既に多数評価もいただき有り難い限りです。
UAもすでに5000に届こうとしており……5000回この作品が開かれたと思うと、こう、ぐっとくるものがありますね…(どう考えても羞恥心)
姉、妹の友人の狂気を知る。
その後。
もう少し自分でも頑張ってみるわね。
また何かあったら相談に乗ってほしいわ。その、話してみると結構楽になった、ありがとう姉さん……。
などという可愛い妹のいじらしい言葉に調子乗って大見得を切ったその後。
結局の所、解決らしい解決はせずその相談は幕を閉じた。
それから2日。
陽乃は普段通りの日常を過ごしていた。
大学の講義をリモートで受けてはレポートを纏め、仲の良い(自分都合的に)友達とどうでもいい話をしながら過ごしていた日のことだった。
スマートフォンがブルリと誰かからの連絡を知らせる。
手慰みに通知を開けば、そこにある文字は──ガハマちゃんの文字だった。
珍しい連絡があるものだ。
そう思ってトークルームを開こうとした時、ピリと脳内をかすめる何かがあった。
それは所謂勘というやつで、さらに言うならば陽乃の勘というのは経験に基づいた直感的でいて理論的な気付きの為、馬鹿にならない予感の類だった。
平たく言おう──嫌な予感がする。
嫌な予感はする。予感はするがしかし、前回の妹の相談時、酷く迷惑をかけた相手だ。
あの時の居た堪れない気持ちほど強い感情もなかなか浮かべた記憶がない。
少しでも借りを返すつもりで、結局陽乃はトークルームを開くと、そこには以下の文字。
✧*。ゆい✧*。:はるのさん。忙しいところにすみません。もしお時間あれば、ご相談したいことがあったんですが、どうでしょうか
その文字を見て、彼女にしては随分とかしこまった言葉だと苦笑を浮かべる。
そして理由がなければそうはならないだろうこともすぐに理解した。
そういえば彼女も受験生だ。
聞くところによると、どうやら奉仕部の三人は同じ大学を目指していると聞く。
比企谷君と雪乃ちゃんはともかく、彼女はとりわけ成績が悪いと聞く。この感じからしても、その話かもしれない。
よし、ここはお姉さんがひと肌脱いでやりますか。そんな心持ちで返信するため文章を入力する。
Hal:めずらしいねガハマちゃん、どうしたの?
相談? いいよ、今ちょうど暇だからもし
嫌じゃないならテレビ通話で話聞こうか?
返事は即座に来た。
✧*。ゆい✧*。:いいんですか!? じゃあお願いしたいです! こちらから今連絡してもいいですか!?
Hal:はいはい、どうぞー
その言葉から1分も立たないうちに、スマートフォンと連動したPC両方に届くテレビ通話の通知。
陽乃はソファーから身体を起こし、勉強用のデスクでPCからテレビ通話を開いた。
そこに現れた淡い橙の髪を伸ばした少女を見て、目を細める。
最後にあったのは……2ヶ月前だろうか。
2ヶ月なんて大した時間の流れでもないのに、彼女はあの頃よりさらに成長しているようで、前にはなかった大人っぽさを確かに感じた。
「久しぶりだね、ガハマちゃん。というより、ひゃっはろー、かな?」
『はい、お久しぶりです陽乃さん! あ、やっはろーです!』
でもやっぱり前のまま、花咲くように画面越しで笑う彼女に安堵も覚えながら、陽乃は先を促した。
「それで? 早速だけどどんなお話があったのかな? まぁ私に聞くようなことだから想像はつくけど、多分大体のことは教えられると思うから安心してよ」
『へ!? 本当ですか!?』
驚き、喜ぶ声を聞きながら、タンブラーに注いであるアイスティーに優雅に口をつける。
さて、どんな話題が飛び出すものか。
既に
余裕綽々と耳を傾けた。
『じゃあ相談なんですが──最近ゆきのんから聞くヒッキーとのセックス報告で興奮しちゃうんですけどどうしたらいいと思いますか!?』
陽乃の口からアイスティーが飛び出した。
◆
「ごほっ、えほっ! ぅ、鼻が、アイスティーの匂いが……っ!」
『陽乃さん!? 大丈夫ですか!?』
誰のせいじゃい! とはイキリ散らかした挙句に言うことはできず、強がった陽乃は笑い声を上げる。
「あ、あはは! 大丈夫大丈夫! というかガハマちゃん、えぇと、それ、相談するの私でいいの? なんで?」
流石に妹でも友達でもない人間から振られる話題のレベルは大きく逸脱している。
いや、原因は薄々わかっていた。でも流石にそれはないよな? そんな一縷の望みをかけた問いかけは、画面の向こうの笑顔に断ち切られた。
『はい! ゆきのんからの紹介で、大学でヤリまくりのハメまくりだからアブノーマルな質問でも何でも大丈夫なんだから! って教えてもらったって!』
「…………おお」
なんとか絞り出しせたのはたったの2文字。
笑顔が剥がれ、多分、すごい顔になっていたと思う。
す……っと脳みそが冷えた。
いや、あのさ、ええ?
