5日前くらいに、先輩がBSテレ東『Aマッソのがんばれ奥様ッソ!』が面白かったと教えてくれたので、Tverの配信が終わる前に滑り込みで見ました。
元々去年の年末に放送してた番組だし、第一夜のTverでの配信も終了したので、今感想を書くのも時を失した感はあるのですが、備忘録のために書きます。
こんな番組でした
この番組は、一見「忙しい奥様をお助けするロケバラエティ」なんですが、行き先の家庭が抱えるおどろおどろしい背景が随所に見え隠れするフィクションドキュメンタリーです。
1つ目の家庭は大家族で、妻が前夫との間に産んだ長女が、妻の再婚相手の夫と家庭内不倫をしており、2つ目の家庭はカルト村に住んでおり、娘が強制的に教祖に差し出されるという裏の設定がありました。
それらの家庭に金田朋子と紺野ぶるまがお邪魔して、奥さんの家事をお手伝いするロケVTRをスタジオのAマッソが見ていくのですが、長女が明らかに不審な動きをしたり、村の住人がおかしな行動をとっているのに、誰も全くつっこまないという不自然が続きます。
Aマッソが出てるのがよかった
ドキュメンタリーの謎解きは他のブログで細かくやられているので割愛しますが、自分がめちゃくちゃいいなあと思ったのは、Aマッソの立ち位置です。
この番組はお笑いコンビ・Aマッソの「初冠番組」で、最近2人とも既婚者だったことが報道されたことにちなんで「奥様」全面アピールの内容でした。
私がAマッソを知ったのはYouTubeで『ゲラニチョビ』が始まったくらいで、その時はこんな「奥様」番組をやるようなスタイルではありませんでした。
しかし、ここ2、3年は『The W』決勝進出などでテレビ出演も増えて、テレビで売れる目標を確実に実現しにかかってる感じがあり、最初この番組タイトルだけ聞いて、内容を知らなかった時は「こういう仕事もやるようになったんや〜がんばれ〜」と感じました。
そんなバリバリの過渡期で、そもそもロケバラエティの司会なんてあまり経験のない2人が「明らかにおかしいVTRにつっこまない」「番組の趣旨に変に迎合したようなエピソードトークをする」のは、以前のスタイルに照らせば不自然だけどギリ「そうなんや」と思ってしまったのです。(トークはそういう「らしくないことあえて言ってる」ボケのようにも見えました。)
でもやっぱAマッソにしたら「奥様お助けロケ」という番組でフヤフヤしたトークをしている枠組み自体がおかしく、『ゲラニチョビ』でやってた「フルーツ」などのメタ企画が思い出されて、「全部なんかの設定と構造があるからこういう不自然さがあるんやろう」という感じもありました。
つまり、序盤だけを見た限り、Aマッソが「どういうつもりなのか」よくわからなかったのです。5年前Aマッソがやってたら「あ、メタや」とすぐわかってしまっていたでしょう。
この「現在のAマッソ」の状況が、番組のテーマだけでなく、フェイクドキュメンタリーの構造にも合っていてとてもよかったです。
ロケの流行のスタイル
あと、この番組はロケバラエティという体をしているのもええなあと思いました。
『放送禁止』などの先行作品と比べて、「明るいロケ」という設定上、家庭のおぞましい背景の匂わせ方があからさまであったことが批判されたりもしています。でも私はロケバラエティの現在の流行やそもそもの性質に根ざした演出なんじゃないかと思っています。
今は『相席食堂』などのように、ロケ映像につっこんでいくのが主流です。
ロケの中で進行している物語の外の者が、ひっかかった所を指摘していきます。
そもそもロケというもの自体が作為的な映像ではありますが(行き先も出会う人もある程度準備してるし、帰ってから映像を切り貼りしている)、この構造を前提にしたロケ編集は「自然を装ったつっこみ所の積み重ね」になります。
