ロキ・ファミリアのホーム黄昏の館、幹部室では重い空気を漂わせ。
三首領と呼ばれる最高幹部3人と主神が揃っていた。
「...済まない!今回の件...私の所為だ」
「いいや、君に責任は無いよリヴェリア。僕がグレイ達の12階層攻略の許可を出したんだから」
フィン・ディムナも同じく。いつもの生意気な顔は無く、その表情は己の団長としての判断が安易に団員達を危険に浴びせた事実を心に刻んでいる。
「うむ、ワシ達は気付かぬウチに
両者に比べるとマシだがガレス・ランドロックも長い髭を摩りながら経験を知識に活かすやり方で行進育成を考えていた。
「アイズたんの家出事件で12階層のモンスターが出現頻度のバグを起こすとか神でも分からんて...マジで」
ロキも前回と今回の事があり、いつもの馬鹿元気は出ない。
「今、僕達が次に活かせるのは...グレイのおかげだね」
この空間にいる全員が頷き今も生死を彷徨っている、偉業を成した少年にこの感謝と讃える言葉を聞いてほしい。
「でグレイにラウル、アキ、アリシアの容態は?」
「うーん他の皆んなも重傷やで、グレイが一番酷いのは確かなんやけど。ラウルがなぁ...」
「あの感じやと酷いもんが余計酷くなるで」ロキは黒髪の少年を思い出す『自分は俺はどうなっても良いっす!!
グレイをグレイを助けて下さい!!』と泣き崩れ縋り付く己の子供を見て、もう親として二度と味わいたく無い。
「...んじゃウチはまたグレイとこ行ってくるわ!」
それに続く様にリヴェリアも席を立つ。
「私も同行しよう」
看病役としては最近板が付いてきたお転婆姫を連れて。
フィンとガレスは予想していた様に笑みを浮かべた。
「ああ頼むよ」
2人とて着いて行きたい気持ちがあるが、今この時期に最高幹部が全員でホームを開ける訳には行かないと自制する。
陰険な雰囲気を晴らす様に重厚な扉を蹴り飛ばして出て行く己の主神とリヴェリアを見送る2人。
あの感じがロキたらしめ全員が助けられている。
あれでも心配性な神の親なのだ。
◆
目が覚めた。
何か長い夢を見ていた時の様に世界が懐かしく感じる。
何処だ...?知らない天井...今の子は元ネタを知っているのだろうか。
皆は無事かな...ベッドから少しだけ痛む身体を起こし、窓を開けると優しい風が頬を撫でる。
...外は既に日が出ている。気絶してから最低でも半日経過してるって事か。
「本当に転生してたんだな...」
前世の記憶を思い出して、初めて実感が湧いてくる。
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか通称ダンまちの世界に...。
それもロキ・ファミリアに既に入団済みって...うーん憑依転生では無いよな?ラウルに同郷の連れが居るとか作中
描かれて無かった筈。てか俺の所為でラウルが一年も前に俺と一緒にロキ・ファミリアに入団してるし...。
確か原作だとラウルは13歳の時に入団してる。
己とラウルはもう入団して一年目だ。原作と既に相違が出てる〜。でも何でアキも同じ時期に入団して同期になってんだ?
