最強と最凶に育てられた白兎は英雄の道を行く


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作:れもねぃど
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第六話 兎のアドバイザー



エイナさんのお説教回です。

てか、書きたいところが全然書けない・・・・。




 

リューとアリーゼが本拠(ホーム)への帰路についている頃―

 

―ベルは正座させられていた。

 

―硬い床の上に正座させられていた。

 

場所は『冒険者ギルド』本部のロビーに設けられた小さな一室。

その部屋では現在、反省したように顔をうつ向かせたベルとその目の前に仁王立ちをしているハーフエルフの女性の二人きりだった。

ほっそりと尖った耳に澄んだ緑玉色(エメラルド)の瞳。セミロングのブラウンの髪は光沢に溢れており、お世辞抜きにしても美人と表される容姿をしている。

ダンジョンを運営管理するギルドの窓口受付嬢―そのなかでもその容姿と親しみやすい性格から高い人気を誇る―エイナ・チュールはその美しい顔に深いしわを刻んでいた。

その理由は怒り。エイナが口癖のように言っている言葉を無視して、ベルが下の階層に潜っているためである。

 

「ねぇ、ベル君・・・。」

「はっ、はいっ。」

「駆け出しの冒険者が比較的安全に探索できる階層って、何階層までだっけ・・・?私に教えてくれるかな?」

「・・・1~4階層までです・・・。」

「そっかぁ。良かった、忘れてる訳じゃないんだね。で、今日君は何階層まで行ったのかな?」

「・・・16階層です。」

「お馬鹿!!」

「ふぐぅ!」

 

エイナの質問に恐る恐る答えていたベルだが、ベルの答えを聞いて我慢の限界に達したのか、エイナは怒声を上げると、ベルの頬に掴みかかった。

 

「きっ!みっ!はっ!、私の言っていたことを覚えていたのにそんな危ないことをしていたの!?」

「ふみゅぐぅ!ご、ごべんなはい!」

「ただでさえソロでダンジョンに潜ってるんだから、不用意に下層に行っちゃダメって言ってるでしょぉぉぉ!!」

「ふ、ふぁいぃぃぃ。」

 

こうなったきっかけは、本日得た魔石とドロップアイテムをリリと分け合い―魔石の取り分は、ベルが3割、リリが7割で、ドロップアイテムの取り分は、ベルが7割、リリが3割とベルが『スキル』のことを考えて、ドロップアイテムを多めにして貰った。―リリが「これで久しぶりにじゃが丸くん以外の食べ物が食べられます!」とホクホク顔で帰って行くのを見送った後、ベルが「エイナさんに現状報告をしよう。」と思ったことだった。

自身の担当アドバイザーに相談するために窓口に足を向け、エイナを見つけ出して彼女の元に赴いた。

エイナも近づいてくるベルの姿に気付くと、頬を緩ませて「どうしたの?」と訊ねる。

ベルが現状報告と今後について相談しに来たとの旨を伝えると、エイナは「じゃあ、ボックスで話そうか」と言ってベルと一緒にボックス内に入り、ベルと向かい合う形でテーブルを挟んで椅子に座った。

そしてベルはエイナに自分の近況を語る。

最初こそ静かに耳を傾けていたエイナだったが、ベルの『単独でミノタウロスを2匹倒した』、『16階層まで行った』といった話を聞いていく内に表情を険しくしていった。

ベルはそのことに気付かないまま、自分の近況を次々と語っていく。

そしてとうとう我慢の限界がきたのか、エイナは「ベル君・・・。」とベルに語り掛ける。

ベルは「?何ですか?」と言って話を一度中断し、顔を上げ、「ヒェッ!」と悲鳴を上げた。何故なら―

 

エイナが―目が全く笑っていない、不思議な圧力のある―微笑みを浮かべて、此方を見ていたからである。

 

そんな様子のベルに「やっと気付いたの?」とでも言うように、浮かべていた笑みを更に深いものにした後、ベルに言葉を掛ける。

 

「ベル君・・・・正座。」

「えっ?」

「正座。」

「い、椅子ちゃんとありますよ?」

「せ・い・ざ!」

「はっ、はいぃぃぃぃぃ!」

 

―こうしてベルは硬い床に正座することになったのである。

 

「もぉ、どうして君は私の言いつけを守らないの!冒険なんかしちゃいけないっていつも口を酸っぱくして言ってるよね!」

 

―『冒険者は冒険をしちゃいけない』―

 

矛盾しているように聞こえるが、『常に保険をかけて安全を第一に』という意味であり、冒険者は成り立ての時期が一番命を落とすケースが多く、駆け出しの冒険者は肝に銘じておかなければならないことである。

 

「・・・・・。」

「・・・不満そうな顔だね。」

「はい、すいません・・・。」

「君の目的・・・『英雄になる。』だったっけ?その目的も死んじゃったら、達成できないんだよ?」

 

