<ネットと中傷 第2部 10年以上戦う弁護士③>(全5回)
ネット中傷にさらされてきた唐澤貴洋弁護士は、2025年1月に事務所の鍵穴に接着剤を詰められる嫌がらせに遭った。
接着剤を詰めた疑いで保護されたのは関東地方の男子中学生(13)。4月に謝罪に訪れた両親は、おとなしかったという中学生が犯行前にネットに没頭していたことを打ち明けた。
◆警察から連絡を受けて連れて行こうとすると…逃げ出した
そして2025年2月半ば、母親のもとに、警視庁三田署から中学生を出頭させるよう電話があった。
「息子さんが弁護士事務所の鍵穴に接着剤を詰めた疑いがあるので、署に来てほしい」
母親は、当時を振り返る。「自分の息子がそんなことをしたなんて、本当に動転した」
母親が署に連れて行こうとすると、少年は自宅の最寄り駅近くで逃げ出した。その後、付近で警察に保護され、児童相談所に引き渡された。両親は少年と話をできていないという。
◆「ありえない行動力」と父親も困惑
母親は困惑する。「人を傷つけるようなことはしなかったのに」
父親も理解が追いつかない。「家や学校ではおとなしくて、こんな犯行をできるような子じゃない。ありえない行動力だ」
しかし…。「実際にこんなことをしてはいけないという監督ができていなかった」
◆ネット掲示板の影響?
唐澤弁護士は、両親に伝えた。「(中学生は)ネット掲示板で自分の犯行の様子を自慢していた」
ネット上には、唐澤弁護士を攻撃する人たちが集まり、嫌がらせを報告したり情報を交換したりする掲示板が複数ある。中学生は、そこを居場所にしていたとみられるという。
そして、警鐘を鳴らす。「再犯する人間を何人も見てきた」。孤立する人たちがネット上でコミュニケーションの喜びに浸り、犯罪行為につながるコミュニティーから抜け出せなくなるからだ。
唐澤弁護士は、両親に尋ねた。「今後、どうするのですか」
父親は悩む気持ちを明かした。「息子には、ネットではなくてリアルでの関係を持てるようにしてもらいたい。ただ、それをどう実現するのかは難しい」
母親は涙ぐんだ。「専門家の力を借りなが...
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