建設現場に配置する監理技術者の縛りに各社が悩まされている。大成建設は家族の介護で交代する監理技術者に対し、同等の実績を持つ社員を充てられず、約1億4200万円の違約金が発生した。
監理技術者の交代を巡って違約金が課される例は全国でも珍しい。契約違反があったのは、東京都世田谷区が発注した庁舎の建て替え工事だ(資料1)。施工者の大成建設は2025年4月1日付の監理技術者交代で、必要な施工実績を持つ社員を配置できなかった。
この工事では1年半に及ぶ完成の遅れを理由に、既に約16億円の違約金が生じている。監理技術者に関する違反で、さらに金額が増えた。
総合評価落札方式の入札で受注者を選定した経緯から、入札時に加点された評価項目を履行できない場合、違約金が発生する契約になっている。監理技術者を交代する場合は、加点を受けた項目の施工実績を持つ技術者を配置する必要がある。
関係する加点項目は、「免震接続実績」2項目と「敷地内建て替え実績」2項目の計4つ(資料2)。当初の監理技術者A氏は4項目とも満たしており、入札時に8点を獲得した。A氏の退職に伴い、24年5月1日付で監理技術者に就いたB氏も4項目の実績を持っていた。
しかし、B氏は家族の介護が必要となって退任。25年4月1日付で代わりに配置したC氏には、免震接続2項目の実績がなかった(資料3)。
入札時に加点された項目のうち、履行できなかった分は減点となる。免震接続に関しては、工期全体のうち施工実績を満たす監理技術者を配置できない期間の割合が0.513。免震接続実績の4点にこの割合を乗じると、減点数は2.05点となる。
一方、所定の計算式から算出した技術評価点1点当たりの価格は約6900万円(資料4)。それに減点数を掛けて、違約金は約1億4200万円となった。
国土交通省の工事でも、入札時の加点に応じて違約金を課す仕組みはある。しかし、適用するのは技術提案の内容を履行できなかった場合などに限られる。監理技術者の配置に関しては、こうした違約金を設定していない。
ただし、国交省の工事でもやむを得ず監理技術者を交代する場合には、同等の技術力を持つ人の配置が必要だ。違約金制度がないため、配置できない場合は契約解除となる。
一見、世田谷区よりも厳しいようだが、実はそうでもない。国交省は交代後に配置する監理技術者の要件を「同等以上の技術力を有する技術者」としており、同等の施工実績とは限定していない。
つまり、入札時と同じ加点を受けられる技術者の配置が原則ではあるものの、必ずしもそれを必須とはしていない。同等の技術力があると発注者が認めれば交代可能だ。