「♪~♪♪~♪」
地上ではようやく
その手には酒の入ったグラスが握られており、彼の心境を表すように『ちゃぷ、ちゃぷ』と耳障りの良い音をたてていた。
そんな彼にゆっくりと
彼の
エレボスと同じ邪神の
「よぉ、エレちゃん。」
「なんだい、タナちゃん?」
「いやぁ、随分と機嫌が良さそうだから、例の『悪巧み』が成功したのかなぁーって?」
「いや、今は結果待ち。もうすぐヴィトーの奴が来て「結果発表ぉぉぉぉぉぉぉ!!!」ってしてくれる予定だよ。」
「そんなことしたらキャラ崩壊どころじゃない気がするなぁ。」
「キャラなんて壊していこうぜ!」
「こんな
「おい、やめろよ。俺をヘスティア以上の駄目神にする気か?」
「えっ?
「おう、露店でじゃが丸くん売ってた。」
「ぶふっ、マジかw」
「因みに、客に頭撫でられてた。」
「さ・す・がロリ神www」
ゲラゲラ、ゲラゲラと
そんな二人の元に、ようやくエレボスの待ち人──ヴィトーが部屋の扉を開けて現れる。
「お待たせしました、我が主。」
「待ってたぜ、ヴィトー。だが、もっと面白い登場の仕方はなかったのか?無難すぎるぜ。」
「・・・・・・」
「ヴィトーちゃん、そいつのことはおいといて。で、どうだったの結果は?」
「──残念ながら失敗です。」
そのヴィトーの報告に、二柱は先程までの浮かべていた笑みを消す。
タナトスはその整った眉を潜め、エレボスは何かを思案するように顎に手を当て、瞼を閉じた。
先程のまでとは違い、その場を静寂が支配する。
暫く時間が経過した後、思案を終えたのか瞼を開いたエレボスはヴィトーへ問いかける。
「どういうことだ?俺の
「いえ、主の読みは大当たりだったそうです。ただ──予期せぬ邪魔が入ったようでして・・・。」
エレボスはその言葉を聞くやいなや「くっそー!」と言ってグラスに入っていた酒を一息に煽り、空になったグラスをカウンターに叩きつけた後、バーの椅子に座りながらぐるぐると回る。
──誰だよ邪魔したの!?
──後で『エニュオ』の野郎に嫌み言われんじゃん!
──折角、ロキに【
まるで子供のようにむくれながら彼は椅子の上で回り続けていたが──
「ヴィトーちゃん、誰が邪魔したの?やっぱ【
「いえ、それが・・・・神フレイヤを釣りだすために利用した『件の冒険者』でして・・・。」
エレボスはヴィトーが発した言葉に聞き、椅子の回転を止めた。
そして彼は、二人には悟られぬようにヴィトーの話にそっと聞き耳を立てた。
幸い、そんなエレボスの様子に気づいていないのか、ヴィトーとタナトスは会話を続ける。
「それって確か今、フレイヤが惚れ込んでるっていう【アストレア・ファミリア】の新人冒険者ちゃんのことだよね?」
「ええ、その彼がオリヴァスを吹き飛ばし、そのうちに神フレイヤを抱えて逃走したと・・・・。勿論すぐに追跡を開始したらしいのですが、見失ってしまったらしく・・・・。」
「・・・・その子って都市外でLv.3とかに
「いえ、ギルドに潜らせている
「えぇ?んじゃ、オリヴァスちゃんはマジでLv.1の子に負けたの?」
タナトスは疑うような声を出す。
