島根大、給与の引き上げできず 財政難で人事院勧告に対応困難 24年度4~11月分 国の経費減など影響
島根大(松江市西川津町)が2024年度、人事院勧告による4月からの教職員給与引き上げに対応できず、12月からの改定にとどめたことが分かった。人件費に充てる国からの運営費交付金の基幹経費が減少しているのに加え、人件費と物価の高騰が影響した。4~11月の8カ月分は上昇分を支給しなかった。25年度も引き上げが勧告された場合の予算が確保できておらず、厳しい財政状況が表面化している。 国立大病院の経営厳しく 島根大病院、24年度も赤字見通し 高度医療の機器更新に支障、CF活用も
24年度の人事院勧告は、民間企業との格差是正を理由に国家公務員の月給を行政職平均で2・76%引き上げる内容だった。 勧告に法的拘束力はないが、国家公務員は夏の勧告が年度当初にさかのぼって適用されるのが通例になっている。04年度に法人化された国立大も国家公務員の給与を考慮する必要があるとされている。 これまで同大も勧告に準拠してきたが、24年度は予算が確保できず、労使交渉の末、12月からの改定で合意。4~11月分の8カ月分は支給できなかった。 同大によると運営費交付金のうち、人件費など運営に充てることができる基幹経費の減少が背景にあるという。法人化した04年度の95億1千万円に対し、24年度は88億3千万円、25年度は87億2千万円だった。 さらに人件費は22年度の182億円に対し、24年度は10億円増の192億円になった。教育や研究、診療に関する経費も上昇。付属病院の経営も赤字となっている。
共同研究による外部資金の獲得などで財源の確保をはかっているが、改革の途上にあり、自助努力による増収で対応できる範囲を超えているとしている。 国立大学協会は24年6月、窮状を訴える声明を出した。大谷浩学長は「国立大学は地方を支える人材を輩出する重要な役割を担う。安定的な運営のためにも運営費交付金の基幹経費を一定にすべきだ」と訴えた。(小引久実)