最強と最凶に育てられた白兎は英雄の道を行く


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作:れもねぃど
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第四話 街娘と灰被り娘(シンデレラ)



いつもより少し長めです。
今更ながらこの世界線の説明をしますが、この世界線では『大抗争』は発生していません。
そのため大抗争で死んでしまった人も生きています。
生きているからといって、登場するとは限りませんが。
それは闇派閥側もおなじです。


 

「ベルの歓迎会を開くわ!!!」

 

翌朝、【アストレア・ファミリア】の団員達が食堂で朝食を食べる中、唐突にアリーゼがそう言い放った。もちろん突然そんなことを言われた団員達は「「「「なに言ってんだこいつ」」」」という思いを抱いた。

それを察したのかアリーゼは大いに自分の薄い胸を張りつつ、説明し始めた。

 

「ベルが【ファミリア】に入って、もう半月になるわ!『諸事情』があって直ぐには出来なかったけど、やっと【ファミリア】の貯蓄も貯まってきたし、ここいらでベルの歓迎会を開くべきだと思うの!!」

「いえ、ベルの歓迎会を開くことに異存はないのですが・・・些か急すぎませんか?」

「そうだぜ。大体、あたしらは歓迎会を開く場所も日時も知らねぇんだが。」

「開催は今夜!場所は『豊穣の女主人』よ!」

「「「「既に予約済み!?」」」」

 

アリーゼの説明に、リューとライラが苦言を呈するも、もう既に店の予約まで済ませているという団長(アリーゼ)の言に全団員が驚きの声をあげた。因みに、アリーゼが言う『諸事情』とはベルが加入する前に起きた二度目の『迷宮進攻(ダンジョン・アタック)による大赤字』のことで、それによりベルの歓迎会どころではなく、更には自分達の主神(アストレア)に野草と塩のひっどい(スープ)を七日七晩飲ませるという黒歴史が再来してしまったのである。

 

「だから皆、今日の夜の予定は開けておいてね。因みにアストレア様からは、昨日の時点で了承を貰っているわ!」

「「「「だったら昨日の時点で私達にも言っておけよ馬鹿団長!!!」」」」

「特にベル。貴方は主役なんだから昨日みたいに遅くなっちゃ駄目よ!」

「はっ、はい!」

 

団員達からの文句を華麗に無視(スルー)しつつ、ベルに遅刻厳禁を言いつけたアリーゼは、食事を終えて食堂から出て行った。それに続く形で食事を終えた団員達が、次々と食堂から出ていく中、ベルも食事を終え、ダンジョンへ行くための準備をしようと、自分の部屋に戻ろうとしたその時、輝夜から声をかけられた。

 

「おい、ベル。」

「はい、どうしましたか輝夜さん?」

「お前は今日もダンジョンへ行くのだろう。」

「はい。」

「では、今日は一人で潜るのではなく、パーティー組んでダンジョンに潜れ。それからパーティーメンバーは私が指定した奴にしろ。既に話を通してあるからな。」

「わかりました。でも、大丈夫でしょうか?」

 

輝夜の言動から、パーティーメンバーが【アストレア・ファミリア(自派閥)】ではなく、他の【ファミリア】の人物だと察したベルは「自分が迷惑を掛けてしまうのではないか」と不安そうな顔をする。それを察した輝夜は「大丈夫だ。」と言って、その人物の詳細な情報を話し始めた。

 

「今日、お前とダンジョンへ潜るパーティーメンバーは【ヘスティア・ファミリア】のリリルカ・アーデというLv.1の小人族(パルゥム)の女だ。」

小人族(パルゥム)・・・。ライラさんと同じですか?」

「あぁ。だが、奴はライラとは違い、『サポーター』だ。だから迷惑を掛けられることはあっても掛けることはないと思うぞ。」

「そうなんですか。」

「ああ、しかも奴は私に『借り』がある。文句など言わせん。」

「か・・『借り』ですか・・・。」

 

パーティーメンバーの詳細を聞きつつ、輝夜が暗にその少女の『弱み』を握っていると、悪い笑みを隠すことなく述べているのを見て、ベルはちょっと引いていた。

その後、少女の大まかな容姿と待ち合わせ場所を聞いたベルは待ち合わせ場所である中央広場(セントラルパーク)へ向かうため本拠(ホーム)を後にした。

 

小人族(パルゥム)のサポーターかぁ・・・。一体、どんな人なんだろう)

そんなことを考えながら、ベルはメインストリートを歩いていた。空は既に明るく、今日も大通りは人々で賑わっていた。

待たせてるかもしれないし、早く行かなきゃ、とベルは人混みを避けつつ、足を早めようとし・・・。

 

「・・・・!?」

 

背後からの視線を感じ、振り返った。

そんなベルの唐突な行動に周りにいた通行人達が訝しげな視線を向けるが、今のベルにそれを気にする余裕はなかった。

 

(・・・嫌な感じ。昔、修行中にザルド叔父さんから向けらたことのある殺気の籠ったものとは違うけど・・・・視られてた?)

