最強と最凶に育てられた白兎は英雄の道を行く


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作:れもねぃど
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第二話 アストレア・ファミリア



この作品のベル君はかなりチートじみた設定になっています。


 

時刻は日が暮れて間もない頃。

大通りは家への帰路を進む人々―中には「お楽しみはこれからだ」と言わんばかりに夜の街に繰り出す人々もいたが―で賑わっていた。その中をベルは縫うように駆けていく。大通りを抜けて街路をいくつか曲がり、閑静な住宅街へと入って行った。

辿り着くのはオラリオ北の区画、その片隅。

そこに立つのは決して大きくはないが、瀟洒(しょうしゃ)な白い館。玄関の扉を開け、「只今、帰りました。」と言いつつ、廊下を歩いていく。しばらくすると、どこかのドアが勢いよく開く音と、此方へ向かって走ってくる足音が聞こえる。

少し嫌な予感を抱きつつも歩みを進めていると、廊下の

曲がり角から人影が躍り出た。

人影の正体は煌めく赤髪と美しい緑眼を持つヒューマンの女性であった。

十人聞けば十人全員が「美女」と回答するであろう整った顔立ちに天真爛漫な笑みを浮かべた女性はベルの姿を認めると、走りをさらに加速させた。そして―

 

「ベぇぇぇぇぇルぅぅぅぅぅ、お帰りぃぃぃぃぃ!!!」

「ただいまアリーゼさっ、どふぁぁぁぁぁ!!?」

 

ジャンプして抱きついて来た。

『美女からの抱きつき』聞くぶんには役得な展開だと言えるだろうがここに『第二級冒険者(Lv.4)』、『加速あり』という条件が加わると話しは変わってくる。それはもう

『抱きつき』などという可愛らしいものではなく

最早『抱きつき(ミサイル)』となってしまう。

そんな『美女からの抱きつき(ミサイル)』を正面から受けたベルは

悲鳴を上げながら吹き飛ばされ、床を滑って行く。

その衝撃は凄まじく、ベルの体が止まる頃には玄関(振り出し)に戻ってしまっていた。

 

「ベルぅ、こんな時間までどこに行ってたの!?

お姉ちゃん、心配で探しに行こうと思ってたのよ!こんな可憐な美女を心配させるなんてベルったら罪な子ね!」

 

こんなことを言いながら女性はベルの上に跨がり、顔に

頬擦りしている。

彼女の名前はアリーゼ・ローヴェル。

紅の正花(スカーレット・ハーネル)】の二つ名を持つ第二級冒険者であり、ベルが所属する【ファミリア】の団長である。

 

「はっ! まさかこれが神様達が言う『残業して帰りが遅くなった夫を待つ若妻』の気持ちなのかしら!」

「うぅぅ・・・」

「ということは、この後にくるセリフは『お風呂にする? ご飯にする? それともわ・た・し』なのね!!」

「んぁぁぁ・・・」

「やん♡ ベルったらまだ14歳なのにお姉ちゃんにそんな事させようとするなんて、おませさんね!」

「うぼぁ・・・」

 

突如として展開される一方的な会話(マシンガントーク)

ベルは対応することができない。

今日戦ったどのモンスターよりも重い一撃をまともに受けたベルは立ち上がることはおろか、受け答えすらままならない状態になっていた。

 

「あっ! その前に皆にも『ただいま』って言わないと!!さぁ 行くわよベル!」

 

結局、ベルは受け答えなどできぬまま、【ファミリア】の仲間がいる団欒室に連行された。

アリーゼの脇に抱えられ「うきゅぅぅぅ」と呻き声を上げて連行されるベル様子はまさに『これからの夕食(ディナー)に出される兎』であった。

 

団欒室を出るときと同じようにアリーゼによって扉が勢いよく開け放たれ「皆、派閥の旦那様(ベル)のご帰宅よー!!」と言うアリーゼに団員達の視線が集中する。

アリーゼの脇に抱えられたベルを見て何があったかを大体察した面々は「お・・・お帰りベル。」「今日もお疲れ・・・。」「加減してやれよ・・・。ベルもう瀕死(グロッキー)じゃん。」といった労りの言葉が掛けられる。