この世界の常識では、Lvが1でも上の相手には1対1で勝つことはまず不可能であると言われている。
そんな中で、Lvが2も上の相手に一撃入れるというのは、到底信じることが出来ない事象だった。
「そんなことはおいといてさぁ──そんな大☆戦☆犯をかましてくれちゃったオリヴァス君は今どうしてんの?」
先程までの不機嫌さが嘘のように、ニヤニヤ嗤いながエレボスはヴィトーに問いかける。
「・・・・ここへ来る前に、神ルドラと神イケロスにお二人と同じように事情を説明したところ、「「オリヴァスを慰めてくる!」」と仰っていたので──今頃、彼らの玩具にでもなっているのでは?」
「「なにそれ超見てぇwww」」
邪神二人が盛大に大笑いする中、ヴィトーは笑われている
そもそも、バスラムとバルカ謹製の
そう断じたヴィトーは、今頃邪神達に玩具にされ、怒り狂っているだろうオリヴァスの姿を想像し、軽い嘲笑を浮かべる。
そうしているうちに、ひとしきり笑って満足したのか、エレボス達は笑うのを止め、「「ふー」」と一息つく。
「まぁ、何はともあれ計画には修正が必要だな。
「ああ、文句といえば──【
「はぁ、どいつもこいつもなんで我慢──できるわけないかぁ、あいつらだもんなぁ・・・・。」
闇派閥内でも屈指の
「私から言わせてもらえば、逆に7年間もよく待てたものだと思いますが。」
「・・・・それもそうか。んじゃ、ヴァレッタ達には「次の『
「畏まりました。」
ヴィトーはエレボスに向かって一礼すると、部屋から出ていった。
そんな彼の背中を見送ったエレボスは少し間を置いた後、「よし。」と言って立ち上がる。
「とりあえずエニュオに結果を伝えるか。嫌みの一つや二つ言われるだろうが、俺の
「それが火に油を注ぐ結果にならないことを祈るよ。」
そんなタナトスの冷めた声を華麗に
部屋の外には誰もおらず、魔石灯の光だけが希少金属でできた通路を煌々と照らしていた。
そんな場所を足音を響かせながら一人歩くエレボスは、とある『少年』のことを考えていた。
その『少年』とは、ヴィトーの話にもあった冒険者──ベル・クラネルのことである。
(直接手を出すのはもうちょっと先の予定だったんだけどなぁ。にしても、Lv.1でLv.3ぶっ飛ばすって普通できないよな・・・。)
──『スキル』の効果か。または何かしらの『魔法』によるものなのか。
──もしくは、
(ただ、確実に言えるのは──)
エレボスは歩みを止めると、顔を上げる。
勿論ここは地下であるため星などはなく、ただ通路の天井が広がるだけである。
「色々と規格外すぎるだろ・・・。いったいどんな教育したんだよ、お前ら。」
彼は今もどこぞの山奥の村で暮らしているであろう傲慢な
「「「「・・・・・」」」」
「あのぉ・・・・。」
ベルは困惑していた。
あの後、
その時のエイナの剣幕は凄まじく、説教されているベルは元よりそれを周りで聞いていたアリーゼ達ですら少し圧倒されるほどであった。
──何度も言うけど、死んだらどうにもなんないんだからもっと慎重に行動して!
──君が死んじゃったら、私も勿論悲しくなるけど、一番悲しむのは【アストレア・ファミリア】の皆さんと神アストレアなんだからね!
