白日終点   作:てんぞー

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EX-BD Renegade

 ―――カズデルで生きるのは難しい。

 

 特にアーツにも頼れない女が1人では。

 

 貴族の腐敗が激しいカズデルでは平民は傭兵となってカズデルを出るか、それとも貴族の餌になるしかない。目立つ産業も特産もなく、あるのは源石と鉱石病と、戦う為の力ばかり。サルカズが傭兵と戦いを生業として生きて行く事は何の不思議もない。だからサルカズは自然と戦う事を選ぶ。そして力のない奴はどうなる? 当然淘汰される。だから女や子供は基本、媚びる。力のある奴に。或いは受け入れてくれる奴に。

 

 そしてそれに失敗する様な奴はあっさりと捨てられる。

 

 あたしが媚びる? 他の男に? サルカズに?

 

 冗談じゃない。

 

 プライドなんてものは犬に食わせた方が遥かに有意義だろう。だけどそれが出来なかった。どうして、と言われると言葉に窮する。だけど事実としてあたしはそれが認められなかった。媚びたような声色、態度、仕草―――吐き気がする。そこまでして生き延びなければいけない程にこの世は素晴らしいのだろうか? そんな風には一度も思えなかった。少なくともカズデルのサルカズ達は決してそう思わないし、生きているのも戦っているのもただの流れで惰性だろう。

 

 だからあたしは抗って、極々当然の様にはじき出された。サルカズのコミュニティは決して繋がりが強い訳ではないが、それでも個人個人は強い。サルカズの多くは戦士で傭兵なのだから当然と言えば当然で、連中は殺す事に躊躇なんてしない。殺す時はサクッと痛みもなくあっさりと殺してくれるのだから。だからコミュニティに馴染もうともしないあたしが同じような結末を迎えるのは至極当然の帰結でもある。

 

 そしてそこであたしを拾ったのがあの女だった。

 

 ”姉さん”。

 

 彼女とテレジアを想う時は今でも心が掻き乱される。言葉にできない感情の奔流が胸の中を渦巻く。それだけあの二人が与えた影響と存在感は別格だった。あの灰と塵に埋もれたサルカズの都、カズデルの中で唯一輝いているのが彼女たちだけだと思えるぐらいには。鮮烈に燃えて、輝いて、そして気づいた時には消えて行く。心に傷跡だけを残して消えて行く事を躊躇しない彼女たちは。

 

 あたしを―――サルカズとしての在り方を、永遠に変えた。

 

 傷を癒す為の場所を求めて血溜まりの井戸に迷い込んだのは今世紀最大の不幸だったのかもしれない。実際の血は流れてないだろうし、血の跡なんかもなかった。だがそこには噎せ返る程の血の気配があった。何らかの怪物がここを根城にしている。その確信が踏み入った瞬間にあった。だけどもう、どこかに行くだけの体力も気力もなく、どうせなら天運をその怪物にでも投げ出してみれば良いと思った。

 

 そして、”姉さん”と出会った。

 

 名前のない怪物。

 

 名前を持たぬが故に無形。

 

 名前を持たぬが故に可能。

 

 存在を定義できないからこそ何にでも為るし成れる。その美しい女はそんな怪物だった。纏っている格好はぼろぼろで汚く、一目でスラム出身のサルカズだと解る。だけど身なりに反するように肌も、髪も、角も、そしてその目も……全てが芸術的な美しさを保っていた。いや、あえて言うならその纏っている襤褸のおかげで更にその輝きが目立っていた。それこそ貴族共が見れば”宝石”として飾りたがる程度には。それだけ美しい見た目に反してその女から感じたのは血の匂いを抑え込んだものだった。それは彼女がこの廃屋の主であり、天運にも見放されたのだと理解するのには十分すぎるものだった。

 

 何にもなれず、何も得ず死んでゆく―――サルカズとしてはごく普通の事だった。

 

『こんばんはサルカズ。そこ、俺のベッドなんだけど』

 

