粗悪論文「業者が量産」 米大などが調査、学術誌の審査にも関与か
科学研究不正は個人が手を染める例外的な行為だと思われがちだが、実は粗悪な論文を学術誌に掲載させる審査担当者のネットワークや、論文を量産する業者といった組織的な関与もあるとの研究を、米ノースウエスタン大などが20日までに、米科学アカデミー紀要に発表した。情報会社や出版社が運営する学術データベースなどを解析し、明らかにした。
科学論文の数が15年ごとに倍になるペースで増えるのに対し、業者の手によると疑われる論文は1年半で倍増しているという。チームは「対策は急を要する」と指摘。不正の発見や検証を現状のように研究者個人の活動に頼るのではなく、体系的な仕組みを構築する必要があると提言した。
学術誌に投稿された論文は、外部の研究者が掲載の可否を検討する。審査担当者を公開している科学誌「プロスワン」のデータを分析すると、粗悪な論文を頻繁に受け持つなどの疑わしい担当者45人が浮上。約1万8千人の中のごく一部だが、信頼性に問題があるなどとして掲載取り消しになった論文の30%を扱っていた。
うち25人は問題のある論文の著者にもなっていた。互いに論文を審査し合っている様子もうかがえた。
ヒンダウィという出版社の学術誌でも同様に、問題のある担当者53人が特定された。
実験画像を使い回した複数の不正論文が同時期に同じ学術誌に集中して掲載されていることも分析で判明した。学術誌の中には名前やウェブサイトがブローカーに乗っ取られるなどして論文審査の仕組みが機能していないものがあり、粗悪論文の製造業者の標的となって論文の出版に利用されているとみられる。〔共同〕
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(更新)- 石原純インペリアルカレッジロンドン 講師ひとこと解説
こんな意味のないことでお金を稼いで、人生の時間の無駄使いとしか思えません。 科学界にも、ワークライフバランスの波が押し寄せており、以前のような科学者の頑張りで科学の論文をチェックするというのは難しくなってきています。新しい仕組みが必要になってきています。
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(更新) - 佐藤一郎国立情報学研究所 教授ひとこと解説
クオリティの低い学術誌が増えた背景には、購読料を無料とし、掲載料を収入源とするビジネスモデルの学術誌が増加したことが挙げられる。同時に、研究者の評価制度にも課題がある。研究者の評価指標として論文の参照数が重視されるようになった結果、一部の国では著者同士が相互に引用し合う事例が散見されるほか、査読者自身の論文を引用している投稿論文を緩やかに査読することや、査読者の論文の参照を採択条件とするケースも見受けられる。また、学術誌と論文数の急増により採択判断を担う査読者が不足しており、一部の学術誌では投稿者と査読者が特定のコミュニティに限られ、互いに甘い査読を行うことで論文数を増やす例もあるようだ。
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