文字通り『ぐぅ』の音も出ない正論をエイナに諭され、ベルは項垂れることしかできなかった。
──だが、ベルもやられっぱなしというわけではなく、とんでもない反撃を繰り出した。
「ご、ごめんなさい・・・。」
──潤んだ
この年上の女性を殺しかねない一撃は、正義の女神と正義の女傑達の胸を『トゥンク』とさせた。無論、エイナも例外ではなく「こ、今回はこれぐらいで勘弁してあげる。こ、今回だけだからね!」とお説教を強制終了させるほどであった。
エイナの説教が終了し、彼女が本拠より去った後、今度はアリーゼ達から今日起こった騒動についての事情聴取を受けていたのだが、今日ベルに殴りかかってきた『男』についての特徴を口にしたところ、アリーゼ達は突然黙り込んでしまったのだ。
「・・・・ベル、もう一度聞くぞ。」
「は、はい。」
「お前に殴りかかってきた男の特徴だが、くすんだ白髪に、汚物のように汚れきった目、不愉快極まりない人相に、まるで腐ったものをまとめて煮詰めたような息を吐く男で間違いないか?」
「あの、白髪以外の特徴に心当たりがないんですけど・・・。──っていうか輝夜さん、その人に恨みでもあるんですか!?」
「お前の会った男と私が考えている男が同一人物であればな。」
輝夜のあんまりな言い分にベルが思わずといった感じで問いかけると、輝夜は苦虫を噛み潰したような顔をして吐き捨てた。
「ベル君、確証はないんだけど──君があった男はオリヴァス・アクト。【
「闇派閥?」
「ベルが知らないもの無理はないか、最近凄く大人しかったし・・・・。」
「ベル、闇派閥っていうのはね『悪』の勢力の集合体のことで、『暗黒期』って時代に色々と・・・その酷いことを。」
「簡単に言っちまえば、屑どもの集まりだ。ったく、あいつらなんで今更・・・・。」
聞いた覚えのない言葉に首を傾げるベルにマリュー達が口々に闇派閥について教えた後、ライラが苦虫を噛み潰したような顔で呟く。
「確かになんで今更あんな騒動を──」
「知りませんよそんなの。大方、我慢するのが嫌になったのではありませんか。」
アリーゼが唇に指を押し当てながら思考を巡らせるが、輝夜が嫌悪感を隠そうともせず言い捨てる。
そんな輝夜の言葉に否定するものはおらず、むしろ納得したという表情で頷いてすらいた。
「アリーゼ、取り敢えずギルドへ報告したほうがいいわ。それと有力派閥・・・ロキ、フレイヤ、ガネーシャ、ヘファイストスとの情報を共有も。」
「はい!アストレア様!」
この後の話し合いの結果、アリーゼ達がギルド及び、【ガネーシャ・ファミリア】へ報告、アストレアは、各主要派閥の主神への情報共有を行う運びとなった。
「ふぅーーーーー。」
本拠のお風呂に入りながら僕は気の抜けた声を漏らした。
いつもなら鍛錬後に入るため最後になってしまうことが多いのだが、今日はマリューさんから「怪我したばっかりなんだから今日は鍛錬お休みしなさい!」と厳命されてしまったし、アリーゼさんが「今日は疲れたでしょ!先に入っていいわよ!」と笑顔で言ってくれたので、お言葉に甘える形で僕は一番風呂を満喫していた。
(それにしても『悪』かぁ・・・・・。)
湯船に浸かりながら、僕はアリーゼさん達が言っていた『闇派閥』について、考えていた。
(なんだろう、お義母さんが言っていた『悪』とは大分違うような気がするなぁ。)
以前、お義母さんから悪について聞いたことがあった。
──ありとあらゆるものを壊し、秩序を混沌に塗り替え、『正義』を問う存在。
──多くのものを殺し、奪い、恨まれ、憎しみを買い、そして超克の先へと駆り立て、未来を託す。世界を救うために。
それがお義母さんが言っていた『悪』だった。
昔、とある男神様が家へ来たときに、そんな『悪』になって世界の為に『踏み台』になろうぜ。と、誘われたことがあったらしい。
だが、お義母さんも、同じように誘われていた叔父さんも、結局『悪』を選ばなかった。理由は──『
でも、お義母さんはその選択にとても後悔していた。
──私たちが『悪』を選ばなかったせいで、世界は滅ぶかもしれない。
──『最後の英雄』は・・・・生まれないかもしれない。
僕が今まで耳にしたことがないほどの慚愧の声で、目にしたことのないほどの儚い表情でお義母さんは悲しんでいた。
だから僕は、『それ』を口にした──
「僕が、最後の『英雄』になる。」
それを聞いたお義母さんは「・・・・生意気な子供め。」と言いつつも、優しい表情で微笑んでくれた。
──その時から僕は『英雄』になると誓ったのだ。
だが、アリーゼさん達から聞いた闇派閥の『悪』はそんな高尚なものではなく、自分勝手なものばかりだった。
(やっぱり『正義』が人の数ほどあるように、『悪』も無数に存在するのだろうか。)
そんなことを考えているうちに、なんだか頭が『ボー』っとしてきた。どうやらのぼせそうになっているらしい、そろそろ上がろうかな。
「あら、ベルどうしたの?そんな難しそうな顔をして?考え事?」
「あ、いえ、大したことではないので大丈夫です。」
「そんなことを言われると益々気になりますねぇ。どれ一つ、私達に話してみませんか?」
「だから本当に大したことないですよ、輝夜さん──って、輝夜さん!?アリーゼさん!?」
のぼせかけているせいで最初は気づかなかったが、いつの間にか風呂場にはアリーゼさんと輝夜さんがいた。──
「にゃ、にゃにゃにゃんでここに!?」
「あら?うちの兎様はいつから猫になったんでしょうか?」
「ちょうどいいわ!ベル、これ被っときなさい!」
そう言ってアリーゼさんは猫耳付きのシャンプーハットを頭に被せてくる。にゃにするんですか!