しかも、最近は「ロケ先で起こった面白いこと」だけでなく、「カメラマンの意図的な画角」や「映像編集者の悪意ある編集」までもつっこみの対象となっています。(例えば、芸人の話を聞いて全く笑っていない一般の人だけをあえて映す画角、芸人のトークをわざと途中で切る編集/逆にほぼ意味のない映像を切らない編集)
『奥様ッソ』の気味の悪い画角や見切れは非常に露悪的で意味深でしたが、この流行に連ならんこともないと思いました。ロケ先で起こったことを、つっこみやすいように意図的にクローズアップするって感じですかね。
そんで、このロケへにつっこみ全盛の時代に、Aマッソがロケ中の不自然な点をスルー・深入りしないのはめちゃくちゃ不自然でした。
テレビ慣れした芸能人や、つっこんでいくスタイルではない人ならともかく、Aマッソはそうではありません。ロケ内でのおかしさや編集側の悪意のどちらにも気づいて言うタイプだと勝手に思います。
このAマッソの流行の逆流も不自然を醸し出していました。
終わらせ方・後日談
番組が進む中で、長女と夫の家庭内不倫や、カルト村の実態が明るみになり、見ている側としては「どう終わるのか」が注目ポイントになっていきます。バラすのか、濁らせて終わるのかどちらなのか。
結果「明るいロケ」という枠組み上、おぞましい事件が裏で起こったのにも関わらず、「奥様のお助け大成功!!」的な演出でフワッと終わります。
そして番組の最後に、黒背景に白字で家庭内に進行していた事件のバラしと、「この番組は完全なフィクション」であることが知らされます。構造の解説は番組外で行われます。
個人的には、大事をスルーしたロケバラエティの明るい気色悪さと、それによってハートフルロケ番組の枠組みを全うしたとこが好きでした。
でも、一番心にきたのはTverでの後日談です。
ニュース番組の体裁で、1つ目の家庭では母親が長女と夫に殺害されたこと、2つ目の家庭ではカルト村の村長が住人の女性を殺したことが報道されます。
これを見た時は「殺したことしっかり言ってまうんや」と感じました。殺害されたというラストはインパクトあって怖いですが、どうなったか各々の想像に任せる方が後味がえぐいんじゃないかと思ったからです。
でも、よく考えると後日談の語り方が架空のニュース速報だったことはすごく面白いなあと思いました。
後日談をほのめかすようなことは、本編の最後の黒背景の文章でもしめされていたので、そこで後で起こったこと全部を言ってよかったはずです。でも、後日談をニュース速報として切り離して語っています。
これは「番組の性質の違い」をかなり強調した演出だと思いました。
実際に起こったことは同じです。長女と夫が不倫をしていた、カルト村の教祖が娘を殺したわけです。ロケ番組とニュース番組は同じ事実を取り扱っていたのに、全く違う語りになっています。
ロケバラエティは、あんなに長い時間家族に密着して、ロケVTRも1時間くらいあったのに、家庭内のおぞましい背景への語りが、まるで見てみぬふりするように上滑りしていきました。
一方、ニュースは超短時間(1分か30秒くらいやったかな)で、妻と娘がそれぞれ殺害された事実と事件背景を固有名詞を使って端的に述べきってしまったのです。
実際に起こったことに対する、番組の切り取り方の違いを改めて見た気がしました。ニュースはニュースで、ロケをじっくり見た後だと、人物や背景に対する説明が具体的なのに高度に抽象化されているような気がしてめちゃくちゃ気持ち悪かったです。
面白かったなあ
『Aマッソのがんばれ奥様ッソ!』 は、Aマッソの「初冠番組」としても、メタなフィクションドキュメンタリーとしてもすごくよかったなあと私は思います。
言い忘れてたんですが、訪ね先の家庭内の問題にギリ気づいてないんじゃないかと感じさせる金田朋子の演技と、確実にやりにいってる加納に対する村上のいつもとあんまかわらん感じもめちゃくちゃ好きでした。
