<ネットと中傷 第2部 10年以上戦う弁護士④>(全5回)
社会問題となって久しいネットでの誹謗中傷。10年以上にもわたって被害を受け続けてきた唐澤貴洋弁護士は、ネット掲示板でのやりとりから現実社会での犯罪に発展した例も見てきた。
自身を中傷したとされる人物にも何人か会い、共通点があると感じるという。
◆きっかけは「2ちゃんねる」
そもそも、自身が中傷にさらされるようになったのは、2012年。当時は隆盛だったネット掲示板「2ちゃんねる」がきっかけだった。
「炎上」していた高校生(当時)が、自身を中傷する書き込みを削除するよう運営会社に要請してほしいと弁護士に依頼。唐澤弁護士が引き受けると、高校生を攻撃していた人たちの矛先が自身にも向けられるようになり「詐欺師」「犯罪者」などと書き込まれた。
「がく然としましたよ。弁護士ですごく誹謗中傷されている人なんか前代未聞だったので。あ、終わったな、って」
まもなく「殺す。メッタ刺しにする」と殺害予告も書き込まれた。「本当に殺されるんじゃないかと、怖かった」
◆殺害予告は「100万回」 墓までいたずらされ
唐澤弁護士を攻撃する人たちは、当時の所属弁護士事務所の名前をとって「恒心教」という宗教団体めいた集団をネット上で結成。中傷や嫌がらせをあおるための掲示板をつくるなどして、今も攻撃を続ける。
唐澤弁護士がこれまでに受けた殺害予告は、100万回を超えるという。実家や自宅の住所がネットに公開されたこともある。
ネット上にとどまらず、自分の名前をかたって自治体などに爆破予告をされたり、家族の墓や事務所の郵便受けにいたずらされたりすることもあった。
また、かつて掲示板への書き込みの削除要請を依頼した高校生(当時)や、家族らも標的にされている。
◆「メリットないのに、なぜ」
唐澤弁護士は、だれもが感じるであろう疑問を抱いた。
「何のメリットもないのに、なぜ誹謗中傷をするのか」
だから、加害者やその保護者に会い始めた。
「加害者側の精神状態や考え方を知って、自分なりにこの社会問題を解明したいと思ったんです」
これまでに会ったのは10人ほど。いったいどのような人が誹謗中傷したのか。
◆「ネットで騒がれうれしくて」
例えば、ネット上で殺害予告をしてきた医学部志望の浪人生は、受験...
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