雪ノ下陽乃の受難   作:クトウテン

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あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!
『おれはゴリゴリの官能小説を書いていたと思ったらいつのまにかギャグになっていた』
な…何を言ってるのかわからねーと思うが
おれも何が起きたのかわからなかった…頭がどうにかなりそうだった…
路線変更だとか超展開だとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…(どぼぢて…)(お前がエロに適性がないだけ)(でもこれは酷くないですか?)


雪ノ下雪乃の相談
姉、妹から相談を受ける


「で、どういう催しなのかなこれは」

 

 

そこは雪ノ下陽乃が住まう高級マンションの一角。

 

珍しい客の突然の訪問に驚きを隠せず、そんな声を漏らすと目の前のソファーに座る訪問者我が最愛の妹でもある彼女――雪ノ下雪乃は、どこか覚悟を決めたような口調で言った。

 

 

「相談があるの――姉さん」

 

あまりの事態だ。

 

そして、なんらかのイレギュラーが起きている。

 

自分の家の中でこれから起きるであろう波乱の予感を感じる。

 

妹に頼ってもらったという事実にじんわりと歓喜を覚えながら、それを悟られないように、

 

出来る姉であるように、そして彼女にとってまだ超えられぬ姉であれるように。

 

余裕ぶって陽乃は言葉をつづけた。

 

 

「ふうん、雪乃ちゃんがそんなこと言うなんて本当に珍しい。いいわよ、お姉ちゃんが何でも聞いてあげる」

 

 

その言葉に、雪乃はふわりと柔和な笑みを浮かべた。

 

彼――比企谷八幡と付き合う前までには絶対に見られない表情だった。

 

あぁ、可愛い。そして同時に強い嫉妬を覚える。

 

可愛い妹を、もっと可愛くしてしまったあの男に。

 

 

よし、お姉ちゃんとしていいところを見せて、比企谷君に嫉妬させてやろう。

 

我ながら幼稚な衝動に身を任せて言い放った言葉に対して、妹は全来の信頼を寄せるように、口を開いた。

 

 

「八幡――比企谷君の性欲が凄すぎて身体がもたないの、どうしたらいいと思う?」

 

 

その言葉を聞いた瞬間、私は人生で初めて脳みそがフリーズする感覚を味わった。

 

 

 

 

性欲? 身体持たない? すごい? すごいって何が? パオンの事? あのパオンの事?

 

リブートした脳みそがかつてない速度で空回りをする。第三宇宙速度の空回りだった。

 

 

「ねえさん?」

 

「……」

 

「あの、ねえさん?」

 

「……何かな雪乃ちゃん。えぇと、なんだっけ、パオンの話?」

 

「ぱおん?」

 

「なんでもないわ忘れて。それで、なんだっけ。えぇと、性欲、がすごい、の……彼が……?」

 

 

というか、なに?

 

あの男、高校生の癖にウチの天使に手を出したの? は?

 

クソやろうかよ。何が理性の化け物だよ。性欲の化け物じゃねぇか。…すぞサルが……。

 

 

「責任とれるの? ウチの天使を襲って? 結婚もまだなのに? はは、●そうかなぁ……」

 

 

空回りしていた歯車が突如がっちりとかみ合って、脳内で殺害計画を組み立て始める。

 

呼び出し……東京湾……コンクリ……。

 

 

ダークサイドに落ちかけた姉の雰囲気を悟ったのか、ソファから立ち上がった雪乃が陽乃の手を取る。

 

 

「待って姉さん! か、彼は襲ってないの! 違うわ、そうじゃないのよ……むしろ…その、私から……」

 

 

顔を真っ赤にさせて、もじもじと膝をすり合わせるようにしてうつむきがちに言う妹の顔。

 

姉というフィルター無しに言おう。

 

 

完全にメスの顔をしていた。

 

 

「あああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

「ねえさん!?」

 

 

突如ソファーのクッションに顔をうずめて叫びだした姉の奇行を目の当たりにした妹はSANチェックです。

 

とはいえその状況を収められる人間は残念ながらおらず、混沌とした空間はそのまま続行される。

 

 

「脳が! 脳が破壊されるわ! 妹が雌落ちした話とか! 何!? スタンド攻撃!? 助けて静ちゃん!」

 

「待って姉さん! メス落ちという表現はやめてくれるかしら!」

 

「だってそうじゃんうわああああ比企谷君に妹寝取られたぁああああああ!!!」

 

「ねえさん!?」

 

 

今までの余裕が簡単に蒸発した姉の姿に流石の雪乃も困惑を浮かべ、そこから場が落ち着くまで実に30分の時間を浪費した。

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ……ごめんね雪乃ちゃん。ちょっと朝の10時から聞くレベルの話題じゃなくてさすがの私もちょっと取り乱しちゃったみたい……」

 

「いえ、ごめんなさい姉さん。私も次からは気を付けるわ……夜の1時くらいにするわね」

 

「時間帯が生々しいなぁ!!?」

 

 

それさぁ、確実に話してる途中に比企谷君の寝息とか聞こえてくる奴じゃん。

 

なんかもうちょっとない? その、20時くらいのそういう話題でてもおかしくないなぁみたいな時間。

 

いやほんとうにふざけんな。次あった時顔合わせられないでしょ。

 

 

その声に、弱弱しい声で雪乃が言った。

 

 

「だって彼一回始めたら数時間ぶっ通しでするんだもの……」

 

 

再び凍る空気。

 

緩和しかけた空気が引き締まるのを、陽乃は肌で感じた。

 

「ぶ、ぶっ通しって言うと、どれくらい?」

 

陽乃もそういう話を全く聞かないわけではない。

 

中にはスローペースで行う人たちもいる事は知っており、時間としても2~3時間くらいかけてゆっくり行う人も中には全然いる。

 

 

そうだ、当然ウチで育てられた雪乃ちゃんはそういう俗的な性部分の知識などは薄いだろうし、比企谷君もなんだかんだと初心なところが強いのは見ていてわかる。

 

 

つまりその二時間程度のアレソレが異常じゃないかどうかが不安なのだ。

 

行為はどうあれ、その疑念自体はお子様同然。それならばこの姉が自信をもって――。

 

 

「えぇと、19時から初めて、この前は朝6時まで……」

 

「ドがつく異常だよ!!」

 

「えぇ!?」

 

 

恐ろしい。私は今初めて比企谷八幡という生物に恐怖を感じていた。

 

は? 19時から6時? 11時間? ぶっ通しで? それはもう人間ではないのでは?