元々去年の年末に放送してた番組だし、第一夜のTverでの配信も終了したので、今感想を書くのも時を失した感はあるのですが、備忘録のために書きます。
こんな番組でした
この番組は、一見「忙しい奥様をお助けするロケバラエティ」なんですが、行き先の家庭が抱えるおどろおどろしい背景が随所に見え隠れするフィクションドキュメンタリーです。
1つ目の家庭は大家族で、妻が前夫との間に産んだ長女が、妻の再婚相手の夫と家庭内不倫をしており、2つ目の家庭はカルト村に住んでおり、娘が強制的に教祖に差し出されるという裏の設定がありました。
それらの家庭に金田朋子と紺野ぶるまがお邪魔して、奥さんの家事をお手伝いするロケVTRをスタジオのAマッソが見ていくのですが、長女が明らかに不審な動きをしたり、村の住人がおかしな行動をとっているのに、誰も全くつっこまないという不自然が続きます。
Aマッソが出てるのがよかった
ドキュメンタリーの謎解きは他のブログで細かくやられているので割愛しますが、自分がめちゃくちゃいいなあと思ったのは、Aマッソの立ち位置です。
この番組はお笑いコンビ・Aマッソの「初冠番組」で、最近2人とも既婚者だったことが報道されたことにちなんで「奥様」全面アピールの内容でした。
私がAマッソを知ったのはYouTubeで『ゲラニチョビ』が始まったくらいで、その時はこんな「奥様」番組をやるようなスタイルではありませんでした。
しかし、ここ2、3年は『The W』決勝進出などでテレビ出演も増えて、テレビで売れる目標を確実に実現しにかかってる感じがあり、最初この番組タイトルだけ聞いて、内容を知らなかった時は「こういう仕事もやるようになったんや〜がんばれ〜」と感じました。
そんなバリバリの過渡期で、そもそもロケバラエティの司会なんてあまり経験のない2人が「明らかにおかしいVTRにつっこまない」「番組の趣旨に変に迎合したようなエピソードトークをする」のは、以前のスタイルに照らせば不自然だけどギリ「そうなんや」と思ってしまったのです。(トークはそういう「らしくないことあえて言ってる」ボケのようにも見えました。)
でもやっぱAマッソにしたら「奥様お助けロケ」という番組でフヤフヤしたトークをしている枠組み自体がおかしく、『ゲラニチョビ』でやってた「フルーツ」などのメタ企画が思い出されて、「全部なんかの設定と構造があるからこういう不自然さがあるんやろう」という感じもありました。
つまり、序盤だけを見た限り、Aマッソが「どういうつもりなのか」よくわからなかったのです。5年前Aマッソがやってたら「あ、メタや」とすぐわかってしまっていたでしょう。
この「現在のAマッソ」の状況が、番組のテーマだけでなく、フェイクドキュメンタリーの構造にも合っていてとてもよかったです。
ロケの流行のスタイル
あと、この番組はロケバラエティという体をしているのもええなあと思いました。
『放送禁止』などの先行作品と比べて、「明るいロケ」という設定上、家庭のおぞましい背景の匂わせ方があからさまであったことが批判されたりもしています。でも私はロケバラエティの現在の流行やそもそもの性質に根ざした演出なんじゃないかと思っています。
今は『相席食堂』などのように、ロケ映像につっこんでいくのが主流です。
ロケの中で進行している物語の外の者が、ひっかかった所を指摘していきます。
そもそもロケというもの自体が作為的な映像ではありますが(行き先も出会う人もある程度準備してるし、帰ってから映像を切り貼りしている)、この構造を前提にしたロケ編集は「自然を装ったつっこみ所の積み重ね」になります。
しかも、最近は「ロケ先で起こった面白いこと」だけでなく、「カメラマンの意図的な画角」や「映像編集者の悪意ある編集」までもつっこみの対象となっています。(例えば、芸人の話を聞いて全く笑っていない一般の人だけをあえて映す画角、芸人のトークをわざと途中で切る編集/逆にほぼ意味のない映像を切らない編集)