 

今向けられた視線をそのように解釈すると、ベルは広がる景色の中で動く全てのものに視点を合わせ、半ば動転しながら周りを見渡す。

しかし不審な人影などなく、むしろ急に挙動不審になったベルへ奇異の目が集まっており、それに気づいたベルが「僕の勘違い・・・?」と納得できないながらもそう結論付けようとしたその時―

 

「あの・・・・」

「!」

 

突然、後ろから声を掛けらたベルは、周りからすれば大げさ過ぎる挙動ですぐさま反転し、身構えた。

声を掛けてきたのはベルと同じヒューマンの少女だった。

薄鈍色の瞳と同色の髪を後頭部でお団子にまとめ、ポニーテールのような髪を後頭部から垂らしている。服装は白いブラウスと膝下まで丈のある若葉色のジャンパースカート、その上からサロンエプロンを着けている。おそらくどこかの店の店員なのだろう。

そんないかにも街娘といった様子の美少女はベルの警戒じみた動きに驚いていた。

 

「あっ、ごめんなさい。驚かせてしまいましたか?」

「い、いえ、此方こそちょっとびっくりしてしちゃって、すいません!」

 

少女はベルを驚かせてしまった事を謝ってきたが、ベルからしたら明らかに無害な一般人に警戒じみた挙動をとった挙げ句、謝らせたことに申し訳なさを感じ、同じように謝っていた。

 

「それで・・・僕に何か?」

「あ・・・はい。これ、落としましたよ。」

 

ベルの問いに答える形で少女が差し出した手に乗っているのは、紫紺の色をした結晶だった。

 

「えっ、『魔石』?あ、あれ?」

 

ベルは、首をひねって『魔石』収納用の腰巾着を確認した。

いつもは紐をきつく縛ってあるが、何かの拍子で緩んでしまったのだろう。

 

「す、すいません。ありがとうございます。」

「いえ、お気になさらないで下さい。」

 

ベルがお礼を言うと少女から優しい微笑みが返ってきた。

ベルもその微笑みにつられ笑ってしまう。

 

「今からダンジョンへ行かれるのですか?」

「はい。すいません、お仕事の邪魔しちゃいましたよね?」

 

少女は間を繋ぐように話しかけてくれる。ベルは仕事の邪魔をしてしまったことを謝りつつ、少女が働いているであろう店の看板を見上げる。

 

「あれっ?ここって・・・・?」

「?どうかしましたか?」

 

その看板に書かれていた店名は『豊穣の女主人』。

本日の夜、ベルの歓迎会が行われる予定の店であった。

 

「今日の夜、ここで食事をする予定なんです。」

「そうなんですか!?」

 

出来すぎた偶然に少女は驚きを露にしていた。

 

「はい。なので、今夜伺いますね。」

「はい。お待ちしています。」

 

その言葉を残して、ベルは中央広場を目指して再び歩み出そうとしてふと、思い出したように後ろを振り返った。

 

「僕、ベル・クラネルって言います。貴方の名前は?」

「シル・フローヴァです。ベルさん。」

 

ベルとシルは笑みと名前を交わし合った。

 

 

「一体どんな方が来るんでしょうか?」

 

中央広場にて先程のベルと同じような呟きを漏らす少女がいた。

彼女の名前はリリルカ・アーデ。【ヘスティア・ファミリア】所属のサポーターで、輝夜が言っていた『件』の女である。

 

「輝夜様からの依頼とはいえ、Lv.1の駆け出し冒険者とダンジョン探索なんてリスクが高い気が・・・。やはり今からでも断・・・れるわけないですよねぇ・・・。」

 

リリは今回、輝夜から依頼された内容に対して不安を感じ、依頼を断ろうかと考えるが、自分は輝夜に対して『借り』があり、元から『断る』などの選択肢がないことを思い出し、意気消沈してしまう。

 

(あーっ、もう!どうしてこんなことになってしまったんですかぁー!?)