一部の例外として「お疲れー兎。『重役出勤』とは恐れ入るぜ。」と桃色髪の小人族(パルゥム)が意地の悪い笑みを浮かべていたり、「派閥総出で出迎えられるなんて、兎さんもずいぶんと偉くなりましたねぇ~、ふふっ。」と黒髪のヒューマンが楽しそうに笑っていたりしたが。

因みに団員の一人であるクソ雑魚妖精(ポンコツエルフ)は状況がわかっていないのか「ベルが怪我を!?大変です、すぐに治療を!!」などと言いながら、救急箱を片手に右往左往している。

 

「お帰り、ベル。」

 

そんな中で美しい一柱の女神が微笑みながらベルに声を掛ける。

一目見た者がいれば彼女のことを「善神」と表すだろう。

それほどまでに彼女は優しく、正しく、清らかな空気を纏っていた。

胡桃色をした長髪は背中に流れており、その瞳はまるで星海のように深い藍色を帯びていた。

まさに『慈悲深い女神様』の理想像と言っても

過言はない。

そう断言していいほどに彼女は清廉潔白で

何より美しかった。

女神アストレア

ベル達の主神であり、『正義』を司る超越存在(デウスデア)である。

そんな女神から微笑み掛けられた―ベルの状態を見て若干、微笑みがひくついたーベルは「ただいまぁ・・です。アストレア・・様、皆・・さん・・・。」と息も絶え絶えな回答をする。

 

「さぁ、ベルも帰ってきたしご飯にしましょうアストレア様!」

 

アリーゼ(元凶)はまるで反省した様子もなく、ベルを抱えて食堂へと向かう。そんなアリーゼに各々の感情を抱きつつも、団員達はその後に続いた。

 

この館の名前は『星屑の庭』

ベルが半月前に入団した【アストレア・ファミリア】の本拠(ホーム)である。

 

「・・・・。」

 

食事を終え、眷属達が各々の時間を過ごしているのを尻目に、アストレアは無言で頭を抱えていた。

何か問題が起きたわけではない。むしろ、喜ぶべきことなのだろうが起こっていることがあまりにも、常軌を逸しているため頭を抱えるしかないのである。

 

「お風呂空いたよー」と呑気に言っているアリーゼがそんな状態のアストレアを見て怪訝な表情で近寄ってくる。

 

「どうしたんですか、アストレア様?」

「ええ・・・。これを見ていたらちょっとね。」

「?・・・。あっ! これってベルの【ステイタス】ですか!?」

 

【ステイタス】―『神の恩恵(ファルナ)』とも言われるそれは神々が扱う【神聖文字(ヒエログリフ)】を神血(イコル)を媒介にして背中に刻むことで対象の能力を引き上げる、神々にのみ許された力である。

それは【経験値(エクセリア)】という様々な出来事を通して得られる、文字通り経験した事象を糧に成長し、背中の【神聖文字(ヒエログリフ)】を塗り替え、レベルアップや能力向上を行う。この力によって神々は下界の人々を持ち上げることができるのだ。

 

「ええ、そうよ。」と言ってアストレアは羊皮紙をヒラヒラと振る。これこそ、アストレアが頭を抱える原因となっているものだった。

「見せてください!!」と元気よく手を伸ばすアリーゼにアストレアは羊皮紙を手渡す。

「ベルの【ステイタス】!?」と興味津々な団員達も集まってくる中、アストレアから羊皮紙を受け取ったアリーゼがそれに目を通すと―一瞬で真顔になった。

 

「どうしたんですか、団長さん?」

「・・・・・。」

 

団長(アリーゼ)の急激な表情の変化に輝夜が疑問を呈するも、アリーゼはただ何も言わず羊皮紙を「見ろ」とばかりに押し付けてくるだけだった。そんなアリーゼらしからぬ行動に疑問を抱きつつも、羊皮紙を確認すると―輝夜も真顔になってしまった。

この後もベルを除く団員達に羊皮紙が回されて行ったが、反応は二種類ほどしかなかった。

アリーゼと輝夜のように真顔になるか、顔が驚愕に彩られるかである。

全員で回し読みを終え、羊皮紙がアストレアの元に戻って来ると、少しの間を置いて眷属達は同じ言葉を言い放った。

 

「「「「ナニコレ・・・」」」」

 

その言葉を聞いたアストレアは「やっぱりそうなるわよね・・・」と眷属達と同じ感性であることに安堵しつつ、ベルの【ステイタス】が記載された羊皮紙に再び目を落とした。

 

