最強と最凶に育てられた白兎は英雄の道を行く


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作:れもねぃど
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第十一話 妖精(エルフ)の歌、白兎の舞い



GWなにもすることがなかったので早めの投稿です。
今回は怪物祭続きです。
アイズさんの出番はがっつり減ってます。


 

「せやぁぁぁぁ!」

『グオオオオオオオオオッ!?』

 

胸を切り裂くその一撃に、トロールは断末魔を上げて倒れた。

 

「アリーゼ、そっちは終わったか!?」

「ええ、こっちに来たモンスターはこれで全部よ!」

 

自らの得物を鞘に収めたアリーゼは、ライラの問いに答える。

四方からは街路に倒れた込んだトロールを見た市民達が歓声を上げていた。

 

「なんていうか妙ね。どこも大事にはなっていないみたいだし・・・。」

 

顎に手を当てながら思考していたアリーゼは、ライラへと向き直る。

 

「ライラ、闘技場の方はどうだった?」

「輝夜達から状況を聞いたが、あっちの方も大丈夫そうだったぜ。ただ───」

「ただ?」

「【ガネーシャ・ファミリア】の連中から聞いたんだが、モンスターの檻を監視してた連中とそこに行くまでの道にいた連中、それに数名のギルド職員がぶっ倒れてたんだと。」

「!容態は!?」

「いや、怪我はなかったらしい。ただ、全員糸の切れた人形みたいになってて、呼び掛けにも応じない状態だとさ。」

「・・・・怪我がないならひとまずは安心ね。じゃあ、そっちは【ガネーシャ・ファミリア】に任せて私達は引き続き怪我人の捜索とモンスターの討伐をするわよ!」

 

ライラは指示に従い行動を開始し、アリーゼは続いて周りにいたギルド職員にも怪我人の捜索をするように指示を出し、ギルド職員達もそれに従う。

 

「ん?アリーゼたんか?」

「ロキ様と【剣姫】!どうしてここに!?」

「アイズたんとデートしとったときに騒ぎを聞き付けてな、モンスター討伐の協力をしとったんや。アリーゼたんが倒したので全部やったっけ?」

「いえ・・・・あと一体、残ってます。」

「ええ【剣姫】、シルバーバックが残ってるわ。」

 

アイズは勿論、アリーゼでも問題なく斬り伏せられる相手だ。ならば早く済ませてしまおうと、既にやる気のないロキは足早に移動し始め、アイズとアリーゼも続く。

 

(やっぱり、モンスターが脱走したにしては被害少なすぎる・・・。モンスター達の様子もおかしかった、まるで何かを探しているような(・・・・・・・・・・・)───。)

 

アリーゼは歩きながら、今回の騒動のおかしな点について考えていたが聞き覚えのある声を聞き、現実に引き戻された。

 

「アリーゼ!」

「!アストレア様!」

「アストレアか、丁度ええわ。こっちにシルバーバックが来とらんか?子供達の話やとこっちに来とったみたいなんやけど。」

「シルバーバックなら、ベルが倒したから問題ないわ。」

「えっ、ベルが!?」

「なんや、もう終わったんかい。」

「?ベルって、どなたですか?」

「私達の派閥のかわいい兎さんよ!」

「!あの白い髪の子、ですか?」

「そう!白いだけじゃなくて、モフモフしてサラサラなんだから!」

「もふもふ・・・さらさら・・・。」

「アイズたん、アリーゼたん、めっちゃ話が脱線しとるんやけど・・・。んで、件のベルって子はどないしたん?」

「それが・・・「女性が襲われているので、助けに行ってきます!」って言ったきり、どこかへ行ってしまったの。」

「はぁ?なんやそれ、意味がわから───あン?」

 

唐突にロキは足もとを見た。

ぐらり、と感じた震動。

よろめくには至らないものの、鐘楼を一瞬揺らめかした。

ロキが周りに目を向けると、アストレア達も怪訝な表情をしていたため、気のせいではなさそうであった。

 

「・・・ロキ、いまのって・・・。」

「地震、か・・・?」

 


 

『き───きゃああああああああっ!?』

 

響き渡る女性の金切り声。

その原因は通りの一角から、石畳を押しのけて地中から出現した、蛇に酷似する長大なモンスターだった。

 

「ティオネッ、あいつ、やばい!!」

「行くわよ!」

 

そのモンスターを見た瞬間、首筋に嫌な寒気が走ったティオナとティオネは顔色を変えて叫ぶと同時に走り出した。

一足遅れてレフィーヤも駆け出し、屋根の上を跳んで一直線に突き進んだ。

悲鳴を上げ市民が一斉に逃げ惑う最中、ティオナ達は通りの真ん中へ、勢いよく着地を決める。

 