エイナはベルの口から迷宮都市(オラリオ)に来た目的を聞いていた。

最初こそ、そんな夢見がちな目的に『可愛いな。』なんて思ったりもしたが、自らを死の危険にさらしてまで強くなろうとしているベルを見ると『このまま死んでしまうのではないか』と不安になってしまっていた。

そんなエイナの問いを聞いたベルは、少し考える素振りを見せた後、口を開いた。

 

「僕には、冒険者としての才能がありません・・・。」

「・・・はぁ?」

 

エイナは『何を言っているんだこの子は?』と思わざるを得なかった。

『Lv.1でミノタウロスを倒す。』、『Lv.1の二人パーティーで16階層まで行き、生還する。』これらは普通のLv.1の冒険者ではできない―まさしく『偉業』と言ってよいほどのことだ。

それほどのことを成した人物が自分のことを「才能がない。」などと言ったら、ほとんどの冒険者達は『新手の嫌味か?』と思うことだろう。

そんなエイナの疑問を察したのか、ベルが言葉を続けた。

 

「僕がここまで動けるのは、僕の『家族』が鍛えてくれたからです。それがなかったら僕はもっと弱かったと思います。」

「家族・・・前に話してた『叔父さん』と『お義母さん』のこと?」

「はい。特にお義母さんからは『お前が英雄なんてものになるためには限界を300回は越えなくてはならん。』とまで言われました。だからもっと頑張らないと―」

「―限界ってなんだっけ・・・?」

 

エイナは思わず、机に突っ伏した。

合点がいった。少年がここまで自分を危険に晒してまで強くなろうとしているのは、幼少期の修行(スパルタ)が原因だったのだ。

 

「・・・わかったよ。とりあえず、モンスターに対処できてるみたいだし、到達階層については何も言わないよ。」

「!いいんですか?」

「言ったところで、ベル君聞く耳持たなそうだしね。」

「うっ・・・。」

 

エイナがジト目でベルのことを見るとベルはバツが悪そうに呻き声を上げた。

 

「でも、せめて装備くらいはもっと良いものに変えるべきかも・・・。よしベル君、明日の予定って空いてたりする?」

「?はい。今のところは。」

「じゃあ明日、一緒にベル君の防具買いに行かない?」

「えっ、急にどうしてですか?」

「正直、今のベル君の装備だと、今後のダンジョン攻略は厳しくなると思うからね。・・・どうかな?」

「あぁ、そういうことなら。すみません、お手数をお掛けしてしまって。」

「いいの、いいの。じゃあ、朝十時に広場の銅像前に集合でどう?」

「はい、僕は構いません。」

「それじゃ、決まりだね。」

 

その後、ベルとエイナは今後のことについて数点話し合い、ベルは「明日はよろしくお願いします。」と言って、ギルド本部を後にした。

 

 

「うーん、それにしても・・・。」

 

エイナは窓口で事務作業を行いつつ、考えを巡らせていた。

その内容はベルの言っていた『家族』についてだった。

 

「ベル君の家族・・・絶対、元冒険者だよね。」

 

エイナは、ベル本人から聞いた話や、座学時に確認した彼のモンスターとダンジョンに対する知識量から、彼を鍛え、知識を与えた人物が一般人などではなく、元冒険者であると確信していた。しかし―

 

「『ザルド』と『アルフィア』なんて名前の冒険者、聞いたことないし・・・。」

 

エイナは全く聞き覚えのない名前のため、『本当にそんな冒険者がいるのだろうか』と考えており、確信を持てていなかった。

 

―だが、エイナは知らない。

 

その両名はかつて『神時代の象徴』とまで言われた【ファミリア】の団員であり、『とある理由』から既にこの世を去っていると思われていることを。

 

―そして、ほとんど者は知らない。

 

その両名が、『とある理由』を克服して今や全盛期以上(・・・・・)の力を有していることを。

 

 

「来ましたよ、シルさん。」

 

「はい!いらっしゃいませ、ベルさん!」

 

数時間後、ベルはシルと初めて会った場所である『豊穣の女主人』の前で再開していた。

ベルはエイナと別れた後、一度本拠(ホーム)に戻り【ファミリア】の団員と合流し、会場であるこの店に訪れたのである。

 

「えっ?ベル、シルと知り合いなの?」

「はい、今朝知り合いまして・・・」

「おやおや、私達というものがありながら早速浮気ですか。お盛んな兎さんですね。」

「ちょっ、そんなんじゃないですよ!輝夜さぁん!!」

 

アリーゼはベルとシルが既に知り合いであることに驚き、輝夜が悪い笑みを浮かべてベルをからかうと、ベルが必死に否定する。

そんな様子に他の団員達は笑い声を上げ、そんな眷属達の様子をアストレアは楽しそうに見つめていた。

 

「御予約のお客様、入りまーす!」

 