『大丈夫か? 傷を見せてみろ。治療系のアーツは使えないから包帯を巻く程度の事しかできないけどな』

 

 訳が分からなかった。だけど治療された時にはこの怪物が本当にこっちを食うつもりはないんだと理解した。廃屋の中で美貌の怪物と出会うなんて、一体何の冗談かと思った。それとももしかしてソッチ趣味だったのか? そんな事を考えながらも女は、怪物は、しっかりとあたしを治療した。治療してちゃんと服を与えた。アレがあたしを食わずに放置するのを見るのは、心臓に悪かった。何を求めるのか。何がしたいのか。それが全く理解できなかった。

 

 このカズデルは魔都だ。無償の奉仕なんてしたがる奴は存在しない。死にかけの老婆がいればみぐるみを剥いで放置する。本当の意味で生きているサルカズなんて早々にカズデルに見切りをつけて出て行った奴らだけだ。ここに残っているような奴でそんなまともな考えを持っている奴なんていない。だというのにこの女はあたしを助けた。それがただただ良く解らなかった。だけど数奇なもので、”姉さん”との生活は続く。

 

 甲斐甲斐しくとはいかないも、不快感のない程度には面倒を見てくれる彼女の廃屋に住み着くのは傷を癒す都合上、勝手の良い事だった。そして彼女と共同で暮らしていれば段々と彼女という人物がどういうものかが見えてくる。

 

 彼女は、極度に暴力を嫌う生き物だった。

 

 いや、違う。

 

 正確に言えば()()()()()()()()()()()()サルカズだった。

 

 溺れそうになるほどの濃い血と死の気配が薄皮一枚、”姉さん”の下には詰まっていた。それを破裂させずに保っている魔法の言葉がラブ&ピースだった。

 

 ラブ&ピース、世の中愛と平和であれ。ラブ&ピース、暴力では先が続かない。ラブ&ピース、死と血に酔うのなんてくだらない。

 

 その言葉を自己暗示として口にする事で”姉さん”は自分の奥底に血に酔う死神の本性を押し込めていた。聞けば純血のウェンディゴと純血のブラッドブルードから生まれたサラブレッド、純粋な混血のサラブレッド。理想的な雑種。そこから生まれた怪物がこれだとすれば()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そう納得させる未完の怪物だった。自分をあるべき存在として定義しない、あやふやな存在だからこそ完成も全貌もない。ある意味、彼女が暴力と血に染まらないのは自分を定義しないサルカズの文化があったからこそなのかもしれない。それがなければきっと、この怪物は形を得ていた。

 

 誰にも制御できない怪物が。

 

 あたしは、”姉さん”と生活している内に徐々にそのミスマッチする外面と内面に魅了されていった。ちぐはぐなサルカズの本能と理性を流される事なく自分の意思で押さえつけながら、表面上は完全に制御していた。だがその中身が零れる時は多々あった。その時に限って彼女は縄張りに不審者が、侵入した者が、傭兵が、敵が、

 

 そんな理由で軽く血を流してくる。

 

 抗えきれないサルカズの本能が彼女を突き動かす―――だけど折れない。

 

 彼女はあたしが見る、初めてのサルカズだった。初めて本能と文化を否定し、自分の道を自分だけで選ぶ異形。そういう意味でも彼女は怪物だった。誰もが当然の様に思う社会の中で独りだけそれに抗って生きて行く。当然の様に排斥される思想を当然の様に保ち続けた。次第にあたしの興味は何時、この可愛らしい怪物が折れるのかというものへと変わって行く。そしてそれは段々と彼女という怪物自身への興味と愛着へと変わって行く。次第に彼女との共同生活を楽しみ、”姉さん”と呼び慕う自分の姿に驚いた。

 

 あたしが慕う? 媚びてる? この女に?

