2022年、京都市上京区の高齢者施設でにぎりずしを食べた86歳の女性が窒息し、亡くなる事故があった。遺族が損害賠償を求めた民事訴訟で、名古屋地裁は今年1月、運営法人に2900万円の支払いを命じた。遺族は「なぜ事故が起きたのか明らかにしたい」と願い、裁判に踏み切ったという。専門家は「事故を少しでも減らすため、高齢者の食について広く知ってほしい」と話す。
■普段は「刻み食」を提供
確定判決などによると、女性は1人暮らしで、近くに住む長女の支援を受けながらこの施設のデイサービスに週3回通っていた。軽度の認知症があり、21年に食べ物をのどに詰まらせてから、施設は食材を細かく刻んだ「刻み食」を提供していた。22年12月24日、クリスマスイベントとして回転ずし店で購入したマグロやサーモンなどのすしを提供。女性は切り身を喉に詰まらせて救急搬送され、亡くなった。
名古屋地裁は、すしの提供は「重大な過失とまではいえないが、慎重さを欠いた」と判断して慰謝料などの支払いを命じ、その後確定した。
窒息を警戒して、通所時以外の食事は長女らが毎日見守っていただけに、遺族のショックは大きかった。事故後、運営法人からは「本人の食べたいという意欲を大事にした」という説明があったという。長男は「イベントだから、本人が希望したからといって、普段と違う食事を出してよいのか」と疑問を呈する。
法人は京都新聞社の取材に「個別事案についてはプライバシー保護の観点から回答を控える。事故発生をおわびし、ご冥福をお祈り申し上げる」とした。
■医療関係者にも悩み 専門家「十分な観察」訴え
高齢者の窒息事故はどうすれば防げるのか。かむ、飲み込むといった力は年齢を重ねるほど弱まる。16年の消費者庁の分析では、人口10万人当たりの食べ物の誤嚥(ごえん)による死者数は75~79歳で9・3人だが、85~89歳で32・4人、90歳以上では57・4人と急増する。