「じゃ、じゃなくてなんでここに!?」
「あら、そんなの──」
「決まっているではありませんか──」
アリーゼさんがドヤ顔をしながら胸を張り、輝夜さんがその大きな胸を強調するように腕を組むと、言葉を続ける。
「今日は色々大変で疲れたであろうベルを──」
「それと同時に色々と昂っているであろう兎様を──」
「頭の先から──」
「ナニの先まで──」
「すっきり、さっぱり」
「ねっとり、しっぽり」
「「癒やしてあげるためよ(だ)!!」」
「結構ですぅぅぅぅぅ!!!」
ノーセンキューだ。お義母さんとですら一緒に入るのが恥ずかしかったのに、家族以外の女の人とだなんて恥ずかしくて死んでしまう!!!
僕は素早く湯船から上がり、脱衣場の扉を目指すが、たどり着く前にアリーゼさん達に捕まってしまった!ってうわ!輝夜さんの大きな胸が!アリーゼさんの小振りだが形のいい胸が!腕に当たってるぅぅぅぅ!!!?
「逃げないで、ベル!『すきんしっぷ』でお姉さん達と絆を深めましょう!」
「団長様の言う通りだ、ベル。なに、私達に任せておけ。直ぐに気持ちよくしてやろう。」
「何する気なんですか!?っていうか、胸!胸を押し付けないでぇぇぇぇぇ!!」
「「よいではないか〜、よいではないか〜。」」
「勘弁してくださぁぁぁぁい!!」
だ、駄目だ!二人とも聞く耳を全く持ってくれない!
うぅ、なんだか意識も朦朧としてきた。
こんな時、どうすればいいの!?叔父さん!お祖父ちゃん!
僕は心の中で二人の家族に助けを求める。が──
──ベル・・・・顔は母親似でもそっちは
なんでそんな悲しそうに遠くを見つめてるの叔父さん!?
──計画どおぉぉぉりぃぃぃ!!!まさかこんなに早く関係を進展させるとは、さすがわしの孫じゃぁぁぁぁ!!!ゆけぇ、ベル!そのまま大人の階段を駆け上がれぇぇぇぇ!!!
お祖父ちゃんやめてぇぇぇぇ!!!
駄目だ、全く当てにならない!!
本人達が言いそうな言葉に、僕は心の中で天を仰ぐ。
意識が朦朧とし、混乱状態に拍車がかかる僕は、もはやあの人に助言を請うしかなった。
こんな状況で頼りたくはなかったけれど、背に腹は変えられない!
アルフィアお義母さん、僕はいったいどうすればいいの!?
