最強と最凶に育てられた白兎は英雄の道を行く


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作:れもねぃど
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第三話 兎との邂逅



ベル君が加入した時の話です。
ダンジョンに潜らないのでつまらないかもしれません。


【ファミリア】のなかで一番最初にベルと会ったのはライラだった。

その日、いつものように巡回(パトロール)をした後、一緒に巡回をしていたドワーフのアスタと別れ、道具(アイテム)製作用素材の買い出しを行っていた。色々な店を周り、必要な素材を全て調達する頃には、すっかり日が傾いていた。

「すっかり遅くなっちまったな。」とひとりごちつつ夕日に染まったオラリオを眺めながら帰路に就いていた。

 

(―7年くれぇ前(・・・・・・)から闇派閥(イヴィルス)の連中も大人しくなってるし、随分とここも過ごしやすくなったもんだな・・・。)

 

そんな事を考えていると、不意に後ろから声を掛けられた。

 

「すいません。そこの小人族(パルゥム)のお姉さん。」

「・・・・。」

「・・・? あの小人族(パルゥム)のお姉さん!」

「・・・・。」

「聞こえてないのかな・・・? 小人族(パルゥム)のお姉さん!!」

「ん! おぉ、悪りぃ、悪りぃ。聞こえてなかったぜ。」

「あぁ、そうでしたか。すいません、声が小さくて。」

「ははっ、気にすんなよ。こっちも考え事の最中だったからな。」

 

何度か呼び掛けられた後、肩を軽く叩かれてからライラは少年の呼び掛けに反応した。

そう、この時のライラは考え事をしていたのもあって、耳が遠くなっていたのだ。

決して、年下の冒険者(同業者)はおろか、たまに【ファミリア】ぐるみで行っている孤児院への慈善事業(ボランティア)の際に一回り以上年下の孤児達からも「ライラ!」と呼ばれており、それを不満に感じているとか、他の連中は全員「お姉ちゃん」と呼ばれていることに対して「私も呼ばれてみてぇ・・・」

と密かに思っているため、初めての「お姉さん」呼びが嬉しくなって、もっと呼んで欲しいが為にわざと無視していたということではないのだ。

だから、少年の呼び掛けに反応し、振り向いた時に浮かべていた満面の笑みは偶々、機嫌が良かったから浮かべていたものである。

 

「で、何の用だ少年。」

「実は、ある【ファミリア】の主神様にお会いしたいんですが、本拠(ホーム)の場所がよく解らなくて・・・。この辺だってきいたんですけど。」

「へぇー、【ファミリア】の名前は?」

「【アストレア・ファミリア】です。」

 

この時、ライラの中に警戒心が芽生えた。

本日、主神(アストレア)から来客があるなど聞いてはいない。

しかも、時刻はもう日が沈みそうな遅い時間。こんな時間に会いにくるなど怪しいことこの上ない。しかし―

 

「? どうかしましたか?」

「ん? いや、なんでもねぇよ。」

 

少年からの問い掛けを濁しつつ、改めてライラは少年を観察する。

まるで穢れを知らない処女雪のような白い髪に、深紅(ルベライト)の瞳を持った少年。背には家財道具等が入っているのであろう大きく膨らんだバックを背負っており、右手には布にくるまれた武器―大きさからしておそらく大剣―を肩に掛ける形で持っていた

どう見ても田舎からやって来たお上りさん(冒険者志望)

所持している武器も暗殺等に不向きな大剣である。

一応、警戒しておくかと考えつつ、少年との会話を

再開する。

 

「実は私、その【ファミリア】の団員なんだよ。」

「えっ! そうだったんですか!?」

「おう。何なら今から案内できるぜ。一緒に行くか?」

「はい!是非!」

 

よし、とライラは軽く頷くと少年を先導しながら

歩き始めた。

ライラと少年―ベル・クラネルは歩きながら、軽い自己紹介を行っていた。

そうして歩いているうちに、ライラとベルは【アストレア・ファミリア】の本拠(ホーム)である『星屑の庭』に

辿り着いた。

「主神に話をしてくるから、ちょっと待ってろ」と言うと少年は「主神様宛に手紙を預かっているので、渡してもらえませんか。」と言ってライラに手紙を渡してきた。「おう。」と言って手紙を受け取ると、ライラは本拠(ホーム)の中へ入って行った。

廊下を進み、団欒室へ入ると【アストレア・ファミリア】の全団員と主神であるアストレアの姿があった。

 

「あらライラ、お帰りなさい。」

「只今戻りました、アストレア様。それとアストレア様に来客が来てますよ。」

「来客?」

 