シルはそう言うと店の奥へと進んで行き、ベル達もその後に続く。

「では、こちらにどうぞ」と言われて案内されたのは、カウンター席近くのテーブル席だった。

団員達が次々に席に座るなか、ベルがカウンター席に目を向けると知己の少女がカウンター席に座っていることに気付いた。

 

「あれっ?リリ?」

「あっ、ベル様!?こんなところで会うとは奇遇ですね。」

「どうした、ベル?って、アーデではないか。奇遇だな。」

「ゲッ、輝夜様・・・。」

 

リリは、ベルの姿を確認して嬉しそうに返答したが、すぐ後ろに輝夜がいることに気付き、顔をひきつらせた。

その反応をみた輝夜は、リリのそばに素早く近づき「何が『ゲッ』だ、あん?」と両拳でリリのこめかみを挟み、『グリグリ』とした。

対するリリは、なんとかその状況から脱しようとするが、叶わず「ひぐぅぅぅぅ!ライラ様、助けてぇぇぇ!」と小人族(どうほう)であるライラに救援要請(SOS)をするが、当のライラは楽しそうな笑みを浮かべながら「リリルカぁ、お前に『根気』を問おう。」とこれまた小人族(どうほう)の『勇者』のお株を奪うような言葉を掛けるだけで、助ける気は微塵もないようだった。

そんな状況を見かねたのか、アストレアが「輝夜、やめて上げなさい。」と言ったことでようやくリリは解放された。

解放されたリリが「ふぉぉぉぉ・・・。」とこめかみを押さえながら蹲っているのを見たベルは「大丈夫、リリ?」と声を掛けた。

 

「あ、頭に穴が空くと思いました・・・。」

「輝夜さんがごめんね・・・。というか、リリもここでご飯を食べるつもりだったの?」

「いいえ。ベル様が今日の報酬を山分けしてくれたお陰で、【ファミリア】の貯蓄に余裕ができたので、主神(ヘスティア様)と二人で豊穣の女主人(ここ)へ。」

「なるほど、そうだったんだね。」

「そうだ、ベル様にもご紹介します。此方がリリの【ファミリア】の主神、ヘスティア様です。」

 

そう言ってリリが視線を向けた先には、外見だけを見れば幼女のような『神』が一心不乱に食事をしていた。

 

「ヘスティア様、此方は【アストレア・ファミリア】のベル・クラネル様です。」

「・・・・・。」

「は、はじめまして。ベル・クラネルです。本日はリリルカさんにサポーターをしていただいて大変助かりました。」

「・・・・・。」

 

ベルとリリがヘスティアに声を掛けるものの、ヘスティアはその声に反応することなく、食事を続けている。

そんなヘスティアの様子にベルが困惑した表情を浮かべ、リリが呆れたようにため息をついた。

リリはそんなヘスティアに後ろから近づいて行き―彼女のツインテールの髪を思いっきり、引っ張った。

 

「ふごぉぉぉぉ!?」

「いつまで食ってるですかぁ!こんのぉ駄女神がぁぁぁぁ!」

「んごぉぉぉぉぉぉぉ!?」

 

リリがヘスティアの髪を引っ張りながらそんなことを言うが、ヘスティアは食べていたものが喉に詰まってしまったのか、顔を青くしており、返答する余裕がないようだった。

なんとかテーブルにあった飲み物の入ったジョッキを掴み、詰まった食べ物を胃に流し込むと、自分の髪を引っ張っているリリの腕を掴み、彼女に向き直ると猛然と抗議をした。

 

「いきなり何をするんだ、リリルカ君!君は僕を送還する気かぁぁ!?」

「五月蠅いですヘスティア様!大体、たった一人の眷属が危機に陥ってるにも関わらず、ステーキを食べること優先するようなロクデナシの神はとっとと送還されればいいんです!」

「何をぉ!言ったなぁぁぁ!」

「何ですかぁぁ!?」

「ちょっ、リリ、ヘスティア様!止めてください!」

 

不毛な争いを始めている二人をベルを止めようとするベルであったが、二人共熱くなっているのか聞く耳を持たない。

そんな様子の二人を見て、【アストレア•ファミリア】の団員達は面白そうに「いいぞー!やれやれ!」「リリちゃん、ファイトー!」と声援を送っていた。

そんな様子に他の客達が「なんだ、なんだ。」「うるせぇな。」「一言ガツンと言ってやろうか?」「止めとけ、止めとけ。ありゃ【アストレア•ファミリア】の連中だぞ。」とヒソヒソ話す声が聞こえてくる。

そんな状況の中でアストレアが『そろそろ止めたほうが良いかしら』と思い始めた時だった―

 

「ご予約のお客様ご来店ニャー!」

 

店員の声と共に、どっと数十人規模の団体が酒場に入店してきた。

 





次回、みんな大好き?【ロキ・ファミリア】の回です。
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