画像生成AI 終わりの始まり
ディズニーがMidjourneyを訴えた!
ディズニーが、画像生成AIのMidjourneyを訴えたそうです。
ディズニーの訴状では、Midjourneyのことを以下のようボロクソに書いてます。
盗作の底なし沼
無許可コピーを無期限に生産する自動販売機
典型的な著作権フリーライダー
AI技術を用いても海賊版は海賊版
Midjourneyは多分負ける…
私の見立てとしては、Midjourneyが全面勝訴する可能性はほとんど無さそうに思います。
ディズニーの訴状を一通り読みましたが、生成物の著作権侵害を主に訴えていますが、サービス自体が著作権侵害であるとも訴えているようです。画像生成AIのトレーニングがフェアユースに該当するかどうかまで踏み込んだ裁判になるかは不明ですが、Midjourney側が「フェアユースだから問題ない」という抗弁をした場合は、フェアユースに該当するかどうか判断される流れに当然なると思います。
Midjourneyの画像生成AIがフェアユースに該当するか、フェアユース4因子を私がそれぞれ検討してみました。4つともまあまあアウトだと思います。Midjourneyが勝てるとすれば、変容性だけが頼りです。以下で簡単に説明します。
フェアユース第1因子「使用の目的および性質」
・商業利用か教育・非営利利用か
Midjourneyは商用サービス
・変容性
画像生成AIの企業は、テキストから画像を生成するので変容性が高いと主張している。しかし、アメリカ著作権局や最近の司法判断ではそれが否定されつつある。画像をAI学習して画像を生成するのだから、変容性は低いという考え方。
→判定「△」
フェアユース第2因子「著作物の性質」
Midjourneyは芸術作品、写真、イラストなど創造性が高い著作物を学習。
創造性が高い著作物は、フェアユースが認められにくい。
(逆に、フェアユースが認められやすいのは、地図などの「事実」を記載しただけのもの)
→判定「×」
フェアユース第3因子「使用された部分の量と実質性」
Midjourneyは、おそらく数十億枚の画像を学習に利用。めちゃめちゃ大量。
当然、画像の全体を学習に利用している。
→判定「×」
フェアユース第4因子「市場への影響」
Midjourneyの生成物は、イラストレーターの市場を代替する恐れがある。Midjourneyでディズニー風やディズニーキャラは出せるみたいだからね。訴状にたくさんのMidjourneyで生成したディズニーキャラクターの例が載っていますが、かなりまんまなので、誰が見ても著作権侵害だなぁって感じがすると思う…。まあ、それでディスニーの売り上げが下がったりはしてないと思うけど…
→判定「×」かなあ?
ディズニーはライセンス契約を認めるか?
ディズニーとしても、AI企業とライセンス契約を結んで、新たな市場から利益を得られるのは魅力的かもしれませんね。(ただし、巨人ディズニーからすれば微々たる金額ではあります)
Midjourneyが負ける確率はかなり高めです。ですので、Midjourneyが生き残る道としては、ディズニーとライセンス契約を結ぶしかなさそうです。ディズニーはライセンス契約を結んでくれるでしょうか?
ディズニーは著作権と商標を徹底保護してブランド価値を守る企業
1987 年に滋賀県の小学校の卒業制作としてプールの底に描かれたミッキーをディズニーは著作権侵害を指摘して削除させた事件は有名ですよね。
ディズニーは自社IPについて、かなり厳格な管理を行う会社だと思います。
でも、ライセンス契約を結ばない会社ではない。むしろ積極的。
ディズニーはライセンスビジネスでかなり稼いでいる会社だと思います。ディズニーのライセンスを受けた商品って、日本にもたくさんありますよね。子供服とかおもちゃとか文具とか、たくさんありますね。ですので、ディズニーはライセンスを結ばせない企業ではないです。むしろ、積極的にライセンス契約を行う会社だと思います。
音楽生成AIのSunoは、レコード会社とライセンス契約を結ぶように交渉中…
既にRIAAやビッグ3レーベルと訴訟中のSunoは、ライセンス契約を結ぶように交渉しているようです。それが前例になります。Sunoの場合と同じように、Midjourneyもディズニーとライセンス契約を結ぶでしょうか?
しかし、音楽生成AIと違って、画像生成AIにはライセンス契約を結ぶ上での難点があります。
画像生成AIの場合、コントロール性の低さが難点
ディズニーがライセンス契約を結ぶのは、通常、きちんとした企業で商品のクオリティ管理がしっかりしているところです。ディズニーのIPを毀損するようなことがないように、クオリティをコントロールできるところとライセンス契約を結んでいるはずです。
しかし、画像生成AIの場合、生成物のコントロールが難しいです。例えば、ディズニーキャラクターを使って微妙にエッチなイラストを生成されたり、政治的プロパガンダに使われるようなイラストを作られてしまう危険性があるわけです。
プロンプトをチェックして弾いたり、画像生成後にチェックしてブロックするような仕組みは実装可能です。しかしそれでも完全には防ぐのが難しく、後から抜け穴が発見されることもあります。このあたりがライセンス契約する上でのネックになりそうです。
そのため音楽生成AIでの前例がそのまま当てはまるというわけでは無さそううに思います。音楽生成AIの場合、音楽にはIPという概念が薄いので、「エッチな音楽」とか「政治的プロパガンダな音楽」にIPを絡めることが難しいため、その辺がライセンス契約を結ぶ上でのネックにならないはずです。
Midjourneyは「特定スタイルプロンプトブロック」「フィンガープリント照合」などのガードレールをうまく設置できるかどうかが、生き残りのカギになりそうです。
しかし、ガードレールをうまく設置できたとしても、「盗作の底なし沼」だったものに正式なライセンスを与える可能性は、普通に考えると低めですよね…
ライセンスを与えなければ、Midjourneyはほぼ負け確定です。ディズニーは「生殺与奪の権」を握っている状態だと思います
画像生成AIはこの先生きのこれるか?
