高齢者施設「クリスマス祝い」すしで86歳窒息死 「慎重さを欠いた」裁判で明らかになった問題点とは
柔らかさを調整したり、とろみをつけたりした食事は比較的安全とされ、日本摂食嚥下リハビリテーション学会は、食べる力に応じたとろみの強さなどの分類を公表している。一方で「窒息を回避する基準を明確に定めることは難しい。どんな食事形態でもリスクはあり、(介護者らが)食事中の観察を十分行うことが重要」と呼びかけている。 安全を優先して口からの摂取をやめ、胃ろうや点滴などの人工栄養に切り替える場合もある。だが、「おいしく食べたい」という本人の望みを尊重するか、安全を優先するかの間で悩む医療関係者は多い。介護食の開発・普及に取り組む消化器外科医の荒金英樹さん(58)は、「何を食べさせるのが正しいのか、医療関係者にもさまざまな考え方がある」と指摘する。 荒金さんら医師や歯科医師、管理栄養士でつくる京介食推進協議会や京滋摂食嚥下を考える会は、舌でつぶしやすい和菓子やおせちの開発・普及に力を入れてきた。ただ、どれだけ工夫した食事でも100%安全とは言えないという。荒金さんは「窒息事故で亡くなることを『寿命』と片付けてしまうのには抵抗がある。でも、人はいつか必ず亡くなる。それまでの人生をどう楽しく過ごすか、医療関係者と地域の人が一緒に考えていけたら」と話す。