ベル・クラネル

 

Lv.1

 

力 :F330→E420

耐久 :I95→H150

器用 :C620→B735

敏捷 :D501→D593

魔力 :F412→D502

魔導 :I

狩人 :I

耐異常 :I

魔防 :I

破砕 :I

精癒 :I

剛身 :I

覇光 :I

覇撃 :I

 

《魔法》

 

【】

 

《スキル》

 

系譜継承(ペデグリー・レコード)

 

・スキル、魔法及び発展アビリティの任意継承。

・継承条件は自分の血族が持つ神血(イコル)と同じ神血(イコル)を持つ者。

 

英雄宣誓(ファミリア・オース)

 

・早熟する。

・誓いが続く限り効果持続。

・誓いに対する想いの丈により効果向上。

 

英雄決意(アルゴノゥト)

 

能動的行動(アクティブアクション)に対するチャージ実行権。

 

不撓不屈(ヘラクレス)

 

・常時、耐異常及び耐久に超高補正。

・危機的状況における、全能力の極高補正。

 

この【ステイタス】を見て、ベルを駆け出し冒険者だと思える者はどれくらいいるだろうか。いや、いない。絶対にいない。

 

「なんだよこの訳わかんねぇ『スキル』のオンパレード・・・」

 

小人(パルゥム)のライラが呟く。そうせざるを得ない程、ベルの『スキル』は数も能力も隔絶していた。

 

「特にこの『系譜継承(ペデグリー・レコード)』って・・・。」

「条件を満たせば、他人の魔法、スキル、発展アビリティすらも使用できるということでしょう・・・。」

「ロキファミリアの【千の妖精(サウザンド・エルフ)】みたいなものかな。」

「しかし、ベルが使える魔法というのは・・・」

 

魔法優等種族(マジックユーザー)のエルフであるセルティとリューがベルの『スキル』について話していると

 

「十中八九、【ゼウス・ファミリア(最強)】と【ヘラ・ファミリア(最恐)】の魔法でしょうね。」

「「「「!!!!」」」」

 

途切れた言葉を繋ぐようにアストレアが言葉を発する。

それを聞いた団員達は驚愕した表情を浮かべた。

 

【ゼウス・ファミリア】

【ヘラ・ファミリア】

 

この都市に長く住んでいるものでこの名前を知らない者はいない。

15年前まで存在していた偉大な【ファミリア】。

ギルドと同様に迷宮都市(オラリオ)の誕生から寄り添い続けてきた『二大最強派閥』。

『神時代の象徴』、『神の眷属の到達点』とまで言われ、千年もの間オラリオに君臨し続け、安全神話を崩さなかった。

そして下界の悲願たる『三大冒険者依頼(クエスト)』。

その内の二体、『陸の王者(ベヒーモス)』と『海の覇王(リヴァイアサン)』を打ち倒しーそして『生ける終末』とも呼ばれる最後の竜に、敗北した。

それにより両派閥は壊滅、【ロキ・ファミリア】と【フレイヤ・ファミリア】の抗争にも敗れ、両派閥の主神(ゼウスとヘラ)は都市外へ追放されることになった。

 

「まさかそんなとんでもない派閥の子が【アストレア・ファミリア(うち)】に来るなんてねぇ。」

「こら、ネーゼ!!ベルの生まれは関係ないでしょ!!」

 

ベルの系譜(生まれ)を聞き戦々恐々とする狼人(ウェアウルフ)のネーゼに対して、アリーゼが窘める。

 

「【ゼウス・ファミリア】も【ヘラ・ファミリア】も関係ない!あの子は【アストレア・ファミリア】のベル・クラネルで私達の大切な家族なんだから!!」

「ふふっ、確かにアリーゼの言うとおりね。」

 

アリーゼが高らかにそう宣言すると、アストレアが同意した。

 

「それに全然強そうに見えなかったしねー。」

「私も初めてみたときは可愛らしい兎さんにしか見えませんでしたからねぇ。」

 

アマゾネスのイスカとヒューマンの輝夜がそういうと団員全員が「たしかに!」と同意し笑みを浮かべた。

そして中庭で一人黙々と大剣を持って素振りをするベルを見つつ半月前のことを思い出していた。

 




『スキル名』考えるの大変だった。

次回はベルの加入時の様子を書くつもりです。
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