馬鹿でしょあの娘。
嘘だよね、姉のハメまくり発言をそんな友達に言う事なんてこの世界に存在するの?
というか私も何言ってんだ。
いや褒められて調子乗ったよねわかるよでも調子乗った結果ハメまくり発言は正気の沙汰ではないでしょ。
「えっとぉ……ちょっとまってねぇ」
いいながら、か細くスゥ―――と息を吸う。
どうしてこうなった? 私は今何を聞かされているんだ?
妹の友達から妹と妹の彼氏の性交の話を聞くのが興奮しちゃうって暴露話を聞かされている?
ダメだ、文章にしてみても全く脳みそに入ってこない。
今まともに彼女との会話に付き合える気はしないが、時すでに遅し。
大見得を切ったばかりに退路など存在しなかった…。
「が、ガハマちゃん。打ち明けてくれてありがとう。それでガハマちゃんは、大丈夫なの? 実は無理して聞いてるとか、そう言うわけではない……?」
人間不思議なもので、嫌なものでも精神的な防衛反応として、
辛い物でも勝手に脳がつらく感じないように誤反応させることなどザラにある。
多大なストレスの結果、プレッシャーの結果、そう言う症状に陥って結局は悪化するパターンなど陽乃も多数見てきた。
そう聞けば彼女は、思い辺りはあるのだろう。
少し悲し気に目を伏せながら、滔々と語りだす。
『はい……やっぱり、最初ヒッキーとゆきのんが、“そういうこと”をしてるって知った時は、ショックでした。すごい胸が苦しくて、悲しくて……』
「うん、そうだよね……」
『あぁ、私の大好きな親友と、大好きな人が、そう言う関係なんだなって実感したら、なんだかドキドキして……』
「うん……?」
『ゆきのんが誘ったら、強引にベッドに組み伏せられて、後ろから激しくいじめられて、泣いてもヒッキーが止めてくれなかった話とか、その後仕返しにゆきのんがヒッキーにまたがって、ヒッキーが出したのに止めないで腰を……』
「あ~まって、ガハマちゃん。ちょっとギア落とそう? あのね、瞳孔開いてる」
ハァハァと荒い呼吸を繰り返しながら、妹とその彼氏の情事を事細かに語るその友達。
凄い構図だ。そして私は外部の外付けアタッチメント程度のはずなのに、完全にこの狂気の人間関係に巻き込まれようとしている。
ともかく結論は出た。
由比ヶ浜結衣――コイツは本物である。
手の施しようなどとっくのとうにない。
処置なしだ。
「あの、まぁ、ほら、性癖なんて人それぞれだしさ、いいんじゃないかな? 先天的にせよ後天的にせよ自分の一部なわけだから、適度に付き合っていくしかない訳で……。少なくとも誰も損してないわけだし、悪くないと思うよ」
自分でもなんて白々しいアドバイスなんだろうとは自覚していた。
しかし今の彼女に送れるのはこんな当たり前の言葉しかない。
もう私は疲れたよ。
だから早々とこの相談室も終わらせよう。
完全にクロージングに入ったトークに、結衣はそっか……と自分に言い聞かせるように声を返した。
そうしてから、数拍時間を置いて、どこか吹っ切れたように言った。
