俺の切り札は光らない   作:雨 唐衣

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油断すると死ぬのはTCGではよくあることです

マグラの能力テキストが間違ってたので修正しました
召喚酔いのルールを間違えていたので手札を一枚修正しました(速攻を維持していなければ召喚酔いの影響下に戻ります) 色々修正しました 8/16



二十話 デッキを構築するリストは提出しなければならない

 

 

 

 

 オレの命を受けて、錆だらけの甲冑を付けた執行者が走る。

 

「楔カウンター2つを取り外し、<執行の断罪者>を解放!」

 

 走りながらひび割れた甲冑を中から弾き飛ばし、封じられていた怪物が躍り出た。

 

「パワータフネスを+3して、てメえの<自植林職人アッキー>を粉砕する!」

 

「6点パワー同士のため共倒れになります」

 

「その上に乗っていた楔カウンターを、魔女が吸収する!」

 

 血塊の魔女のパワーが4に上昇する。

 楔カウンターの発生するよりも戦闘ダメージで死亡するほうが早いため、吸収が出来ない。

 あくまでも生き残った奴から奪わないと意味がない。

 

 それからやつの残っていた唯一のクリーチャーが倒れるが。

 

「だが、それだけじゃ終わらない! 復讐姫の能力が発動する!」

 

 黒い衣を纏ったオレの復讐姫が、手を伸ばす。

 方角は今崩れ落ちたゴブリンプラントの雑魚。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

 その残骸が引き寄せられ、黒ずんだ亡霊となって復讐姫の横に降り立つ。

 黒く、汚れ、夜に染まった残骸の首には真っ黒な縄。

 オレのしもべになった証明。

 

「この移し替えられたクリーチャーは能力を失い、元々あった種族に死霊が加えられる!」

 

「復讐姫のパワーは、コントロールしている死霊の数に比例して上昇する」

 

「そうだ! そして、この能力が誘発した時、カウンターが1つ追加! <降る(よる)迫る>の誘発でさらに追加!」

 

 元の復讐姫の召喚時に1つ付け加えられるのが<降る夜迫る>の効果で増加して2つ。

 それに加えて、今の一連の効果で楔カウンターが2つから4つに増加される。

 

「これでてめえの盤面は更地だ」

 

 ムカつかされたが、終わってみれば圧倒的な盤面だ。

 

≪くく、よくやったぞ。ディール、もはや勝ちは揺るがぬ≫

 

 オレの陣営には、4/5(楔2つ)に強化された追撃者。パワーとカウンターが4の血塊の魔女。ただの4/3の死霊となった自植林職人アッキー(ゴブリン)に、パワーが0から4に(死霊4体)増加した復讐姫。

 そして、相手の男は今最後のクリーチャーだったゴブリンを破壊されて丸裸。

 丁寧に並べられたトークン共を毟り取った甲斐がある。

 マグラの召喚を無理に阻止したせいで肝心のトークンが全滅する間抜けをしている。

 ライフも残り僅か。

 

 

「これでターンエンド!!!」

 

 

 テメエの澄ました面はここまでだ。

 

 

「俺のターン。レディ・アップキープ・ドローフェイズ――ドロー」

 

 小賢しい男がカードをドローする。

 

「いいカードは引けたかよ」

 

 そのカスみてえな共鳴率じゃあどうしょうもないだろうがな。

 

 今までもそうだった。

 追い詰められ、なにかないかと藻掻く連中は最後の最後に必死にカードを引く。

 そして、何度も何度も引いたカードを見ては絶望する。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 それを見るのが好きだった。

 自分のデッキを、カードを信じているファイターであればあるほど浮かべる顔は凄惨だ。

 

「今からでも祈ったらどうだ?」

 

 だから、オレは笑いながら、小賢しい男を煽るように声をかけて。

 

「そうだな」

 

 引いたカードを、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「お祈りタイムだ――プレイ、魔石<硝子の戦闘靴>をコストゾーンにセット」

 

 静かに男がセットしたカードから出現したのは、透き通るような靴だった。

 誰もつけていない、ただの靴。

 

「なんだ?」

 

「効果を説明する。これは1コスト支払うことによって1ターンの間クリーチャーに装備することが出来るコモンの【装備品】だ。対応ありますか」

 

 装備品?

 確かそんな魔石カテゴリーが、最近出たカードのパックにあったような……

 

「コモン? 最弱のレアリティで何が出来る!」

 

「通りますね。では、お祈りだ――プレイ、3コストで<夜疾猟団(ナイトレイダー)・大鷹の弓手>を召喚」

 

 そして呼び出されたのは緑色。

 自然や夜の中に迷彩するために染め上げられた衣装を纏った弓使い。

 

「ナイトレイダーだと!?」

 

 オレの使う夜疾猟団である中級のクリーチャー。

 

≪ははは! 生命宿らぬ剥製の紙切れを、共鳴率を宿さぬ死蝋の如き手で弄ぶか! それで何が出来る!≫

 

「テメエを紙でしばける。対応は?」

 

 確か能力は……

 

「ないなら、場に出る。同時に楔カウンターを1つ選択したクリーチャーに付与することが出来る。オレはそちらの追撃者に与える」

 

 弓手が無造作に投げた小石。

 それを追撃者が跳ね除ける、その空隙を突いて閃いた弓手のダガーが追撃者の肩に突き刺さる。

 

 追撃者のステータスが5/6(楔カウンター*3)にまで上昇する。

 

 !

