「変わりないよ」「元気でやってるよ」電話口で聞こえる親の元気な声をつい過信していないでしょうか。しかし、その言葉の裏で、孤独や心身の衰えが静かに進行しているケースは少なくありません。本記事ではAさんの事例とともに、避けては通れない「親の老い」という現実について、FP1級の川淵ゆかり氏が解説します。
お盆帰省で生きた心地がしませんでした…年金15万円の73歳母の通帳「お支払い金額 ¥5,000,000」に震撼。45歳息子が気づいた、母を追い込んだ“犯人”のまさかの正体【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

認知症発症の母親

病院に連れて行くと母親は「認知症」と判断されました。しっかりした母親だと思っていたAさんはかなりのショックを受けました。

 

父親が亡くなって悲しみがやむ間もなく新型コロナウイルスが流行り、ほとんど誰にも会わずに一人で家に引きこもるようになったことが原因なのかと考えると、母親が可哀そうでなりません。Aさんは自分ではまめに電話をかけていたつもりだったのですが、なぜか母親は電話口で詐欺にあったことは話さず、Aさん自身も母親の異変に気が付かなかったことを悔やみます。なお、通帳からの多額の引き出しからは1年以上も経っており、母親も当時のことはほとんど覚えていないため、泣き寝入り状態です。

女性の発症率が高い認知症

厚生労働省の調べをみると、高齢になるほど男性よりも女性のほうが認知症になってしまう割合が高いことがわかります。女性のほうが平均寿命が長いことや女性ホルモンの減少が関係しているようです。
 

出所:「認知症施策の総合的な推進について」令和元年6月20日厚生労働省老健局より筆者作成
[図表3]年齢別認知症有病率 出所:「認知症施策の総合的な推進について」令和元年6月20日厚生労働省老健局より筆者作成

 

今後も日本は高齢化が進みますので、認知症有病者数とその割合は増え続けます。厚生労働省の発表によると、2050年には1,000万人を超え、2060年には高齢者の3人に1人が認知症になることもあり得るとしています。高齢者がいるご家庭では、食事や運動の習慣、コミュニケーションを増やすなど、できるだけサポートして認知症を予防するようにしましょう。

 

〈参考〉

「令和6年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について」令和7年5月23日 組織犯罪対策第二課広報資料より

https://www.npa.go.jp/bureau/criminal/souni/tokusyusagi/hurikomesagi_toukei2024.pdf

「認知症施策の総合的な推進について」令和元年6月20日厚生労働省老健局

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000519620.pdf

https://www8.cao.go.jp/kourei/taikou-kentoukai/k_1/pdf/ref3-2.pdf

厚生労働省認知症参考資料R5.4.19

https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001088515.pdf

 

 

川淵 ゆかり

川淵ゆかり事務所

代表