大阪・関西万博が大混乱に見舞われた。人工島・夢洲(ゆめしま)の会場につながる唯一の鉄道路線がストップし、大勢が一晩、夢洲に取り残された。会場内の施設が開放され、夜通し楽しむ面々もいたようだが、「オールナイト万博」を通して孤立などの課題が改めて浮かんだ。夢洲ではカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の開業も計画される。果たして大丈夫なのか。(西田直晃、太田理英子)
◆来場者の7割が地下鉄を利用
「会場をどうやって出ていくのか。交通手段はどうなっているのか。情報提供できなかった」。18日の会見で、日本国際博覧会協会(万博協会)の石毛博行事務総長は改めて謝罪した。
トラブルが起きたのは地下鉄大阪メトロ中央線。13日午後9時半、車両に電気を供給するレールが停電した。14日に会見した江口清司万博輸送管理センター長は「臨時のバスを提供し、しっかり足を確保するという点に注力してしまったことで、お客様目線の情報発信が遅れた」と弁明した。
会場へのアクセスは橋とトンネル、地下鉄の三つに限られ、来場者の7割超がメトロ中央線を利用する。万博協会によると、足止めされた来場者は約3万人に達する一方、会場で夜を明かした人数は「トラブル後の入出場の状況が分かっていない」(広報担当者)として公表していない。
◆散歩に動画撮影に…エンジョイ勢もいた
大阪メトロ中央線は開幕直後の4月22日夜にも、車両故障による運転遅れで、夢洲駅周辺に約4000人が滞留した。広報担当者は「今回は混乱は少なく、一歩前進した」と語るものの、4月以降に具体的な対策が取られた形跡はない。
13日夜〜14日未明に複数のパビリオンが休憩用に開放されたが、運転見合わせから約2時間が経過していた。備蓄品提供は14日午前4時以降。1000本のペットボトルの水に限られた。「会場内の人員の都合もあり、案内に時間を要した」(広報担当者)ためという。
一方、見学を夜通し楽しむ来場者もおり、SNSで「オールナイト万博」という投稿が相次いだ。開放された一部のパビリオンの見学やダンスの鑑賞を満喫する様子が共有されたほか、普段は見られない夜の会場とあってか、散歩や写真・動画撮影を楽しんだ人も。
夜を明かした来場者からは「朝日がきれい」という写真付きの投稿が上がった。前向きに捉える声を意識したのか、政治団体「大阪維新の会」の所属議員の一人は「万博批判や政党批判を発信しても無意味」と踏み込んだ書き込みを残した。
◆36人が救急搬送 冷房なしの休憩所に案内された人も
しかし負の現実から目をそらすわけにはいかない。大阪市消防局によると、14日朝までに気分不良や吐き気、熱中症の疑いで会場から36人が救急搬送された。
東京女子大の広瀬弘忠名誉教授(災害リスク学)は「高齢者や子ども、持病がある人は一大事に発展しかねない。重症者や死者が出なくてよかった」と指摘。足止めされた人々の受け入れ先には冷房のない団体用休憩所も含まれた。「私自身も6月に訪れたが、平時から会場に休憩できるスペースが少ないなど、運営者の意識の低さを感じた」
万博を取材するジャーナリスト木下功氏は「現場は不慮の事態に対応したが、鉄道の輸送障害を想定した避難計画が不十分。雑踏事故が起きなかったのは不幸中の幸いだ」と話す。
「開幕前から懸念されたアクセスの悪さを改善せず、7割超の来場者を運ぶメトロに負荷がかかりすぎている。協会が自らの責任と痛感しなければ、同じことを繰り返すだろう」
◆IRと連携した国際観光拠点も整備する方針なのに
今回際立ったのは、人工島である夢洲への交通アクセス手段の乏しさだ。ひとたび鉄道が止まれば、大勢が取り残されるリスクが浮き彫りになった...
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