――先ほど、教官が墜落の日に夏季休暇だったとおっしゃいましたね。青山氏はこの日にミサイル試験が行われたとしていますが、もう盆の前日ですよね。こんな時期に試験なんてやるんでしょうか?

薗田 そこで試験やる場合、とんでもなく遅れてたとかでしょうけど、それでも12日はやらないですよ。

――メーカーの休暇もありますしね。

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薗田 航空総隊隷下の戦闘機部隊とかは休暇を前段後段とかに分けて取らせてますけど、24時間態勢とる必要のない技術系の部隊とか試験やってる部隊なんかはスッパリ休んじゃいますよ。休める時休めが空自の文化ですから。

©橋本昇

――事故の際、墜落現場の位置特定が二転三転した問題で、米軍との情報共有について「防衛庁と米軍でやりとりがあったのだろう」という中曽根康弘総理の回顧録の記述を、青山氏は防衛組織図の指揮系統を根拠に「防衛庁と米軍が総理を飛び越えてやりとりした」として、「防衛庁長官と幕僚長の首が飛ぶ事態」と批判しています。緊急時の日米の情報共有は普通のことと思いますが、どうでしょうか?

薗田  特に空軍の組織は上意下達よりも、機能が違う多くの組織を繋げて使うので、統制・調整系統が大事なんです。横田(米軍基地)には昔から航空総隊の連絡幹部がいて、それは横の系統なんです。青山さんは多分、その横の系統というのを全く理解していないんですよ。

 通常の飛行運用をやる中で、事故マターは当然やっています。当時いたかは分かりませんが、横田空域の調整をやるために英語に堪能な航空管制官が横田に派遣されていました。いわゆる横田空域は米軍の占有みたいな事を言う人もいますが、何のために日本人がそこに行くかというと、調整という名で日本の主張を通すためです。

©橋本昇

「民航機をターゲットになんかやらないですよ」

――災害時にはそれが横の繋がりとして機能するわけですよね。

薗田 そうです。そして、当時の技術を考えれば事故現場の特定は二転三転して当たり前で、レーダーで追っててもロストしてからどのくらい飛行機が動いたとか、バラバラになっている可能性もあるわけです。実際、残骸が広範囲に散らばってましたしね。自分がどこを飛んでいるのかも数マイルの誤差込みじゃないと分からない時代なんですよ。

――航空支援集団にいたこともあるそうですが、試験開発の支援のご経験はありますか? 青山氏はミサイル試験で日航機を標的に見立てたと推測していますがどう思われますか?

薗田 試験に関わったこともありますけど、民航機をターゲットになんかやらないですよ。なんでかというと、試験で撃つとしてターゲットはどういう動きで最大の成果が得られるとか、どういうターゲットに対する効果が欲しいのかを考えると、民航機をターゲットにする意図が分かりませんね。なんでそんな発想になるの? って。目的を達成するために、必要な要素がないんですよね。方面隊幕僚として色んな戦闘演習も見てきましたけど、見たことないですね。