2022年は「画像生成AI元年」と呼ばれていますが、そこから3年で画像生成AIは大躍進を遂げました。
しかし、それは一時的な「お祭り」だったのではないかと私は思います。
今後は、画像生成AI企業を相手にした訴訟が相次ぎ、AI各社は対策を求められるでしょう。その結果、「お祭り」は終わってしまうのかもしれません。
スクレイピングで取得したデータセットで無断学習したAIモデルは、今後、訴訟リスクが高くなりすぎます。SDXLクラスの実用的な画像生成AIは、数億枚の画像を学習しています。それだけの枚数を学習するためにはGPUを回すための費用として数千万から数億円のコストがかかると言われています。Midjourneyの場合は、数十億の画像を学習していると推定されますので、NVIDIA A100やH100のような高性能GPUをクラウドで数千ノードを数か月間借りて学習を行っていると推測され、コストは億円超だと思われます。もし、訴訟で敗訴した場合に権利侵害の画像を抜いた上でAIモデルの再学習が必要となった場合、また億円単位のコストをかける必要があるわけです。AI企業が莫大なコストをかけて開発したAIモデルに、訴訟リスクがあるデータが紛れ込むのは、経営リスクがとても大きいのです。
そうなると、画像生成AIはクリーンなデータセットで学習することを余儀なくされるでしょう。クリーンなデータセットでは「二次創作」や「性的」なイラストを生成するのは、なかなか厳しいはずです。今、SNSでは「二次創作」「性的」イラストを高速に生成するマシンとして画像生成AIが使われています。このような使い方は難しくなっていく流れのなのではないでしょうか。
なぜなら、「二次創作」「性的」なイラストを出せるということは、違法なAIモデルを使っていることを疑われてしまうからです。画像生成AIのフェアユースが否定されるような判決が出て、各社がクリーンなデータセットに切り替わったとすると、「二次創作」「性的」なイラストはほぼ出せなくなるからです。出せるのは、フェアユース否定前に作られたローカル画像生成用のAIモデルだけになります。
もちろん、イラストレーターに対価を払って性的イラストを描かせて、それを学習してAIモデルを作り、そこからAI生成した画像を使ってさらに自己蒸留を行うなどすれば、クリーンなデータセットでも性的なイラストを出せるAIになる可能性はあるでしょう。
私は画像生成AIは死んでしまうとは思っていません。一時的に「谷」に入るかもしれませんが、また盛り返すのではないかと予想します。だって…
紳士達の叡智パワーはすさまじいですからね…
だから、たぶん何とかするんじゃない?
いいなと思ったら応援しよう!
おこづかいちょうだい♪♪♪


コメント
21ちょっと話を広げちゃうんですが、ITに限らず、今世紀に入ってから、日本でイノベーションが上手くいった例がどのくらいあるんでしょうかね…
創薬分野だと日本で開発された新薬が承認されるケースは時々ありますが、開発元はベンチャーというより大企業とアカデミアの連携ということが多い気がします。
新型コロナが出てきた時も、内製でワクチン開発しようという某ベンチャーを地方行政がバックアップしようとした事例がありましたが、結局頓挫しました。(一時的に株価が10倍近くまで上がり、その後暴落…まあ、個人的には見えていた地雷でしたが)
国産のコロナワクチンを承認まで持っていけたのは、今のところ大手製薬メーカーだけです。
小さい企業では開発期間の長さに対して資本体力が持たないということもありますが、結局優秀な人材は大手企業に集まりやすいのかな?とも思っています。
日本でイノベーションが上手くいった例ですが、スバルのアイサイトとかプリウスのTHSが思い浮かびました(今世紀じゃないかも…)。あとは自動運転レベル4を実現しようとしているティアフォーも期待しています。
まあ、20世紀の方が多い気がしますね。
コロナ関連は国産のグダグダぶりがなんか心配になります。
創薬、医学、宇宙、半導体などはやっぱり大企業+大学で頑張ってもらわないと無理そうですよね。成果が出るまでの期間が凄く長いし、資本力も必要ですから。
確かに前世紀にはイノベーションたくさんあったと思いますね。
それらの成功が今の大企業(有名企業)になっているので。
比較的新しいところでは液晶ディスプレイとか青色LEDとかが思い浮かびます。
AI関連のベンチャーだとPreferred Networksには知り合いがいたこともあり、以前は期待感を持っていたんですが、Chainerの開発をやめてしまったし、最近はどうなんだろう。
自動運転技術周りなんかは私が詳しくないだけで、実は結構すごいのか…
国産コロナワクチンは確かにグダった印象がありますが、塩野義製薬が組換えタンパクワクチンでちゃんと承認まで行ったのは正直意外でした。(どこかで頓挫すると思ってた)
あそこが買収して保有しているワクチン製造プラントのスケールは世界的に見ても実は結構すごい(稼働していないところを一度見学させて頂いたことがある)のですが、長い間あまり有効活用することができていないはずなので、コロナワクチンでは遅すぎてもう無理ですが何とか活用して欲しいとは思っています。
そう考えてみると、取り組んではいるものの、何かあと一押しが足りないのか…
ねこみみさん
Preferred Networksはかなり頑張ってると思いますが、日本特化で何とか差別化している感じですね。OpenAIとガチでやり合うには、資金力が1ケタ2ケタ足りない気がします。結局、生成AIはデータを大量に集めてGPUをガンガン回したほうが強いっぽいので…
そんなすごいワクチンプラントがあったんですね!次のパンデミックには活かせると良いと思います。