アメリカ、ガザから医療目的の渡航に使う短期滞在ビザを一時停止
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米国務省は16日、パレスチナ・ガザ地区出身者に対するすべての短期滞在査証(ビザ)の発給を停止すると発表した。
同省はソーシャルメディア「X」への投稿で、「ここ数日の間に発給された少数の一時的な医療・人道目的のビザについて、手続きとプロセスを全面的かつ徹底的に見直すため、個人向けの全ての短期滞在査証を停止する」と発表した。
この決定に対して、一部のパレスチナ人権団体から非難の声が上がっている。
パレスチナ児童救済基金は声明で、「この決定は、重傷を負った子どもや重病の子どもをガザからアメリカへ搬送し、救命医療を受けさせるという我々の活動に、壊滅的かつ回復不能な影響を与える」と述べた。
国務省の方針転換の直前には、極右活動家のローラ・ルーマー氏が「X」でこのビザ制度を批判。「この忌まわしい制度を廃止」するよう、トランプ政権に求めていた。
ルーマー氏は16日にも投稿を続け、国務省の方針転換は自分の手柄だと主張した。さらに、マルコ・ルビオ国務長官が一時的にビザを停止したことに感謝した。
パレスチナ児童救済基金によると、同団体は2024年、治療支援プログラムの一環として、ガザから169人の子どもを国外に避難させ、中東、ヨーロッパ、南アフリカ、アメリカで治療を受けさせた。
ハマスによる2023年10月7日のイスラエル攻撃を発端に戦争が始まってから、2年近くが経過する中、ガザでは医療インフラの多くが損壊しているほか、住民は深刻な食料不足に直面している。
人道支援団体は、イスラエルが3月に開始したガザ封鎖により、NGOがガザに十分な食料を届けることができなくなっていると主張している。これに対してイスラエル政府は、援助物資がハマスに奪われるのを防ぐための措置だと説明している 。
国連が支援する食料安全保障団体、人道支援団体、ガザで取材を行っている記者らは、ガザで飢饉(ききん)の状況が進行していると警告している。
BBCは7月下旬、AFP、AP、ロイターの各通信社と共に、ガザの記者たちが飢餓に直面しているとする共同声明を発表した 。
声明では、「何カ月もの間、独立系の記者たちは、ガザの現地で世界の目と耳となってきた。彼らは今、取材対象と同じ深刻な状況に直面している」と述べている。
アメリカのドナルド・トランプ大統領は7月、ガザで「本当の飢餓」が起きていると述べたが、米政権は引き続き、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相を支持している。