキング。つまりトレーナーの世界ランキングになる。ブルー、イエロー、エヴァはポケモントレーナーとしての本業はやっていない為、自分とレッド、そしてグリーンの事になる。それでも世界の中で超トップクラスのトレーナーが纏まって移動しているのだから、メディア側からすればめちゃくちゃ良い餌になるというものだろう。一応スケジュール隠していたんだけどなぁ、と嘆くが、フーディン等のエスパーポケモンを使った《みらいよち》で有名人の足取りを追う、というのは昔からちょくちょく利用されているやり方だ。
まぁ、ポケモンが存在する以上、完璧な隠蔽というのはほぼ不可能なのだから、ここはきっぱり諦めたほうが良い。
「どうも、お待たせしましたボス。それじゃあハノハノリゾートまで車を走らせますね。あちらの方はホテルから敷地内への取材陣の進入禁止がある上にエスパーポケモンによるセキュリティもあるので、一安心ですよ」
「ご苦労。流石一流ホテル、という所か」
「腐っても超高級リゾートホテルだしね。そこらへんはしっかりして貰わないと困るわ」
PWCとか関係なく、完全にリゾートを目的としてやってきたブルーの目が輝いて見える。本当におまえの分だけは金を出さなければ良かった、と今更ながら後悔しつつ、車の窓の外からアローラ・アーカラ島の様子を眺めた。
空港からリゾートへと続く道路は整備されているが、整備されているのは道路だけで、その周りは伸びきった草木によって荒れ放題の姿を晒していた。如何にも開拓途中、という言葉がぴったりな光景だった。とはいえ、その中にもポケモンの姿が見える。猿の様なポケモンが木々の間から此方を眺め、通り過ぎて行く。
「高所得者向けの観光地にアーカラ島はなっているし、このロイヤルアベニューってのにも興味あるのよね。でも高級ブティックは違う島にあるらしいのよねー……」
「あ、私ちょっと興味あります」
「あ、島移動用のクルーザーを期間中は貸切る予定だし、私も一緒に行っていいかしら?」
「イエローちゃんもエヴァさんも大歓迎よ。とりあえずホテルで荷物置いてからどこかに行かない?」
女子たちが早速きゃっきゃ言い始めるので肩身の狭さを感じつつ、サクッと車内の座っている場所を移動し、女子たちが話しやすいように前列を女子、後列を男子で固めた。ポケギアを取り出し、そこから立体スクリーンを投射しつつ、このアーカラ島を確認する事にする。
「このロイヤルアベニューではバトルロイヤルで遊べる施設があるらしいな」
「へぇ、あのゲテモノルールか。……そこそこ人気があるっぽいな?」
「ちょっと興味あるけど……やっぱり本命はポニ島のバトルツリーかなぁ」
「やめろ」
レッドの言葉にグリーンと二人で声をそろえてレッドのバトルツリー行きを阻止する。数年前のサブウェイ失踪事件を思い出す。その手の終わりのないバトル施設、その中にレッドが飛び込むと最低で半年間は出てこなくなるのだ。バトルを終わらせないので。とはいえバトルツリーやバトルロイヤル等、アローラでしか見ない特殊なバトル文化というのはあるらしい。
それに興味がないかといえば嘘になる。とはいえ、今は調整やら経験値を稼ぐ事の方が大事だ。特に経験値稼ぎは一番重要だ。
「アローラに到着したし、ホテルに到着するまで一回ルール部分をおさらいしておくか」
良い時間潰しになるだろうと認識しつつ、PWC、つまりポケモン・ワールド・チャンピオンシップに関する基本的な情報を確認する。
PWCに出場できるポケモンは予選時点で8匹まで。出場資格は予選の見直しによってジムバッジを8つ集めた者、という条件になった。形式は予選から本戦・前半、そしてファイナルリーグという形になる。
メインとなる6匹に、サブ枠である2匹まで。無論、最低出場ラインは6匹である為、サブはなしでもいいとなっている。
メインとサブの違いは連続出場に関する制限になる。メインは全試合に出場することが出来る。だがサブのポケモンは
道具、逃亡などに関しては一般的な公式戦ルールとは違いがない。ただこのPWCにおける今までと最も違う部分は、レベル制限の撤廃、そして準伝説とメガ個体に関する扱いだ。
準伝説と呼ばれるポケモン達の使用制限の解禁、そしてメガ個体の複数所持の許可だった。つまりはラティアスやラティオス、ボルトロスや伝説の三鳥などの準伝説級のポケモンの使用制限が解禁されたのだ、メガ進化ポケモンの複数所持と共に。
この最大の理由はアルセウスによる環境制限の解除にある。
つまり
何せ、完全な格下と戦っているようでは
つまりレベル50がレベル10を10000匹倒してもレベルは上がらず、レベルを維持する事が出来ずに
「現在のポケモンバトルを見た感じ……最低限
グリーンが環境を纏めた資料をポケギアで確認しながら呟く。その言葉に頷く。
「今までの大会とかはある程度の公平性を保つ為にレベルを揃える事もあったけど、レベルキャップが解放された今、レベルを上げる能力もまた実力の一つとして認識されている。レベル100に到達したところで今までの環境、育成メインのトレーナーには辛い環境だったし、漸く追い風が来たって感じだな」
「まぁ、育成型とそうじゃない奴で平均10~15レベル差、俺やお前のような奴で20レベルは環境平均に差を付けられるか。お前のエースが確か今―――」
グリーンの言葉にそうだな、と返す。
「サザラが今トップで