そんな予定あったかしら? と首を傾げるアストレアに「手紙も預かってますよ。」と言ってライラはベルから貰った手紙を渡す。それを受け取ったアストレアは

「手紙?誰からかしら?」と差出人が書いてあるであろう便箋の裏を見て―目を見開いた。

 

「どうしたんですか?アストレア様?」

 

いつものアストレアらしからぬ表情の変化を見て、ライラは思わず声を掛けてしまうが、アストレアは声が聞こえていないのか反応せず、忙しない手付きで便箋を開け、手紙を読んでいた。

やがて手紙を読み終わったのか、深く息を吐きつつ手紙を閉じた。そんな主神の様子に気づいた団員達は、心配そうにアストレアを見ていた。しばらく間を置いた後、アストレアはその場に全団員が揃っていることを確認すると話を始めた。

 

「皆に相談することがあります。」

「相談?その手紙が関係しているんですか?」

 

アリーゼが皆の疑問を代表するようにアストレアへ問い掛ける。

あれ程アストレアが動揺していたのだから、ただ事ではないと思ったのか、声と表情が若干硬い。

 

「ええ。これは『とある神』からの手紙。内容は『ある人物』を私の【ファミリア】に入団させて欲しいと書いてあるわ。」

「『とある神』・・・。どなたなんですか?」

「ゼウス。」

「「「「!!!!」」」」

 

輝夜が問い掛け、アストレアが回答した神物(じんぶつ)

全員が絶句する。

かつての『二大最強派閥』。その片翼を担った【ゼウス・ファミリア】の主神。とんだ大物である。

 

「そんな神物がわざわざ手紙まで出してお願いしてくるってことはその入団させて欲しい人物()ってやっぱり元【ゼウス・ファミリア】の団員なのかな?」

「いいえ、違うわノイン。父親(・・)が【ゼウス・ファミリア】ってだけみたい。」

 

ノインが入団希望者の素性に目星を着けるが、アストレアに否定される。じゃあ、どんな奴なんだろう と各々が考える中、アストレアの発言に含みがあると感じたライラが再度問い掛ける。

 

「ん? 父親(・・)が【ゼウス・ファミリア】って、まるで母親は違うみたいな言い方ですね。」

「ええ。母親は違う【ファミリア】だそうよ。」

「へぇ、つまり玉の輿に乗ったって事ですか。羨ましい限りだ。」

「・・・因みに母親は【ヘラ・ファミリア】だそうよ。」

「「「「・・・・」」」」

 

もう頭が痛くなってきた。つまり今、自分達の【ファミリア】に入ろうとしている新人は、『ゼウスとヘラ(かつての最強達)』の血を引く混血(サラブレッド)。つまりとんでもない傑物なのだろうと、ライラ以外の者は考えた。―因みにライラは「ベル(あいつ)が? うっそだろ。」と半信半疑になっていた。

 

「とにかく会ってみましょう。外で待たせておくのも悪いし。ライラ呼んで来て貰える?」

「わかりました。」

 

そう言ってライラが団欒室を出て行くと、団員達はひそひそと話し始めた。もちろん話の内容は『どんな人がくるかである。』

 

「やっぱり、『筋肉モリモリマッチョメン』なのかしら。」

「あるいは、『胸に7つの傷がある男』なのかもしれませんよ。」

「・・・二人共、その言葉は誰から教わったの?」

 

アリーゼと輝夜が神々の言葉で好き勝手言っているのを聞き、頭が痛くなったアストレアはこめかみを押さえる。

他の団員達も「大人しい人がいいな。」「まだ性別すら分かってないぞ。」「女性だったとしても、元『二大最強派閥』の子供だぞ。」「こ・・・怖くないといいな・・・」など言いたい放題である。そして、そんな時間が暫く続いた後―

 

「連れてきたぞー。」

「「「「!!!!」」」」

 

そんなライラの声がすると共に扉が開かれ、団員達の間に緊張が走る。その場にいる全員が身構える中で入って来たのは―

白髪赤目のまるで兎のような少年だった。

 

「「「「????」」」」

 

一柱の女神とライラを除く団員達は困惑していた。

それもそのはず、彼女達はどんな傑物が入ってくるのだろうと、内心ビクビクしていたのだ。

しかし入って来たのは、そんな言葉とは対極に位置するであろう可愛らしい少年。困惑するなと言う方が無理であった。

 

「まぁ、そんな反応にもなるよな・・・。おいベル、挨拶しろ。」

「はじめまして・・・。ベル・クラネルです・・・。」

 

