「なんであの時、あの株を買わなかったのか」。5年後に後悔しないためのポートフォリオ構築術。ジェフ・ベゾスの「後悔最小化フレームワーク」とは?
●投資家であれば誰もが経験する、買わなかった株が大きく上昇した時の後悔 「なんであの時、あの株を買わなかったんだろう…」 投資家であれば誰もが一度は感じたことがあるこの後悔。私もかつて、ある銘柄を「高すぎる」と判断してスルーした結果、そこから株価が何倍にも上昇するのを指をくわえて見ていたことがあります。 しかし、私は今ではこの種の後悔には意味がないと割り切っています。 重要なのは「正解を当てること」ではなく、「将来、振り返っても納得できる判断を積み重ねること」だからです。 今回は5年後に後悔しないためのポートフォリオ構築のポイントを、私自身の実践経験を交えながら紹介したいと思います。 ●(1)「テーマ投資」より「地に足のついた構造投資」 生成AI、半導体、再生エネルギー…。市場で注目されるテーマは常に移り変わっていきます。 しかし、いくらテーマがホットでも、株価が割高すぎれば、その期待はすでに株価に織り込まれています。ポイントは割高かどうかをどう判断するかというところにあります。 私は現在、3つの視点から構造的に投資テーマを絞っています。 ●長期的な社会などの構造変化(例:人口動態、エネルギー転換) ●技術革新の第二波(例:生成AIの「使われ方」に注目) ●市場の過剰悲観が織り込まれている分野(例:中国株、原子力関連) 5年という時間軸で見ると、人気テーマに出遅れた時は、このテーマがまだ続くかどうかを考えるのが重要になります。成長を続けられるかどうかということです。 ●(2)「資産配分」が90%の結果を決める 銘柄を選ぶより、セクターを選ぶ方が重要だったりします。また、セクターを選ぶより、資産タイプを選ぶのが重要になります。たとえば、そもそも株式に投資するかどうかがリターンを大きく左右します。 このことについて、具体的に私は次の3つのことを心がけています。 ●リスク資産 vs 安全資産のバランス:暴落時でも売らなくてすむ比率にする ●通貨 米ドル vs 円:為替の影響を意識し、必要なら為替ヘッジも検討 ●流動性の確保:チャンスが来た時に動けるキャッシュポジションを常に持つ 日本では「フルインベストメント」が美徳とされがちだと思えますが、キャッシュ(現金)もまた立派な資産配分の一部です。 後悔しないためには、今の熱狂より「5年後の自分の冷静さ」に配慮したバランスが求められると考えます。 ●(3)「後悔最小化フレームワーク」で決断する 私が投資判断する際に特に重視しているのが「後悔最小化フレームワーク(Regret Minimization Framework)」です。 これはアマゾン創業者のジェフ・ベゾスが、自らの意思決定の軸として提唱した考え方で、「未来の自分が後悔しない選択はどれか? 」という視点で、どう行動するかを選択するものです。 1994年、ベゾスは安定した金融系の仕事を辞めてアマゾンを創業したのですが、その意思決定は極めてリスクの高いものでした。その時、彼はこう自問したといいます。 「ここで起業しなければ、80歳になったとき、インターネットという新しい波に乗らなかったことを後悔するだろうか? 」 答えは「イエス」でした。 だからこそ、リスクが高くても、アマゾン創業にチャレンジするという選択を取ったのです。 私はベゾスのこの考え方を投資判断にも応用しています。たとえば、次のような問いを自分に投げかけているのです。 ●「もしこの銘柄の株価が5倍になっても、今、買わなかったことを後悔しないか? 」 ●「この銘柄の株価が半値になったとき、自分の判断を納得できるか? 」 ●「ニュースや他人の意見に流されていないか? 自分の意思としてこの選択をしたか? 」 このように未来から逆算して考えることで、現在の感情に左右されにくくなります。 2023年に中国株が市場全体から見放された時も、私はこのフレームワークに基づいて一部買い増しを行いました。理由は「5年後の自分が、今の悲観ムードを振り返って“買っておけばよかった”と後悔しそうだ」と感じたからです。 この手法は「当てにいく投資」ではなく、「納得できる投資」を実現するための強力な思考補助ツールです。損失をゼロにすることはできませんが、無駄な後悔を最小限に抑えることはできます。 ●まとめ:未来の自分に対する「説明責任」を果たす 5年後のあなたは、今日の投資判断をどう振り返るでしょうか? 暴落でパニックになった自分に腹が立つかもしれませんし、勇気を出して仕込んだ自分を誇りに思うかもしれません。 後悔しないための最大の武器は、「一貫した投資哲学」と「冷静な資産配分の判断」です。 相場は未来を映す鏡ではありません。 あなたの意思決定の積み重ねが、5年後の資産を決めるのです。 ●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガを配信中。
ポール・サイ
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