韓国・台湾・中国…出生率1.0未満の国が続出!日本を含む「東アジア」で少子化が急速に進んでいるワケ【東京大学名誉教授が解説】
配信
日本の人口はゼロになる?
佐藤:日本の人口って将来どれくらい減るって言われているんでしょうか? 井堀:政府の推計によれば、2070年には総人口が9000万人を下回り、高齢化率は40%ほどに達する見通し。ただ、政府の人口推計はこれまで過大推計になりがちで、実際には想定以上に少子化が進んでいるから、さらに厳しい数字になるかもしれないね。 佐藤:そんなに減るんですか……。このままのトレンドが1000年続いたら、いずれ日本の人口がゼロになっちゃうとか言われていますよね。 井堀:理屈の上ではそうなるけど、実際にはそこまで行く前に出生率が何らかの形で回復するとか、移民を積極的に受け入れるとか、いろんな要素が働くだろうね。それでも、今の1億2000万人規模から大きく減少するのは確実だね。 佐藤:日本の人口が減っている原因って何なんでしょうか? 井堀:一番の要因は出生数の減少。合計特殊出生率といって、女性が一生に産む子どもの数を示す指標が高度成長期までは2以上だった。でもその後ずっと下がり続け、今は1.5を下回る水準だ。2を下回ると人口は自然に減るから、少子化が進行しているわけだね。 佐藤:政府は人口推計を作っていますけど、いつも想定より出生率が低いって聞きます。 井堀:うん。政府は高位・中位・低位の3つのシナリオを用意しているけど、現実は中位推計よりも低い値に近く、実績がずっと見込みを下回っている。つまり、過大推計だと批判されている。結果的に、1年間に生まれる子どもの数も予測以下になり、最近では80万人を割り込んだ。2060年以降は50万人以下になる可能性がある。 佐藤:なるほど。合計特殊出生率が回復しないと、このトレンドは変えられないわけですね。 井堀:そうだね。少子化対策は焦眉の急だが、実際に出生率を上げるのは難しく、政府のシナリオと現実にギャップがあるのが今の状況だよ。
少子化はなぜ止まらないのか
佐藤:日本が少子化に歯止めをかけられないのは、具体的にどんな理由があるんでしょう? 井堀:要因はいくつも重なっていてね。まず、途上国では子どもが生産財だ。家の仕事を手伝ってくれるし、乳幼児死亡率が高いからたくさん産んで育てるインセンティブがある。さらに老後は子どもの経済力に頼るしかないから、自然と子だくさんになる。だけど先進国になると、そんな状況が変わる。 佐藤:具体的には、乳幼児死亡率が下がったし、子どもが親の仕事を手伝う機会もなくなったんですよね。そこに加えて社会保障が整ってきたから、老後を子どもに頼らなくても済むようになった……。 井堀:そう。だから子どもはむしろ贅沢品に近い存在になった。昔のように家の仕事を手伝わせるわけでもなく、老後の世話を期待するわけでもない。すると、少なく産んで大事に育てるようになる。 佐藤:IT化で教育コストも上がっていますよね。子どもが高いスキルを身につけないと厳しい時代になっていて、大学まで通わせると相当お金がかかる……。 井堀:そこも大きい。特にIT社会では高等教育が欠かせなくなって、子育て費用がかさんでしまう。また、就職しても高賃金は期待できない。さらに日本では女性が出産と同時に労働市場から抜けるパターンが多くて、有能な女性ほど本来得られるはずの給与を失う機会費用が高い。結果的に子どもを持つコストが大きくなっているんだ。 佐藤:これらの要素が複合的に働いて、少子化が進行しているわけですね……。 井堀:そう。途上国型の子だくさんの背景がなくなって、先進社会型の高コスト子育ての時代になっている。加えて女性の働き方や社会規範も変わりきれていない。だから日本では少子化が極端に進んでしまっているんだよ。 佐藤:日本の少子化って相当深刻ですけど、世界的にはどうなんでしょう? 同じように少子化が進んでいる国は多いんですか? 井堀:実は日本よりさらに少子化が進んでいるのが韓国だよ。2018年時点で出生率が0.977と1を割り込み、2023年には0.72というOECD加盟国最下位の水準まで下がっている。東アジア全体を見ても、中国や台湾がほぼ1.0程度で、日本以上に低い数値なんだ。 佐藤:なぜ東アジアは特に出生率が低いんですか? 文化的な要因ですか? 井堀:1つの理由に、儒教の影響で男尊女卑が強い社会規範があり、子育ての負担が女性に偏るからじゃないかと言われている。ヨーロッパでもイタリア、スペイン、ギリシャなどで出生率が低めだけど、そこはキリスト教の伝統的社会規範が働いているという指摘もある。要は、家族観や女性の役割に対する考え方が、出産行動に大きく影響するんだ。 井堀利宏 東京大学名誉教授
井堀 利宏
- 48
- 63
- 35