困惑する仲間をよそにライラはベルへ挨拶を促し、ベルは緊張しているのか、頬を少し赤く染めながら自分の名前を告げた。

 

「えっ、考えてた人と全然違うんだけど。どっからどう見ても可愛い兎さんみたいな子なんだけど。」

「ていうかベル、お前緊張し過ぎだろ。どうした?」

「いえ・・・綺麗な人がたくさんいるので、ちょっと緊張しちゃって・・・。」

 

アリーゼが考えていた姿とのギャップに思わず考えていた事を口にだしてしまい、予想以上に緊張しているベルにライラが理由を聞くと、ベルは恥ずかしそうにしながら理由を答えた。

その答えに「「「「えっ、なにこの子可愛い。」」」」と全員が心を一つにした。

容姿を誉められたのは初めてではないが、褒めてくる相手のそんなほとんどは冒険者(荒くれもの)で、その大半がいやらしい目線を隠そうともしなかった。

そんな彼女達からすれば、下心なく純粋に容姿を褒められることは珍しく、悪い気はしなかった。

そんな中、「貴方、中々見る目があるわね!」と言いながらアリーゼがベルに近づいていった。そして、おもむろに彼へ抱きついた。

 

「ちょっ、アリーゼぇ!?」

「いきなりなにやってるんですか!!」

 

潔癖症の妖精(エルフ)であるリューとセルティがアリーゼの行動に驚きの声をあげるが、当のアリーゼは「や~ん、髪もモフモフしてて、可愛い~。」とどこ吹く風である。因みにベルはアリーゼに抱きつかれたことに「?!!?」と困惑しており、顔は耳まで真っ赤になっていた。

 

「アストレア様!私、この子なら入団大歓迎です。【アストレア・ファミリア(うち)】の癒し枠にしましょう!」

「えっ、えぇ私は全然構わないのだけど・・・。他の皆はどうかしら。」

 

アストレアは独断でベルの入団を決めようとしているアリーゼに若干、困惑しながらも他の団員達の意見も求めた。

その言葉に他の団員達は顔を見合わせながら「いいんじゃね?」「団長(アリーゼ)が言うなら」「この子なら大丈夫そう・・・」「癒し枠の入団・・・ありね!」など概ね入団に好意的な言葉を交わしていた。

 

「輝夜はどう?さっきから黙っちゃって、らしくないわよ!」

 

アリーゼが先程からベルの方を見つめて、黙りこくっている副団長(輝夜)へ話しかける。

 

「・・・私も入団に賛成です。女性を襲うような殿方には見えませんしね。それに・・・」

 

アリーゼに回答を促され、輝夜は自分もベルの入団に賛成との意思表示を行う。その後、自らの言葉を区切り、妖艶な笑みを浮かべるとこう続けた。

 

ベル(その子)はとっても可愛らしい(美味しそう)ですし。」

 

―何故だろうか。【アストレア・ファミリア(自分達)】の危険は過ぎ去ったが、新たに少年(ベル)への危険が発生したような気がする。―貞操的な意味で。

そんな団員達の思いがのった視線を平然と受け流し、「私にも抱かせて下さいませ。」と言いつつ、ベルを抱き締めるアリーゼへ近づいていった。

ゴジョウノ・輝夜

極東出身の女性であり、その生まれは極東を統べる

『朝廷』の暗部に据わる『五条』の家である。

そんな家に生まれた彼女は、暗殺術、房中術などを幼き日から教え込まれ、『汚い大人の世界(ドロドロとしたもの)』を嫌というほど見てきた。

そんな彼女からすれば、そんなものとは正反対に位置するベル・クラネル(純粋×初心な少年)はとても好ましく感じたのだ。

というか、盛大にぶっちゃけるのであれば、彼女の異性に対する『嗜好』は、年下ヒューマン白髪赤眼キタコレ状態のドストライクであった。何なら嫌々覚えた房中術を駆使して、少年を堕としてやろうかと思うくらいに。

 

「ちょっと待ちなさい!これはもう少し話し合うべき案件でしょう!?」

「おやおや、では妖精様はこのような可愛らしい兎を捨ててこいと言うのでしょうか?」

「そこまでは言っていない!!」

 

そんな中、生真面目なリューだけがなあなあで決まってしまうことに危機感を覚えたのか意見を述べるが、輝夜から「まるで拾ってきた動物を捨ててこいと言う口煩い婆のようだな」と暗に告げられ、強い口調で反論をする。そしてそのまま恒例の口論へと発展した。

