焼肉屋倒産ラッシュでも…なぜ「焼肉きんぐ」は無双状態?牛角とは違う“人気の秘訣”
焼肉きんぐが人気の秘訣「〇〇する必要がない」
他社が苦戦する中でも成長する焼肉きんぐは何者なのか。その中身を見ていきたい。 食べ放題コースは主に3種類があり、いずれもラストオーダー20分前の100分制である。メインは税込3,608円~の「きんぐコース」だ。カルビ、ハラミ、ロースなど基本的な牛肉類のほか、鶏肉、豚肉や野菜、サイドメニューやスイーツ類もコースに含まれる。税込4,708円~の「プレミアムコース」ではきんぐコースのメニューに国産牛のカルビやロースなどが追加される。 食べ放題コースはいずれも小学生半額の幼児無料で、飲み放題は別料金。大人2人、小学生2人の4人家族で「きんぐコース」を選択した場合、約1万2,000円だ。 味付けは良くも悪くもスタンダードな印象だ。肉類には生の状態でタレがかかっており、全体的に濃い目の味付けである。肉の旨味よりもコスパが売りと言える。味を濃くすることで、肉質に関係なく美味しさを感じられるようにするほか、白米を頼ませて原価率を下げる狙いがあると言われている。なお、注文はタッチパネル方式である。店員が全料理を配膳するため、客は席を立つ必要がない。ドリンクも店員が運んでくれる。
焼肉きんぐは、すたみな太郎・牛角と何が違う?
このような形式の焼肉きんぐがなぜ消費者に受けたのか。ひとえにファミリー層から支持があげられる。 現在は値上げしたが、以前は家族4人で1万円程度の価格設定だった。単品ごとの注文では会計金額が読みづらいのが焼肉屋の特徴だ。物価高の時代に、あらかじめ価格を把握できるのは安心感がある。そして食べ放題の割にはサービスも充実している。巡回する店員がひんぱんに網交換の対応をするほか、焼き方を教える“焼肉ポリス”もいる。席で完結するテーブルオーダー制もファミリー層に支持されている。席を立つ必要がないため小さい子連れでも落ち着いて食事しやすい。 一方で、競合の食べ放題焼肉チェーンである「すたみな太郎」は、客が肉類を自分で取りに行くセルフバイキング方式を採用している。だが、すたみな太郎は衛生面での抵抗感からかコロナ禍では客足が離れ、閉店が相次いだ。システムの違いが近年における両者の明暗を分けた可能性も考えられる。 立地も関係している。焼肉きんぐは北海道から沖縄まで展開し、出店地域は市街地ではなくロードサイドだ。商圏人口は15万人で自動車客が主。運営元の物語コーポレーションはほかにもラーメンやしゃぶしゃぶなどさまざまな業態を展開しているが、いずれもロードサイドを主軸としている。そして意外にも地方のロードサイドに食べ放題焼肉の店舗は少なく、新たな需要を開拓したと考えられる。 コロナ禍では外食・小売業態ともに都市部の店舗が苦戦した一方、郊外立地の業態が堅調に推移した。郊外を主軸とする焼肉きんぐにとって、コロナ禍は追い風だったと言える。牛角は都市部の店舗が苦戦した。郊外にも出店しているが、食べ放題がメインではない。