『ミニストップ』の「手づくりおにぎり」販売中止へ コンビニの「消費期限偽装」はなぜ繰り返されるのか?
ミニストップ「手づくりおにぎり」で消費期限偽装
大手コンビニエンスストアチェーンの『ミニストップ』は18日、一部の店舗で「手づくりおにぎり」の消費期限の表示を偽って販売。「手づくりおにぎり」「手づくり弁当」の製造を中止したと発表した(参考資料:ミニストップホームページ)。
それによれば、製造後速やかに消費期限が記載されたラベルを貼付し販売すべきところ一定時間ラベルを貼付せず、消費期限を延長した販売や一度売場に陳列した商品に再度消費期限が記載されたラベルを貼付する等が判明したという。また同様に、店内加工惣菜についても表示誤りが認められたという。
商品製造のルールを逸脱した行為があった店舗は16日時点で全国23店舗。これら23店舗については、速やかに保健所に報告し店舗での改善対応を行い、発生した事案の原因究明を図るとともに、再発防止に努めるという。またこれらの該当店舗のみならず、全国の店舗で緊急調査を実施し再発を防ぐという。
コンビニエンスストアによる消費期限の偽装は今に始まったことではない。弁当や惣菜などのラベルの貼り替えなど、過去にも多くの同類の事例が発生しては、その都度謝罪と再発防止策が打ち出されていた。それにも関わらず、また同じことが起こってしまったのはいったいなぜなのだろうか。
フランチャイズ店と本部との収益構造に問題か
原則としてコンビニエンスストアの多くは「欠品」を善しとしない。その結果、発注や製造過多となって食品廃棄率が高くなる。期限切れ商品の廃棄コストは店舗経営に影響を与えるため、多くがフランチャイズ店である現在のコンビニエンスストアチェーンでは、仕入れコストや廃棄コストを背負うフランチャイズオーナーにとっては、廃棄損失がそのまま収益に影響するため、期限を延ばして売り切ろうとする誘因が生まれやすい。
また近年のコンビニエンスストアでは、店内調理による弁当や惣菜、パンなどの販売に力を入れている。メーカーや外部工場で作られた商品や弁当などは、包材に直接製造年月日や消費期限などが刻印されるため偽装のしようがないが、店内調理の場合は店内でシールを印刷して貼付するため、簡単に貼り替えて偽装することができる。
その背景にはコンビニエンスストアの過密出店により、各店舗あたりの売上確保が困難になっていることもあるだろう。売れ残りリスクに対するオーナーの心理的なプレッシャーは大きなものとなっている。またシンプルに目の前の廃棄ロスを避けたいという短期的な発想が、信頼の失墜や食の安全性を損なうという長期的なリスクを見落としてしまっている可能性もある。
本部主導によるシステム構築が喫緊の課題
多店舗展開しているチェーンストアで、本部が全店舗の期限管理を厳密に監視するのは現実問題として困難だ。また、アルバイト従業員が主力となるコンビニエンスストアという職場環境では、期限管理に関する教育や意識の徹底が不十分になりがちである。そのため、店舗での期限チェックが形骸化してしまい、複数人でのダブルチェック体制が機能していないなど、偽装が生まれやすい環境になっている可能性が高い。
コンビニエンスストアチェーン本部は、フランチャイズ店のモラルに頼るのではなく、本社が中心となったシステム構築が喫緊の課題だ。従業員教育の徹底や消費者の食品安全への理解促進はもちろんのこと、フランチャイズ店舗との適切な廃棄ロス分担制度の構築や、デジタル技術を活用した期限管理システムの導入など、多面的なアプローチが不可欠だ。そうでなければ、いくら本部が原因を追究して再発防止に乗り出したとしても、このような構造的な歪みがある以上、消費期限偽装はこれからも繰り返されてしまうだろう。
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