 

「そもそも私達はその少年が本当に【アストレア・ファミリア】に入りたいのかどうかも聞いていないではないか!本人の了承なく【ファミリア】に入団させることが貴方の正義なのか!?」

「ぶわああああぁぁぁぁぁぁかめ!!手紙に入団させて欲しいと書いてある以上、本人も了承済みに決まっておろうが!!第一、男ならば女に囲まれて嫌な気などするまい!!事ある事に正義を持ち出すな阿呆が!!」

 

そんな不毛な口論(やりとり)をしていると、それを止めようとしたのか、アリーゼに抱きつかれて機能停止(フリーズ)していたベルがアリーゼの腕から抜け出し、駆け寄ってきた。

 

「お、落ち着いて下さい!喧嘩はだめですよ!」

「「「「あっ」」」」

 

そして口論を止めるために、リューと輝夜を引き剥がそうとして、二人の肩に触れた(・・・・・・・・)

輝夜の方に触れるのは何ら問題はないが、問題なのはもう一人(リュー)の方である。

リュー・リオン

生粋のエルフである彼女は他者との接触を拒む傾向があり、彼女に触れられる人間はごく僅かである。その僅かな人間達も全てが女性であり、男性が触れようものなら「私に触れるな!!」という罵声と共に一本背負いを頂戴するのが恒例となっている。

その為、誰もが妖精(リュー)によって投げ飛ばされる哀れな(ベル)を幻視したが・・・

いつまでもたってもその光景が来ないことに、口論相手であった輝夜ですら、驚愕を露にした。

当の本人達(リューとベル)はいきなり訪れた静寂に「「????」」と首を傾げていた。

 

「リオン・・・貴方、ベルに触れて大丈夫なの・・・?」

「?・・・ええ、特に問題ありませんが・・・。」

「皆さん、どうしたんですか?急に黙ってしまって。」

 

アリーゼが信じられないものを見た様子でリューに訪ねると、リューが困惑した様子で返答し、ベルは周りがいきなり静かになってしまった事に疑問を呈していた。

 

「リ・・・・・」

「「???」」

「リオンに春が来たわ!!!」

「なっ!!」

「あらまぁ、なんだかんだ言って貴方様も狙っていたのですね、糞雑魚ムッツリ妖精さん。」

「違っ、狙ってなど・・・。というか輝夜!!誰が糞雑魚ムッツリ妖精だ!!!」

「えっ、ええっと・・・」

 

リューが初めて男性に触れられたことに大騒ぎするアリーゼとリューも満更ではないことを指摘する輝夜、そしてそんな二人に反論するリュー。この三人により、この場はまさに混沌(カオス)の様相となっていた。そんな三人にベルは訳がわからず、困惑していた。

さらに、「リオンに触れる男!?」「そんな男いたの!?」「リオン!逃がしちゃだめよ!!」「兎ぃ、どうやってリオンを堕としたんだぁ?」と他の団員も加わって、収集不可能な状態となっていた。

 

「・・・何ていうかもうめちゃくちゃね・・・」

 

一柱(ひとり)、蚊帳の外に置かれているアストレアはひとり寂しそうにそう呟いたという。

―結局、かなりなあなあになってしまったが、こうしてベル・クラネルは【アストレア・ファミリア】に迎え入れられることとなった。

 

 

「どうしたんですか皆さん?」

 

そして現在、各々がベル加入時のことを思い出している内に、日課の鍛練が終わったのか、ベルがタオルで汗を拭きながら団欒室に入ってきていた。

 

「ベルが初めてここに来た日を思い出してたのよ!」

「あぁ。はは、あの日は色々ありましたね・・・。」

 

アリーゼがベルの問いに答えると、ベルはその日のことを思い出したのか、苦笑いを浮かべた。

 

「それよりもベル、今日の鍛練はもう終了か?」

「? はい。そうですけど・・・」

「ならば、一緒に風呂に入るぞ。背中でもながしてくれ。」

「えっ!?」

「「「「おいコラ、待てぇ!!!」」」」

 

鍛練後のベルの腕を掴んで、有無を言わさず風呂へ連れ去ろうする輝夜を団員全員で止める。アストレアは、そんな眷属達の漫才(ドタバタ)を離れた場所から見ていた。

 

「ベルが来てから驚くことも多いけれど、皆が楽しそうで良かったわ。」

 

そんなことを呟きながら、『正義』を司る神は微笑んでいた。

 





次回はしっかりダンジョン潜ります。
新しいキャラも出します。
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