同時刻
とある山奥の村
『少年』の生家があるその小さな村では、日の出と共に働き始め、日の沈む頃には床に着く用意を始めるといった暮らしをしているため、もうほとんどの家の灯りが消えており、村全体が静寂に包まれていた。
しかし、突如としてそのうちの一件が爆音のような『鐘の音』と共に木っ端微塵に吹き飛ぶ。屋根だったものは天高く舞い、壁だったものは庭の畑に突き刺さる。
その音を聞き付けたのであろう他の家々から、わらわらと住人が出てきた。
「何事だ!?」「今の爆音は一体!?」「まさか・・・モンスターか!?」と村人達が血相を変えて周囲を見渡す。
が、爆音の発信源である家があった場所を見ると、一様に『ほっ』とした表情を浮かべ、各々何事もなかったかのように家へと戻って行く。こう呟きながら
あぁ、またアルフィアさんとザルドさんの所か、と
その一方で、爆心地となった家──もはや瓦礫の山と化している場所では一人の女性が佇んでいた。
その女性は灰色の長髪をした目が覚めるような美女だった。
目は閉じられており、彼女にとてもよく似合っているドレスは夜風に揺らていた。
彼女の名はアルフィア。
今現在、遠く離れた
「ア・・・・アルフィア・・・。」
そんな彼女に、瓦礫の中から這いずる音と共に息も絶え絶えな男の声がかけられる。
その男は瓦礫と爆音のような『鐘の音』をモロに受けたのか、体には無数の傷ができ、着ていた服はボロボロであった。
彼の名はザルド。
先程までベルが、同じように助けを請うていた人物である。
「なんだ?」
「──それはこっちの・・・・台詞なんだが。何で・・・いきなり・・・家を吹き飛ばす真似を・・・。」
ようやく瓦礫の中からの脱出を果たしたザルドは、朦朧とした意識の中で彼女が家を吹き飛ばした理由を問う。
彼からすれば先程ようやく明日の朝食の仕込みが終わり、さぁ、寝るか。となっていたところにこの仕打ちである。それ相応の理由が無ければ納得ができない。──まぁ、文句を言ったところで返ってくるのは謝罪ではなく、『
「・・・・・夢を見た。」
「ゆ・・・め・・・?」
「あぁ。──それも『悪夢』の類いをな。」
アルフィアは眉を不快げに歪めてそう呟くと、その夢の内容を語り始めた。
夢のなかでの私は子供で、同じく子供になっていた妹──メーテリアと共にとても可愛らしい『兎』をなで回していたのだ。
最初こそいい夢だと思ったのだが、突如としてメーテリアと兎が煙のように消えてしまったのだ。
勿論私はメーテリアと兎を探した。だが、メーテリアはいくら探しても見つからなかった。
兎の方は見つかったのだが──兎はその時襲われていたのだ、雌犬共に。
その雌犬共は、寄ってたかって兎をペロペロと舐め回していたんだ。
その光景に殺意を覚えた私は、感情の赴くままにその畜生共を蹴散らし、兎を救出した。
そして、そのままの勢いで畜生共に魔法を行使した。
その結果、現実世界でも魔法が発動し、家を吹き飛ばしてしまったという訳だ。
そんな無茶苦茶な夢の内容を話したアルフィアに、ザルドは顔をひきつらせる。
「つまり・・・なんだ・・・俺はそんな夢のせいでこんな襤褸くずみたいなザマになったのか?」
「まぁ、そうだな。」
全く反省した様子を見せずに言い切るアルフィアに、なんじゃそりゃ、とザルドは思わざるを得なかった。
確かに、確かに理不尽な奴だとは思っていたさ。だけど、ここまでだったのか?これが【
ザルドはそんなアルフィアの理不尽さに戦慄を覚える。
そして受けたダメージが想像以上に大きかった為か、そのままザルドは意識を失った。
──殺ってしまえ。
えっ?
──そんな頭の軽そうな雌犬共などとっとと殺ってしまえ、ベル。
ちょ、アルフィアお義母さん!?
──なぁに、近くには
そう言うとお義母さんは右手の親指で首を切る
──助言が野蛮すぎる!!!