 

リリが心の中で盛大に叫ぶ。

リリがこんな事になっているのは、彼女が前に所属していた【ファミリア】が関係している。

その名も【ソーマ・ファミリア】。神ソーマを主神とする典型的な探索(ダンジョン)系【ファミリア】である。 但し、他のファミリアと違い、商業系【ファミリア】のように酒の販売も行っている。

この【ファミリア】の主神であるソーマは、純粋に趣味に生きる神。所謂、趣味神という部類に入る神で、【ファミリア】の創設理由も、自分の趣味である(ソーマ)を製造するためであった。しかし、【ファミリア】を作ったはいいが、団員達の稼いでくる金は大した額ではなく、このままでは自分の趣味を続けられないと考えた神ソーマは、団員達がより頑張ってくれるように自分が作った酒である『神酒(ソーマ)』を『賞品』として資金調達のノルマを達成した者に与えることにした。

その結果、一度『神酒』の味を知ってしまった団員は、『神酒』に酔い、何に代えても金をかき集めるようになってしまった。

ファミリア内の団員を蹴落とすのは勿論のこと、換金所にいるギルド職員にすら「もっと金を寄越せ」と食ってかかる始末であった。

また、主神であるソーマがファミリアの運営に興味がないことをいいことに団長である【酒守(ガンダルヴァ)】ザニス・ルストラがファミリアを私物化し、様々な悪事に手を染めていた。

これまでは『闇派閥(イヴィルス)』の影に隠れており、対処するほどの悪事ではないと見逃されてきたが、ここ数年で『闇派閥』の活動が沈静化してきたため、遂に【アストレア・ファミリア】によって調査が行われることになったのである。

まず、【ソーマ・ファミリア】が行っている悪事の証拠を掴むべく、当時【ファミリア】から脱退するために必要な金を手段を問わず集めていたリリに輝夜が接触し、「これまでの悪事を見逃し、【ファミリア】から脱退させてやる代わりに、【ファミリア】が行っている悪事を全て話せ。」という『取引』―脅迫ともいう―を行い、【ソーマ・ファミリア】の現状を掴んだ輝夜はライラ達と協力し、あらゆる筋の情報から彼の【ファミリア】の悪事の証拠を掴み、主犯であるザニスの捕縛に成功した。なお、この件に頭の硬い妖精(リュー・リオン)は一切、関わらせてもらえなかった。

その後、【ソーマ・ファミリア】は【ファミリア】の解散や主神の『送還』などは行われなかったが、ギルドより『一時的な酒の生産と販売の禁止』を言い渡された。

そのような出来事を経て、晴れて【ファミリア】を脱退したリリであったが、どこからかリリの【ファミリア】脱退を聞きつけたとある幼女神(ヘスティア)のしつこい勧誘―最初こそ『HEY!そこの小人族(パルゥム)君!僕の【ファミリア】に入らないかぁーい?』等と余裕ぶっていたが、無視し続けたため、最終的に泣きながらリリのバックにしがみつき、『た~の~むよぉぉぉぉぉぉ!!入ってくれよぉぉぉぉ!!!もういやなんだぁぁぁぁぁ、誰もいない本拠(ホーム)に帰るのはぁぁぁ!!!さびしぃんだよぉぉぉ!!!!』という懇願に変わった。―に負け【ヘスティア・ファミリア】に入団する事となったのである。

 

「あ、あのぉー。」

「!はい、何でしょう!」

 

これまでのことを回想していたリリは、突然声を掛けられたことに驚き、急いで返答をして声の主の方へ向く。

そこに立っていたのは、白髪に深紅(ルベライト)の瞳を持つまるで兎のような少年だった。

その少年は少し緊張した様子で口ごもっていたが、やがて意を決したように話し掛けてきた。

 

「へ、【ヘスティア・ファミリア】のリリルカ・アーデさんでしょうか?」

「あ、はい、そうですけれど。貴方は・・・・?」

「ぼ、僕は【アストレア・ファミリア】のベル・クラネルっていいます。本日は宜しくお願いします!!」

 

その自己紹介にリリは軽く目を見張った。

輝夜から依頼を受け、【アストレア・ファミリア】の新人(Lv.1)が来るとは聞いていたが、まさかここまで『冒険者』という職業が似合わない少年が来るとは思っていなかったのだ。

因みに輝夜からは「明日、うちの新人とダンジョンに潜れ」としか聞いていなかったりする。

 

(弱そうですねぇ。まぁ、威張り散らしてくるような冒険者に見えないのが唯一の救いですか。)

 

内心でベルの事をそう評価しつつ、昔のような扱いをされなさそうだと安堵していた。

 