 

 

「あ、でも流石に途中途中休憩とかがあるわけだよね……?」

 

 

そう聞くと、最愛の妹はきょとんとした顔で首を傾げた。

 

 

「ねえさん?」

 

「なあに雪乃ちゃん」

 

「バカにしないでほしいわ。流石にぶっ通しって言葉の意味くらい、間違えないのだから」

 

 

そこは間違っていてほしかったなぁ……。

 

淡い希望は飴細工のように容易く砕け散った。

 

残ったのは残酷な現実だった。

 

 

「というかなに? それは、どうなってるの? その、行為中に比企谷君は何度達されていらっしゃるの?」

 

 

大分頭も混乱しているようで口調のバグが自分でも認識できた。

 

でもここまでくると止まることはもはや不可能。

 

妹を思う気持ちと、野次馬根性がミキシングされたおおよそ考えうる限り最悪の状態での暴走機関車陽乃が爆誕した瞬間だった。

 

 

「そのゴムを、2……」

 

「2個!? 11時間で!?」

 

 

とんだ遅漏野郎ね比企谷君は! ペッ!!! ふぁっきゅー!

 

 

もはや男性的なアラが見つかるだけで陽乃は嬉しかった。

 

砂漠の中に見つけたオアシスに駆け寄るように、陽乃は内心あらん限りの力で罵った。

 

 

「――ダースほど」

 

「だーすぅ!?」

 

 

は!? じゃあ12が二つで……24!? それはもう環境破壊じゃん!?(状態異常:混乱)

 

沸騰しきった脳みそがまともな回答を導けない。

 

 

「それを雪乃ちゃんはどうしてるの!? 壊れない!?」

 

 

あまりに現実味の無い言葉の数々にそう聞くと、彼女は言った。

 

 

「あぁ、そう。それをね、経験豊富な姉さんに聞いてみようと思って……」

 

 

その言葉に、陽乃はここにきてようやく事の重大さを知った。

 

これは――相談なんて、生易しいものではない。

 

 

今ここにあるのは、いつ爆発するのかもわからず、そして奇怪に入り組んだ配線の時限爆弾と、それを前に取り残された、哀れな一般人でしかないことを、ようやく理解した。

 

 

なるほど。なるほど。なるほど?

 

 

「でもその様子を見るに、やはり姉さんでもこれは解決しきれない問題の様ね……ごめんなさい。変な事を聞いてしまって」

 

 

そう言って彼女は、悪意はないのであろう。

 

しかし期待を裏切られたものへとむけるように、小さく、しかし確かに嘆息を漏らした。

 

 

それを見た陽乃は――立ち上がった。

 

 

そのままマンションのリビングに備え付けられた大きな窓に身体ごと視線を向けた。

 

丁度雪乃に背を向ける形だった。

 

 

「姉さん? どうしたの?」

 

 

その声に陽乃は答えられない。

 

 

正直に言おう。

 

陽乃は処女である。

 

それも生粋の処女である。

 

陽乃に性の事は分からぬ。

 

ただ安易に体を許すことはならぬという人一倍の貞操観念と、

 

身体を狙う不埒者から感じる下劣な視線や感情には人一倍敏感であった。

 

 

だから今、そちらの事情だけで言えば、陽乃は既に妹に大きく後れを取っていた。

 

ごまかしようがないほど、歴然の差であった。

 

 

しかし、しかしだ。

 

 

姉たるもの、本当にこのまま引き下がってもいいのであろうか?

 

姉とは常に妹にとっての壁となり、目標となり、そして尊敬されるべき対象として、

 

妹の前に立つものではないのだろうか。

 

 

その姉が、妹のこの困窮した事態に、何の力にもなれないなどあって許されるのだろうか。

 

 

――否、断じて、否だ。

 

 

陽乃は拳を固く握り空を見た。

 

高層階マンションの一角から覗くことのできる広大な空。

 

蒼穹広がる空に浮かぶ、純白の雲。

 

そしてそれらすべてを照らすのは――大きく一つだけ浮かぶ太陽。

 

 

――ああ、そうだ。私は、この子にとっての太陽になりたいんだった。

 

 

ふ、と口が自然と弓を描く。

 

陽乃の顔に、先ほどまでの色はなく、そこにいたのは一人の覚悟をキメた女。

 

もう陽乃に、迷いなどなかった。

 

 

振り返れば、そこにいるのは最愛の妹。

 

私が守るべき存在にして――今この場においては、最大の敵ともいえる存在。

 

 

さぁ、やりましょう。

 

姉の尊厳を掛けた、空前絶後の、話し合いを――。

 

 

「安心して雪乃ちゃん。この経験豊富(※当社比)なお姉ちゃんにかかれば、あなたの悩みなんてちょちょいのちょいよ」

 

 

ただの耳年増が、攻勢に出る――!

 

 




よし! まだR15だな!(ライン超えRTA開始)
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