 

 だが不思議と悪い気分じゃなかった。前の自分が見れば銃で頭を打ち抜きそうな生活をしていた。だが居心地は悪くなかった。詮索する事もなく、お互いの気持ちの悪い部分には触れず、だけど尊重する事で自分の意思を守るという生活は。

 

 或いはそれは、この広いカズデルでもここだけで見れる景色で、ここだけで出来る生活だったのかもしれない。

 

 いずれは破綻しそうな”姉さん”との生活。

 

 だが不思議とそれが破綻する事はなかった。

 

 それは彼女が”殿下”に会いに行く時があったからだ。

 

 籠の鳥。囚われの姫。飾りの王族。最後の王冠。摂政の駒。サルカズの姫。テレジア殿下。

 

 度々廃屋を出ては”姉さん”はテレジアとの逢瀬を重ねていた。それこそ彼女がテレジアに会いに行く時はデートに行ってくるとからかえるぐらいの力の入れようだった。だが実際は、テレジアとの時間こそが彼女の心を支える最も重要な時間だったのかもしれない。”姉さん”の血と暴力の気配は常日頃、肥大しては抑え込まれている。だけどそれを一気に抑え込めていたのがテレジアとの逢瀬の時だった。まるで己がなんなのか、何を求めているのか、何になりたいのか。それを再確認できているかのようにテレジアとの逢瀬の後の彼女は、酷く落ち着いて安定していた。

 

 そこに、少なからない嫉妬を覚える事もあったかもしれないが―――それ以上に、サルカズ最後の王族に興味が湧いた。

 

 果たして彼女は、本当に噂されるだけの暗愚なのか? 本当に飾られるだけの王冠なのか? テレジアという人物は何者なのか―――摂政が支配するこのカズデルでは彼女を見る事も知る事も出来ないだろう。それだけ厳重にテレジアは警備され、守られ、隔離されている。その中で自由に会いに行けるのはこのカズデルで隔離している張本人である摂政テレシスを抜けば、”姉さん”ただ1人だけだった。まるで霧を掴んでいるかのような存在感のなさと非現実的では、どれだけアーツや技術を、感覚を研ぎ澄まそうが関係なくとらえる事は出来ない。

 

 誰も、彼女の本当を理解する事も触れる事も出来ない。だから止める事も出来ない。

 

 サルカズという種が生み出した怪物がテレジア殿下なら、サルカズという文化が生み出した怪物が”姉さん”なのだろう。

 

 知れば知る程魅了される。だがそれはある時、破綻する。

 

 ついに、テレジアとテレシスの対立が始まる。それまでは政争なんて存在しなかったテレシスの支配下にテレジアが横から殴りかかる事で入り込んだ。完全にテレシスの支配だったのに、テレジアは崩壊していた自分の派閥を一瞬で立ち直らせると全てをまとめ上げ、テレシスの統治と五分の勝負にまで持ち込む。もはやその手腕は異形という言葉でしか表現の出来ないありえない奇跡だった。1から10まで、どうやってテレジアが派閥を再編したかを理解できる人間はいないだろう。そしてそれに呼応するように”姉さん”は中身を抑える事を我慢しなくなってきた。

 

 徐々に、徐々に中身が溢れだす様に廃墟に消えてはサルカズを殺す。本人はそれをテレジアの為だと言っていただろう。だけどその表情にある楽しそうなものは、決して誤魔化せるものじゃなかった。殺せば殺すほど死の匂いを濃密に纏わせる姿は悍ましくも美しい。彼女が死と孕んで浮かべる笑みには壊れ行く者の美しさまで揃っていた。

 

 だけど壊れない。

 

 ”姉さん”の心は強すぎる。自分が何であるのかを理解しながらも折れず、曲がらず、そして突き進んで行く。”姉さん”は間違いなく自分の道を見つけていた。自分が何をすべきなのか、その明確なビジョンを抱えていた。ただ戦うのではなく、何のために、なぜ戦うのか。それを自分で決めていた。それを”姉さん”は共有してくれた。何になりたいのかを決める姿を見て、あたしもそれに影響されるように何をしたいのかを決めていた。

 

 そこであたしと”姉さん”の道は一旦途切れる。

 

 あたしは傭兵に、”姉さん”は死神に。

 