 カウンター3つ!?

 

「っ、無駄だ! お前は間に合わな」

 

 いやまて、召喚酔いがある!

 まだ能力は使えない、次のターンで始末すれば。

 

「1コスト支払い<硝子の戦闘靴>を装備、対象は大鷲の弓手――効果を説明する。こいつはパワーを1上昇し、【速攻】を付与する」

 

 弓手の元に硝子の靴が光を放ち、その体に燐光を宿す。

 

 まずい!!

 

「大鷹の弓手の能力を起動(ステイ)する。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、これは弓手のパワー分だけ指定出来る」

 

 追撃者と、血塊の魔女と、復讐姫の身体に赤黒い十字のマークが浮かび上がる。

 

≪無駄だ! 復讐姫の能力を発動! 楔カウンターを3つ外し、破壊を無効にする!≫

 

 いやだめだ!

 こいつは。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 弓手から撃ち放たれた光の矢によって、三体が弾け飛ぶ。

 

「くそ! 追撃者の復帰を」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 追撃者が手を伸ばして、虚空を掴んで崩れ落ちる。

 

 オレの盤面がこんな!

 

 

「魔法<要石の儀式>をプレイ。【連鎖】これはこのターン、3枚以上のカードをプレイしていた場合メインデッキの上から4枚墓地に送ってもいい」

 

 男のメインデッキが上から4枚。

 墓地へと流れ込んでいく。

 

「そして、墓地からパワーが2以下のクリーチャー1体を、+1/+1の修正を加えて盤面に戻す。俺が呼び出すのは」

 

 男が手を鳴らす。

 その墓地から、同じ夜に飲まれていたはずの空間から銀色の切れ目が生じる。

 

 そこから踏み出したのは裸足。

 真っ白な絹糸の衣装に、銀糸のような髪をなびかせた白い少女の姿をしたもの。

 

 

「――<夜疾猟団(ナイトレイダー)・銀窓の復讐姫(ヴァンデッタ)>」

 

 

 オレの持つのと違うデザインの復讐姫。

 しかも修正を受けてタフネスが3!

 

 

≪また精霊も宿らぬ剥製共を……!≫

 

「旧録だろうが、新録だろうがテキストは共通だ。その強さもな――1コスト支払い、<硝子の戦闘靴>を弓手から復讐姫に装備!」

 

 復讐姫の裸足だった真っ白な足に、硝子の靴が装備される。

 

「付け替えガ出来る!?」

 

「速攻を得たクリーチャーは攻撃も出来るし、能力も使える! パワーが4となった復讐姫の能力を起動(ステイ)する!」

 

 カンカンカンとかかとを打ち鳴らし、復讐姫がその爪先を地面に叩きつけた。

 その手から掴みだされたのは、火がついたゴブリン。

 

「俺の墓地からそのパワー以下のコストを持つクリーチャー1体を蘇生させる! 俺は<放火範ゴブリン>を選択、お前の<降る(よる)迫る>を再び破壊する!」

 

 その手に握られたゴブリンが、オレの夜へと投げつけられて――燃え上がる火と共に砕け散った。

 

「またテメエかよ!!」

 

 二度もオレの夜が破壊された。

 というかあの復讐姫、動きがおかしくないか?

 

 

「ターンエンド」

 

 

 

「まだだ! オレのタぁーン!!」

 

 考える。

 勝つ道を考える。

 

 オレは最強、最強なんだ。

 

「ライフカードをドロー!」

 

 ッ、クソ!

 夜じゃない。ただの土地だ。

 いや、いまだしても無理だ。意味がない。

 

 勝つには、何が、全体破壊? いや、そんなカードは……”追撃者も再生出来ないから入れていない”。

 なにがある?

 なにがあった。

 

 ――ディール。

 

 ッ!

 声がした。

 

 ――我を出せ。さすればあの程度の敵。

 

 だが、コストが足りない。

 ダメージが。

 

 ――問題ない。

 

「……ッ!」

 

 デッキに熱、いや、光が宿る。

 仄暗い光。

 オレを満たすいつもの、ヤツの加護。

 

「ドロぉおおおおおおおおお!!!」

 

 ッ、来た!

 

「オレは土地をセットし、手札から魔法<穢れの雨>を発動する! 土地を生贄に捧げることによって追加コストを得る!」

 

「通します」

 

「オレは土地4枚からコストを出し、さらに生贄に捧げて合計8コストを絞り出す……ギィッ!」

 

 痛い!

 痛い!

 痛い!

