第1回数日後に決まった愛猫の命日 安楽死という「さようなら」のかたち

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矢田文
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 2024年11月24日だった。

 仙台市青葉区の須藤祥子さん(41)は、かかりつけの動物病院の受付に、ネコの「禄(ろく)」を預けた。お昼休みの時間帯で、他の利用者はほとんどいない。

 しばらくして処置室に入ると、禄が運ばれてきた。静脈に針が刺さり、あとは麻酔薬を入れるだけの状態だ。

 獣医師が聞く。「大丈夫ですか」

 「はい」と答えた。

 禄の顔をなでながら、おなかをさすりながら、何度も話しかけた。

 ありがとう――。

 がんばったね――。

 お別れの時が迫っていた。

授かった出会い、だから名前は「禄」

 禄との出会いは、その2年前…

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この記事を書いた人
矢田文
くらし科学医療部|原子力・災害担当
専門・関心分野
生物多様性、環境、沖縄、依存症
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    田中知之
    (音楽プロデューサー・選曲家)
    2025年8月20日11時30分 投稿
    【視点】

    身につまされる話だ。我が家にも14歳になる老犬がいる。彼は以前、動物病院で歯の治療時に全身麻酔をした際、ショック症状を起こしたことがあり、今後の麻酔治療が難しいと思われているからだ。何か大きな怪我や病気をしたらどうしよう? と常々心配している。飼い主さんにとっては非常に辛い選択だったと思うが、苦しみを長引かせなかった最良の選択だったと思って良いと思う。 以前スイスで安楽死を選んだ映画監督のジャン・リュック・ゴダールの朝日新聞の記事にもコメントしたが、安楽死の問題は高齢化社会の我々にとっても今後更に大きな課題となるのは間違いないだろう。

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    BossB
    (天文物理学者・信州大准教授)
    2025年8月20日11時30分 投稿
    【視点】

    海外生活の長い私は、苦しんでいる猫を「がんばれ」と応援しながら自然死させるよりも、苦しみから解放してあげる安楽死を選ぶと思います。現在は保護猫を2匹飼っており、いずれその決断を迫られる日が来るかもしれません。 若い頃、母に頼んで、がんで食べられなくなった猫「ちび」に鼻から管を通して延命措置を施したことがあります。しかし今振り返ると、それは「猫のため」ではなく、私自身が寂しいから、悲しいから、生きていてほしかったからであり、結果としてちびの苦しみを延長させてしまったのだと感じます。(母はそんな私のために費用まで支払ってくれました。) 欧米(キリスト教文化圏)では、動物の苦痛を取り除く安楽死が、動物愛護の倫理として広く定着しています。一方で日本(仏教・儒教的文化圏)では「自然死を尊ぶ」傾向が強いのですが、それは必ずしも「動物の自己決定権を認めているから」ではありません。むしろ、人間が命を奪うことへの抵抗感や、殺生の責任を背負いたくない心理が背景にあるのではないでしょうか。

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