 己が何をしたいのか、それを見つけるべく戦場に出たあたしは戦没者の遺品を引き継ぎ、名前を得た。

 

 ―――傭兵のW、と。

 

 それから殺した。色んな手段を試す様に殺した。カズデルから離れず戦場を転々としながら殺して回った。ヘドリーの部隊は優秀だったし、勉強にも良い経験にもなった。どれほど殺せば”姉さん”の様になるのか。他にあんな怪物は存在するのか。それを確かめるように戦場を渡り歩いた。その時重宝したのは爆弾と爆薬だった。アーツを使わず、相手に悟られずに殺す事の出来る装備はまさしくアーツ適性の高いサルカズを殺すにはうってつけの装備だった。

 

 気づけばたくさんのサルカズを殺して炎の海に沈めていた。

 

 それでも”姉さん”の様な怪物をついぞ、見る事はなかった。

 

 戦場を転々とする。返り血を浴びて爆炎を浴びてどんどん屍を積み重ねて行く。その中で自制し、死体を前に笑い声を零さない事がどれだけ難しい事かを理解させられる。サルカズの本能は残酷だ。戦えば戦うほど強くなるのを実感するし、戦えば戦うほどこの戦場という泥沼から抜け出せなくなって行く。

 

 ……それから、再会を果たしたのは戦場で奇襲を受け、部隊が壊滅する寸前の時だった。

 

 最初に現れた時の様に、”姉さん”の登場は突然だった。まるで世界そのものから拒絶されているような怪物は、これほどまでになくはっきりと形が出来上がっていた。そう、”姉さん”にはついに名前が生まれたのだ。

 

 Grim。それが怪物の名前だった。

 

 どこの馬鹿がやってくれたのかは解らない。

 

 だがどこかの愚か者は名前のない怪物に識別票を与えて、本当の怪物を定義してしまった。そしてそれに血と死を与えて育ててしまった。再び戦場で再会した”姉さん”はこれまで見た姿よりも美しく、容赦がなく、そして残酷な死の体現だった。怪物だ、怪物が育っていた。強さを積み上げて最適化して、自分がそうみられる形に進化していた。そう、ケルシーとドクターの二人は最悪な名前を与えてしまった。死神であれと名前を与えた。だからそうなった。見れば解る話だった。ドクターとの相性が良いのも当然だ。アレはひたすら機能を削いで殺す事に特化して行く指揮を生み出してゆく。それに対応するのは死の化身だ。

 

 進めば進むほど何も残さない、何も残らない。

 

 だからこそそれに惹かれてしまう……どうしようもなく死に近しいからこそ、手を伸ばしたくなる。戦場で再会したその姿に手を伸ばしたくなる。

 

 そして、テレジアが現れた。

 

 テレジア、テレジア、テレジア。

 

 全てを狂わせた女。

 

 サルカズも、カズデルも、バベルも、あたしも、”姉さん”も。

 

 この世のありとあらゆる心を掻き乱して狂わせた女。彼女のカリスマに陥落しない者などいなかった。彼女の言葉に耳を傾けない者なんていなかった。文字通り、存在としての格が違った。全ての存在が戦闘を止めた。その中で唯一平静でいられたのは”姉さん”だけだった。つまりあの場で唯一対等でいられたのが”姉さん”だったんだ。

 

 それだけでテレジアが同格の怪物だというのが理解できてしまった。王族に対する忠誠心のないサルカズでさえこうなのだ。その存在は劇薬すぎた。

 

 だけど実際にテレジアと会って話して得た感想は首を傾げるものだった。

 

 気づけばロドス・アイランドの整備を手伝ってるし。何時も”姉さん”の部屋に入り浸ってるし。というかベッドを占領しているし。黙ればカリスマの塊であるのに変わりはない。強い意思がその体に満ちているのも事実だ。事実なのだが―――それ以上に、テレジアという人物はどことなく、少女らしい所を持っていた。まるで大事に育てられた花の様な、そんな可憐な乙女の様な一面を大事にしていた。

 