「此方こそ宜しくお願いします。今日はどれくらいの階層まで潜る予定でしょうか。」

「はい、行けるところまで行こうかなと思っています。」

 

その言葉を聞いてリリは、駆け出しみたいですし、1~4階層ぐらいですかね?と考える。それぐらいの階層ならば大丈夫そうですね。とも考え、リリは少し気が楽になった。

 

「では、行きましょうか。」

「はい!」

 

リリの言葉に元気よく返答したベルは、リリを連れてダンジョンの入口へ向かった。

 

 

 

―駆け出しみたいだし、1~4階層ぐらいですかね。

―そう考えていた時期が(リリ)にもありました。

 

そんなことを考え、リリが現実逃避してしまうくらい目の前光景は常軌を逸していた。

現在、彼女達がいるのはダンジョンの13階層。

駆け出しのLv.1が潜れる階層を越えているにも関わらず、同行者の少年―ベルは次々出現するモンスターと互角以上の力で渡り合っていた。

 

『オオオオオオオオンッ!』

「ふっ!!」

 

13階層から出現する犬型モンスターの『ヘルハウンド』がベルに飛びかかってくるが、ベルは難なく大剣の一撃でヘルハウンドを両断する。

残っているヘルハウンドはベル達から距離をとり、下半身を高く、上半身を伏せるような体勢をとった。

ヘルハウンド最大の脅威である火炎攻撃の予兆である。

 

「―せい!!」

『ギャンッ!?』

 

ベルはその身を翻し、難なく相手の懐へ飛び込むとモンスターの顔面を叩き割った。顔面を叩き割られたヘルハウンドは呻き声とともに崩れ落ちた。

 

(なっ、なっなっなっな・・・)

 

ヘルハウンドの群れを倒し、一旦戦闘を終えたベルは周りを警戒しつつも、一息ついていた。しかし、一連の戦闘を間近で見ていたリリは驚愕しっぱなしだった。どう考えてもLv.1の冒険者ができる戦闘ではなかったからだ。

 

「!リリルカさん!!後ろからモンスターが来てます!」

「えっ?」

 

ベルの警告を受け、後ろを振り返ると道の奥から兎の外見をした3匹のモンスターが現れた。

『アルミラージ』

大人しそうな外見からは想像できないほど、非常に好戦的なモンスターである。ベル達が現在いる13階層・・・最初の死線(ファーストライン)とも呼ばれる『中層』の中でも戦闘能力が低い種族ではあるが、集団での戦闘がかなり強いモンスターである。

 

『キャウッ!』『キィ、キィイ!』

「うっ、うわぁぁ!?」

「リリルカさん!!危ない!!」

 

アルミラージ達は甲高い鳴き声とともに近くにいたリリへ一斉に突進してきた。

自分の方へ向かってくるモンスターに思わずリリは悲鳴を上げる。

ベルはそんな彼女を庇うように前へと出る。そして、大剣を構えると突進してきたアルミラージに向けて大剣を一閃した。

その一閃は突進してきた3匹のアルミラージを再起不能にした。

 

「リリルカさん!大丈夫ですか!?」

「は・・・はい!ありがとうございます!」

「他のモンスターも寄ってきたみたいです!なるべく僕から離れないようにしてください!」

「わ・・・わかりました!」

 

ベルはモンスターを倒した後、迫って来ている他のモンスターの気配を感じとり、リリに警告する。

リリは守ってくれたことに礼を言いつつ、ベルの警告に従ってベルの近くに寄った。

此方に続々とやってくるモンスターを相手に、ベルが先程と同様に互角以上の戦いを繰り広げる中、それを間近で見ているリリは心の中でこう思わざるを得なかった。

 

(なぁぁぁぁんなんですかぁぁぁ、この人はぁぁぁぁぁ!?ぜぇぇぇぇったい、Lv.1じゃないですよぉぉぉぉ!!!!)

 

そんなリリの心の中の叫びは、誰の耳にも入ることはなかった。

 

 

「取り敢えず、今日はここまでにしましょうか。」

「・・・・・」

 

その後、13階層から更に下に潜り16階層に到達したベル達は、16階層のモンスターを一通り倒した。

そして倒したモンスターの『魔石』や『ドロップアイテム』をバックパックに収集している際に、ベルは自分とリリのバックパックが満杯近くなっていることに気付き、リリ―先程から一言も喋らず、魔石回収機(マシーン)と化している―に声を掛けた。

 

「・・・・・」

「今日はありがとうございました。リリルカさんが魔石とドロップアイテムを持ってくれるお陰で何時もより戦い易かったです。」

「・・・・・」

「また機会があれば一緒に探索したいんですけど、リリルカさんはどうですか?」

「・・・・・」

「あの・・・リリルカさん・・・?」

 

