前回、アンプの電源電圧を高くした方がトランジスタのコレクタ容量(Cob)が小さくなると言うことでした。
ではナゼ、印加電圧でコレクタ容量(Cob)が変化するのかです。
トランジスタの構造から少し考えてみましょう。

下の図がトランジスタの簡単な構造図です。
20190815_01
図の上側のNPN型のトランジスタですが、nチャン、pチャン、nチャンのシリコンのサンドイッチ構造をしています。
これをダイオードで表現する事が出来ます。

それが次の図となります。
ダイオードが2個です。
20190815_02
※構造はダイオード2個ですが、ダイオード2個を繋げてもトランジスタとしての働きはしません。高校生の時確認済みです。w
このダイオードの上側に注目して下さい。

そしてダイオードの構造図が次の図です。
20190815_03a
このダイオードに逆電圧を加えると空乏層(くうぼうそう)と言う絶縁部(絶縁層)ができます。
この絶縁部を挟んでカソードとアノード間で僅かな容量を持ちます。
この容量がトランジスタで言うコレクタ容量(Cob)と同じ容量にあたります。
この空乏層は、印加電圧を変えると空乏層の幅が変化します。
空乏層の幅が変ると言う事は、カソードとアノード間の絶縁部の距離(d)が遠くなったり近くなったりする訳です。

下の図の計算式では電極間距離(d)で容量が増えたり減ったりする事になります。
20190815_05
※図はTDKさんからお借りしました。
印加電圧を上げると電極間距離(d)が遠くなるので容量が減り、印加電圧を下げると電極間距離(d)が近くなり容量が増える事になります。

この原理を利用したのがバリキャップダイオード(可変容量ダイオード)です。
ダイオードが可変コンデンサになります。
20190815_04


コレクタ容量が多いと周波数特性を悪くし、歪み特性も悪くすると言うことです。
※補足:コレクタ容量(Cob)の非線形的な充電電流が入力信号に加算され歪みを発生させます。

特性の良いアンプを作る場合は、コレクタ容量(Cob)の小さいトランジスタを採用して電源電圧を高く設定しましょう。
でもコレクタ容量(Cob)の小さいトランジスタ(2SA872/2SC1775,2SA1016/2SC2362)はなかなか入手出来ません。

次回は、コレクタ容量(Cob)の影響を無くす方法を考えましょう。