 そんなテレジアを見る”姉さん”を見て、視線を返すテレジアを見れば、誰がお互いの心を守ってきたのかが良く解った。彼女たちは2人である程度、完結している生き物だった。その関係性に他者を必要としない世界だった。

 

 そこに嫉妬を感じないと言えばウソだ。

 

 だけどそれ以上に二人と一緒に過ごす時間が楽しかった。バベルに来てからの日常はこれまでの戦場を転々としてたものとは違う刺激に満ちていた。ドクターの指揮下でこれまでの数倍の効率で敵を殲滅した。ケルシーの治療で傷を癒した。Logosにアーツの手ほどきを受けた。クロージャに装備を作って貰った。テレジアにサルカズがどうあるべきかを話した。”姉さん”と一緒に敵を殺した。

 

 バベルの日々はこれまでにない刺激と楽しみに溢れているものだった。だがその主張は愚かの極みにある。

 

 救う? 世界を?

 

 鉱石病を根絶する?

 

 治療方法を確立する?

 

 正気?

 

 それがどれほどの甘い理想であるのかを理解しているのか? いえ、理解しているのでしょう。理解した上でテレジアも、”姉さん”も、そしてバベルの人たちは全員その目的の為に団結していた。その意思の強さ、団結力、覚悟。それこそ金や地位などの誘惑ではどうしようもないレベルで芯の通った連中だ。その為にバベルに集っている。あの一番小さなアーミヤでさえバベルの理想の為に頑張っている。

 

 それを見ればテレジアは本気だし、”姉さん”も本気なのが解ってしまった。

 

 それで再び、あたしは考える。

 

 果たして、あたしは何になりたいのか。

 

 ―――ヘドリーとイネスは戦場に戻って行った。

 

 ヘドリー達にバベルの理想は通じなかった。或いは、根っからの傭兵だったのかもしれない。だがそれさえも自分で選んだ自由だ。彼らは傭兵という道を自分で選んで進んでいる……選ばされたのではなく。その気になればバベルから勧誘されていたのだからオペレーターとして働く事だって出来ただろう。だけどあたしはバベルに残った。或いはそれは、単純に”姉さん”とテレジアから離れたくはないという幼稚な考えだったのかもしれない。

 

 だけどその理想は甘そうながらもどことなく、見るだけの価値のあるものに感じられた。

 

 少なくとも、テレジアと”姉さん”はその選択肢に殉じた。

 

 文字通り死んでも意思を貫いた。

 

 あの日、あの時。”姉さん”が1度死んで、命をテレジアから拾ったその日。理想の為であれば死ねるという事実を理解し、テレジアがどれだけ想っていたのかを知った日。ドクターを殺しかけて、代わりにケルシーに殺されかけた日。

 

 漸く理解に至った。胸を占める喪失感と痛み、そして何よりも怒り。奪われる、奪われた事に対する怒り。あたしが欲しかったもの、欲しいもの、それを理解した時にはケルシーに話をつけてバベルを出ていた。装備はバベル製のものを手にして。

 

 再びカズデルへ。”姉さん”はテレジアに救われた。死と血に酔う怪物から本当の名前を授けられる事で怪物から人へと変わるだろう。だからあたしも変わらなくてはならない。何をしたいのかを見出して。何をするのかを決める。

 

 あたしは、W。

 

 あたしは傭兵。

 

 あたしはサルカズ。

 

 あたしが求める事は―――。

 

 

 

 

「W、ロドスがチェルノボーグに入った。予定通りのポイントだ。そこそこの大所帯だが」

 

「適当に巡回と警戒を誤魔化しておいて。ドクターは殺したいけど今はまだ殺しちゃ駄目。代わりに将軍様とパトリオットにロドスの到着を伝えておいて。お祭り騒ぎになったらどっちも必要になるだろうし」

 

 ふふ、と笑う。手の中にある爆弾のリモコンを軽く遊ぶように転がしてから腰のホルスターに落とす。

 

「ヘラグは解るが……パトリオットに?」

 

