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続く学知の植民地主義 旧帝大による琉球人遺骨盗掘問題〈4〉
東大が保管する琉球人遺骨の全体像が明らかでないので、本年6月30日、東京大学情報公開室に対して「琉球人(沖縄人)の人骨標本番号が記された東大法人文書の全て」の開示を求める「請求書」を送付した。同日をもって東大に対する遺骨返還運動が始まった。まず、鳥居龍蔵、笹森儀助が盗掘した琉球人遺骨について情報を開示してほしい。
琉球人遺骨返還を求める会/関東、東大遺骨返還プロジェクトのメンバーと東京大学総合研究博物館を視察した。琉球人を見世物にした学術人類館の企画・運営に深く関与した坪井正五郎のコーナー、沖縄島の具志頭から発見され、無断で長期保管されている港川人のコーナーで重点的に説明をした。次に医学部の建物に行き、小金井良精の銅像、肖像画を見た。小金井はアイヌ民族の墓地からその遺骨を盗掘したことでも知られている。笹森儀助が石垣島から盗掘した琉球人遺骨の計測調査にも関与した。昨年、小金井がハワイから得た先住民族の遺骨10体が返還され、今年初めオアフ島で遺骨の再埋葬が行われた。ハワイ先住民族の東大保管は、『小金井良精日記』から明らかとなり、返還請求の根拠となった。
坪井は人類館に東大所蔵の「世界人種地図」、「土俗品」を提供し、「博覧会と人類学」と題する講演を行い、弟子たちに館内で人類学調査させた。同博物館内の坪井のコーナーの説明文にはその功績を称(たた)える言葉はあっても、「学術人類館事件」への東大としての説明、謝罪の言葉はなかった。
東大によって港川人の遺骨も奪われた。港川人を研究した東大研究者は、港川人が日本人の祖先であるとの仮説を立てている。そのような主張ができるのは、琉球併合によって琉球が日本の植民地になり、港川人が日本人研究者によって研究され、現在も全身骨格がほぼ揃(そろ)っている港川人1号、2号を東大が保管しているからである。東京大学に対する琉球人遺骨返還運動は、東大による琉球人差別の歴史的清算をも視野に入れて進められている。
2024年に公開された、アメリカ人類学会の遺骨に関する研究倫理報告書には次のような記載がある。「研究の自由は『無制限なアクセス』と同義語ではない。研究者、教育者、博物館の学芸員は、遺骨が敬意を持って扱われているかどうか心配しているその子孫に対して責任がある」。「過去において個人、コミュニティ、政府機関から得られた許可に基づいて遺骨収集が実施された場合、現代の倫理基準との比較を念頭において、過去の同意を定期的に再点検しなければならない。子孫コミュニティ、文化系列集団、ケアーをする地縁コミュニティから現代的な「再同意(re―consent)」を得る努力を尽くさなければならない。博物館や学会は、遺骨や返還に関する国内法や国際法、文化的慣習の変化を常に意識し続けなければならない」。
鳥居や笹森が遺骨を盗掘した時代とは異なり、現在、遺骨に対する研究倫理は非常に厳しくなっている。東大も琉球人遺骨に関する情報を公開し、説明、同意をえる努力、謝罪、返還を行わなければならない。
(敬称略)
(松島泰勝、龍谷大学教授)
研究目的で持ち出された琉球人遺骨を東京大学も保管しているとして「ニライ・カナイぬ会」などが返還を求めている。京都大、台湾大は保管していた遺骨を今年5月までに沖縄側に移管した。背景に琉球遺骨返還請求訴訟で「遺骨はふるさとに返すべきだ」と付言した2023年の大阪高裁判決がある。遺骨返還を巡る国内外の状況について、松島泰勝龍谷大教授に寄稿してもらった。
1963年石垣島生まれ。龍谷大学経済学部教授、ニライ・カナイぬ会共同代表。博士(経済学)。専門は島嶼独立論、琉球先住民族論。著書は『学知の帝国主義』『琉球 奪われた骨』『琉球独立への道』『琉球独立宣言』など。
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