「こっちは純粋に怪物祭(モンスター・フィリア)を楽しんでたってのに・・・。というかこんなモンスター、ガネーシャのところはどっから引っ張って来たのよ・・・・。」

「新種、これ・・・・?」

 

煙が完全に晴れ渡り、モンスターは頭部を『うぞっ』ともたげた。

細長い胴体に滑らかな皮膚組織。頭部──体の先端部分には眼を始めとした器官は何も備わっておらず、若干膨らみを帯びたその形状は向日葵の種を彷彿させ、全身は淡い黄緑色をしていた。

顔のない蛇、と形容するのが相応しいといえるだろう。

 

「ティオナ、叩くわよ。」

「わかった!」

「レフィーヤは様子を見て詠唱を始めてちょうだい。」

「は、はいっ。」

 

ティオネの指示に、ティオナとレフィーヤ、そしてモンスターも反応した。

地面から生える体を蠢動させ、退治している双子の姉妹に意識を向けると、全身を鞭のようにして襲いかかってきた。

 

「「!」」

 

力任せの体当たりをティオナとティオネは回避する。

石畳が巻き上がり、石の塊が周囲に着弾する。広い通りには再び煙が立ち込めた。

細い体をくねらせるモンスターに、ティオナとティオネは、すかさず死角から拳と蹴りを叩き込む。

 

「っ!?」

「かったぁー!?」

 

皮膚を打撃した瞬間、彼女達はそろって驚愕した。

渾身の一撃が阻まれる。

並のモンスターであれば一撃で肉体が破砕される第一級冒険者の強撃を受けても、凄まじい硬度を誇っている滑らかな体皮は僅かばかり陥没したのみで、貫通も撃砕もかなわず、逆にティオナ達の手足にダメージを与えてきた。

皮の破けた右手をぶんぶんと振るい、ティオナは目を見開く。

 

『─────!!』

 

ティオナ達の攻撃に悶え苦しむ素振りを見せたモンスターは、怒りを表すようにより苛烈に攻め立ててきた。

凄まじい勢いで体を蛇行させ、彼女達を蹴散らそうとするが、アマゾネスの姉妹は危うげなく往なした後、何度も拳打を見舞った。

 

「打撃じゃあ埒が明かない!」

「あ~、もう!武器用意しておけば良かったー!!」

 

舌打ちと叫び声を上げる間も蛇型モンスターとの戦闘は続いた。

モンスターは暴れ狂うように全身を叩き付けるが、軽やかに周囲を跳び回ってあるティオナ達には掠りもしない。

 

「【解き放つ一条の光、聖木の弓幹。汝、弓の名手なり】」

 

その外で、ティオナ達が時間を稼いでいる間にレフィーヤが詠唱を進めていた。今の彼女は魔法効果を高める(そうび)を所持していない。

そのため片腕を突き出しながら、高速戦闘にも対応可能な短文詠唱の呪文を編む。

山吹色の魔法円(マジックサークル)を展開しながらレフィーヤは速やかに魔法を構築した。

 

「【狙撃せよ、妖精の射手。穿て、必中の矢】!」

 

そして最後の韻を終え、解放を前に魔力が集束した直後──ぐるんっ、と

先程までティオナ達にかかりっきりで、レフィーヤを歯牙にもかけていなかったモンスターが突然、レフィーヤのほうへと振り向いた。

 

「──ぇ?」

 

その異常な反応速度に、レフィーヤの心臓は悪寒とともに打ち震える。

レフィーヤはティオナ達が既に退避を始めているのを尻目に、直感した──このモンスターは『魔力』に反応する、と。

だが、その事に気づいた時には、黄緑の突起物が彼女を打ち据えようと凄まじい速さで地面から伸びていた。

 

───だが、結果的にその触手(・・)がレフィーヤに叩き込まれることはなかった。

 

「ふッッッ!!」

 

───突如、横合いから現れた白髪の少年が触手を叩き落とす。

 

「大丈夫ですか!?」

「あ、貴方は・・・。」

 

白髪の少年──ベルが余裕のない表情で問いかけると、レフィーヤは酒場で見た覚えのある少年の姿に驚いていた。

 

「レフィーヤ、大丈夫!?って、あの子・・・。」

「確か、【アストレア・ファミリア】の新人(ルーキー)?」

 

遅れてベルの姿に気づいたティオナとティオネも驚きの声を上げた。

レフィーヤは庇ってくれたベルに、再度声をかける。

 