 胸が痛い、全身が痛い、下腹部がズキズキする。

 包帯に縛られた身体が熱を発している。

 

 かつて味わった最強になるための、こうなるまでの過程で得た痛み。

 必要な力。

 だから耐えられる。

 この程度で。

 

「オレは最強なんだ! 来い、<夜疾の女王 マグラ>!!!」

 

 

 闇の中から現れる。

 最強の、マグラ。

 全ての夜疾を統べる永遠の女王!

 

 その能力は――

 

≪ハハハハハハハハハ!≫

 


 <夜疾の女王 マグラ> (8) 5/6

 クリーチャー・化身

 この場にある楔カウンターの総数が8以上だった場合、

 このカードを唱えるためのコストが(6)少なくなる。

 

 畏敬(このクリーチャーは、死霊でも秘宝でもないクリーチャーによってはブロックされない。)

 起動:クリーチャー1体を対象とし、それを破壊する。それは再生できない。


 

 

 

「さらに土地からコストを出し、生贄に捧げて2コスト! 秘宝<神の権利>をマグラに! マグラはあらゆる能力・魔法の対象にならず、二体以上のクリーチャーでなければブロックされない!」

 

「マグラは死霊・秘宝クリーチャー以外からはブロック出来ない。事実上の素通しか」

 

「そうだ! これこそ無敵の、最強の我が女王よ!」

 

「通します」

 

 一瞬考える。

 相手のブロック可能なのは、あの火達磨ゴブリンのみ。

 攻撃だけでもして減らしておくべきか?

 ブロックしないならもう即死圏内だろう。

 

 いや、ブロックを残しておいて受け止めればいい。

 マグラがいればどんなやつでも怖くはない、あとは。

 

「ターンエンド!」

 

 どう勝つかだ。

 

 

「俺のターン。レディ・アップキープ・ドローフェイズ、ライフカードをドローする」

 

 

 残り僅かになったライフカードを小賢しい男が引き抜く。

 その顔は崩れない。

 

「しぶとイな。まだ倒れないのか」

 

 闇の領域のダメージを受けているはずなのに、何故耐えられる。

 精霊の気配はない、やつらが軽減でもしなければとっくにふらつき、息も絶え絶えになっているはずなのに。

 

「そういう鍛え方をしているんでな。少なくとも、指と口が動けば戦える、ドロー……」

 

 その顔が初めて歪んだ。

 

 今度こそ命運でも尽きたか。

 

「これ来るの遅すぎだわ」

 

 なにっ。

 

「まあいいや、手札から<燃え盛る突進>を1コストで発動。復讐姫のパワーに+3し、速攻を得る」

 

 パワーを上げた。

 なにかまた取り出すつもりか。

 

「これでパワーは6」

 

 コスト6以下――

 

 

 

 

「手札からコスト7<亜人の忌み王>を召喚する。これが場に現れた時、パワーが5以下のクリーチャーは全て破壊される」

 

 

 

 

「は?」

 

 盤面が。

 その異形の出現と共に盤面が黄金色の光に引き裂かれた。

 

≪なっ≫

 

 マグラが、完全な防備を誇っていたはずのマグラがその光に砕け散った。

 

()()()()()()()()()()()()()()()

 

 残ったのは華麗な動きで回避した復讐姫と降り立った異形の怪人。

 

「そして、忌み王のもう一つの効果。これは場に降り立った時、種族を1つ宣言する。俺のコントロールするクリーチャーと手札の種族は全て”宣言した種族になる”。宣言するのは【死霊】」

 

 そう告げて、消えた黄金の光の後に並ぶ。

 並んだのは。

 

「復讐姫の能力で俺が破壊したクリーチャーは能力を失い、再配置される。全てが亡霊として仲間になる」

 

 ――亜人の忌み王。

 ――強化された復讐姫。

 ――亡霊と化した大鷹の弓手。

 ――亡霊と化した自植林職人アッキー。

 ――亡霊と化した放火範ゴブリン。

 

 

 ――亡霊と化した……夜疾の女王マグラ

 

 

「<硝子の戦闘靴>をマグラに装備、これで速攻を持つため召喚酔いを解除する」

 

≪ば、ばかな!? 我の依代が!!≫

 

 オレのデッキから聞こえる声。

 灰色の亡霊となったマグラとは違う方角からの声に、オレ、は。

 

「さらに墓地から<燃え盛る突進>を3コストで発動。忌み王のパワーに+3し、速攻を得る。墓地からの発動のため、これは除外する」

 

「ありえない」

 

「復讐姫と速攻を得た二体で攻撃する」

 

「ありえなあああああああああああああああああああ」

 

 

 

 

 オレは

 

             負けな

 

 

 

 

 

 

 

 

「グッドナイト。お休みのときだ、ボウヤ」

 

 

 

 

 

 どこか悲しい顔をしたマグラの手が、オレのライフデッキを消し飛ばした。

 

 

 

 





 忌々しき夜の黒。
 だから私は染まらぬ白を意思とする。

 復讐するはオレ(I)にあり


               ――銀窓の復讐姫(旧録版 一人称ミス・テキストより)
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