『ありがとうございます陽乃さん。そうですよね……そうですよね! ありがとうございます! この前寝てるヒッキーにキスしちゃったときも、ドアの向こうでゆきのんがずっとこっちを見てて、止めに入らないから見せつけるようにキスをしてたらゆきのんが足をガクガク震わせながらビシャビシャにしてたんです! その後もわざと私とヒッキーが二人っきりになる様にしたり、戻ってくるのが遅かったり、何でか部室に入らないで覗いてたりしてたから……やっぱりそういう事なんですね! ようやく悩みが解消――』
「まってまってまってまってまってまって」
聞こえてきた衝撃の事実の数々に脳みそが爆発した。
あ~~~頭が壊れちゃ~^う。
もう理解不能だよ。というか怖いよ。もれなく皆頭おかしいよ。
ウチの妹寝取られ属性持ってるの? なんで相互にそんな需要満たしちゃってるの?
というか知らない間に比企谷君ガハマちゃんの餌食になってるの? 認知してるのそれは。
この混沌とした状況を比企谷君が知っているのか知らないのか、ただそれだけが心配だった。
彼が安穏とリア充生活を過ごすその水面下で親友同士でこんな愛憎入り混じってもおかしくない
アブノーマルな出来事が起きているといったい誰が信じられようか。
まるで薄氷を踏むようなバランスで成り立つ混沌とした事実の数々に戦慄を隠せない。
しかし完全に自分のアドバイスでテンションが振り切ってしまった彼女にはそんなことは関係なく。
『ありがとうございます陽乃さん! わたし、わかりました! ちゃんとゆきのんと相談して、今後どうするか、しっかり話し合いたいと思います! ゆきのんがしてほしいなら、私なんだってやりますから!』
そこは止めろよ。完全にアウトロー寄りの思考なんだよ。
ウチの妹がもうすでにおかしい方向に向かってるのに助長させるなよ。
そんな希望もむなしく、『相談乗ってもらってありがとうございました! さっそくゆきのんに連絡してみます!』と意気揚々とした声と共に通話は終わり、取り残された陽乃は静かに天を仰いだ。
沢山の感情と、たくさんの言葉が胸をよぎり、しかしそのどれもが明確に口にすることは叶わず、
ただ時間と共に過ぎていくばかり。
「ごめんね、比企谷君……私には無理だったよ……」
決して本人に届くことのない小さい言葉は、溶けて消えるように、無音の部屋に染み入った…。
後日談。
陽乃の元に、一通の画像とメッセージが届いた。
送り主は由比ヶ浜結衣。
「……」
まるで爆弾を操作するような手つきで、それを開く。
そこには
ゆい:ありがとうございました! おかげで解決しました!
そんな文章と共に、添えられた画像は妹とその友達が笑顔で寄り添う姿。
感動的な光景だろう。悩みも問題も干渉しきったと言わんばかりの二人の笑顔はそれは輝くようだ。
しかし、目ざとい陽乃は見逃さなかった。
その画像の二人が、どこかとろんと、とろけるような、よりはっきり言えば女を思わせる笑みをこぼしているのが。
そしてその画像の一部に見えた――力なく横たわる男子生徒に密着する姿を。
「……」
無言でヨシ! と指をさす猫のスタンプを返し、陽乃はそっとメッセージを閉じた……。
ひとりあたりの話数が短くてすいません。
引っ張ろうにもこれ以上引っ張ろうと思うとどうしてもR15の壁が邪魔をするんですよね。
R15の壁がなぁ…!(自己弁護)