「言えばタルラの護衛に回るでしょ? ついでにあの龍女の邪魔にもなってくれる。パトリオットがいる前では本気は出せないわ、アイツは」

 

 とてもとても簡単な話。あのクソ龍女は人によって取る態度が違う。メフィストやファウストの前では優しく、パトリオットの前では誇り高い戦士の様に。だからそれを利用してパトリオットをタルラの前に送る。ロドスがいると知れば必然と警戒に回るだろうし、その為に護衛に回る。それは今日、この日ウルサスで我々レユニオンは素敵なパーティーを始めようとしているからでもある。

 

 ……反吐が出る。

 

 テレジアと同じことを口にしてやる事はその逆。殺したくなる程に素敵。

 

「レユニオンが祭りを始めればヘラグも行動を強制されるわ。そうすればロドスと合流するか、或いは脱出を優先するか……何にしろ、恩は売れるし腐らない手になるわ。そのままパトリオットとぶつかってくれるなら最高ね」

 

 事前にロドスに売った情報で”姉さん”を含めた戦闘部隊とエリートオペレーターが複数入り込んでいる。連中が連携してタルラにぶつかればそれこそ目があるかもしれない。守らなくてはならない状況で流石にタルラも全てを蒸発させるような灼熱は出せないだろう。そうなればロドスの人員であれば殺しきれる。

 

 これでも殺しきれなかったらそれこそドクターが必要だ。あの男ならタルラの実力を発揮させずに殺すだけの戦術を構築できるかもしれない。

 

「ま、なんにせよ祭りが始まるわ。レユニオンという炎が一気に燃え上がる祭りが」

 

 これから始まる事を考えると思わず笑い声が漏れてしまう。

 

 何をしたいのか、何をやりたいのか。自分の中でこの数年間、漸く答えが出て纏まっていた。ただただ選ばされるのではなく自分から踏み出して裏で手を回し、欲望を支配して前に進む。その為に犠牲が必要だというのなら屍を積み上げれば良い。

 

 このチェルノボーグは今日、良く燃えるだろう。

 

「さ、行くわよ。あたし達も疑われないように壊滅しない程度にロドスを殺して殺されないと」

 

「了解、通達しておこう」

 

 去って行く部下―――乗っ取ったヘドリー傭兵隊のサルカズ達は良く従ってくれる。

 

 果たして彼らが従うのがそれが戦場のルールだからか? それとも自分の意思でついてくると決めたから? それを直接彼らの口から聞く事はないだろうし、知る事もないだろう。そこまで、彼らに興味がある訳でも面倒が見切れるわけでもない。

 

 ただ1つ、解る事は。

 

 あたしはW、傭兵。

 

 あたしにはあたしの目的があって流儀がある。その為に手段は択ばないし、殺さなくちゃならない者は殺す。

 

 だからチェルノボーグは今日、燃える。

 

 レユニオンが世界に対して怨嗟の産声を上げるであろう事実を笑って見過ごす。

 

 あの龍女とカズデルの摂政王を殺す。

 

 ”テレジア”の死の責任を取らせる為に。

 

 その為には―――何もかもを利用して。

 

 自分の心さえも。




EX-BD
 つまりEXステージ、白日なのでBroad DaylightでEXBDステージ。なお1ステージしかない。これで終わり。

Renegade
 Wのテーマ曲。鷹さんはちょくちょくテーマ曲とかイメージソングとか動く背景絵込みで用意してくるのずるいと思う。

闇夜に生きる
 これを書いていた当初は大陸版の闇夜に生きるイベントしかなく、翻訳情報しかないので翻訳を確認した上で自己解釈等が諸々入っている。ただ本質としてはサルカズという種らしい生き方をしたWがテレジアを通して自分の道を選ぶ話だという様に感じてる。

Wの心
 ”テレジア”共によってぼろぼろ。一番の被害者。

対タルラ・チェルノボーグ戦
 原作+Grim隊+パトリオット+ヘラグという地獄絵図が広がる。


 Wの始点から物語は補完されてこれにて完全に終わり。
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