雪ノ下陽乃の受難   作:クトウテン

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すいません、ちょうど区切りがいいので一旦ここで区切ります。
超短くてすみません。


一色いろはの妄想
姉、母校に向かう。


 

“はるさん。今度、久々に総武高校に顔出ししませんか?”

 

それは、そんな一言の軽口から始まった。

 

その会話の相手は、愛すべき高校時代の後輩の一人――というかいまだに付き合いのあるのはこの子くらいしかいないわけだが――城廻めぐり。

 

高校時代は三つ編みのおさげやらでやぼったい見た目をしていた彼女も、大学に入ってからは多少おしゃれをするようにもなり、伸ばした黒髪を下ろし、緩いカールと、少しの化粧で己を着飾っていた。

 

久々の連絡ということもあり、快諾の意を示したその数日後、早速放課後の総武へと二人で足を運ぶ流れとなった。

 

「う~ん、まだ卒業したばっかりなのになんだか懐かしいですねぇ。はるさんはどうですか?」

 

その問いかけに陽乃は、目の前に広がる母校の校舎を遠い眼で眺めた。

 

「そうだね……私が知らないうちにこの学校が魔王城になっていたとは思わなかったよね……」

「魔王城!? 魔王が住んでるんですか!?」

「うん、ゾーマがいる。あとその魔王の愛人が二人……」

「ゾーマ!? 愛人!?」

 

いけない、事情を知らないめぐりが分かりやすく混乱している。

 

元々陽乃がそういう性質の冗談を言うタイプの人間ではないことを知っていることもあってか、

総武校アレフガルド説がめぐりの脳内をかき乱しているのだろう。

 

少なくとも自分の世話をした後輩には、ましてや生徒会長として学内の風紀に身を粉にして頑張っていた相手にこんな風紀の欠片もない愛憎渦巻くようなドロドロとした真実は知らないでほしい。

 

それくらいの愛着はあるため、陽乃は真実を伏せた。

 

「いいのよめぐり。めぐりは何も知らなくていいの。貴女はそのままでいて」

「はるさんが三ページ後に死ぬキャラみたいになってる……」

 

不吉なことを言うんじゃありません。

しかしまぁ、ここは清く正しい学び舎だ。

 

いくら何でも、神聖な学び舎であんな頭がおかしいやり取りが発生するとは思えない。

 

ちょっと比企谷君の顔を見づらいのが玉に瑕だけど、想定できる問題はそれくらいだろう。

大丈夫よ陽乃。貴女は強い。

 

自分に活とエールを入れて、いつも通りの【雪ノ下陽乃】の仮面を装着する。

 

「さ、行くわよめぐり」

「はい! はるさん行きましょう!」

 

さぁかかってきなさい! 

雪乃ちゃんとガハマちゃんを除くその他私に心労を与えない一般人の生徒たち!

 

 

 

 

意気込んだのはいいものの、果たしてその結果は平凡なもので、校舎へと侵入した二人を迎えたのは、2、3年の生徒たちからの好奇の視線。そして新一年生から寄せられる奇異の眼差しだった。

 

まずは教師たちの根城でもある職員室へと足を運ぶ。

言わずもがなもともと生徒会として辣腕を振るっていたこの二人の覚えが悪いわけがなく、多くの教師が二人を諸手をあげて歓迎した。

 

他愛もない話に花を咲かせる事20分ほど、頃合いを見てその場を離れる。

 

窓から覗くグラウンドには、多くの運動部の生徒たちが和気藹々とスポーツに興じており、中には幼馴染でもある葉山隼人の姿も見受けられた。

 

ニコニコと微笑むその笑顔に陰りはなく、それを見る女子生徒たちが黄色い歓声を上げていることに内心で嘲笑を浮かべる。

 

ああ、隼人に今比企谷君を中心に渦巻く地獄のような事態を教えてあげたら、どんな顔をするのだろうか。

 

その上っ面で薄っぺらな笑顔が保てるものなのか、ぜひ見てみたいものだ。

 

クスリと微笑むその粘着質な悪意が届くわけもなく、視線の先で部活に興じる葉山隼人から視線を外す。

 

「はるさん? 何か見つけたんですか?」

「ううん、なーんでも。いこ? 次は生徒会でしょ?」

「はい! 一色さん、元気かなぁ」

「あの子は大丈夫でしょ」

 

そんな会話を繰り広げながら、足を進める。

 

もし昔の自分に会えるのであれば、ぜひ教えてやりたい。

 

お前が今進んでる方向が地獄なんだぞ……と。




あっ、ふーん…(察し)
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