「あ、あのっ、助けてくれてありが───。」

「お礼を言うのは早いと思います・・・・。」

「えっ?」

 

ベルから叩き落とされた謎の触手は不気味に蠕動し、一方で蛇型モンスターにも変化が現れる。

まるで空を仰ぐように体の先端部分をもたげたかと思うと、その先端部に幾筋もの線をその頭部に走らせ──次には、咲いた(・・・)

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』

 

破鐘(われがね)の咆哮が響き渡る。

開かれた何枚もの花弁は毒々しく染まった極彩色。

中央には牙の並んだ巨大な口が存在し、その奥では陽光を反射させる魔石の光が瞬いていた。

 

「何ですか、あれ・・・・?」

「蛇じゃなくて・・・・花!?」

 

正体を表したモンスターにレフィーヤが戦慄し、ティオナが驚愕する。

その形状から蛇と思い込んでいた細長い体は茎であり、顔のない頭部は蕾だったのだ。

花開きその醜悪な相貌を晒す食人花のモンスターは、体から生えている触手を次々と地面より突き出させ、本体は獲物──レフィーヤのもとへと這い寄っていき、邪魔者であるベルには触手の群れが襲い掛かった。

 

「!せりゃぁぁぁぁぁ!!」

 

ベルは迫りくる触手の群れに突っ込んでいった。

無謀とも言える正面からの突貫──だがその後の彼の動きを見て、その場にいた誰もが目を見張った。

 

───迫りくる触手をナイフで叩き落とす。

 

───ナイフでの対応が間に合わない場合は蹴りや拳で叩き落とす、または腕を使って触手を受け流す。

 

【ステイタス】こそ第一級冒険者(ティオナ達)に及ばないものの彼が繰り出す『技』はLv.1であるにも関わらず、『洗練されている』といっていいものであった。

 

「すご・・・・。」

「ベートの時もそうだったけど、あの子ほんとに駆け出しなの?」

 

そんな光景にティオナとティオネが感嘆の声を上げる。

一番近くで見ているレフィーヤに至っては声を出すことすら忘れているようだった。

だが、当の本人であるベルの表情は険しいままだった。

 

(モンスターの動きは見えるけど、体がついてこない!このモンスターの力と僕の【ステイタス】に差がありすぎるんだ!)

 

ベルは数回の攻防からこのモンスターの力はベルの【ステイタス】よりも上だと感じていた。

今でこそ鍛え上げられた『技』でなんとか対応できているが、防御や受け流す徐々に疲労やダメージが溜まってきている。

逆にベルが使っているナイフではモンスターの硬い皮膚に歯が立たず、ほとんどダメージを与えることができていなかった。

このままではジリ貧だ、そう判断したベルは後ろにいたレフィーヤに声を掛ける

 

「ウィリディスさん!」

「えっ、は、はい!?」

「僕の攻撃じゃ、あのモンスターに歯が立たないので魔法での攻撃をお願いできますか!」

「えっ!?で、でも・・・。」

「詠唱が完了するまで僕が何が何でも守り抜きます!だから、お願いします!」

「・・・わかりました、貴方を信じます!私を守って下さい!」

「はい!」

 

モンスターが『魔力』に反応することを知っているレフィーヤは最初こそ躊躇いを見せていたものの、ベルの覚悟を決めたような目を見て、何より『駆け出しの冒険者がここまでのことをしているのに【ロキ・ファミリア】である自分が情けないところは見せられない!』といったほんの少しの負けん気もあり、レフィーヤも覚悟を決め、詠唱を開始する。

 

「【ウィーシェの名のもとに願う】!」

『───!!』

「させない!!」

 

再び、獲物であるレフィーヤにモンスターが触手を伸ばすが、すかさずベルが迎撃する。

 

「【森の先人よ、誇り高き同胞よ。我が声に応じ草原へと来たれ】」

「私達も援護に行くわよ!」

「おっけぇ!って、あーもうっ、邪魔ぁっ!!」

 

駆けつけようとするティオナ達だが、ベルと同様に触手の群れに襲われ、行く手を阻まれていた。

 

「【繋ぐ絆、楽宴の契り。円環を廻し舞い踊れ】」

『アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!』

「【至れ、妖精の輪】」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「【どうか──力を貸し与えてほしい】」

 

攻撃の邪魔をしているベルが鬱陶しいのか、食人花が苛立ったような叫び声を上げ、負けじと彼も気炎を吐く中でレフィーヤは歌い続けた。そして──

 

「【エルフ・リング】」

 

魔法名が紡がれるとともに、山吹色の魔法円が、翡翠色に変化した。

 

「レフィーヤ!?」

『!!?』

 