『奥様ッソ』の気味の悪い画角や見切れは非常に露悪的で意味深でしたが、この流行に連ならんこともないと思いました。ロケ先で起こったことを、つっこみやすいように意図的にクローズアップするって感じですかね。
そんで、このロケへにつっこみ全盛の時代に、Aマッソがロケ中の不自然な点をスルー・深入りしないのはめちゃくちゃ不自然でした。
テレビ慣れした芸能人や、つっこんでいくスタイルではない人ならともかく、Aマッソはそうではありません。ロケ内でのおかしさや編集側の悪意のどちらにも気づいて言うタイプだと勝手に思います。
このAマッソの流行の逆流も不自然を醸し出していました。
終わらせ方・後日談
番組が進む中で、長女と夫の家庭内不倫や、カルト村の実態が明るみになり、見ている側としては「どう終わるのか」が注目ポイントになっていきます。バラすのか、濁らせて終わるのかどちらなのか。
結果「明るいロケ」という枠組み上、おぞましい事件が裏で起こったのにも関わらず、「奥様のお助け大成功!!」的な演出でフワッと終わります。
そして番組の最後に、黒背景に白字で家庭内に進行していた事件のバラしと、「この番組は完全なフィクション」であることが知らされます。構造の解説は番組外で行われます。
個人的には、大事をスルーしたロケバラエティの明るい気色悪さと、それによってハートフルロケ番組の枠組みを全うしたとこが好きでした。
でも、一番心にきたのはTverでの後日談です。
ニュース番組の体裁で、1つ目の家庭では母親が長女と夫に殺害されたこと、2つ目の家庭ではカルト村の村長が住人の女性を殺したことが報道されます。
これを見た時は「殺したことしっかり言ってまうんや」と感じました。殺害されたというラストはインパクトあって怖いですが、どうなったか各々の想像に任せる方が後味がえぐいんじゃないかと思ったからです。
でも、よく考えると後日談の語り方が架空のニュース速報だったことはすごく面白いなあと思いました。
後日談をほのめかすようなことは、本編の最後の黒背景の文章でもしめされていたので、そこで後で起こったこと全部を言ってよかったはずです。でも、後日談をニュース速報として切り離して語っています。
これは「番組の性質の違い」をかなり強調した演出だと思いました。
実際に起こったことは同じです。長女と夫が不倫をしていた、カルト村の教祖が娘を殺したわけです。ロケ番組とニュース番組は同じ事実を取り扱っていたのに、全く違う語りになっています。
ロケバラエティは、あんなに長い時間家族に密着して、ロケVTRも1時間くらいあったのに、家庭内のおぞましい背景への語りが、まるで見てみぬふりするように上滑りしていきました。
一方、ニュースは超短時間(1分か30秒くらいやったかな)で、妻と娘がそれぞれ殺害された事実と事件背景を固有名詞を使って端的に述べきってしまったのです。
実際に起こったことに対する、番組の切り取り方の違いを改めて見た気がしました。ニュースはニュースで、ロケをじっくり見た後だと、人物や背景に対する説明が具体的なのに高度に抽象化されているような気がしてめちゃくちゃ気持ち悪かったです。
面白かったなあ
『Aマッソのがんばれ奥様ッソ!』 は、Aマッソの「初冠番組」としても、メタなフィクションドキュメンタリーとしてもすごくよかったなあと私は思います。
言い忘れてたんですが、訪ね先の家庭内の問題にギリ気づいてないんじゃないかと感じさせる金田朋子の演技と、確実にやりにいってる加納に対する村上のいつもとあんまかわらん感じもめちゃくちゃ好きでした。
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