そうだった!うちのお義母さんは『言葉』よりも早く『手』が出る人だった!そんな人が
「ベぇールぅ、そろそろ観念なさぁい。大体、こんな美女二人からのサービスなんてお金払ったってそうそう出来るもんじゃ──えっ?」
「そうですよ、兎様。ここは役得だと思って、そろそろ大人しく私達の奉仕を──おやぁ?」
?何だろう。急にアリーゼさん達が静かになった。
しかもアリーゼさんが急に顔を赤くして、輝夜さんはなんだか蠱惑的な笑みを浮かべている。二人とも同じところを見ているようだけど一体何を───ッッ!!!!!!?
「ベ・・・ベル、驚いたわ。顔は兎さんでも、そっちは象さんなのね・・・・。」
「兎様ったら、可愛い顔をして中々良いものお持ちのようで。」
僕の
──僕の羞恥心は限界点を越えた。
「*¥#@%¥$$&#¥¥$$#%!!!!」
「ベ、ベル!?」
「ちょっと待てベル!少し落ち着けぇ!!」
理解不能な叫び声を上げたベルは、二人の拘束から抜け出すと、制止の声を振り切り、シャンプーハットを投げ捨て、風呂場からの脱出を図る。
脱衣場への扉を勢い良く開け、その勢いのまま、廊下へと続く扉をも開ける。全裸で。
混乱と羞恥の極みに達しているベルは、勢いよく廊下に出た際に、廊下の壁へと激突するが、それでも彼は止まらず、混乱状態のまま廊下に沿って他の団員達がいる団欒室へと走った。
団欒室ではベルの叫び声を聞いた団員達が怪訝な表情を浮かべていたが、一糸纏わぬベルが飛び込んで来たため、団欒室は大混乱。
食後の紅茶を楽しんでいたマリューとリャーナは、飲んでいた紅茶を吹き出し、椅子に座って談笑していたネーゼとノインは椅子から転げ落ち、ベルの
ベルはというと、混乱状態のまま団欒室を走り回った後、壁に激突すると、目を回しながら仰向けに倒れ、動かなくなった。
すぐに騒ぎを聞きつけた他の団員達が駆けつけ、団欒室の惨状を見て絶句する。
「おい!一体何があったらこんな酷いことになるんだ!?」
「知るか!ベルの叫び声がしたと思ったら、スッポンポンで風呂場から走ってきたんだ!」
「なんだそりゃあ!?」
「と、とりあえず・・・・ベル君の『アレ』どうするの?小さくしないと・・・その、不味いんじゃ?」
「確か『一発ヌくと小さくなる』って本に・・・・。」
「いや、普通にタオルでもかけとけよ、マリュー!てか、セルティ!お前は早く鼻血を拭け!」
「で、でも将来的には・・・『アレ』をナニしたりするんでしょ・・・?今のうちに慣れといたほうが・・・・。」
「と、取り敢えず触っとく!?」
「いい加減にしろお前ら!!」
すっかり色ボケてしまった団員達に勢いよくツッコミをいれるのはこの派閥で唯一、絆されていないライラだ。
すっかりツッコミ役が板についてしまった彼女は痛む頭を押さえながら事態の収拾に努める。
──が、彼女の奮戦空しく事態は更に悪化することとなる。
「先程ベルの叫び声が聞こえましたが、何があったのですか!?」
「!おい、止まれリオン!お前はくるんじゃねぇ!!」
「ベル、無事ですか!?一体何が────!!!?」
ベルの叫びを聞きつけ、心配になって駆けつけたリューはそこで仰向けに横たわるベルと、ベルの下半身にてそそりたつ『ソレ』を直視してしまう。
『ソレ』を見てしまったリューは一瞬で顔を真っ赤にした後、凄まじい勢いで床へとぶっ倒れる。この間約1秒。
「あぁっ!!リオンが倒れた!!」
「大丈夫かリオン!?──ってやべぇ、息してねぇ!」
「「「「えぇ!?」」」」
「しっかりしろ!戻ってこい!リオォォォン!!!!」
【アストレア・ファミリア】の本拠にて、ライラの悲痛な叫びが響き渡った。