収斂された魔力にティオナが気付き、食人花も反応を示す。

 

「【──終末の前触れよ、白き雪よ。黄昏を前に(うず)を巻け】」

 

詠唱が、続く。

完成した筈の魔法へ更に詠唱を上乗せ、別種の魔法を構築していた。

レフィーヤが先程完成させた魔法は──召喚魔法(サモンバースト)

同胞(エルフ)の魔法に限り、詠唱及び効果を全把握したものを己の必殺として行使する、前代未聞の反則技(レアマジック)であり、彼女の二つ名【千の妖精(サウザンド・エルフ)】の由来でもある。

 

「【閉ざされる光、凍てつく大地】」

 

召喚するのはエルフの王女、リヴェリア・リヨス・アールヴの攻撃魔法。

極寒の吹雪を呼び起こし、敵の動きを、時さえも凍てつかせる無慈悲な雪波。

詠唱が紡がれ、レフィーヤの玉音(ぎょくいん)に、美しい玲瓏な声音が重なり合い、魔法円がまばゆい輝きを放ち出した、その時──

 

「!」

「ま、まさか!」

 

ティオナ達が微細な地面の揺れを感じ、顔を青くする。その直後、揺れは大きな鳴動に変わり、食人花がいる辺りの石畳が突然隆起し、新たに食人花が二匹現れる。

 

「ちょ、ちょっとっ!」

「まだ来るの!?」

 

ティオナ達の悲鳴を皮切りに、レフィーヤの魔力に誘われたであろう二匹は一匹目と同じように彼女への攻撃を開始する。

ベルは必死に応戦するが、攻撃の手が増えたため、一本だけ触手の迎撃に失敗してしまう。だが──

 

──ベルはナイフを振り切った体勢から無理やり姿勢を変更し、レフィーヤに迫る触手の前に跳んだ(・・・)

 

その行動のお陰で彼女へ触手が届くことはなかったが、彼は触手の攻撃をまともに受ける。

 

「──ッ!!」

「!ティオネ、兎くんが!」

「わかってるわよ!」

「!──【吹雪け、三度の厳冬──我が名はアールヴ】!」

 

ベルの体からぐしゃと不細工な音が鳴り響くとともに、口の中にまで血が昇り、ベルが圧し殺した悲鳴を上げる。

その光景にティオナとティオネが悲鳴じみた声を上げる。

レフィーヤも一瞬だけ動揺するが、ベルと約束を果たすために一気に詠唱を終わらせた。

だが、食人花達も最後の足掻きと言わんばかりに彼女へ触手を伸ばす。しかし──

 

「ぐぅぅっぅ・・・・ぁぁぁぁぁ!!」

 

ベルは自分に攻撃をした触手を両腕で掴むとおもむろに齧りつく。レフィーヤは信じられない行動をとったベルに目を見張る。

 

「はぁあああああああああ!!」

 

ベルは叫喚を上げてナイフを振り上げ、触手に叩き付けた。

すると、先程まで傷一つ付かなかった触手が断ち切られる。

同時にその一撃で限界を迎えたのか、ナイフが根本から折れるが──ベルは止まらなかった。

ベルはナイフの柄を投げ捨てると、レフィーヤへと向かっている触手を拳や手刀、もしくは蹴りで叩き落とす。

そして彼女の唇が、魔法を紡いだ。

 

「【ウィン・フィンブルヴェトル】!!」

 

三条の吹雪。

ベルが間一髪で魔法の射線上から離脱すると、大気をも凍てつかせる純白の細氷がモンスター達に直撃する。

体皮が、花弁が、絶叫までが凍結されていき、三輪の食人花は佇立する三体の氷像となった。

 

「ナイス、レフィーヤ!兎君!」

「散々手を焼かせてくれたわね、この糞花っ!!」

 

歓呼するティオナと若干鶏冠にきているティオネが、三匹の内の二匹の懐に着地する。

深い蒼色の氷像へ、二人は申し合わせたように同じ動きをなぞった。

 

「ッッ!!」

「いっっくよおおおぉ────ッ!!」

 

一糸乱れない、渾身の回し蹴り。

褐色の素足が体躯の中央に炸裂すると同時に、食人花の全身が粉砕される。──だが、これで終わりではない。

 

「これでえええぇ────ッ!!」

「終わりだ、こらあああぁ────ッ!!」

 

ティオナ達はすかさず最後の一匹のもとへ行くと、次もまた一糸の乱れもない拳打を放ち、食人花の全身を粉砕した。





今のベル君は
ザルドの《スキル》+ベル君の《スキル》の効果によりめっちゃ強いです。
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