自殺を考えている諸君。考え方を改めたまえ。人間には二種類いる。ポルシェタイプの人間と、普通自動車タイプの人間だ。君が死にたいと思うのは、ポルシェのエンジンを積んでいるのに、狭い公道ばかり走らされて、自分の持ち味を何一つ発揮させることがないまま、エンジンをダメにしているからに他ならない。君は知らないだろうが、ポルシェは週に一回くらい高速道路を思い切りぶっ飛ばさないとエンジンの調子が悪くなるのだ。走るために、生まれてきた。それが、君と僕だ。

毎日うだつがあがらない諸君。君はポルシェだ。ポルシェになりたまえ。まどろっこしい一般道路を抜け出して、高速道路をぶっ飛ばしたまえ。高速走行時は風を多く取り込むため、エンジン冷却が効率的に行われて、オーバーヒートのリスクを減らせる。高回転を維持することで、エンジン内部に溜まりやすいカーボンが燃焼される。エンジンオイルの循環が活発になり、油圧が安定するため、エンジン各部の潤滑が効果的に行われる。高速走行の負荷により、エンジン各部の部品がより馴染み、性能が向上する。わかるかい。ポルシェの話は、君の話なのだよ。全部君の話なのだよ。君が悩むのは、性能が低いからじゃないのだよ。高速道路を、ぶっ飛ばしていないからなのだよ。

風。燃焼。油圧。馴染み。ポルシェの肝である。お前に足りないのは金じゃない。風だ。燃焼だ。油圧だ。馴染みだ。お前は幸せになりたいと言うが、嘘をつくな。本当は、幸せになんかなりたいと思っていない。自分が幸せになることよりも、自分を使って誰かを幸せにする方が満足度が高いことを知っている。そのためなら不幸になってもいいと思っている。君が笑ってくれるなら、僕はポルシェにでもなる。それが君だ。ポルシェになれ。否、自分はポルシェであることを思い出せ。狭い公道ばかり走るな。狭い公道を器用に走れないことを嘆くな。お前は狭い公道を走るために作られていない。自分でも薄々気付いているはず。狭い公道を走っている時のお前はクズだ。風を切れ。風を切らないから、自分を切ったり、世相を切るのだ。自分も世相も関係ない。自分を愛するとか執着を手放すとかも関係ない。ぶっ飛ばせ。

電車に飛び込むくらいなら、爆弾を積載したポルシェに乗って「ありがとう」と叫びながら国会議事堂に突撃しろ。この野郎とかお前を殺して俺も死ぬとかはダサい。ありがとうが一番怖い。動機がわからない。別に国が憎いからとかじゃない。叫ぶ言葉は「ありがとう」か「お前が好きだ」の二択。要するに愛。愛だよ愛。おさるさんだよ。間違っても「自分を愛する」とか言う人間を信じないこと。あいつらの顔をよく見てみろ。嘘っぽいだろ。答えを持っている人間の退屈さよ。あいつらは「君の笑顔が見たい」とか気持ち悪い言葉を素面で言う。笑顔になるのは労力がいる。自分は労力を払わずに、こちら側に笑う労力を払わせるあいつらは偽善者。本当に笑って欲しいなら、モーニング娘の抱いてホールドオンミーを全力で歌いながら「ねえ笑って？」と言う労力を払え。

ポルシェの癖に癒されたいとか思うな。ポルシェの癒しは高速爆走。それが一番調子が良くなる。狭い公道で癒されても仕方がない。普通自動車にとっての暴挙が、ポルシェにとっての善になる。最低でも週に一回は高速道路をぶっ飛ばさないと自分を保てないポルシェみたいな人っているんだよ。それが君だ。甥っ子や姪っ子にお小遣いをあげられないことを悩むな。甥っ子や姪っ子に「お小遣いちょーだい」と肉薄して戦慄せしめよ。真顔でたかれ。真顔でゆすれ。姪っ子や甥っ子が恐れをなして逃げ出したら、君はお小遣いなんかよりずっと素晴らしいギフトを与えたことになる。「こんな大人がいる」と言う激烈たる事実が、いつの日か、甥っ子や姪っ子の救いになるだろう。悩むな。生きろ。高速道路を、飛ばして行こう。