撃墜数が一番多いのが理由だ。おそらくメインパーティーの中での撃墜王だ。ホウエン以来、更に強くなっている。天賦だから、というよりは本人自身が戦いという行いその物に対して相性が良いからだろうか。まぁ、自分が保有するメインパーティーのアタッカー、その二枚看板の一人だ。
自分とグリーンは育成能力がズバ抜けて高い―――その為、環境平均よりも遥かに強く、レベルを高く成長させることが出来る。1回のバトルで得られる経験値の量が違う。簡単に言えば常時しあわせのたまごを使っている様な状態だ。実機での話を出すなら、これだけで数値に20~30もの差がつく。
レベルが相手よりも高い、というのはそれだけ打点を高められ、そして耐えられるという事でもある。
そうやって強く育成したポケモンを―――倒してレッドが経験値を引っ攫って行く。
「ぶい」
「ぶいじゃねーよ」
「相変わらずお前の勝率おかしいんだよ」
レベル上げと能力調整の為、PWCに向けて行った自分とグリーンと、そしてレッドの小規模なマッチ。何度か繰り返しながら戦績を収める。その結果、
自分とグリーンが戦績4:6と6:4で5:5を行ったり来たりする結果の中、レッドだけ3:7と超安定して勝率を固定している。
赤帽子、絶対勝利じゃなくなってもその勝率の高さは一向に衰えない。純粋な化け物である。
「ただそこら辺を抜けばほとんど通常の大会とレギュレーション周りは変わらないんだよな」
「まぁ、そこはポケモン協会が徹底して監視しているからな。準伝説が今回通ったのはそれが世界に一匹しか存在しない訳ではないという事が理由なのと、それらを使役できるのもトレーナーの実力……って理由からか」
伝説の使用禁止? 当然の措置である。
ホウエンをみりゃあその理由は良く解る。試合の前に島ごとスタジアムが沈む。
「んで、今公開されているのは予選の形式だけか」
PWC予選は数百を超えるトレーナーを振るい落とす為の試練だ。数百を超えるトレーナーを本戦の百数名まで絞り込むことが目的となっている。その形式は
参加者には毎日メールで対戦相手が送られ、そのトレーナーを相手にアローラ地方内でバトルを行う。完全なフリーフィールドバトルとなっている。動ける場所、そして平坦なフィールドであるスタジアムとは違い、アローラ地方の雄大な自然の中を大いに利用した予選ルールだった。
まぁ、アローラ地方そのもののPRを兼ねている部分はあるのだと思う。とはいえ、フリーフィールドは
まぁ、どちらかというと
「アローラ地方は環境保全の為に、専用に訓練された移動用のポケモンではない限り、ポケモンを使った移動が許可されてない地域ってのが地味にキツイ」
「あー……移動制限があるのか」
「まぁ、これに関しては俺が登録申請しておくから、明日には移動用のリザードンでも借りるか」
自由に《そらをとぶ》が使えないのは地味に辛いところだ。ここにPWCの為に来た人間は全員、嫌でもアローラ文化について学べ、という事なのだろう。面倒だがバトルをするためなら我慢できなくはない。
そうやって、男3人であーでもない、こーでもないとPWCに関する話を続けているうちに、やがてアーカラ島―――アローラ地方最高最高級のリゾートホテル、ハノハノリゾートへと到着する。アーチを抜けて入るリゾートはアローラに存在する他のリゾートやホテル全てを押しのけた最高のクオリティを保有している。
ワゴンが止まり、降りたところでベルボーイ達が荷物を運ぶために待機しており、チェックインを済ます為に他の連中が降りて、ロビーへと向かって行く。自分もその姿を追いかける前に足を止め、運転席にいる部下へと視線を向ける。
「ご苦労。また何かあったらこっちから呼びつけるが、日中だけだからこの後は楽にしておけ」
「了解ですボス。OBC社員一同、アローラ支部でいつでも動けるように待機しているので遠慮なく頼ってください! それでは!」
起業する際、部下の育成や統率のノウハウをサカキから教わったのだが、そのせいかなんか、部下の成長方向が妙な感じがするが、ロケット・コンツェルンでよく見る感じだったし問題ないな、と断言しながらハノハノリゾートから視線を反らし、ここから見えるアローラの大海原を見た。
その向こう側にはポニ島やウラウラ島等が見えた。これからこの全てがバトルの舞台となる。
「……なるぞ」
その呟きに、ベルトのボールから強いポケモン達の意思を感じた。
「再び、ポケモンマスターに……!」
という訳で開始しましたアローラ編。誰が一番強いのかを決めるという戦い。データを作り、用意し、そして戦うのだ……俺が吐血しながらデータを作って! 以下、オニキスに関する今期基本データ。
https://www.evernote.com/shard/s702/sh/e031413e-21af-4047-a2a0-d3675340875f/b6ccd5cbdc9b28da2364448f1539592c
オニキスは能力に関しては成長がほぼ頭打ち、後は経験を重ねて指示を伸ばして行くのみという段階に来ています。つまりピンチに覚醒して逆転! ……みたいな展開はゼロである。確率論が仕事をせずにダイスビッチが股を開いた場合は私の管轄外である。
ともあれ、ルールの細かい部分やバトルの解りやすい表示とかは裏で整理済みなので、ちょくちょく情報公開していけるかと。
今期は手持ちデータが全部完全なデータ化されている上に公開予定なので、読みながら何が起きたのかが解るかなあ、というアレ。まぁ、ポケモンが出たら公開って事で。