アレか何か感じ取って一年早く動き始めたのかアキ。流石ラウル、ガチ勢。
「.....うん?」
耳を澄ませずとも聞こえる足音に目を向けると。
部屋の扉が勢い良く開き。黒髪の少年ラウルが息を切らしながら、こちらを見て目を見開く。
「グレイっ!!!目が覚めたんすかッ!!!??」
「ああ、お前も無事かラウル?」
「当たり前じゃ無いすっかッッ!!!!良かったっす!!!本当にッ!!」
安堵したのか、ラウルは駆け寄り倒れる様に抱きついて来る。
「あーも抱きつくな、痛いっての」
大粒の涙を流す、同郷の少年を宥めながら自分の身の振り方を考えてた。
俺は原作最新巻までの
元に今回の件は俺がいた事で起きた様なモノだろう、あのまま迷宮の餌になっていた可能性もあった。
目を下にやるとラウルが「良かったぁすっ!うううグレイぃ」と鼻水も涙も滝になってワンワン泣いている。
「....いや俺らしくねぇな」
「グレイ?」
俺自身が証明しただろう、殻を破り、己の過去を思い出し破滅を乗り越えて今こうして笑えている。
諦めると見捨てるは俺の辞書に無いって。覚悟は決めた、走ろう...この世界を多分それが俺の...。
「いや〜良かったわー。目ぇ覚めて!ちょうぜつ女神が見舞いに来たで〜グレイ」
「ロキ!此処は病院だ少しは慎みをだな...」
「えー良いやんリヴェリア〜」と言い出てくるのは薄目の女神もとい俺の主神ロキと綺麗な翡翠の髪を纏めるファミリア副団長リヴェリアさん。
どうやら少し前から扉にいたらしい。
「心配かけましたロキ、リヴェリアさん」
「いや本当、災難やったなぁ〜」
カッカッカと笑うロキを手で制してリヴェリアさんが前に出てくる。
「済まないグレイっ今回の件、私の所為で迷宮が...」
謝罪を言い切る前に遮り。
「リヴェリアさんの所為だなんて俺、思ってませんよ。12階層に行くって決めたのはリーダーの俺だし責任は俺にありますよ」
「だが...」
「ありがとうございます、でも俺は謝罪じゃなくて、もっと別の言葉が聞きたいですね」
リヴェリアさんは目を見開き髪を揺らす、やっと落ち込んだ顔に笑みが戻る。
「あぁ、グレイにラウル本当に...生きて帰って来てくれてありがとう」
「「はい!」」
その後、ことの顛末を聞いたラウルにアキとアリシアは既に回復してディアケヒト・ファミリアから退院してると。
俺は七日間の間、目を覚まさなかったらしい。結構寝ていたな...何でも骨はヒビが入って無いところの方が少なく。
筋肉は殆どが断裂してたみたい、小さいアミッドさんが言うには『私の魔法で修復させた事で後遺症等は無いでしょうが、もし私が居なければ
あ俺はもう退院して良いらしい、見舞いに来たアリシアと一悶着があって元気なら今は闇派閥の所為で空きベッドを一つでも確保しなければ行けないのでファミリアで休めとの事。アミッドさんありがとうございます。
◆
神々しい光を放つ
そしてロキが指を止める、神妙な
「アイズたんに続いて何が起こっとるんや...グレイおめっとさんランクアップや」
紙に写し出した少年の偉業の軌跡。
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全アビリティ熟練度、上昇値トータル500オーバー
グレイ・ヴァジルファリ
ステータス
Lv. 1
力:D501→C681
耐久:C634→B737
器用:B744→A875
敏捷:A800→S905
魔力:I0
《発展アビリティ》
《魔法》
【スレイプニール】疾走魔法
詠唱式ー駆けろ
《スキル》
【
・疾走時、速度に応じて力に補正。
・空中時、速度に応じて力に高補正。
・水中時、速度に応じて力に高補正。
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食いる様に己のステイタスを見る我が子を微笑ましく思うと同時にロキは疑問を感じる。
確かにランクアップは分かる、上昇値トータル500オーバーもそれだけの偉業だと思えば良い。
しかし、魔法とスキルの同時発現...
「(この子に何が起きたんや...)」
あの腐れおっぱいと違ってロキは子供の魂は分からない、だが神の直感いや親の勘からしても確信して言える。
何と言えば良いか、ブレが無いなった、としか今は分からない。
「ロキ?何でランクアップはしなかったんだ」
「...うん?あぁ少しでもLv.1のステイタスで魔法を使って魔力のアビリティを伸ばした方が良いと思ってな!」
「なるほど、じゃ俺、訓練場の所行ってくる!」
走り出す、その背中に大きな翼が見えた様な気がした。
◆
ファミリアのホームをスキップしそうなほど軽やかに歩く。
ランクアップは少し期待してたけど、まさかの魔法とスキルの同時発現!神様仏様ありがとう〜!
魔法だよ魔法!!途中でリヴェリアさんと会って一緒に魔法の考察をしてくれるらしい。
ロキ・ファミリアホーム、訓練場にまた来る途中でラウルとも会い同行する事に。
魔法は詠唱を唱えることで発動できる例外は無詠唱とかバグを持っているベル・クラネルぐらい。
リヴェリアさんとラウルに見守られる形で訓練場の真ん中で気合いを入れる、えーと詠唱は。
「【駆けろ
魔力と云うモノを初めて感じ取り大きく膨らむ魔力を押さえ込む。
「【陸 海 空を制して、最優と最速を示せ】」
詠唱を口ずさむ様はとても軽やかに言葉が出てくる。
「【我は
「【スレイプニール】!!」
突如、突風が吹き荒れ辺りを包み込む。
土埃が晴れリヴェリアとラウルが見るとグレイの姿形は無かった。
「ぐっグレイが居なくなったっす!?」
「...いや上だ!!」
「凄ぇ!俺飛んでる!!」
遥か上空で空を駆け回る、風になるとはこの事だろう。
何故か空を足場に出来るので方向転換に踏ん張りも効き縦横無尽に飛び回る。
「...グレイが空に浮いてるっす」
「(疾走魔法...