先程から自分の問い掛けに一切答えないリリに、どこか怪我でもしたんじゃないか。と心配そうにベルは問い掛けた。

その問い掛けから数秒の間を置いた後、リリはやっと声を発した。

 

「な・・・・」

「?」

「なんなんですか、ベル様は!?絶対、駆け出しじゃないでしょう!!」

「えっ!?ちょ、リリルカさん!?」

「何が目的なんですか!?リリを騙して何か良からぬことでも考えているんですか!?」

「ちっ、違いますよ!本当にLv.1ですって!」

「ベル様の動きはLv.1の冒険者にできるものじゃないんです!!!Lv.1じゃ、『ヘルハウンド』にも『アルミラージ』にも一人で勝てません!!ましてや『ミノタウロス』になんか勝てるわけがないんですよ!!!」

「で、でもほんとなんですって、信じて下さい!!!」

「信じられませんよ!!!それに何で見もせずモンスターの位置がわかるんですか!!?」

 

リリの一番の疑問はそこだった。

ベルは接近してくるモンスターは勿論のこと、ダンジョンから生まれてくるモンスターの位置まで把握していたのだ。

実際、天井から産まれ落ちたモンスター―夥しい数の『バッドバット』が原因で、天井が崩落した際にはベルがいち早くモンスターが産まれ落ちることに気付いたため、降り注ぐ殺人的な岩雨から身を守ることが出来た。

 

「そ、それは多分、『修行』のお陰だと思います。」

「『修行』・・・ですかぁ?」

「はい。『目隠しをした状態で四方八方から飛んでくる石を避ける修行』です。」

「・・・それってただのいじめなんじゃ・・・?」

 

ベルが言った『修行』の内容にリリはドン引きしていた。

そんなリリの表情を見てベルは、最初の頃は僕もそんな顔してたのかなぁ。と過去のことを思い出していた。

 

『ベル。今日から新しい修行を開始する。』

『はい!アルフィアお義母さん!』

『よし。まず、私とザルドの二人がかりでお前に石を投げる。それをお前は目隠しした状態で避けろ。』

『えっ。・・・・でっ、でも目隠ししてたら避けられないんじゃ・・・・?』

『投げる前に殺気を飛ばすし、気配を故意に隠すつもりもない。その二つを感じ取ってかわせ。』

『えっ。』

『おい、アルフィア・・・。流石に無理難題過ぎるんじゃないか?お前じゃあるまいし・・・』

『なんだ、ザルド。文句でもあるのか?この子に才能の欠片もないのは、お前も重々承知の上だろうが。そんなこの子が英雄になるためにはこれぐらいせねばならんのだ。これ以上、文句を言うようであれば『黙らせるぞ(ゴスペル)』。』

『・・・すまん、ベル。俺は無力だった・・・。』

『ザルド叔父さん!?』

『では、いくぞベル!』

『ちょと待っ、うわぁぁぁぁぁぁ!!!!』

 

ベルは、『修行』が始まる際に行われたやり取りを思い出し、遠い目をした。そんなベルの遠い目を見てリリは、この人もえらい目に合いながら生きてきたんですね・・・。と心の中で考え、少し同情していた。

 

「・・・・わかりました。嘘をつく人には見えませんし、Lv.1だということは信じましょう。」

「あ、ありがとうございます。」

「但し、今後はこんなことが無いように、潜る前に目指す階層を決めておいてください!!!」

「はっ、はい!気を付けます!」

 

リリから信じて貰えることになって喜んだのもつかの間、リリから発せられる凄まじい剣幕に、次回以降の探索にも付いてきてくれる気でいる事に気づかず、ベルは返事をした。

 

「では、帰りますか。」

「はい。リリルカさん。」

「私にさん付けと敬語は不要ですよ。ベル様くらい強い方からそんなことをされると違和感がすごいです。」

「えっ・・・で、でも。」

「でもじゃありません。これからは私のことは『リリ』とお呼びください。」

「・・・わかりまし、じゃなかった。わかったよ、リリ。」

 

その言葉にリリは満足そうに頷くとベルと共にダンジョンの入口へ向かった。

 

 





次回も新キャラ出します。

皆さん、ソードオラトリアの最新刊は読みましたか?
今回もとても面白かったですよね。
ただ、個人的にはゼウス、ヘラファミリアの団員紹介などが欲しかったです。ベル君の技のレパートリーが増えますし。
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