陸・海・空を制し敏捷の強化に速度をいずれかの能力に変換する
俗な言い方をすれば正しくチート、制空権を制するとはそれまでの戦術から一線を画する戦力を持つのだ。
偵察・伝達・奇襲の全てを可能にする万能性を発揮する、短文詠唱故の魔法単体の威力の弱さは否めないが。
それを取っても恩恵が大き過ぎる。リヴェリアの脳内に浮かぶ新世代の文字。
アイズに続き並んだ最速記録のグレイ、時代を塗り替えた
神々と下界を驚かせる勢いで頭角を表した
遂に時代が動き出した。
《アリシアとの一幕》
少し過去に戻り。
ラウル達がディアケヒト・ファミリアから戻りグレイの意識回復を知らせを聞いたアリシアは完全回復していない
アキの分もグレイを看病する為に早足で病室に向かっていた。
比較的、自分は軽症だったのも相まってアリシアは自分の至らなさを悔いていた。
インファイト・ドラゴンを倒したと同時に
グレイに背負われ血反吐を吐きながらの前代未聞の速攻帰還を成した末の意識不明の重体。
疲弊した意識で見たグレイの倒れる瞬間が目にこびりつて七日間の間その悪夢を見続けている。
ラウルも酷かったがアリシアも妖精特有の清潭な顔は痩け、目元は黒い隈が入っていた。
故にアリシアは燃えていた、妖精の血がその弱さを許さない。グレイ・ヴァジルファリは尊敬するヒューマンだと。
この感謝と尊敬を伝えなければ!!ホームを出る寸前に己の主神ロキから『エルフは暴走すると面倒やわー』と
聞こえた気がしたが今の激情に駆られる
◆
ロキ達が帰り一息つくと眠気がやってきて睡魔に意志を委ねた。
ガラと静かに扉が開く音に目を覚ました。
「...アリシア?」
暖かい色を持つ山吹色の長髪は少し艶を失っていた、隈も酷くやつれている。
アリシアは4歳年上の半年先輩でパーティの副リーダーの立ち位置にいるため今回の事を引きずっているのかも知れない。
作中で姉と言われていたのが分かる、何かサポート時とか気配りはリーダーの俺よりアリシアが助けてくれる。
意識が戻ったと聞き会いに来てくれた事実に心が暖かい気持ちになる。
「よかったです。グレイ意識が戻って」
「ああ、七日間寝てたんだよな」
「ええ心配しました...貴方が倒れた時、私は...いえ先ずはお礼をグレイ貴方に感謝と尊敬を今、私が生きているのは
グレイのお陰です」
「俺の方こそアリシアが居たから生きてる、あの時インファイト・ドラゴンを魔法で倒してくれたろ」
通常あり得ないインファイト・ドラゴンの
全方位の
「だからありがとうアリシア。俺達を信じて歌ってくれて」
「.......っ!」
アリシアの綺麗なブラウン色の瞳に光が戻る、と同時に妖精のほほが赤くなる。
両者共に沈黙が続くが流石に寝た状態で話し続けるのは礼儀に欠くと思い起き上がりベッドから出る。
アリシアの方は何故か口をゴニョゴニョと動かし下を向いた状態なので近づく事にした。
だが寝起きの為か身体に思い通りに力が入らず目の前にいたアリシアに倒れ込んでしまう。
「あっ」
「きゃ」
可愛い悲鳴を上げて、アリシアの方も俺を受け止めてくれるが...その大きく実った果実を枕にして。
あっやばい、冷や汗が止まらない、
比較的穏和なアリシアでも急に触ったり、なんかしたら...鉄拳体裁は不可避!顔を上げて見ると顔をリンゴ
みたいに赤くした妖精がいた....何か何か言わなければ!何故か混乱した頭の中から出た言葉は...
「...お姉ちゃん」
「ッ?!!?!」
何言ってんの俺?死にたいの?...だがその時!アリシアに電流走るッ!何故か抱擁は強くなり。
寄りかかった、柑橘系の甘い香りが鼻を擽り可憐な肢体に沈み込む。
「あっあのアリシアさん?離してくださらないですか?」
「...お姉」
「えっ?」
「お姉ちゃんですッ!!!」
そうしてオラリオに一人の姉が誕生した。神々は感涙し歓喜した、これこそが下界の未知だと。